artisan materials

 

5月の中旬ということもあり、ほとんどの取り扱いブランドで春夏シーズンが完納してくる時期です。

 

 

この時期ということもあり、そろそろ春夏終了宣言をする方もちらほら出てくるタイミングだと思いますが、ここに来てこのブランドも春夏シーズンこれにて完納です。

 

 

Araki Yuu。

 

 

昨年も春夏シーズンは、他のブランドが主流になってくるタイミングでロングスリーブシャツが到着しましたが、今回はその19SSのときよりも更に遅れて到着ですね。

 

 

ただ、その分、良いものつくってくれてます。

長袖のシャツが2つとベストが1つ。

 

 

どれもがAraki Yuuが引き出す、素材の深いところからの表情を見てもらえるものだと思いますね。

Araki Yuu
new classic shirt

material _ silk 100%

dye _ garment dye

button _ brass

size _ 1.2

 

 

2020SSシーズンに初めてのものとなるnew classic shirt。

ここ数シーズン当店が取り扱いを行うAraki Yuuのラインナップの中では、比較的ゆとりのあるシャツ。

 

 

長くゆったりとラウンドした裾に適度にゆとりのとられた身幅、ウエストのシェイプも緩やかで、シルクという素材とも相まって流れ落ちるようなドレープ。

 

 

当店でも既にこのシャツと同じ形のものは一つ取り扱いをしているのですが、こちらはガーメントダイ(製品染め)。

 

 

無染色の極厚シルクで縫製し、形となった後に、デザイナー自らが最後に染色を行っています。

 

 

その染め方もこのシルクのテクスチャーを更に引き出してる。 くるみの果皮を使った植物染め。 媒染剤(染める原料と生地との仲介役)は鉄を使って、シルク特有の表情を引き上げてくれてます。

 

 

引き上げてるというか、色合いもそうだし、肌当たりがガーメントダイ特有のかさつきが現れているので、シルクのドレッシーな「あの感じ」をかき消してるとも言えますね。

ただただ、落ち感が強く、ヌメっとしてるだけではないシルクのタッチです。

既に枯れ始めているような、乾いたドライな質感。

 

 

ただ、肌に当たると濡れているようなシルクのみが持つ極上の当たりは健在ですね。相反するようだけど。不思議と。

 

 

Araki Yuuのブランドの特徴として、デザイナーが自分の手で、裁断や縫製、ボタンホール、ボタンの製作、仕上げ、出荷までたった一人でやるブランドですが、そういったブランドだからシルクという繊維のポテンシャルをすごく引き出せてるんじゃないかなと思いますね。

シルクの平織りですが、最近ではそのいった類のものは多い中、ここまで密度が高い、重みのある極厚シルクの生地の圧倒感。

 

 

本来は、コットンを織り上げる古い織機で織り上げたシルク。

他のシルク生地との違いをヒシヒシと見てもらえると思います。

 

 

色合いに関しては、くるみの果皮を使ってということですが、僕自身はそのようなものはあまり聞きなれないというか、くるみは初めての出会いなので、すんごく独特なニュアンスが出てると感じてます。

 

 

ベージュっちゃベージュだけど、ビミョーに違うっていうか。 やはり薬品で染色すると、見たことのある色合いにはできるのですが、今回の相手は「くるみ」。

 

 

優しいムードは纏ってるんですけど、Araki Yuuの極上に仕立てによってすごく強さを増してるっていうか。 というかそもそもベースが尋常じゃないシルクなので、すごくパワーがありますね。

 

 

今シーズンは、Araki Yuuはこの生地を使って、いろんなBotanical Dyeをしていたんですよ。 中にはものすごく艶っぽい、これ今誰が着るだろっていうような真っ赤のシルクもあった。

 

 

あとは、グレー系やブルーっぽいものが原料によって何段階かのグラデーション状に展開していたんです。 全部で7種類くらいだったかな。

 

 

で、真っ赤のシルクは何で染めてたかは忘れたんですが、それと今回のこれで最後の最後まで迷ったんですよ。 でも、ただでさえ素材が繊維の女王のシルクなので、赤は強すぎるかなって思って。

 

 

それにシルクって18種類くらいのアミノ酸で構成されている繊維で、その複雑極まりない構造が、他の繊維とは全然違うから、パッと見で差別化できる赤のヴィヴィットなカラーよりは、分かりにくい色だけど、その色がシルクと組み合わせれることで生まれる調和を心で感じてもらいたいと思ってこっちにしました。

そしたら、幸いAraki Yuuのシグネチャーでもある真鍮と抜群のコントラスト効いちゃいましたね。 かなり期待はしてたけど、大幅に超えてきた。 このブラスボタンもデザイナーが一個ずつ加工をして、少し腐食してるかのような見た目に仕上げてくれています。

 

 

だから、このくるみカラーとも相まって柔和な退廃を感じてもらえるんじゃないかと思います。

既に完成後にアトリエでハンドウォッシュしてます。

いつもながらですが、仕上げの段階でもうワンステップ格上げしてますね。

シルク100%という素材ではありますが、これから時期も暑くなる頃合いですし、積極的に水に通してもらってオーケーでしょう。

 

 

よく気にされる方はいますが、このシャツに関してはもう縮むことはほとんどないので安心してもらえれば良いです。

 

 

あと、これは好き好きですが、一応まだ新品の状態なので、シルク素材ならではの高級な光沢は消えてません。 かなり鈍い光沢ですが。 それを今後、より水へのアプローチを繰り返すことで、一層シルクの本来の光沢は消えていくでしょう。そのシルクのテクスチャーが消えていった上で、より頂点のテクスチャーが現れてくることと思います。

もはや単に、強すぎる冷房から身を守るためだけに羽織るような感覚で着るのが一番良いかもしれません。 この夏に関しては。

それくらいの気持ちで付き合ってもらえると来年の春頃にはより素晴らしいシャツに変貌してくれてるんじゃないかな。

 

 

このシャツは、世界2ピースのみの製作です。 つまり、サイズ1と2が一点ずつ取り扱いがあるので、当店のみのエクスクルーシブとなります。

 

 

ここ最近Araki Yuuの問い合わせがありがたいことに急増しているので、もの好きな方は、気にして頂けたら嬉しいですね。

 

 

そして、もう一つのシャツ。

Araki Yuu
raw cut no collar narrow shirt

material _ cotton 100%

button _ brass

size _ 0.1

 

 

こちらはコットン100%のノーカラーシャツ。 台衿もないので、バンドカラーでもありません。 潔く正真正銘のノーカラー。

 

 

この生地は、Araki Yuuが使い続けてる100番手の双糸の生地です。 ハリはあるし、密度もすごく高い。 けど、着るとしっとりとしたタッチのある極上コットン。

 

 

今の時期だとTシャツやタンクトップなんかの上に着てもらえれば、Araki Yuuが使うコットンの違いがすごく明確に感じてもらえるんじゃないかと思います。 すんごいから。

 

 

コットンのシャツって世の中に溢れてるけど、生地からまず違う。 それが新品の状態でも明白です。 この肌当たり、着心地で選んで頂いても良いレベル。

 

 

ただね、このコットンのポテンシャルを最大限感じてもらえるのは数年は先かもしれませんね。 洗いを繰り返しに繰り返し、断ち切りの状態で処理された糸がもうこれ以上は噴き出ないよってなってきたらスタートラインに立てます。

長いねー。

 

 

なんというか、生地が死なないんですよね。

コシはなくなってくるし、ウェットな生地からドライへと徐々には変貌してくるんだけど、ハリは残るし、常に当たりの良さがあるんですよ。

 

 

繰り返しの着用や水へのダイビングによって質感は変化していくんだけど、そのときどきの姿を心から楽しんでもらえるっていうか。

 

 

なかなか所有者のみしか体験できる感覚ではないんだけど、それはそれで特権ですね。

こちらも真鍮ボタンです。

あと、最初のほうのこのシャツの写真をご覧頂ければ分かってもらえると思うのですが、このシャツは胸ポケが付きます。その部分にアンティークレースが縫い付けられてる。

 

 

これはデザイナーが好きで集めていたもので、100年程前の昔のレースだそうです。

 

 

通常、Araki Yuuのシャツにはバックヨークの箇所に付属するんですが、こちらに関しては胸にも配置されてます。 そして、このシャツは、先ほどのシルクのものと異なり、縫い代はその多くが表に露出しています。

 

 

だけど、ただ単に本来裏にくるものを表にしたってだけではなく、目を見張るような細かい縫製によって表に施されています。

この辺りは、現物で確認してもらえたら良いかな。

フィッティングについては、こちらのシャツは先ほどのものよりシェイプがはっきりとしています。

もちろんゆとり分量のとり方は申し分ないですが、よりジャストサイジングという感覚のシャツです。

 

 

最近になってよりルーズなサイズ感から離脱してきたり、それもあるけど、もう少し心地よいフィット感を楽しみたいという方も増えてきてると実感しているので、そういう方の身体には喜んでもらえると思います。

 

 

あと、Araki Yuuのシャツは全て、袖付けも後付け仕様ですので、腕の稼働もかなりのものですよ。

 

 

一般的にシャツは、だいたいのものが身頃の脇と袖の内側を続きで縫われることが主流ですが、別付けによって腕を動かしたときに身頃が過剰に引っ張られることがありません。 僅かな差ですが、それが長時間着てるとすごく重要になってくるの。

そこもお目通しください。

Araki Yuu
round neck vest

material _ wool 55%.linen 45%

button _ brass

size _ 1

 

 

こちらは当店でも遂に初めての展開となるヴェストです。

世界一点の超絶ピース。

Araki Yuuのラインアップの中でもなかなかヴェストは珍しいと思います。

 

 

まあ、プライスがプライスですからね。 袖がないのに。

ただ、袖がないのにここまでやってるのはAraki Yuuならではですよ。

 

 

比較的クラシカルなベストとなり、フィッティングもしっかりあるのですが、これさえ着てしまえば全然違う見た目に持って行ってくれるウルトラピースです。

 

 

カラーリングは、茄子紺のようなもの。

パープルっぽく見える生地が、ウールリネン。 ライニングがコットンシルク。 背面のブラウンがコットンです。

 

 

背面のコットンが絞り染めのように見えるのは、こちらもシルクのシャツと同様にガーメントダイ(製品染め)だからです。

このベストは、素材が先述の通り、ウールやリネン、シルク、コットンが使われています。

そして、場所によっては縫製糸の縫い糸までもシルクです。 それを製品染め。

 

 

素材は、それぞれ染料によって染まるもの、染まらないものがあるので、このベストも素材によって染まっている箇所、染まっていない箇所がはっきりとしています。

 

 

具体的に言うと、ウール以外のところは濃淡差はあれど染まっていますね。

 

 

ただ、コットンの濃度とリネンの濃度も異なり、それぞれが段階的に濃度差が生まれてる。

コットン、リネンはブラウン。

シルクは濃いピンク。

背面は分かりやすく柿渋カラーだけど、フロントの生地も奥の方から鈍く緯糸のリネンのブラウンが覗いてます。 パープルの後ろに備える。

 

 

光や角度によって見え隠れする色なので、すごく深いところから複雑な見え方をしてくれます。

フロントには、デザイナーがハンドシェイプをかけた大きめのブラスボタンが付属しますが、バックにも針製の真鍮シンチバックが付属します。

 

 

今では、針シンチはなかなかつくることができないのですが、Araki Yuuでは針シンチを採用していて、クラシックを継承しています。

 

 

まあ、写真で見えませんが。

このベストについては、ボタンホールがシルクの糸でハンドで縫い上げられています。

 

 

そして、ポケット口の両脇の負荷がかかる部分も手縫いの補強カンドメが入ります。

お好きな方は周知のことですが、100年前のような洋服づくり、手作業で洋服をつくり続けるAraki Yuuならではのものですね。

ハンドステッチとは思えないほど美しいボタンホール。

しかしながら、マシンでのホールよりも耐久性は大幅に増す。

 

 

ベストというジャンルの洋服ではかなり強さのあるものですが、プライスも含めて。ただ、そう複数着持つものでもないと思いますし、これさえあれば。という感じで見てもらえるとありがたいです。

 

 

春から冬まで全ての時期でスタイリングの見え方を大きく変えてくれる力を持つAraki Yuuのベスト。

 

 

もはや夏はTシャツの上からこれ着てたら、それで充分良いでしょう。

 

 

4種類の素材を使いながら、デザイナーの染色によりそれぞれの素材の表情を引き出したベスト。

決して表層的でフラットで軽薄ではない、ともすると重々しい雰囲気さえ漂うようなものですが、そのテクスチャーの出し方は、やはりこういった洋服がお好きな方には満足してもらえると思いますよ。

 

 

これにてこの春夏でのAraki Yuuは全て揃いましたので、お好きな方は見てみてください。

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