山内 半袖シャツとパンツ

先日やっと今年初めて紹介できた山内。 ここから少しずつ続きます。 と言ってもすぐではないけど。 今回は、半袖のシャツとパンツを紹介します。 山内 レーヨンシルクキュプラ・ショートスリーブシャツ material _ RAYON 63%,CUPRO 34%,SILK 3% color _ BLACK size _ 3,4,5 先日紹介したストライプの長袖シャツに続いて半袖シャツです。 混率は、上記の通り、レーヨン、キュプラ、シルク。 この間のブログでも少し話をしましたが、山内さんが前回のコレクションから一緒にやってるキュプラを得意とする機屋さんの生地ですね。 山梨県の富士吉田市のWatanabe Textileさんでつくられた生地。 富士吉田市は、日本のキュプラの一大産地。 渡邊さんという方がやってるWatanabe Textile。 以前に富士吉田市でシルクのネクタイをつくっている方が来店頂いたことがあり、そのお客様からも聞いていたのですが、その辺りは「渡邊さん」がとても多いそうですね。 その方も渡邊さんでした。 今回、山内で使ってるこの生地は、Watanabe Textileさんで製織されたものですが、当店でいうとamachi.もWatanabe Textileさんの生地を使ってる。 先日発売したamachi.との別注Dusk Shirtsのストライプの生地もWatanabe Textileさんでつくったamachi.のオリジナル生地。 キュプラがとても得意でその素材を活かした超絶オリジナリティーのある生地をつくってますね。 Watanabe Textile。 で、今回の山内のシャツもそう。 キュプラってJKTの裏地に使うとかのイメージだと思うのですが、実は高額生地でもあり、それこそ今ではハイプライスな洋服くらいじゃないと滅多にキュプラの裏地のものは見なくなってると思う。 日本にはとても適した繊維で、特に薄着のこの季節にはかなりメリットあると思いますよ。 今日のシャツ。 いわゆるかなりツルツルとした見た目のキュプラ100のものとは違い、少し白けたような中に重みのある光沢が感じられる生地です。 混率の兼ね合いもあり、手で持つと、「かなり軽量」というものではないですが、夏場には適してると思う。 気持ち重厚感のある見た目の印象だけど、ドレープも利いて「アダルトな漢の夏の黒」というスタイルが完成しますね。これ。 この生地の表。 3種類の繊維、全て反射の強い特性があるから少し見にくいのは許容して。 経糸にはキュプラが配置されています。 Watanabe Textileさんは、キュプラの素材特性をとにかく活かしながら、他の繊維と組み合わせて、洋服になったとき、ここでしか体験できない、目に出来ない生地をつくってる機屋さんです。 だから、経糸に極細のキュプラを配置しながら、緯糸の組み合わせで圧倒感がでているのが特徴だと思ってる。 この生地でいうと、緯糸にレーヨンとスパンシルクを混ぜた(混紡)したものを配置してますね。 そして、綾織り。 マイクロスコープの写真の中で、一番ツルンツルンに見えるのが経糸のキュプラで、横方向に走ってる太めの糸がレーヨンとシルクをブレンドした緯糸。 で、ここで一歩踏み込むんですが、この生地は3/1(さんいち)の綾という種類ですね。 綾織りには、2/1の綾とかもいろいろと種類はあるんですが、僕はこのタイプの3/1の綾を初めて見た。 最初、肉眼で見てたときに綾織りっぽい感じではあるんだけど、確信が持てなくて、分かんなかったんですよ。 でも、マイクロスコープで見てみたらその理由が分かった。 通常、綾織りの場合は、経糸が表に現れることがほとんどです。 「さんいちのあや」とかも"一本の経糸"が"緯糸を三本分"またいでる。通常はね。 これは逆。 "一本の緯糸"が"三本の経糸"をまたいでるのよ。 分かりますかね? こういうこと。 山内さんに聞いたらこういう綾の組織のつくり方もあるそうで、これを「よこ綾」と言うそうですね。 対して、通常の綾が「たて綾」。 経糸よりも緯糸を多く浮かせて、裏にキュプラを多く配置している生地ですねこれ。 まあ、この生地に関しては混率が混率なので、経糸と緯糸のどちらが肌に当たる裏面にきてもモーマンタイなんですが、Watanabe Textileさんが目指してるキュプラを使った生地の可能性を果てしなく感じますね。 これがよこ綾じゃなければ、この生地の見た目とタッチにはならないし、僕も洋服屋としてはこれまで相当数の生地を解析、解釈してきた自負はあるけど、肉眼ではこれは理解不能だったし、これだけの奥行きのある生地をつくる日本の機屋さんの力を知りましたね。 まあ、着るとめちゃめちゃ快適で、肌に心地いいし、この混率が持つ「黒」の見え方もとても独特ですよ。 枯れてるんだけど、まるで濡れてるような肌アタリ。 濡れてはないんだけど。 経糸のキュプラが裏に多く表れてる分、裏側のほうが光沢が強いですね。 表のほうが鈍い見た目です。 シャツでは珍しく、生地に合わせて本水牛ボタン。 マットな表面感のボタンです。 直径1.5cm、2ミリ厚の少し大きめホーン。 そして、前回のシャツ同様に、今回も前身頃はジャストショルダーのセットインスリーブ。 対して、バックは肩線を少しだけ落とした設定です。 夏だから、見た目のゆとりを出すために。 あと、このショートスリーブシャツにはバックヨークがある仕様。 シャツのバックヨークは、言うなれば生地を横方向に使うもの。 前に紹介したものは、生地がストライプだったので、ヨークの部分だけ地の目が変わって、後ろ姿がストライプ×ボーダーみたいな感じになっちゃうこともありヨークはありませんでした。 で、今回のこのシャツ。 縫製仕様がとても考えられてるの。 「夏場」ということと、「生地のポテンシャル」を最大限に活かすことができる仕様が満載。 前身頃と後身頃のシームも。 前後の身頃と袖、ヨークが交錯する肩も。 ゴロツキが出てしまいやすい脇下も。 随所がこれ。 「割り伏せ縫い」 これは、裏の縫い代を割った後に、生地端を押さえるステッチを入れる仕様。 だから、表から見ると、パーツが接ぎ合わされる箇所は、全て両脇にステッチが入る。 裏から見ると、、、 こういうこと。 まるでシームテープのようにも見える。 かなり立体的な設計の肩回りまでもをこういう仕様でやってるのは縫製者の方の卓越した技術の賜物。 近くで見ると縫い代これ。 超絶フラット。 これだけフラットなシームだし、生地端もステッチで固定されてるから、縫い代がとても滑らかで、着用時の不快感につながる肌への刺激はありません。 山内の山内さんが夏場に素肌で着てみてもらいたいって言ってたけど、これはそういうこと。 生地の性質を活かした、とても考えられた構造の半袖シャツですね。 もちろんご家庭での洗濯オーケー。 インスタグラムのほうに着用写真はあげてるから、そちらで着てるのはご覧頂けたら良いですが、とてもよく出来てる山内クオリティのシャツですよ。 夏にショートスリーブのシャツを着る方だったら、これ、見てみてください。 快適な夏をお約束します。 そして、これ。 山内 高密度コットンボイルウェザー・立体切り替えパンツ2 material _ COTTON 100% color _ GRAY size _ 2,3,4 コットン100%ですが、とても強い雰囲気を持つパンツ。 これまで山内の山内さんがつくり続けてきた"立体切り替えパンツ"というものがあったんですが、それのVer2です。 立体切り替えパンツは、細かなパーツを組み合わせて、結構細めの形だったけど、その名の通り、既成のパンツ界では、類い稀な立体構造でその細さからくる窮屈感を感じさせないものですが、これはそれに気持ち余白とゆとりを加えたバージョンです。 生地は、上記の通りコットン100%。 静岡県浜松市の古橋織布さんという機屋さんが織り上げた生地。 山内さんが言うには、日本でも「太番手の強撚コットン」は古橋織布さんが最も得意とする生地だそう。 そして、その生地をほとんど加工をせず、織り上げたそのままの風合いで使っているのが今回のパンツ。 太い綿の糸ということもあって少し毛羽立ちはあるけど、糸は強く撚りがかかり、ギュンギュンに締められてる。 通常、この手のタイプの生地はもっと乱れて、撚りも弱く、たくさんの不規則な毛羽が起こってることが多いのですが、これは誰もが目にしたことのある「綿織物」の中ではとてもスペシャリティー。 太番手の強撚っていうのが頷ける。 繊維の傾斜の角度が横方向に近いの。比較的。 2色の糸で平織りで織り上げられてるこの生地は、特段分厚いってこともないけど、春夏限定っていう生地感ではなく、どちらかというと通年系のパンツですかね。 あと、コットン100%の平織りだけど、誰もが驚いてくれるタッチだと思いますよ。これ。 こういうものってガサッと硬めで強すぎる生地がほとんどだけど、これはそんなことない。 芯のしなやかさがあり、乾いてるんだけど、乾ききってない。 生地の中心の中心が濡れてるの。 濡れてないけど。 綿繊維特有のそもそもの油分っていうか。 これはきっと、未体験ゾーンのファーストタッチですよ。 こういう生地ですからね、着込んで洗っていくっていう昔ながらでアナログな付き合い方が最も生地が活きてくると思います。 ストレートなハリとコシ。 たくさん着て、体に馴染んでくる「あの感覚」。 パンツに使われるコットン100の生地。それでこのクオリティはここ数シーズンでは全く見なかったレベルです。 山内っぽいところでもあるけど、洗いの大きな皺が刻まれてる。 綿織物でもとても奥行きが感じられますね。 あと、立体切り替えパンツ2では、前開きの仕様でウエストゴムとドローコードが付属します。 これまで山内の前開きタイプのパンツでは、ゴムやコードはなかったのですが、今回は初登場。 前開きがないタイプのイージーパンツが苦手な方にも良いかもしれません。 仮にタックインして、ベルトして、上に何か羽織ってしまえばイージーパンツには見えないです。 そして、このパンツの形状の特徴は、足周りの立体切り替え。 平置きすると綺麗にたためず、不自然な皺が出来てしまう。 フロントは膝位置で少し膨らみ、バックはお尻の曲線から膝裏にかけてシェイプがかかり、更に膝の裏からは、ふくらはぎの丸みに合わせて自然に膨らむ。 膝位置のシェイプとその前後の丸みを出しているパンツは、既成のパンツでは滅多にないですからね。 その着用感だけではなく、文字通りの立体的に描くアウトラインに驚いてください。 バックヨークからの切り替えで前身頃と後身頃が形成される。 更には、ヨークの切り替えを利用したバックポケット。 横から見るとこういうこと。 バックから包まれるように丸くつくられてます。 裏地の付かない一重仕様のパンツですが、ご覧の通り腰回りのディテールはしっかりと搭載されてますね。 マーベルトやエクセラファスナー、水牛ボタンの装備はもちろんですが、フロントのボタンがこれ。 ビンビンに立ちまくってる。 やはり、こういう着込んでなんぼの生地でできてるパンツですからね。 いくら生地の丈夫さがあってもそれを組み上げてるものが破綻してたら着込むまでもいかずにTHE ENDじゃないですか。 山内の洋服は細かくつくってるけど、単純に最初の内だけじゃないの。 最初のイカツイだけのスペック勝負だったら、それなりのブランドでいくらでもできることだと思うけど、山内さん、単純にそこを目指してないから。 手の技術をしっかりと洋服に注ぐことによって、着ていて快適なものとか、ついつい手に取ってしまう洋服だとか、そういうものが気が付いたら何年も何年も着続けていたってことになったりすると思う。 山内の洋服が手に取ってくれた方に、真に応えてくれる、真の答えを出してくれるのは所有してから数年は先かもしれませんね。ある意味。 裏側登場。 これ見てもらえたら、より一層、安心して着続けてもらえるかもしれませんね。 これは膝の周りの内側です。 このパンツは随所の切り替えはオーバーロックが多用されています。 洋服にとても詳しい方なら察してもらえると思いますが、オーバーロックで生地端の処理をすることによって、表側に裏の生地の厚みが干渉しづらくなります。 これが仮に、折り伏せだったり、生地の重なりの場所に厚みが出てしまう縫製仕様にしてしまうと表に大きく影響が出てしまいます。 特にこれくらいしっかりしてる綿織物ですからね。 オーバーロックが最も適している仕様だと思う。 生地に合わせて、洋服の種類に合わせた意味のあることしてますね。 写真だけ見るといかにも硬そうなパンツに見えるけど、そこまでじゃないですよ。 想像を遥かに上回る動きやすさもありますしね。 通年穿いていけるパンツだし、手にして頂けた方は、特段何も考えず、たくさん使ってもらうのがベストでしょう。 今日紹介した、山内のシャツとパンツは、5日(土)の12時より発売しますね。 今回もオンラインストアでも同時くらいな感じで掲載するのを予定してます。 ご来店頂くのが難しい方は、そちらもご覧頂けたら嬉しいです。
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