"工芸"カモフラージュ


最近、財布の話をしてましたが、今日は、"山内"。



あまりにも力強く、美しいカモフラのシリーズです。



シャツジャケットとパンツ。




山内が拠点を置く愛知県。



その有松地方でつくられる見事なカモフラージュ。




有松地方というのは、日本の和装を古くから支えた地域だそうで、伝統工芸"有松絞り"という絞り染め技法が今でも存在する。




日本の絞り染めという染色技法は、遥か奈良時代まで遡り、そこからスタートしたそうですが、それを支えてきたのが有松地方だそうです。




そこに位置し、今から110年前、1912年の大正元年に創業した、"久野染工場"さん。



この絞り染めの染工場が、今回の山内のカモフラージュを生み出してる。



これは、まさに工芸品。




僕は、こんなカモフラージュはこれまでに見たことない。



アメージングカモフラージュ。







山内
塩縮加工超強撚コットン・ハコムラシャツジャケット




material _ COTTON 100%(ZZ超強撚)

color _ CAMOUFLAGE

size _ 2,3,4







山内
塩縮加工超強撚コットン・ハコムラカーゴパンツ




material _ COTTON 100%(ZZ超強撚)

color _ CAMOUFLAGE

size _ 2,3,4




この二つ。



さっきは、久野染工場さんの染めの話をしましたが、それ以前に、この生地。



コットン100%とは思えない程の、超強烈なタッチ。



ZZ超強撚。




そう。 この生地を織ってる機屋さんは、"カネタ織物"さん。



当店では、スーパーお馴染みの機屋さんだ。



静岡県の掛川市に位置するカネタさん。




AUBETTでもそうだし、許可取ってないから名前出せないブランドもあるけど、当店でもこのブログに書く洋服はカネタさんで織られてることが多い。




広く世界を見ても、絶対にカネタさんでしか織ることができないハンパないコットンの生地。



それがベース。




だから、このシリーズも充分に無地でも勝負できるんですけどね。




何気なく触ってみたら、思わず二度目するような生地の質感してるんですよこれ。




コットン100%だけど、毛羽立ちもなく、強く、強く、撚りがかけられ、反発力がすごく高いし、肌に冷たく感じるような生地の極限の滑らかさ。



そして、皮膚の上をもの凄く滑り落ちるような感覚。



スーパーラグジュアリー生地。





カネタさんの最も得意とすることが最大に現れた、「THE カネタ織物」って感じの生地ですよ。



強いし、着ていて心地いいし、このベースの生地だけでも感動してくれる方はきっといると思ってる。






そして、その生地を"有松絞り"の久野染工場へ。



この久野染工場さんは、とってもクリエイティブな工場なんだそうです。




岡山県で言うと備前焼もそうらしいですが、何でも歴史のある地域は、その伝統を守ろうとするあまりに、保守的な考え方をされる人が多い。




それは決して悪いことではないと思うけど、僕は何でも変わっていくことは必要なことだと思ってる。



「昔はこうだった」とか、「今までのやり方は、、」みたいな感じで、そこに執着をし過ぎると、本当に素晴らしい伝統や技術というのものは、情報が溢れる時代にどうしても埋もれてしまうと思うから。




本当に素晴らしい技術は、世の中にきちんと評価され、受け継がれていくべき。



だから、そのためにも僕は、そういう技術を持つ方々は、「伝統、伝統」という感じで変わらないのではなく、その技を使ってこれまではやってこなかったこともやってみるっていうのが良いんじゃないかと思ってる。




だってね、仮に、そういうトライしてみたことが結果的に上手く運ばなくても、その方達の腕は変わらないんだから。



世の中の他の人には追い付けない技術を持ってることには、変わりないんだから。




って、産地の方々や、いろんな人と関わってると僕は思います。




まあ、そんなことは置いておいて。



この久野染工場さん、絞り染めの技法を初めて"洋服に"施した加工場なんだそうです。




先述の通り、絞り染めという技法は、"和装"に使われるもの。



そのテクニックを初めて和服以外に行ったのだそうです。



それが、イッセイミヤケって言ってたかな?確か。




歴史ある染工場でも、新しいことにトライする、とてもクリエイティブな加工場。



そして、その考え方が、この山内のシリーズにも反映されてる。




本来、このような"絞り染め"という染色技法は、洋服として完成した後、つまりは、"製品加工"という段階で行われる。




例えば、タイダイ染めのTシャツとかあるじゃないですか。



ああいうのって、既成のTシャツなどに施すものですよね。




そんな感じで、"絞り染め"も普通なら、"製品加工"として行われる。



でも、まあ、現在では、絞り染めを"洋服に"施してるのは、久野染工場さんとあと一社くらいしか日本にはないそうですが。




そして、今回の山内のシリーズ。 山内の山内さんは、洋服に"後加工"は絶対に施しません。



だから、絞り染めの概念を大きく変える、"生地"での絞り染めを行なってる。 それも、伝統では存在しなかった新しい"絞り染め"を生み出そうという、久野染工場さんならではだと思う。




でも、今のところは、この"生地"での絞り染めというのは、山内だけだそうです。



それは、製品での加工と比較して、二工程も三工程も増え、とてもとても手間がかかるから。



だから、誰もやってないそうです。




山内は、振り切ってる。



そういうの。




でも、だから、そういうレベルの洋服が完成するんだって、僕は思ってる。






そして、この絞り染めのシリーズ。



洋服の名前にも付いてる通り、絞り染めの中でも、、、 "ハコムラ絞り" という技法を使ってる。




絞り染めには、たくさんの種類があるそうです。 その内の一つ。




ハコムラ絞りというのは、 あまり大きくない箱状のものに入れ、抜染をしていく技法。




それは本来は、服を箱に入れ、加工をするのですが、先述の通り、山内では"生地"での加工。



洋服生産の背景が分かる方には、エゲツないほど労力がかかるのが想像してもらえると思います。




約4m。 一着分ずつに生地をカットし、それをグシャグシャっと丸めて、箱に入れます。



今回の生地は、カネタさんで織り上げられたカーキのZZ超強撚の生地。



それに、抜染剤を入れる。




カーキの色は、抜染剤がかかることにより色が抜ける。



しかしながら、ここでポイントなのが、全部の色が均等に抜ける。ということではないこと。




ハコムラ絞りは、ムラ染めの一種。



上から抜染液をかけることにより、それがランダムにかかり、抜染液が直接降りかかった箇所は、色がよく抜け、そうではない箇所は、うっすらと、全くかからなかった箇所は、全然色が変化ない。




そして、洗い。



そうすると見事に、ムラのある抜染ができるワケ。




ただ、しかし、今回の生地。



それだけではない。




"着抜(ちゃくばつ)"。




そう、抜染だけではなく、その上に更に着色をしてる。



抜染後に、黒を、そして、洗い流す、更にその後に、緑を。



そして、洗いをかける。




抜染一回、着色二回。




そうして、生まれたカモフラージュ柄。



更に、更に、一着分ずつの着抜だから、その後に一着分ずつ、手裁断。



普通はね、洋服は、何十着分も生地を重ねて、一気に機械裁断することが当たり前なんですよ。




僕も昔勤めてた縫製工場では、MAXで36着分のデニム生地を、一気に自動裁断機でカットしてた。



そういうのが当たり前。




でも、これは一着ずつ手裁断。




それは、なぜかというと、ムラ染めだから、一枚4mの生地にムラが出来てるからです。



だから、使える箇所と、使えない箇所とを確認しながら、パターンを置いて裁断しないといけない。



これ、想像以上に大変。




でも、そのタマモノで、誰もがこれまでに出会ったことがない、世界初のカモフラージュが出来上がってるってワケですよ。













一着ずつ、全てが違うカモフラージュ。



これまでに目にしたことのあるカモフラは、全てプリントだったけど、これは、経てるプロセスが全然違う。




それにより、圧倒的な迫力と生地の奥行きが、 ぱねぇ。







ディテールを紹介しますね。




シャツジャケット。 前は、肩はラグランスリーブ。



衿は少し大きめです。



胸には、箱ポケット。







そして、ウエストポケット。



シャツジャケットという名前なので、見返しの幅は広めです。







特徴的なのは、この衿。



前から見ると珍しい仕様なのですが、オープンカラーのようで、台衿が変則的に貫かれてます。







これね。



フツー、このような形式だと台衿は付かないから。




しかし、







衿裏。



衿の裏には、台衿は存在しません。



月腰とジグザグステッチ。




衿裏は、完全にジャケット仕様です。







それにより、このようなオープン仕様でもいけるのですが、一番上までボタンを留めても見事に成り立つ。







このように。



衿が立体的に浮き上がって立ち上がる。




通常、オープンカラー仕様の洋服だと、トップボタンを留めてしまうと、その周辺に不自然なシワか、生地の浮きが出てしまいます。



でも、これは、どちらでも対応できるような特殊設計。



しかも、誰も気づかないレベルで全部が左右非対称なんですよ。 山内の洋服は。




このような構築は、山内の洋服以外では、ほとんど見たことないんですよ。



とても良くできてる。




僕は、オープンカラーにしてるよりも、第一ボタンと第二ボタンだけを留めて、テキトーに袖を捲って着るスタイルがベストだと思ってる。




衿の大きさや形状などは、最近ではめっきり見ることがないようなスタイルですが、これ、むちゃくちゃ男前。



誰でも似合うってわけじゃなく、ある程度の男の渋みは必要だと思いますが、強い雰囲気の洋服がお好きな方だと、上手く乗りこなせれば、激ヤバの世界が待ってると思う。




僕は、そういうのとても好きだから、これ着てみた瞬間に、脳がヤられた。



どんな洋服でもそんなことってないんですけどね、凄まじい力持ってる服ですよ。これ。







裏。



ご覧のように裏地はつきません。



カネタさんの生地の素晴らしさをダイレクトに体感して。




ポケットには、それぞれブラックの袋布がつきます。









裏の見返しも完璧な縫製。



見事な直線美。



ポケットの袋布は、見返しに挟み込まれ、固定されてます。



ダレてしまう心配がないですね。







バック。







後ろには、バックヨークがつきます。




そして、肩のつくりは、フロントがラグランスリーブだったのに対して、こちら面は、セットイン形状です。







そして、二枚袖。







このハコムラならではの、パーツによって色変化がある。



もちろん、この色の違いも同じものは一つもありません。



これも工芸的な側面が持つもの。







バックヨークは、スプリットタイプでセンターで分割されてる。



そして、センターボックスプリーツ。



シャツディテールとジャケットディテールが織り混ぜられた仕様です。







先述の通り、力強い月腰と、衿裏のステッチワーク。







袖。



袖は、二枚袖の切り替えを利用した剣ボロ開きとカフス仕様。







こちらももちろん、両袖で生地のムラがある。







ボタンは、マットな水牛ホーン。



これは、着ていく内に磨かれていき、自然に光沢が出てくる。



生地のニュアンスとも、とても相性が良いと思いますね。







剣ボロの重なりは、いつもの山内仕様です。



深い合わせになってる。







こうね、捲って着るのが良いの。




山内の洋服は、新品ではムードが硬いけど、それを思いっ切りグチャグチャに着るのがベストなの。



そしたら、新品の時よりも遥かに高いレベルのオーラが発せられる。




とにかく着て洗うこと。 それがベスト。



まあ、このシャツジャケットは洗濯NG付いてるけど。



でも、僕は、これは洗った方が洋服の潜在能力がバチバチに生まれてくると思う。



それはもう、隠し切れない途轍もないオーラが。




ただ、まあ、洗う場合は、自己責任でお願いしますね。



自己責任で。笑







そして、パンツ。



こちらは、洗濯表示は、手洗いマーク付いてる。



だから、もうグチャグチャに着るのが確定。







カーゴパンツですが、大味な感じじゃなくて、めちゃくちゃ山内してる。



カーゴパンツで、天狗付き、オリジナルの裏側の手の込んだ処理や、エクセラファスナー、ドローコード。




いろんなもの付いてる。







股上は、深めの設計ですね。



カーゴパンツだから、スリムパンツって感じじゃないの。



フロントタックはないのですが、ダーツが左右にそれぞれ一本ずつ入ってます。




穿いた感じは、「こんなカーゴパンツ穿いたことない。」って感動しました。



僕は。




生地とか縫製のレベルもあるからだけど、とてつもなく、エレガントに感じた。




まあ、着用写真撮ってないけど。



でも、みんな好きな形してると思いますよ。



安心してください。







シャツジャケットもそうだけど、カーゴパンツの方も、30番手の縫製がむちゃくちゃ効いてる。 すごく美しい。







そして、左右にはカーゴポケットが付きます。



カーゴパンツだから。







カーゴパンツっていろいろあるけど、山内のカーゴポケット凄まじいのよ。







このフラップ。




写真じゃ分かりにくいけど、何枚の生地が重なってるんだってくらいのフラップしてる。



まあ、4枚なんだけど。







分かりやすい写真を撮り忘れたのですが、パンツの身頃は、複数枚の生地で切り替えられています。



この構築も山内ならでは。







バック。



後身頃には、ダーツが二本。



そして、フラップポケット。







このフラップも同様に、裏の生地枚数が多く、ボタンが露出しないのと、表にボタンの形が干渉しにくいように設計されています。



手を入れて細かくつくってくれてる。




カーゴパンツって他のパンツより、工程数がどうしても多くなるのですが、山内の山内さんがカーゴパンツを設計するとハンパないことになってる。笑




これは、縫うのがあまりにも大変だと思う。



縫ってるのは、シャツジャケットとパンツ、両方とも埼玉県のファッションいずみさんなんですが、見事に縫い上げてるから。 細かいところまで隅々まで、適材適所の縫製仕様で、きっちり縫ってる。




生地もそうだけど、誰がどう見ても、この洋服にかけられた時間の長さが想像できると思います。




それだけ、手を入れられた洋服って、やっぱり着た時に感じられることが全然違いますからね。




そういうのって、すごく良いものだと思いますよ。







裾。



裾には、ドローコードが入ります。




このコードは、結ばないと地面に引きずってしまうので、裾を適度に絞って、結んで着るのがベスト。







コードの先端には、熱圧着のラバーです。



メタルパーツは、ファスナー以外には使わないのが山内の洋服の特徴です。




金属パーツは、過度に主張してしまうと山内の山内さんは考えてるから、そういうパーツは極力目立たないものを使ってる。







最後に裏。







先述の通り、カーゴパンツとは思えない程の、裏の処理。



これも丁寧につくって、洋服の耐久性を高め、洋服の寿命を長くするため。



着用者の方を考えた、思いやり仕様。







このウエスト帯の裏地とか、ここだけで7本のステッチが入ってますからね。



信じられない。笑




カーゴパンツの方も、裏地がない分、カネタさんの生地のタッチがふんだんに感じられますね。




パンツの方は、夏場でもフルレングスのものを着る方だったらとても良いかもしれません。



生地の安心感はとてつもなくあるけど、暑くなく、快適に着れると思いますよ。




迫力あるパンツだから、夏場にはより良いかも。







カネタ織物さんや久野染工場さん、ファッションいずみさんの技術が詰まった、カモフラシリーズ。




これは、山内が生み出した"工芸品"。




現在の洋服業界でこのレベルの世界は、滅多にないと思いますよ。




お好きな方は、見てみてください。



BACK