11月末に発売をしたAUBETTとのP.(P).Cは、日本国内で、最もクオリティが高いと思う、カネタ織物さんに行き、そのカネタさんが生み出す、世界中の誰も真似できない"綿織物"の技術で生地をつくってもらうこと、
そして、それを通して、生地の生産における工程や業界の川上の状況を少しでも知ってもらいたいと思った。
誰もが知ってるし、持ってるし、着たことのある生地。
"綿織物"。
最も身近なジャンルであるコットンの生地だからこそ、未体験な素晴らしさを体感してもらい、"洋服でこんなことができるんだ"っていうことを感じてもらうことができればって思っていたんですよ。
そういうことを考え、動き始めていたのが、約一年半前でした。
と、
同時に、その時から考えていたことがあった。
"日本"と"世界"。
両者での綿繊維、コットンという生地の探究。
世界中のブランドに生地を提供する日本の機屋。
広い全世界という領域で、生地の分野に於いて、君臨する名だたる超名門機屋。
この、"日本"と"世界"の"生み出す生地の探究"。
それを自分で追い求め、それを当店を選んでくれるお客様に見てもらうこと。
これが"洋服屋"としてやりたかった。
「圧倒的な商品の提供」を。
そもそも、
綿繊維、コットンというのは、元はと言えば"綿花"と呼ばれる花からの産物。
広大な畑に綿花が芽を出し、それが伸び、花を咲かせる。
その後、花が枯れて、中から種子が出現する。
その種子を守るために、種子から生える"綿毛(わたげ)"、正式名称「リント」。
この綿毛の大半である「リント」が"綿繊維"となる。
ちなみに、その時に取りきれなかった、短く、小さな毛が「コットンリンター」と言われ、溶かして使うことで、キュプラの原料になります。
世界の色々な地域で綿花は栽培されるのですが、ルーツとなる"親"は一緒なことが多い。
どの地域で栽培されるのかということで、気候や土壌の影響で、特性に違いが生まれ、それによりコットンとして、呼ばれる名前が異なる。
今では、みんな口を揃えたように言う"長繊維綿"という分野があり、それは縮れた「リント」を伸ばすことで、大体3.5cmくらいだったかな?それ以上の長さのものを指すのですが、スビンやスーピマなど、良いコットンだと思います。
ただ、それを使っているだけで、
上質な。とか、極上のとか。最高の。って簡単に言われがちで、あたかもその品種を使ってる洋服が"上質"・"極上"・"最高"と思わせるような表現が蔓延しているんじゃないかと思います。
だけど、別にその品種は、綿の品種を広く見れば、そこまで良く言われるほどでもないと思うし、"洋服として"重要なのは、当然それだけじゃない。
その原料をどう使うのか、どのような"洋服"というゴールを目指すのかということが一番大事、料理と一緒で"調理方法"がとても鍵を握ってる。
例えば、それこそ先日のカネタ織物さんのZZ強撚双糸のコットンは、2種類の米綿、アメリカ産ピマが60%、アメリカ産アップランドコットンが40%ブレンドされたもので、特段、繊維長が長いものということではないんですよ。
でも、あんなに素晴らしいクオリティの生地が生み出される。
繊維が短いコットンが劣るとか、長いコットンが優れているというわけではない。
コットンという原料を使って、つくり出される洋服の種類が重要。
シャツなのか、Tシャツなのか、チノパンなのか、ジーパンなのか、どうなのか。
つまりは、、、
"どのような生地をつくるか"
"どのような洋服をつくるか"
という考え方が最も重要になり、そこの一部分を構成するのが原料ということ。
だから、上の品質には上が存在するし、原料だけでは、正確には、洋服のクオリティは判断できない。
ただ、
しかし、
漢であれば、そうであっても"上の世界"には興味があるものじゃないですか。
限られた一度きりの人生、触れたり、所有したりしたいものだと思う。
洋服に限らず、趣味にさえなり得る、いろんなジャンルのものが存在する中で、せっかく洋服が好きになったのであれば、時にはその分野の"最上"のレベルに達するものは手にしていても良いと思う。
僕が思う、いろんな側面を考えた上での最上のコットン繊維の品種は3種類。
これ、インターネットとかで調べたら出てくる世界三大コットンではありません。
・スビン シュプリームコットン
スビンの親、スビンゴールドがある。そのスビンゴールドの親。
・シーアイランドコットン
世界でも最も希少なコットンで、限られた原料が全然流通しない。
・ギザコットン 45
エジプトのギザ地方で栽培され、ギザの中でも最もレベルが高い。
このどれもが一般的なイメージのコットンのレベルを圧倒的に凌駕してる。
見た目、感触、耐久性。
この原料を上手く使い、それに適した洋服をつくることができれば、一度着てしまうと、もう、脱ぎたくなくなる。
日本国内に限らず、世界的に見ても、メーカーやブランドとしては、一握りの限られた者のみしかそれを使うことができないシロモノ。
そして、
今回、
その中でも、ギザ45を手配した。
そもそも、ギザ 45は、正式表記は、「GIZA 45(ギザ フォーティーファイブ)」。
数字が1から95くらいかな?まで存在するコットンで、見つかった順番に数字が決められています。
数字が若ければ若いほど、古くからの品種ということです。
現在では、その90種類以上のものが全て存在するわけではなく、GIZA 45、GIZA 87、GIZA 93の3種類のみが生産されてるみたいです。
GIZA 45は、数字の通り、現在エジプトで栽培されている最古の品種だそうで、1951年から流通し、数あるギザコットンの中でも"最高品質"と言われてる。
だから、消滅したギザの品種が多数ある中で70年も残り続けているわけですよ。
ちなみに、現存するものでは、GIZA 87は、GIZA 45とGIZA 77を交配し、GIZA 45のような品質を目指して1997年に誕生。
GIZA 93は、結構最近。2013年に誕生したそうです。
そして、GIZA 45が"最高品質"と言われる理由が、"糸になったとき"。
繊維長で見るとGIZA 93の方が優れているのですが、それを糸に紡績し、生地にしていくと、レベルが格段に上がるのが、GIZA 45。
GIZA 45は、より古く歴史のあるシーアイランドコットンの保有競争の影響で研究、開発されたコットンだそうですが、GIZA 7とGIZA 28の交配により生まれた品種。
それが出来上がったら、超絶エグかった。
開発した人もビックリでしょうね。
だから、今では頂点に君臨するコットンと位置づけられている。
そして、肝心なところ。
今回手配したGIZA 45を原料に、どう調理するのか。
誰がやるのか。
まあ、僕もこのように洋服屋として、運営をしているとどうしても"数字"は避けて通れない。
そう。
"数字"。
というか、
"数値"。
とにかく、その原料を使って、誰もが目に見える、"数値"を追究したかった。
DAVID & JOHN ANDERSON。
"330"。
330番手の糸を四子撚り。
当店が、今の、現時点で手配できる、最もクオリティの高いコットン100%の生地です。
続く。。。