先日少しお話をしたNobuyuki Matsui。
今回当店では初めての開催となるので、いろんな面で楽しんでもらえるように用意しています。
その一つが、Nobuyuki Matsuiの代表的なものでもあるリングベルト。 通常コレクションで展開があるものはブラックのスムースレザーのものなんですが、今回はより一層、ものとしての深みを出せるものでやりたいと思ったんですよ。
ベルトは服装の中でウエストを留める明確な役割があるじゃないですか。 ともすれば服装のワンポイントアクセントに用いることもあると思う。
ただ、ベルトが主役になる。とまでは行かなくても、もっとベルトの限られた枠組みの中でスーパーアイテムはつくれると可能性を感じていたんですよ。
年間で見ても、シャツを多く集める人、パンツが中心の人、カットソーばかり買う人。 それはその人の趣向にもよるし、使い方のスタイルにもよると思います。 ただ、ベルトってそうそうシーズンに複数を買っていくってないんじゃないでしょうか。
ともすれば、もう何年も買ってない、なんてザラにあるんじゃないかな。
服装でもその性質上脇役、普段の買い物でも出番が回ってくることも少ない。
それは、単純に所有したいって思えるものが流通しずらい傾向にあると思います。 原皮の値段もめちゃめちゃ上がってますしね。
僕ももう何年もベルト買ってないですから。
未だに10年前に買ったブライドルレザーのばっかり使ってる。
だから、自分でももうそれを卒業したいなって。
他の革とは違う圧倒的な立ち位置。
製作方法の都合上、類まれな希少性。
生きた動物の革質、キズをダイレクトに反映させるレザー。
使うほどに艶が増してくる。なんて単純なものではない、その深みの境地。
もちろん、無染色。
日本が誇る無二の技術。
日本人ならではの莫大な時間をかけた、丹念な仕事だからこそ生まれるこのレザー。 それこそがNobuyuki Matsuiがブランドとしてこれから使っていく新素材。
"SHIRONAMESHI" LEATHER
世界の革の一大産地イタリアでもない、
特殊レザーをつくるオランダでもない、
そこでしか生産できない唯一の革。
兵庫県姫路市。
そこでつくられる「白鞣し(しろなめし)革」。
通常、革は原皮というものからスタートする。
レザーには、"皮"と"革"の2種類の表記があるのは分かってもらえると思います。
でも、2つは全くの別物。 何が違うのか。
"皮"はいわゆる皮膚の状態。
その皮膚をレザーとして、使い続けられるために行うのが「鞣し(なめし)」という加工。
それにより、皮は革へと生まれ変わり、腐ることもなく使い続けることができる。
つまり、鞣しを行う前が"皮" 鞣しを行った後が"革"となるわけ。
その鞣しの方法によって同じ原皮でも全く違うものに仕上がる。 あと、補足的に言えば、レザーの種類は全てカタカナ表記の横文字ばかりだと思う。
例えば、「スムースレザー」とか、もっと細分化すると「バケッタレザー」とか。 「グイディレザー」や「エントレフィーノレザー」なども海外製のブランドレザーでそういった会社がつくったものがそうなる。
その全てはその鞣し方法によってだったり、その地に根付く特有の方法で鞣されることにより名付けられる。
つまりはそのほとんどが海外製ということ。だから、カタカナ。
この白鞣し革は、文字通り、漢字とひらがな表記。
日本の姫路でつくられるものだからである。
一般的に革を鞣すときには、僕らが聞いたこともないような化学溶剤を使っていたりする。
対して、この白鞣し革。 鞣すときに使っている材料は、誰もが知っているものだけ。
・塩
・菜種油
・姫路の川の水
・太陽の光
以上。
あとは、気の遠くなるような根気と忍耐力と卓越した技術のみ。
この「白鞣し革」と呼べる革をつくれるのは、世界でも一人だけ。
その人がつくった革。
一点一点全てに革質の違いがあるし、キズの入り方、シボの入り方も違う。
しかも色は染めていない。脱色もしていない。
太陽の下で晒された、天然の白。 自然の賜物というわけ。
それがこのベルト。
使うことによって、艶が出るなんてものではないし、一言で言うなれば凄まじい雰囲気を放つ逸品になっていく。 スペシャルベルト。
当店ではbeta post (旧 ED ROBERT JUDSON β)で白鞣しのディアスキン(鹿革)を取り扱っているし、僕も財布と名刺ケースは白鞣し革。
この白鞣し革の尋常じゃない質感に度肝を抜かされずっと使ってる。
だからこそ、Nobuyuki Matsuiで新たに取り組むということは聞いていたし、松井さんと話すうちに必然的にこうなったと言える。
幅は2.5cmで全長は130cmのロングベルト。 全てにデザイナーの手押しのブランドネームが入ります。
普段コレクションで展開するベルトは、ネームは型押しのみなんですが、今回は特別版なので、ある程度見たときの判断ができるようにインクも加えてもらいました。
バックルはNobuyuki Matsui仕様です。
輪切り水牛ホーンが片方。
これに関しては真ん丸ではなく、歪な形状だし、個体差があるので、それぞれに表皮の柄模様が入ります。
もう一方は、シルバーリングもしくはブラックリングが付属。
それぞれ水牛ホーンとは大きく質感の違うダブルリングの仕様です。
シルバーとブラックの好きな方を選んでもらえればと思います。
白鞣しの革質だけではなく、このダブルリングの雰囲気も充分に楽しんでもらえるんじゃないかな。
ダブルリングのバックルとレザーのコントラストが効いてるのはブラックリングですかね。
シルバーのほうはどれもがそれぞれに主張してくれてると思います。
まあ、付けてしまえばタックインしない限りはバックル見えませんが。
そして、このベルト。 全長130cmの長さなので、レザーベルトにしては比較的長めに設定してもらっています。
もう既にスタイリングとしては、ガチャベルトなどのものを垂らすというスタイルは広い目で見れば確立されているものですよね。
でも、その服装って素材がナイロンやペラ感の強いレザーの場合がほとんどじゃないかな。 だから、目に見えて分かりやすい、スタイリングのアクセントとしてってことはあるんだけど、どうしてもチープに見えてしまうと思うんですよ。
もちろんそれがプラスの方向にメリットとして働く場合があるんだけど。
でも、年齢を重ねてきたり、こういうジャンルの洋服を好むようになるとどうしても難しい部分があると思うんですよね。
そういった目に見えて分かりやすいスタイリングをもっと格上げしたかったんですよ。
だから、この超希少革で垂らすということをしたかった。 これだけのラグジュアリーレザーがベルトを垂らすという行為を全くの別物に変えてくれる。
通常では僕自身もベルトをそのように使うスタイルはしてこなかったんだけど、これでやってみて。 全然違うから。
当店で取り扱う、Araki Yuuや山内などの洋服との組み合わせもバツグンだし、
amachi.やMidorikawaなどの強い洋服にも負けてしまうことはない。
更には、COMOLIやGraphpaperなどの綺麗な空気の洋服とも調和してくれる。
白い革なんだけど、真っ白ではない。
しかもこのシボ感ですからね。
牛革のポテンシャルを最大限引き出してくれてると思います。
あと、このベルト。 気付きにくいんだけど、特別版。
今回のために作ってくれたものなので、二重なんですよ。
しかも白鞣しon白鞣しの悶絶仕様です。
白鞣しの二枚仕上げ。
松井さんとの打ち合わせの段階では、白鞣しの表革を一枚で使うという案もあったし、ベルトとしての性質を考え、耐久性を上げるために裏に別のヌメ革を貼るという案もあった。
めちゃめちゃハイプライスな革ですからね。 白鞣しって。
つくるのがものすごく大変だから、通常の倍どころの価格じゃないんですよ。
僕も聞いてビックリ。 こんなに高いんだって。
だから、少しでも値段を抑えるために別革を裏にもってくる予定だったんですよ。
でもね、驚き。 上がってきたら表も裏も白鞣し。
しかもどちらも接ぎなし。
通常の長さのベルトの倍以上の革の使用量。 松井さん、もの凄く頑張ってくれました。
僕も想像以上に素晴らしいものが出来上がったと思ってます。
ただ、本来のプライスはかなりえげつなかったです。
でもね、今回は最初で最後のベルトだから。
松井さんも僕らもプライスはすごく頑張ってます。
これ以下は、リアルガチでマジで本当にウルトラ無理です。
材料費並びに工賃の、いわゆる原価というのも聞いてるので、これはものを作る上でのプライスの理論を破壊しました。
それについてはまたお知らせしますね。
付属するヌメ革のタグには当店の文字を入れてくれています。
数量限定。
4月4日(土)より発売をします。
当店でも、素晴らしいものづくりを行なう洋服がお好きな方や、こういったものが好きな方にはきっと満足してもらえるんじゃないかと思います。
楽しみにしていてください。