"立ってる"スニーカー AFOUR

久しぶりの紹介となりました。 ロシアから。 AFOUR(エイフォー)。 ファッションマーケットとしてあまりイメージのない国ですが、そこですんごく独特なスニーカーメイキング、いや、スニーカーというよりもシューズと言ってしまったほうが正しいから、シューズメイキングを続けてるAFOUR。 コロナウイルスの影響をめちゃくちゃに受けに受けて、なかなかロシアから出国されず、本来であればもっと早くに皆様にご紹介できるはずでしたが、このタイミングになりました。 でも、今回もシューズのクオリティはバッチバチにしっかりと組み上げてくれてるから、そこは思う存分安心してください。 AFOUR CODE Matt Black material _ oiled nubuck(牛革) size _ 37,38(womens).40,41,42,43(mens) ライニングのレザー以外、全てブラックで統一されたAFOURのこのモデル。 ブランドでは他にもラインナップはあるのですが、このCODEのこのブラックレザーが最も完成度が高いと思うし、洋服との組み合わせもよく考えられているから、すごくバランスがとれてると思う。 アッパーのレザーは、もともとは僅かに起毛したヌバックレザーなのですが、そこにオイルを入れ、革の毛羽を寝かせ、マットな質感にしています。 これすごく独特。 これまでは、靴に限らず、このような革製品には使われてこなかったような類のものだと思いますね。 もちろん、革質のキメも細かいし、とても高そうな革なのは一目瞭然です。 このレザーなので、レザーシューズのようにオイルを入れて、ブラッシングをしてっていう手入れをするのもオーケー。 そうすると鈍い表情だったものに、少しずつ表面の艶が生まれてきます。 もう一つは、特段気にせず本来のスニーカーのように特にメンテナンスもせずラフに履き続けていくのも問題ありません。 手にして頂いた方の自由な付き合い方ができるシューズです。 このようにインソールの表面も、ライニングもアイボリーのレザー。 ライニングは、丁度真ん中くらいからつま先にかけては、コットンキャンバスに切り替わるのですが、強靭で、滑りも良好で、更にしっかりと足に寄り添ってくれる。 履いたときには、少しだけライニングのレザーが見えるように狙ってつくられてますね。 シューレースは、コットンの平紐にワックスコーティングをしているものを使ってシューズ本体と馴染みの良い組み合わせをしてる。 ソールは、EVAソールと日本ではあまり見ないSVIGのラバーソール。 しっかりと密度が高いアウトソールだから摩耗しづらい耐久性があり、しっかりハイスペック。 あと、ミッドソールもEVAということもあり、履いた感じはかなりの高反発に感じますね。 一般的なスニーカーだと体重によりずっしりと沈んでしまうものが中心ですが、これは多分ほとんどの方が体感したことないくらいの反発力で、如実に足元を支えてくれてるのが分かると思います。 すごく歩きやすいから、とても歩行に適してる。 まあ、見方を変えたらウォーキングシューズみたいな見た目してますしね。 おじいさんが履いてるウォーキングシューズにミリタリーエッセンス加えて、少し時代を巻き戻して、かなり上質にした感じ。 AFOURのシューズは、通常のオートメーション化されたような大規模なスニーカー工場での生産過程ではなく、ロシアの小さな工房でウラジーミルさんを中心とした3人の靴職人によりつくられてるもの。 だから、見た目はスニーカーだけど、メイキングプロセスは完全にレザーシューズに寄ってる。 目に見えてそれを感じられるのは、手にしてしばらく月日が経ったときですね。 もちろん、ロシアの昔ながらの道具を駆使して、上質な原料を使ってつくってるから新品の状態でも、存分にそのクオリティの高さは感じてもらえるんですが、やはりきちんと手を入れてつくられてるものは、真のポテンシャルを理解できるのは使っていった「その先」ですね。 一般的なスニーカーでも足の形に合わせて変形してくれ、多少履きやすくなり、それが「馴染む」ということなのですが、AFOURはそれがそういうスニーカーのレベルじゃない。 アッパーの革の伸びや、インソールの沈み込み、全てのフィッティングが変化してくれます。 それは履き心地の面なんですが、それに伴い変わってくるのが、表革の見た目の表情ですね。 これもレザーシューズ同様につま先に入る履き皺や、オイル分が革の中で動くことによって、アッパーに陰影が出てくる。 履き心地という"体で感じられる側面"と、"靴の見た目"が比例して向上してくることによってもっと履きたくなるシューズになってくれると思いますよ。 でも、大事なのは、ここから。 AFOURのシューズは"立ってる"。 だいたいどのようなシューズでも完成して間もない新品は、重力に逆らうような縦への立体感があるものなんですよ。 でも、使っていくとどうしてもヘタレてしまって、どんどん立体感がなくなって横に潰れたようなフォルムになってしまう。 ただ、AFOURはそうじゃないの。 AFOURのポテンシャルが最大に発揮されるのは、使っていった「その先」に見えてくる。 スニーカーのような見た目であるのにも関わらず、常に自立し、立ち続けるのがAFOURのシューズ。 これは、ブランドの技術がすごく詰め込まれてる賜物でもあるし、ウラジーミルさんたちのやってることがすごく表れてるんですが、それだけじゃない。 以前にこのブログでも書いたことがあるんですが、AFOURを日本でハンドリングしてる泉さんがヤバい。 AFOURというブランド、絶対に泉さんがいなきゃこういうものってできてない。 昔、京セラの稲森さんが書いてる本を見たことがあるんですが、 ものをつくるとき「触ると手の切れる」ようなものをつくることが大切だって書いてあったのを見たことがある。 もちろん、実際に触ったときに手が切れてしまうことはないにしても、それだけ精神を込めて、神経を研ぎ澄ましてものづくりをしたとき、完成したものは、あたかも「触れた瞬間に手が切れてしまいそう」なものであり、それがものをつくる上での"理想"であり、それくらい"向き合え"ってことだったと思うんですが、AFOURはまさにそういうこと。 以前に山内の山内さんのとこに行ったときに、ギャラリーショップは、店の売り場に近いような華やいだ明るい空気があったんですが、山内さんが実際に洋服をつくっている隣のアトリエに入ると、一歩足を踏み入れただけで、漂ってる空気が全然違うのを感じたんですよ。 ピンと真っ直ぐに糸が張ったような、張り詰めた緊張感。 それだけものをつくるときに向き合う現場、全精力を注ぎ込む空間っていうのは、空気が全然違うし、そういう場所でつくられるからこそ、それだけのものって生み出されると思う。 話を戻して、AFOURでいうと、泉さんがウラジーミルさんにCODEのサンプルをつくってもらったとき、約2ヶ月か3ヶ月間くらいだったかな?いや、半年間だったかな?? いろんな状況下で、そのサンプルのシューズを置いて、ただじっと見つめていたそうです。ずっと。 なぜ、そうしたのか。 世の中にたくさんシューズがある中で、泉さんがAFOURというブランドのシューズを世界最大のファッション市場である日本に出すときに、「本当にそれだけの価値があるものか」ということを、ずっと見て、見極めていた。 湿度の高い場所、高温の場所、普通の場所や、リビングなどなど、とにかくいろんな場所に置いて、CODEのMatt Blackのシューズのどこかが少しでもダメになってしまうようなことがないか、じっと見つめていた。 例えば、履いていてダレてしまうものや何かマイナスな現象が起こってしまうものは、必ず予兆があるものですからね。 そうして、これなら大丈夫だ。と思ったものを2年前に岡山まで見せに来てくれた。 そこからが僕たちの関係がスタート。 もちろん泉さんはウラジーミルさんがただつくったものを僕らに紹介してくれるわけではないし、このCODE Matt Blackも泉さんが考えて生み出したもの。 それを実際のシューズにしているのがウラジーミルさんたち。 そして、AFOURは現在日本国内では、大阪のinside my glass doorsさん、wunderさん、そしてCASANOVA&Co.の3店舗のみの取り扱いです。 そのお店、全てに共通するのが"山内"を取り扱っていること。 そういうことです。 インスタグラムのフォロワーは物凄く少ないけど、素晴らしいシューズをつくっていると思います。 お好きな方は見てみてください。
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