"山内" スプリングの始まり

 

2020SSシーズンの山内のコレクションがやっと始まります。

 

 

とはいっても1月に発売したピンクのシルクシャツは春夏シーズンという括りでしたが、今回は2020年のブランドの春夏コレクションが始まりました。

 

 

ブログを書こうと思っていても、先日まで開催していたiroseやHEALTHの特別期間だったり、出張続きということもあり、なかなか書けずじまいでしたが、そろそろ復活できるかなと。

 

 

そんなときに山内が来たので、それはいつも通り山内の服について書くことになりますよね。 だから、今日も山内のものを紹介します。

 

 

今回は新しいシーズンの一発目ということもあり、上物からスタートしますね。 ブルゾンとブルゾン。 2つです。 最初の写真にもある通り、まずはこれ。

山内
リブ付きノーカラージップジャケット

表地 : 綿50%・和紙50%

色 : black

付属 : 本水牛ボタン、YKK エクセラ、山内リブ

サイズ : 2、3

 

 

至極のブルゾン。 この生地はヤバいね。 キテますよ。

初めて山内で登場した生地ですね。

 

 

バキバキだけど、光沢があり、しかも枯れてくる姿が容易に想像できる最強のポテンシャルを持つ生地ですね。 混率は表記の通りです。コットン50%の経糸と和紙50%の緯糸とで交織(こうしょく)される。

このジップジャケット自体は山内のコレクションで微調整を繰り返しながらつくり続けられているものなんですが、この生地が組み合わせられると今までのものとはまた違った強い雰囲気を感じますね。

太いコットンと和紙で密度を高く織り上げられたこれ。 ギュッと撚りの強くかけられたコットン糸のブラック。 和紙ならではのフラットな糸表面と鈍い光沢があるブラック。 この糸と糸の対比がすごく良い雰囲気出してると思いますよ。

 

 

生地の質感は厚地の綿織物というのが近いかもしれませんね、高級感ただならぬダック地みたいな。 あと、まあ、黒い色ではあるんですが、モードな漆黒というよりは、やはり古びたような黒に近い感じですかね。

最初は真っ黒だったものが長い時を経て、白く退色してきたようなあの色合いが好きな人は好きだと思いますよ。

それで、そこに掛け合わされるのはウルトラ縫製。

 

 

硬い生地だけど、複数枚の生地が重なる部分でも誤差は微塵も感じさせないこのスーパークオリティ。 このブルゾン、複雑なネックパターンをしているんですが、それをより一層格上げしているのがこのハイレベルな縫製ですね。

前から見るとノーカラーですが、バックスタイルは台衿があるパターンです。

力強い生地に対して身頃の裾と袖口にはリブが付きます。

リブといっても、超絶変態リブ。

袖も。 アップ。

リブの溝に何百ものステッチを同じテンションで叩いていく気の遠くなる仕様。

これによってリブの耐久度や肌触りは大幅に向上するし、見た目も良くなるのは確か。 ただ、ここまで凝りに凝ってやり抜くのはもはや洋服の領域に留まらず、造形物としての美を感じさせてくれる。

 

 

これはデザイナーの山内さんが全てのリブを自分でつくりあげるシロモノ。

まあ、そんなデザイナーってそういませんね。

というかここまでできる技術を持ってる人がそういないから。

そして、ジップブルゾンというカジュアルな性質のものではあるのですが、着たときの肩が綺麗に見えるように比較的肩は高い位置に設定されています。 それがこのシワ。 分かりますかね。 腕を少し上げると肩の頂点に少し生地のたまりができる。 これにより、反対に腕を下したときにはスッと下に落ちる腕周りが実現できるってワケです。

 アーム自体も立体的な二枚袖です。

しかしながら、シームが細かすぎて、生地は力強いし、二枚袖っていうこともよく目を凝らさないと見えないレベル。

ライニングには薄い裏地。

今の時期はもちろんですが、冬にもさほど厚着をしない方には中に素材の良いセーターなんかを入れたら充分に使ってもらえるんじゃないかなと思います。

最近は柔らかい生地のものとか、インポートのウェアのようなある種、粗さを感じられるような服も好んで着ていたりするのですが、やはりこのくらいのクオリティのものを見ると心躍らずにはいられませんね。

硬く力強い生地でありながら、山内の繊細な仕立て。 ここのブランドにしかないものが健在してる。

 

 

新品の状態も良いけれど、これを日常生活での作業着として着ることにすごく魅力を感じる。

そうするときっとこの服もそれに応えてくれるんじゃないかな。

もの凄く生地変化のポテンシャルに溢れた洋服ですね。

生地を見ただけで感じるここからの伸びしろ。

 

 

縫製者は、大咲さきさん。 初めて見る名前の縫製者さんですね。

繊細な仕立てと強い生地の雰囲気が見事にマッチしたブルゾン。

 

 

サイズは今回は2サイズ展開です。

 

 

どう着るかは所有者次第。

例えるならば、レザージャケットを着る感覚に近いかな。 生地の感じもあるし。

 

 

このまま綺麗に着るのも良いし、何も気にせず道具として着るのもオーケー。

3年後、5年後のこのブルゾンの風貌が楽しみですね。

山内
有松塩縮加工ジップジャケット

表地 : 綿100%

色 : dark brown

付属 : YKK エクセラ

サイズ : 2、3

 

 

次はこれ。 山内を象徴する生地の一つ。 有松での塩縮加工が施された生地を使ったブルゾンです。 これのほうがよりライトなもの。

 

 

名古屋の有松地区に昔から残っている伝統技法の有松絞りを応用した生地加工。 それを使う理由は、特有の風合いもあるのですが、これを行うことによって色合いが大きく変わるみたいです。

 

 

日本でも綿織物の生産地はあるのですが、そんな産地で数々の名品と言えるコットンの生地を作ってきた人でも、コットンの出しにはすごく苦戦するそうです。 ウールなどの素材の方が色に深みがあるものが多いのは何となく想像してもらえるんじゃないかと思います。 それは素材の特性上、染色方法に違いがあるから。

 

 

コットンやリネンでは色に深みが出しにくいそう。 でも、山内さんの行う特殊な塩縮加工ではその問題が一気に解決するみたい。 つまりは山内でしか出せないカラーリングなんですよこれ。

 

 

今まで登場した塩縮加工のもの、全てそう。

で、これは今までの生地と何が違うのかというと。 織りが違います。

 

 

今まで当店では塩縮加工リネンシャツを取り扱いをしてきましたが、それは平織り。

 

 

これは綾織りです。

斜めに生地組織の線が見える。

綾織りの塩縮加工は初めての展開となります。

 

 

少しこの生地のほうが、着用時の自由度が高いですね。 柔らかいというか。 それが綾織りの特徴の一つでもある。 生地好きの人はそういうところも重要だと思う。

あと、変わった仕立てが。

裾と袖口。 裏地のブラックが見えるようなパターン設計になっています。

これは革新的。 初めて見た構造です。

 

 

前身頃がセンターからサイドに行くにつれて徐々に裏地が斜めに現れてくる。

パターンワークの妙技ですね。

これは着たときに見た目に大きく変わってきます。

そして、山内の洋服は塩縮加工が施されたものは極力ステッチが表面に露出しないようになっています。

 

 

表でステッチの美しさを打ち出していくのではなく、この生地の素晴らしさをダイレクトに感じられるようにするためかな。

このブルゾンも衿部分のみしか表からはステッチが見えないように仕上げています。

 

 

この引き算、山内バランス。

ここも重要です。

少しライトなアウターだから、衿は硬すぎないように仕上げています。 前から見ると。

 

 

ただ、月腰は衿の途中から現れる。 着たときに前から見ると軽快な印象ですが、後ろから見たらしっかりと衿が立っているように見える。

 

 

力を抜きすぎた洋服は、もはやただの部屋着だから、しっかりと仕上げる部分と重くならないように仕上げる部分とですごくバランスのとれた仕様だと思いますよ。

フロントはエクセラファスナーですが、通常ファスナーに平行に走る、ファスナー押さえのステッチもありません。

 

 

しっかりと裏で地縫いはしてあるから、ペラペラなることはないんですが、等間隔にカンドメで押さえている。

洋服の構造を理解して、縫製のことを追求したブランドならではの部分かな。

薄い裏付き。

こちらは縫製者は佐藤ゆり子さん。

一着を一人が縫製する山内ならではの一つの楽しみ。 縫製者チェック。

ほんっとよく出来てる洋服だと思いますね。

やはり先ほどのブルゾンと比べてもこちらのほうが柔らかさと軽さがある。

その分、腕の緩やかに落ちるアウトラインや着たときの軽快さはこちらがすごくあるかな。

 

 

どちらが良いかは好みでしょうね。

この2つから山内のSSシーズンはスタート。

アウターにもなるようなものは今シーズンはこの2つのみの取り扱いです。

 

 

お好きな方は見てみてください。

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