昨日は、OLDE HOMESTEADERの新たなブランド、MEDIUM SPORTS WEARを紹介しましたが、今日はtilt The authentics。
中津さんが今回も高いクオリティのシャツをつくってる。
僕の中では、通称、"完璧シャツ"。
全体のバランスが。
The CLASIKとDJAのGIZA 45の330番手四子撚りツイルでシャツをつくった時は、生地の性質上、少しドレッシーに振ってたけど、そうではない側面で考えた時には、今回のtilt The authenticsは、かなりのもの。
そう言っておきながら、いろんな兼ね合いがあって、大した数量をオーダーしてなかったから、今日、中津さんに在庫はないか聞いたら、一点もなかった。
だから、当店で気に入って頂ける方にお渡しできるのは、ごく僅かで、一番多くあるものでも3着がMAXだから、これはもっと皆様に紹介したかったなって悔いてる。
でもでもでも、まだまだ先だけど、皆様に中津さんとのスペシャリティーがお届けできる時が来ると思うから、その時はふんだんに紹介させて。
ということで、今回は数量が多くないことになってしまった"完璧シャツ"を紹介します。
tilt The authentics
SILK LINEN NO STITCH SHIRT
material _ SILK(絹紡紬糸) 78%,LINEN 22%
color _ ECRU
size _ 1,2,3
tilt The authentics
SILK LINEN NO STITCH SHIRT
material _ SILK(絹紡紬糸) 78%,LINEN 22%
color _ CHARCOAL
size _ 1,2,3
これ。
名前の通り、"NO STITCH"というシャツ。
ノーステッチ。
表に露出するステッチが極限まで少ないシャツってことですね。
そんな仕様で、縫製をするのは、当店では大変お馴染み、"ファッションいずみ"の水出さんたち。
シャツで言うと日本ではトップランクでしょうね。
すごく技術ある縫製工場。
当店では、tilt The authenticsの他には、山内ですね。
山内のシャツは、多くが水出さんのとこで縫われてますね。
なんかね、ファッションいずみさんで縫われたシャツは、静かなんだけど、特有のオーラがあるんですよ。
僕はもうこのシャツの縫製レベルを見慣れてしまったから、あれだけど、すんごいですよ。
他のシャツと比べて全然纏ってる空気が違うの。
やっぱり、例えば、同じ洋服であっても誰が縫うのかで全然違うクオリティのものが出来上がってしまいますからね。
同じ設計図があって、同じ材料があっても、縫う人の技術によって、完成後の差は歴然。
ただ、このシャツで言えば、表にステッチがほとんど出てないの。
衿も。 前立ても。 身頃と袖の接ぎも。
この写真で写る箇所で言うと、ボタンホールしかステッチが表に存在しない。
洋服に於いては、縫製のレベルをお伝えするときに"表に出たステッチ"で判断することが多いけど、これは表に全然出てない。
文字通り、 技術が、 "内側に隠れてる"。
そういう縫製テクニックが惜しげもなく注ぎ込まれたシャツ。
衿、前立て。
身頃と袖の接ぎ。
腕の接ぎ。カフス。
このどこにも表にステッチが現れない。
ボタンホールを除き、表から、唯一ステッチが見える場所がここ。
裾の三つ折り処理の部分。
この部分は、シャツではどうしても必要になってきますからね。
表には前立てがないのですが、裏には前立てがあります。
"裏前立て"仕様です。
表面では、とにかくディテールが少ないシャツ。
ただ、その分、"研ぎ研ぎに、研ぎ澄まされてる"。
裾の三つ折り箇所の処理も超精度での均等な処理。
まあ、縫製のことは、後で裏側を含めてもう少しお伝えしますね。
生地について。
生地は、tilt The authenticsが、愛知県の山栄毛織さんでつくったオリジナル。
混率は、シルク78%とリネンが22%。
いつもこのブログを読んでくれてる人なら、写真を見ただけで分かるかもしれないけど、シルクは、絹紡紬糸(けんぼうちゅうし)です。
絹紡紬糸とは、
・生糸
・絹糸
・絹紡糸
・絹紡紬糸
と段階がある中での一つですね。
絹紡紬糸って世の中にあることはあるけど、山栄毛織さんが手配してる絹紡紬糸だから、この品質には安心して。
生地は、"ブッチャークロス"って言うものです。 あまり目にしない生地の名前だけど、ブッチャークロスって、元来はリネンで、平織りや変わり織りを不規則に切り替えて、表面に強い凹凸を出した、丈夫で無骨な厚地織物のことです。
その極上版って思ってもらえたら良いです。
経糸には、17番手という、謎の数値の太めの絹紡紬糸の単糸。
緯糸には、同じく17番手の絹紡紬糸の単糸と、そのほぼ半分の細さの33番手のリネンの単糸。
それで織り上げられています。
78%で、この生地の多くの面積を占めるシルクが太めの糸で、絹紡紬糸と言うこともあり、糸のムラや節が不規則に出て、誰が見てもとても表情豊かですね。
そして、なおかつ、経糸と緯糸が交差する目がエゲツない程にきれい。
あと、ほんの気持ち、最初は地厚かな?って思うのですが、糸が太く、平織りで織られてる分、風の通る隙間が完備されてる。
新品時は、着た時に安心できるような着用感はあるのですが、洗っていくと、不思議や不思議。
軽さを感じるようになってくる。
それに加えて、太い糸で、シルクとリネンの交織(経糸と緯糸で違う素材を入れること)ということもあって、洗うと、凹凸がより一層出てくる。
新品でも"完璧シャツ"って言ってるくらいですからね、それくらいの出来なのですが、こういう生地特有の変化を好んで頂ける方には、全員に大変な満足をしてもらえると思いますよ。
たくさん着ていった"その先"に。
そして、裏。
僕がこのtilt The authenticsのシャツを"完璧"っていう理由は、いくつかあるのですが、
・生地
・縫製
・パターン
この複合的な組み合わせが、途轍もなく高いレベルで合致してるからっていうのが大きい。
今日、このブログを書こうと思ったのは、昨日MEDIUM SPORTS WEARのスウェットのことを書いてるときに、「あっ、明日はこれだ。」ってなったの。
tilt The authenticsの中津さんも、MEDIUM SPORTS WEARの福原さんもハンパない程、洋服づくりに向き合ってるから、僕にとってはとても重要な方々です。
洋服に限らず、シンプルなものって何でも誤魔化しが利かないじゃないですか。
だから、このシャツは、そのどれもに於いて手を抜けないの。
それは、着た時、着続けていった時に、所有者の方にとても大きな大きな恩恵となってくる。
着心地もそう、生地や形を含めた見た目もそう。
それがとにかく"研ぎ澄まされてる"。
それにまあ、中津さんは年齢も近いし、tilt The authenticsがデビューした頃から取り扱いをしてるんですが、洋服の進化を僕は毎回のコレクションで見てきたつもりであって、その変化を見てると、常人では考えられないことをしてる。
中津さんがtilt The authenticsとして、どれだけの時間と手をかけて、洋服づくりに向き合ってきたのかがブランドの服に滲み出てる。
そういう洋服ってきっと手にして頂けた方には、満足以上のことを届けてくれるし、僕が世界中のクリエイターの洋服を目にして、常に感じている、"洋服の素晴らしさ"をtilt The authenticsの服を通してきっと感じてもらえると思ってる。
こういうジャンルの洋服って、スタイリングとか、コーディネートとか、そういう見た目の世界を大きく超えてるの。
僕は、服屋として、このようなことをお客様方にお届けしたいと思ってる。
だから、このブログを書いてる。
店頭では、直接会える方だけになりますからね。どうしても。
それに直接お話ができる方々に対しても、いつもこのように話ができるわけではない。 でも、このブログを通してなら、細かくご覧頂ける方に対しては、会える方、会えない方、関係なく、皆様に平等にお伝えできると思ってる。
なので、いつも長い文章で書いてるワケですよ。
まあ、ホント、ちゃんとつくられた洋服の持つ力って計り知れないもの。
実は、今日、先ほどtilt The authenticsの2022AWシーズンのオーダーをしたばかりだから、デビューから5年、一緒にいろんなことを話してきた中津さんとのことを色々と思い出してた。
だから、こういうこと書いてる。
まあ、最初から中津さんのシャツもファッションいずみの水出さんが縫ってたわけじゃないですからね。
水出さんは、誰の仕事でも受けるってことではないみたいだし、当店でもtilt The authenticsと山内だけ。
選ばれしブランドってことですよ。
当店でも、お客さんでたまたまtilt The authenticsの中津さんと店頭で会ったことのある顧客さんがいるんですけどね。
中津さんは、むちゃくちゃ良い人。
人柄が洋服にとても反映されてる。
話を戻しますね。
裏側。
表にはほぼステッチは出ないのですが、裏には現れます。
台衿付けの部分。
身頃との繋ぎ合わせの箇所にギリギリのコバステッチが入ってる。
洋服に詳しい方だったら、分かると思うのですが、表にステッチが出ないということで、ほとんどの箇所が"袋縫い"という仕様で縫われてる。
この縫製仕様は、洋服の種類や生地にもよって、向き不向きがあるのですが、着用時に表面にも悪影響はせず、シームが露出しない分、とても美しく仕上がります。
特にこのシャツは、生地の風合いが強い分、表にガンガンにステッチが出るとカジュアル過ぎる見た目になるので、形との調和が取れない。
そういった意味合いでも、考えられた仕様です。
袖も袋縫い。
袖。
表。
カフスは一つボタン仕様なのですが、先述の通り、カフスもノーステッチ。
カフスにつながる剣ボロも表からはかなり削ぎ落とされた見た目。
カフスと剣ボロの裏。
剣ボロは、内側に向かって表地と同じ生地で、"いってこい仕様"と言って、一枚の生地での一続きでの処理がされてる。
これも今では珍しい仕様だと思う。
生地と袋縫いの美しい裏面。
絹紡紬糸をベースにした、とても目の整った生地。
暑い時期には、Tシャツとかタンクトップの上に着たら、とても心地いい風が通るのが容易に想像できる。
これがCHARCOAL。
既にCHARCOALの方はサイズ2が完売してしまいました。
だから、1と3のみなのですが、渋めの漢の方には良いかもしれません。
ボタンは、CHARCOALは、黒蝶貝。
ECRUは、白蝶貝。
シームは新品の状態では、綺麗なアイロンプレスが利いてるので真っ直ぐ仕上がってますが、洗濯するともう少し柔らかいニュアンスになると思います。
素材の特性上、洗濯の際は手洗いがお勧めですが、水を通した後の方が、シャツ全部の構成要素のレベルが格段に上がりますよ。
ERCUの方が生地の質感は目に見えてよく分かるのですが、ダークトーンのこっちの色も奥行きがしっかり感じられる。
今回も着用写真は撮ってないですが、適正なゆとりを持ってきちんとしたサイズで洋服を着られる方には、すごく良いと思いますよ。
肌へのタッチや、肩から袖にかけてのアウトライン、第一ボタンを外した時の衿の返りも見事だから、それは実際に着てみてご体感ください。
明日というか、日付が変わってしまったので、今日、19日(土)は、三連休初日ということもあり、いろいろ納品があったので、tilt The authenticsをはじめ、多くのブランドのものが店頭に並べられると思います。
ご来店頂ける方は、お待ちしてますね。