今日は、Nobuyuki Matsuiを紹介しますね。
今日紹介するものも、むちゃくちゃNobuyuki Matsuiしてるから。
まあ、世の中にはいろんなブランドが存在するけど、このレベルの洋服は、松井さんならではですよ。
そうそう簡単にはこういうものはつくれない。
まあ、これまで積み重ねたもの、培ってきたものが現れてる。
そういう洋服ですね。
Nobuyuki Matsui。
Nobuyuki Matsui
Tailored Jacket (Jacquard)
face material _ COTTON 42%,SILK 32%,WOOL 26%
partly material _ COTTON 100%
linning material _ CUPRO 100%
color _ ORANGE/NAVY
size _ 2
これ。 テーラードジャケット。
これは、"本物"のテーラードジャケットだ。
コレクションブランド"Nobuyuki Matsui"として、始動する前。
松井さんは、注文服を仕立てることを中心にしてた。
一人の人と向き合い、その人の身体に合わせた洋服をつくる。
それは、まさにテーラーの世界。
まあ、どちらかというと、コレクションの世界 "でも" 洋服を生み出せる人ということが正しいんですけどね。
当時の松井さんには、いろんな選択肢があったそうだ。
このままオートクチュールの世界で生きるか、コレクションブランドをスタートするか。
はたまた、コスチュームデザイナーとして活動するか。
つまりは、舞台や映画などで着るための衣装を俳優に合わせてつくる道。
そういうことを選ぶタイミングがあったそう。
まあ、なかなかそんな人はいないですよ。
今、まさに半年のシーズンで洋服をつくるブランドで、昔ながらの"毛芯"を用いた"ハ刺し"を "自分ができるデザイナー" なんて、僕は、イザベラ・ステファネッリさんと松井信之さんくらいしか知らない。
あとは、多分ジェフリー・ビー・スモールさんか。
まあ、テーラーの世界では別ですよ。
でも、そういう方々は、それを生業にしてるから。
逆にシーズン(コレクション)に合わせた洋服づくり、というわけではないと思うから。 テーラーの世界は。
だから、日本中のブランドのデザイナーの中でも、とても重要人物なの。松井さん。
で、今回のこのテーラードジャケットは、コレクションテーマ"DROP"に由来してつくられてる。
糸がドロップしてるでしょ。
これは、まあ、気になる方は、切ってもらっても全然オーケーだと思う。 本来は、カットされるボタンホールのかがり糸と芯糸だから。
まあ、ブランドでも今回のコレクションを表現するために、ボタンホールを形成するための糸をそのまま伸ばして、"物事が自然にある状態"というのをめちゃくちゃ手を入れて、本物仕様でつくられたテーラードジャケットにエッセンスを加えてる。
本格派とかじゃないですからね。
本物ですから。
このテーラードジャケット。
僕は、洋服屋として、いろんなジャケットを見てきたつもりではある。
でも、そういう僕も20代中盤の頃の、今よりももっと駆け出しの頃には、"テーラードジャケットではないジャケット"を"テーラードジャケット"と思ってるような時期があった。
そういうものは、やっぱりテーラードカラーのジャケットで、ラペルがあり、肩のつくりもまあまあ、それなりのものだった。
僕は、それを"テーラードジャケット"だと思い込んでいた。
だけどね、もう何年前になるか分からないけど、Nobuyuki Matsuiの松井さんが、コレクションで初めて、自分の最も得意としてる"テーラードジャケット"を出してたことがあったんですよ。
いつだったかは覚えてないけど、当時アトリエにしてた御徒町のビルの地下。
そして、そこで僕のアポイントの前後の人の出てくる名前がすごい。
みーんなが知ってる人たちだった。偶然だけど。
そこで、僕は、Nobuyuki Matsuiの松井さんに、"テーラードジャケット"というものを肌で教えてもらったの。
今でも、その時の感覚は、鮮明に覚えてる。
その時に、着た瞬間のジャケットが上半身に乗る感覚が、全く違うの。
もう、腰が抜けたわ。驚きすぎて。
なんなんだこれは。っていう衝撃が上半身を包み込むジャケットの中でうごめいてた。 その頃の当店は、今のような感じではなかったし、僕自身もそういう洋服を知らなかった。
だから、自分にとってはいつかはこういうものを紹介できる店になりたい。って思ってた時があったの。
そうして月日は流れ、Nobuyuki Matsuiの松井さんがきちんとつくるテーラードジャケットを初めて仕入れ、無事にお客様にお届けできることができたのが、ちょうど一年前の秋冬シーズン。
で、今回のテーラードジャケットは、その同じシリーズです。
僕が思う"本物のテーラードジャケット"というのは、もちろんパターンの設計もある。
袖山という肩の頂点の高さ、袖付けの方法、芯地の使い方、シェイプ、切り替え、見えない内側に使うもの、そして、手の縫製。
もちろん、この松井さんのテーラードジャケットというのは、僕が思う全部が入ってるわけですよ。
ホンット、このレベルのものを日本国内で、それもオリジナル生地で、自分のパターンで、袖付けも袖高で、オリジナルの毛芯で、それを手縫いのハ刺しでつくってるブランドが他にあれば教えてください。
もちろん、単純にそれだけをやってるのなら、時間をかければシロートさんでもできちゃうけどね。
でも、その技術レベルが全然違うと思うから。
これは、日本に於いても、とても重要な洋服だと思いますよ。
ここまでのレベルの洋服なので、新品の段階では、"余白"が大きいです。
あと、重量があるけど、すごく軽く感じる。
これ不思議。
最初は、まだ体に馴染みきってない、新品ならではの着用感を感じると思います。
ただ、着用者の体に合わせて、洋服のフィット、着心地が少しずつ変化をしてくれる。 それが、"本毛芯"で"ハ刺し"で胸周りや肩周りを形成したジャケットだけでのみ体感できる領域。
今回、当店で取り扱いをしているこのジャケットは、分業での工場生産のものではなく、松井さんが信頼してるという何十年もこの道でやってるテーラーのおじいさんが一人で縫ってるものだそう。
Nobuyuki Matsuiでつくられるテーラードジャケットは、その職人さんか、松井さん自身でつくられるものだけ。
ここまでのレベルになると、誰でもがつくることができないものなんですよ。
ご覧の通り、ボタンホールの糸が延長され、"DROP"してる。
もちろんちゃんと開く。
フロント1B。 フロントダーツもウエストシェイプが入ってるから、ちゃんと存在する。
イタリアみたいな程までウエストシェイプはキツくないです。
そしてね、この生地。
松井さんが言うには、もう二度とブランドでつくれないそうです。
織機の問題で。
これ、ウールを織り上げるための"ションヘル織機"だそうですが、ションヘル織機の中でも、 "ジャガードのションヘル織機"みたい。
ジャガードってもっと量産型でコンピューター系のイメージが今はあるけど、かなりオールドな織機を今回は使ってるみたいです。
確かにションヘルのジャガードっていうのは、僕は聞いたことがないんですよ。
通常のジャガード生地よりも、生地の膨らみを感じるんですよ。これ。
確かに感じる特有のしなやかさがある。
どうしても凹凸はあるけど、生地そのものがペタッとしてるっていうか、ペラペラのジャガードの生地が多いじゃないですか。
でも、これは確実に、糸そのものの風合いが存在するの。
あと、ハンパない高級感。
だから、柄はノスタルジーでもあるけど、生地自体がむちゃくちゃラグジュアリーなのがすごく漂ってる。
こちらのテーラードジャケットは、プライスだけ見ると高価なのですが、それを遥かに上回る洋服の出来をしてますよ。
テーラードジャケットの名前に相応しい手の入れ方、内蔵物、裏のつくりや生地。
これはすごい。
なかなかお目にかかれないようなシロモノだと思います。
あと、そうそう。 着丈はクラシックな長さでお尻が隠れるのですが、もともと袖丈は長い設定だったんですよ。
だから、当店仕様に袖丈を3cm短くしてもらってます。 結構、当てはまる方は多いんじゃないかと思いますよ。
興味のある方は見てみてください。
Nobuyuki Matsui
Leather Jacket
face material _ SPANISH LAMB LEATHER
lining material _ CUPRO 100%
color _ BLACK
size _ 2
そして、これ。
名前の通り、レザージャケットです。
革は、"エントレフィーノ種"のラムレザー。
エントレフィーノラムって、時々見ることがあるじゃないですか。
良いレザージャケットの場合は。
でも、今回松井さんが使ってるエントレフィーノラムは、僕はあんまり出会ったことがない質感してる。
もちろん、柔らかくてしなやかで、革質のキメ細かさがハンパないんですが、革の奥の奥の奥の方から、芯がしっかりと存在するのが感じられるんですよ。
今まで出会ったことのあるエントレフィーノ系のものは、すごく柔らかいのは多かったんですけど、これはなんかその特徴が残ってるけど、全然違うの。いい意味で。
バックは、革の良質な面を使うために、多めに接ぎを入れてる。
あと、さっきのテーラードジャケットとも共通するんですが、後ろ姿がすごく美しく見えるように切り替えを入れてますね。
とてもよくできてる。
フロント前合わせは、かなり深め。
ラペルのある衿型をしてます。
肩にはブランケットステッチ。
松井さんの仕事ですからね。
もちろんこれも、ハンドステッチ。手縫いです。
バックには、切り替えがあるのは先述の通りですが、こちらのレザージャケットは、腕の稼働も出来るだけスムーズなことを考えて、アクションプリーツが入ってる。
ライダースのようにいかつくはなくても、Nobuyuki Matsuiの立ち姿を目指しながら、きちんと動けるようにされてると思う。
フロントボタン留めは、ご覧のように革のループで留め付ける仕様。
あとは、フロントボタンの根元からレザーロープが"DROP"してますね。
腕の前振りもそれなりにありますが、最近目にするようなカジュアルな見た目のレザージャケットではありませんね。
やはり先ほどのように、本物のテーラードジャケットをつくるデザイナーですからね。
そっちのスタイルにあるような美しい佇まいが強い。
かなりエレガントな方向に寄ったレザージャケットですね。
ちなみに、袖口は隠しスナップボタンでの開閉。
裏地は、オリジナルのキュプラ100での限界値での極厚ライニング。
これ、とても安心感あると思う。
いろいろなレザージャケットは存在すると思うけど、どちらかというと、世の中にはクラシックなモーターサイクル系に振ってるものが中心的じゃないですか。
革質もキズをそのまま活かしましたみたいな。
当店でもそういうものはありますが、Nobuyuki Matsuiのレザージャケットは、完全に別のところに存在するものとして考えてる。
革質や精緻なパターン、縫製仕様も全部含めて、特別感をすごく感じてもらえると思いますよ。
Nobuyuki Matsui
No Collar Jacket
face material _ COTTON 42%,SILK 32%,WOOL 26%
partly material _ COTTON 100%
linning material _ CUPRO 100%
color _ ORANGE/NAVY
size _ 2,3
そして、最後にこれ。
こちらは、最初に紹介したテーラードジャケットと同様のションヘルジャガードのオリジナル生地を使用したジャケットです。
形がすごく特徴的。
身幅の広さ、アームの形状などすごく丸い印象ですね。
僕はあんまりこういうフォルムをした洋服を見たことがないし、出会ったことがない。
名前の通り、ノーカラーのジャケットです。
ネックは、見事なラウンド形状で、曲線的で何度見ても美しいほどの左右対象。
Nobuyuki Matsuiの洋服のパターンは、左右が同じものじゃないですからね。
それで、このネックや前合わせは、すんごいの。
フロントには、テーラードジャケットの身頃や肩周りに内蔵されるオリジナルの"毛芯"。
それがテーラーの仮止めの手法で縫い付けられてる。
ウールだけではなく、ホースヘアーが織り込まれた毛芯。
それを手縫いで、仮止め的な縫製。
でも見てこれ。
ウエストポケットは、極細の両玉縁であるんですけどね。
オリジナルのションヘルジャガードと毛芯を貫いてる。
しかも、生地が変わると両玉縁の縫製仕様も変えてる。
すごい設計ですよ。
見るからに手が込んでるのが一瞬で察知できる。
袖口の開きは、フロント同様にカーブが強い形状です。
松井さんの洋服はパターンが複雑過ぎて、理解するのにすごく大変。
まあ、それだけ凝ってるってことですが。
肩周りも切り替えが多用されてる。
でも、切り替えによる裏の縫製の厚みは感じませんね。
動けるし、ハイレベルなアウトラインを描いてくれますよ。
で、これが内側。
ヤバヤバの仕様です。
背抜きの裏で、パイピング。
アメージングな裏の仕様です。
これもNobuyuki Matsuiの洋服では一貫してる。
表も裏も、Nobuyuki Matsuiの色がある。
今の日本のブランドは、洋服に付いてるブランドネームがないと、どの服かが分からないものが多いと思うし、どうしてもそれが流通するのが仕方のない世の中になってる。
本当に実力のあるデザイナーのつくる洋服は、全然違うから。
Nobuyuki Matsuiの洋服は、常にNobuyuki Matsuiしてるんですよ。
いつも取り扱っていて、そう思う。
これってなかなかないことですよ。
Nobuyuki Matsui見てみてください。