お知らせしていた、葛利毛織さんに織ってもらった生地。
オーストラリアのスタッドファーム、"フェレイラ牧場"で飼育された超クオリティのキッドモヘア繊維。
それを、モヘアの紡績にとても秀でた紡績界のリーディングカンパニー、イタリア、"Suedwolle Group Italia S.p.A(旧Safil社)"で、世界で類を見ない64番手双糸に紡績された糸。
その糸を日本で唯一、仕入れ、織ることができる葛利毛織さん。
ただ、当店が今回お願いしたのが、葛利毛織さんの実績でもフェレイラモヘアを使って、これまで織ったことのない類のもの。
それでも、そんな僕の希望を排除することなく、葛利毛織の葛谷さんに受け入れて頂き、時間を費やしたけど、結果として、とても意味のある生地が出来上がったと思います。
そして、それを"どう洋服として"形にするか。
そのことを"山内"の山内さんと、何度も、何度も、何度も、何度も、繰り返し話し、やり取りし、山内さんにもとても時間をかけてもらいました。
そして、それを実際に縫って、縫製してくれたのは4人の縫製者の方々。
世界や日本が誇る、途轍もなくレベルの高い方々の技術の結集で出来上がった洋服です。
そもそも今回のフェレイラモヘアの生地は、葛利毛織さんで、既成で存在するものではなく、これに合わせて、フェレイラ原料を手配し、一から織ってもらったため、それなりのロットを必要とします。
生地をつくるというのは、そのような"ロット"を必要とするのですが、一店舗あたりで洋服にすることができる生地のメーター数には、どうしても限りがあります。
だから、葛谷さんに話をし、とても相談に乗ってもらい、生産メーター数"80m"で生地を織ってもらいました。
その生地を最高潮に活かし、手にして頂ける方々に、末永く使い続けてもらえることを願って、"3種類の洋服"を山内さんとつくりました。
これまでに世の中に出たことのない、80mの"フェレイラ・モヘア"の生地。
3種類の洋服、それぞれ3サイズで振り分けています。
ジャケット・コート・パンツ。
それを紹介します。
山内 × CASANOVA&CO × 葛利毛織工業
フェレイラモヘア ジャケット
混率 _ フェレイラ・モヘア 100%
生地組織 _ 経二重斜子織り
サイズ _ S,M,L
まず、これ。 ジャケット。
このジャケットは、フェレイラ・モヘア生地を活かすため、山内さんに一から設計してもらったものです。
今回のこの生地レベルになるため、3種類のどの洋服も、手にしてもらった方のワードローブとして、長年連れ添ってもらえることを絶対条件に考えた上で、形にしてる。
ジャケットという存在であるため、デイリーユースしてもらえることはもちろん、例えば、結婚式やオフィシャルシーンなどの"晴れの場"でも使ってもらえることを自分なりに想定をしています。
そして、僕がテーラードカラースタイルのジャケットに"求めたいこと"を見事に山内さんに設計してもらいました。
ただ、それがむちゃくちゃ難しかったと言ってる。山内さんが。
一番のハードルが"ラペル"。
僕の絶対に譲れない仕様のラペルにしてもらいたかった。
それが、 "スタンドカラーになる"ということ。
そして、
"綺麗なテーラードカラーにもなる"ということ。
世の中には、そのようなテーラードカラーのジャケットは、存在しません。
なぜなら、その二つは、完全に相反することだから。
山内さんが言うには、正反対のディテールを合わせなければならなかったというのが、このジャケット。
どういうことか。
まず、"スタンドカラーになる"ということは、衿を立てた際の首周りの余白のネック寸法や、衿そのものの高さが着用時に重要になってくる。
いくらスタンドカラーと言っても、衿が高過ぎては、顎に当たるし、首周りが窮屈に感じてしまう。
しかし、スタンドカラーでの洋服の"通例の衿の寸法"をそのまま設計してしまうと、衿を折り返し、テーラードカラーにした時には、ラペルが小さ過ぎて貧相になってしまう。
テーラードジャケットの中で、やはり衿周りは"洋服の顔"になってくるワケじゃないですか。
そもそもこのような生地なので、きちんとしたシーンでも着てもらう想定でもある。
例えば、ジャケット着用が必要な場で、"軽薄なジャケット"を着ているというのも、年齢が高まれば高まるほどに許されざる状況にもなってくる。
だから、スタンドカラーでの着用だけを重視し過ぎると、テーラードジャケットとして着用した際には、衿が小さすぎて、そのような場には相応しくないものが出来上がってしまうというワケです。
しかしながら、対して、テーラードカラーでの着用を重視し、設計をした場合には、スタンドカラー時には、3つの問題が生じてしまう。
それが、
・衿を立てた時に、衿が高過ぎて、顎に当たるほどになってしまうこと
・首周りの余白が小さく、窮屈になってしまうこと
・ラペル同士の重なり合う、センター部分に特有の"浮き"が出てしまうこと
この3つの問題が出てしまうの。 でも、今回は、見事にその2つの対極の要素を"ここしかない位置"で、マッチングさせ、どちらにも無理がなく、自然なベストバランスの衿設計を致しました。
僕じゃないけど。山内さんが。
ただ、それにむちゃくちゃ苦心した。 山内さんが。
今回のこのジャケットは、一から設計をしてもらっているというのもあり、まずは、パターンから。
そのパターンも、山内さん自身が、コンピューターシステムを使わず、"手引きのパターン"で線を引いているもの。
そして、その後に、トワル組み。
ただ、そのトワルを組む中で、やはりどうしても衿に不具合が出てきてしまうの。
だから、繰り返し繰り返し、複数回の微調整が必要となった。
あまりにこれが難しかったみたいで、ジャケットに関しては、未だ生産中です。笑
販売は、17日(土)からなのですが、当店に販売分が到着するのは、なんと、ギリギリの15日か16日という予定。
ギリギリのギリギリまで、設計をしてくれていたのですが、それがやはり僕が"理想としたラペル"を形にするため。
ただ、正反対の要素を必要としてしまうラペル設計を見事中の見事に成り立たせてくれています。
スタンドカラー時には、左右の衿の重なりがきちんと収まり、首周りの寸法も途轍もないベストバランスで出来上がっていると思います。
ラペルを返したテーラードカラー時には、適正な幅のラペル。
通常であれば、スタンドになるラペルを設計しようとすると、衿が小さく出来上がってしまい、フォーマルな場では着用が難しくなってしまう。
それを解決した"山内寸法"。
どちらもを成り立たせるために、上衿と下衿の切り替えの"ゴージライン"は、僅かに低めの設定。
ただ、あまりにもゴージラインが低いと昔のオールドムードが強く漂ってしまうジャケットに見えるから、そうならないようにすることにも山内さんは大切にしてた。
あとは、前身頃と身頃裏の見返しの生地分量の設計。
ここもむちゃくちゃ細かく、それぞれの生地の分量を調整してくれた。
この衿には度肝を抜いて。 マジで、全然違うから。
こんなウルトララペルのジャケット、出会ったことがないと思う。
上衿のラペル裏には、セオリー通りのフェルトを配置するのではなく、フェルトよりも圧倒的にクオリティが高いから、表地同様のフェレイラ・モヘア。
そして、加えて、山刺しステッチのジグザグが入ります。
ただ、生地組織が強すぎて、あまり見えません。笑
上衿の生地分量も通常とは違う設計。
こういう細かく、細かく、設計することで、テーラードカラーとスタンドカラーのどちらもを両立。
このジャケットは、衿は、どちらに重きを置いているということはなく、どちらもを大事に考えています。
そして、細かいけど、ボタンホール。
ここも山内さんと話し合った設計です。
そもそもボタンホールには、"表と裏"が存在するのですが、 本来ボタンを留めた際に、ボタンが表面に露出する側が、ボタンホールの表となります。
今回のジャケットは、写真の通り、フロント4つボタン。
一番下のボタンは一生留めることがないと思うけど、一応、狙いの設計上では、
・スタンドカラー時には、上二つのボタンを留める。
・テーラードカラー時には、上から三つ目のボタンのみを留める。
という設計です。
でも、今回のジャケットでは、結構どこをどう留めても対応してくれるんですけどね。
これすごい。
だから、
自由です。自由。
ただ、一応、僕たちとしては、狙いをどこに持っていくのかというのを決める必要があったから、上記のように設定しています。
その際。 ボタンホールの設計で、特に重要視したのは、"テーラードカラーでのラペルを返した時"の着用時。
理由は、テーラードカラーでの着用時の方が、ドレスシーンが考えられるから。
だから、さっき言った、洋服の通例でのボタンホールとは上二つのみ、逆の設計です。
ラペルを返した時、つまりは、ボタンを留めず、ボタンホールを使わないときに、"ボタンホールの表"が出るようにしてる。
そうすることで、ドレスシーンにも、より寄せることができると考えた。
結構細かい話だけど。
それに、スタンドカラーにしたときには、ボタンを留めるから、ボタンホールが裏でもボタンで隠れて見えない。
だから、そういう設計にしています。
ちなみに、山内のボタンホールは、基本的に"後メス"。 先に、ホールの形で縫ってから、メスを入れて、ホールを開ける。
それが"後メス"。
理由は、そっちの方が丈夫だから。 僕も昔から後メスの方が好き。
だから、もう一回見て。
このかがり目がギュッと詰まった綺麗なボタンホール。
バックのラペル。
先述の通り、ジグザグに綺麗なステッチが入る。
これにより衿の自立が向上。
ラペルを折り返した際には、気持ちだけ、ほんの気持ちだけ、バックのラペルが小さくなっています。
でも、ほとんど分からないと思う。
そして、ジャケットには、重要な"肩"。
ここは、絶対に"袖高"であるべきだった。
これは、身頃と袖とが切り替わる箇所、このどちらの"高さが高いのか"ということ。
カジュアルなジャケットであればあるほど、"身頃高"と言って、ボディの方が高くなる。
きちんとしたジャケットであればあるほど、必ず、袖の方が高さが高い。
スーツも必ず、袖高の設計になってると思う。
僕は、カバーオールみたいな身頃高のジャケットは、最近より一層NGになってきてるから、この箇所は絶対に袖高。
ただ、肩パッドを入れて、いかにもな肩をつくるのではなく、袖と身頃の縫い代を"袖方向に片倒し"し、"袖側を高く"設計してるけど、身頃側の肩にも、しっかりと充分な見え方をするように、肩にフェレイラ・モヘアの共地を入れる"似せ割り"仕様という、メンズ服では珍しい山内特有の構造の肩です。
更には、袖側に表地と同じフェレイラ・モヘアをアームホールに添って入れる"垂れ布"というのも採用し、かなり凝った構造にしてる。
だから、堅すぎないし、全然軽く見えることのない肩設計にしています。
この設計も肩のベストバランスだと思う。
そうそう。
袖口は、三つボタンで、もちろん本切羽。
今回のジャケットは、僕は身長167cmで52kg、手が短いのですが、僕で袖がこの類のジャケットにしては、長めになるように設計しています。
それは、僕は、袖口を折って着用したかったから。
スタンドカラーでもテーラードカラーでも、自分の中では、関係なく袖口を折り返したかったの。
これには、もしかしたら好き嫌いあるかもしれませんが、それに共感頂ける方は、それで着用してもらえれば良いと思うし、反対に、僕の手の長さでピッタリな袖丈を設計をしてしまうと、結構多くの方に、袖が短いと感じられるだろうなという自分なりのこれまでの経験があったので、それを反映させました。
日頃、販売員として、店頭に立つ自分の実感です。
だから、この袖丈がいろんな方にハマることを願ってます。笑
まあ、袖丈に限らず、着丈や身幅も通常の山内の寸法ではありません。
サイズ展開をブランドのコレクションでは、"2,3,4"と、数字での展開ですが、今回つくった洋服は、"S,M,L"という表記にしています。
これは、今回の3種類の洋服は、山内の通常のコレクション寸法ではなく、僕が日頃店頭で出会う方々、僕が知るお客様方を想定したサイズ設計にしているためです。
もちろん、僕の理想の洋服のバランスを追求しているものでもありますが、今回の洋服をご検討頂ける方に、袖丈や股下など、できる限りの"寸法が足りない"という要素を排除したいと思ったため、それぞれ3サイズの展開でも、"超変則サイズピッチ"にしています。
ブランドコレクションでのサイズの先入観を出来るだけ無くした状態で見て頂きたいと思い、そのようなサイズ表記にしています。
特に、小柄で細い方にはSサイズ、身長の高い方にはLサイズ、この寸法値は、どんなブランドを見渡しても、こんな変則サイズピッチは、存在しないだろうと思います。
特にパンツ。
この寸法設計が正解であることを祈ってます。笑
ボタンは、全て本水牛の手付けです。
今回の生地は、"フェレイラ・モヘア"。
葛利毛織さんは、生地に必要以上の後加工を施さない機屋さんなので、途轍もないツヤのある生地なのですが、それはフェレイラモヘアと斜子織の組織とが持つ、自然な生地の輝きです。
このあまりにも"隠しきれない上質さ"が光沢に現れまくってるので、付属するボタンは、山内さんが、できる限り"マット"なものを使いたいということで、光沢がない本水牛ボタンを使っています。
フロントは、一番上のみ18mm。
下三つは、20mmの本水牛ボタンです。 そして、肝心な縫製仕様。
この写真が分かりやすいのですが、身頃のエッジ部分は、全て写真のように、
"コバステッチ + 4mm"のダブルステッチ仕様にしています。
これは、当初、山内さんがつくってくれたトワルでは、ステッチは、生地端からの5mmのステッチのみでした。
でも、僕は、そのトワルを見たときに、どうしてもいつもの山内の生地の端がしっかりと立ったムードが出ていないように感じたんですよ。
だから、生地端からの5mmのステッチはそのままに、生地端からできる限りギリギリのコバステッチを入れてもらえるようにお願いした。
そもそも今回のフェレイラモヘアは、驚愕の反発性を持っている生地であるため、いくら"山内の縫製"といえども、これまでのように縫うことが難しい生地だったそうです。
モヘアが滑るし、ものすごい反発するし、それに加えて、アイロンが全然効かず、アイロンワークも通常の毛織物よりも格段に時間がかかってしまうというもの。
そのため、今回の生地を縫って下さった方々は、とても時間を費やして、神経を張り巡らしながら、細かく細かく、縫ってくれたそうです。
そういうセオリーで縫えない生地であったから、当初、山内さんは、ブランドで大事にしてる"コバステッチ"を入れない仕様にしていたの。
だけど、僕は、そのトワルを見たときに、より一層の"山内縫製"が加えられるべきだなって感じたんですよ。
だから、すぐに山内さんにコバステッチを入れることを依頼した。
それにより、"コバ + 4mm"のダブルステッチ仕様になってるワケです。 まあ、ダブルステッチにしないと、反発が強過ぎるフェレイラ生地の膨らみが抑えられなかったというのもありますね。
ちなみに、ダブルステッチ以外は、ジャケットということもあり、出来るだけステッチが表に露出しないようにしています。
そして、裏。
裏地は、2種類です。
身頃裏は、ウール54%、キュプラ46%。
袖裏は、キュプラ100%。
裏の両胸ポケットは、どちらもフラップ付き。
そして、フロントボタンも下2つのみ、水牛の力ボタン付き。
裏の縫製は、超、山内してる。
見事ですよ。
むちゃくちゃ綺麗だから。
見返しから、きっちりと切り替わる裏地。
裏と言えども、フラップのコバステッチの縫製も狂いなく、均等で細かいステッチピッチ。
裏の身頃から袖への切り替えもすんごい綺麗さ。
前身頃は、裏付きですが、バックは、背抜きというか、どちらかというと"半裏仕様"にしています。
背抜きよりは、生地の分量が多いと思います。
この狙いとしては、背中まで全部裏地があり、総裏仕様のジャケットになると、重量的に重過ぎる仕様になると考えたからです。
また、半裏仕様で背中半分は裏地に覆われ、腰位置付近から裏地がなくなるだけなので、冬場の保温性には、この箇所に裏地がないことがほぼ関係しないため、半裏仕様にしています。
それにより、今回のジャケットは、通常のジャケットに比べて、着丈を少し長めに設定しているので、後ろ姿でフェレイラ・モヘアのドレープがしっかり出てくれることにも繋がってる。
でも、結果的に、半裏仕様が裏地も部分的に取り付けないといけないし、裏の仕様もきっちり綺麗なものに仕上げないといけなくなったので、一番縫製仕様に手間がかかるものとなりました。
とても綺麗な裏処理。
そして、ベントも作り方もこれまでに存在しないという、山内の山内さんオリジナル設計です。
ここも考え抜いたって言ってた。
ただ、そこは僕には難しくてあまり分かりませんでした。笑
でも、縫製仕様書を見るととても凝りに凝ったベントの設計だった。
発売時には、この洋服に関わったいろんなものを見てもらえるように店頭では展示をしようと思うので、それを見てもらったら分かるかも。
そして、次は、
これ。
山内 × CASANOVA&CO × 葛利毛織工業
フェレイラモヘア トラウザー
混率 _ フェレイラ・モヘア 100%
生地組織 _ 経二重斜子織り
サイズ _ S,M,L
これ。
このパンツ。
先ほどのジャケット同様に、こちらのパンツも山内の山内さんに手引きのパターンで、一から新たに設計をしてもらいました。
こちらもコレクションには、存在しない形です。
このパンツで、目指したところ、 フェレイラ・モヘア100%の生地のドレープを500%活かすこと。
だから、表からの見た目はシンプルに見える。
アウトサイドシームが存在せず、サイドのポケットは、ウエストシェイプのダーツを利用したポケット構造。
そして、山内のブランドとしてはあまりないどちらかというとワイドシルエットに振った分量のパンツです。
でも、内側の構造のつくり込みは、山内仕様。
まず、フロントの前開きの構造が特徴的。
これは、ジャケットの組下になることも考え、ラペルを立てた際の、衿が重なる様子、つまりは左衿が中心よりも深く重なる様をパンツでもリンクさせた構造です。
これは山内さん発案の特徴的ディテール。
持ち出しや天狗も装備されたウエスト構造です。
フロントは、いつも通りエクセラファスナーですが、このファスナー長さも一番上までくるのではなく、とても収まりの良い位置までの設計です。
ボタンは、先ほど同様にツヤなしの本水牛。
ウエスト帯はありません。
比較的分量のあるワタリ幅のパンツですが、タックとダーツで腰回りのフィットも狙っています。
あと、さっきちょっと言ってた超変則サイズピッチですが、
Sサイズでウエストを73cm。
Mサイズで80cm。
Lサイズで86cm
というミステリアスな設計です。
この13cmのウエスト幅は、通常の3サイズ展開では絶対にあり得ない数値。
でも、細く小柄な方によくある、ウエストガバガバ現象をなくしたかったことと、180cm代の後半の方でもこれくらいのウエストであれば収まりよく穿いてもらえるのではないかというところを狙って設定をしました。
更に、レングスの設計もSとLで全然違う。
身長が160cm代の方と180cm代の方とでは、極端に言うと20cmも身長差があるワケじゃないですか。
だから、1.5cmや2cmのピッチでは対応できないの。
そういうことも考えて、MからLで大きくレングスを伸ばしました。
全体の数値はまた追って掲載しますね。
カーブした腰回りのライン。
先述の通り、アウトサイドシームは存在しません。
ここまでの生地になると、縫い代で生地の重なりがとても硬く仕上がってしまうため、硬いシームがあると、ドレープが出にくい。
外側に縫い代がない分、サイドビューでもフェレイラ・モヘアの持つ、ドレープの絶景をお届けします。
バックは、両玉縁仕様のボタン付きポッケ。
そして、見て頂きたいのが、ここにも。
さっきもチラッと言ったけど、この生地は、目付け"581g"ということもあり、生地に厚みもある。
だから、縫い代に厚みが出やすく、綺麗に縫い上げるのにはとても技術の必要な生地でもあるんですよ。
でも、ウエストの切り替え部の生地の重なる箇所も、乱れることなく、出来るだけフラットになるように丁寧に縫製してもらってる。
技術のある方が縫わないと、ここはすぐにぐちゃぐちゃになってしまいますからね。
コットンのチノパンとかでも、生地が重なるところが多いパンツでは、ここが崩壊してるパンツはかなり多いんですよ。
見逃されてるケースはかなりあるけど。
ただ、このパンツにはそういうことが皆無。
シンプルに見える見た目ながら、細かいテクニックがとにかく詰まってる。
ベルトループも同様に山内仕様の超丁寧なベルトループです。
スピーディーに製作できるベルトループミシンを使うことはおろか、ベルトループ用のミシンに取り付けるラッパという道具さえも使わずに、丁寧に丁寧に縫製されたループです。
その取り付けもすごい。
ベルトループ上部は、三つ折りに折り畳まれ、下部は、生地端にオーバーロックをかけるという仕様。
そうそう。 "オーバーロック"で思い出したんですが、今回の洋服は、 全てのパーツの生地端に、"オーバーロック"の処理がされています。
もちろん、洋服として完成してしまったら見えない裏の箇所にも、
全て。
ヤバい。
アメージング。
どんだけ手間をかけてるんだ。って話ですが、とにかく、とにかく、細かく、丁寧に縫製を行う。
山内というブランドの、"縫製レベル"をとても追求した設計にしています。
そうすることで、洋服が長持ちするということにも必ずつながるし、完成した際の見え方も大きく変わる。 それが、山内というブランドの洋服づくりです。
で、ベルトループ裏も見てもらおうと写真を撮ってみたけど、全然写りませんでした。笑
だから、実物見て。
ベルトループ一つでもすごく丁寧なのが現れてるから。
そして、裾。
シングル仕様です。
実は、当初の予定では、ダブルにするつもりでした。
ただ、問題が発生。
フェレイラ・モヘアがあまりにも反発があり過ぎて、ダブルにできなかった。笑
そんな生地聞いたことがない。
理由は、単純。
最初は、アイロンで抑え込んでダブルができても、生地が複数枚重なることで、いずれ裾が爆発してしまう。笑
宇宙レベルの反発力。
だから、シングルへと変更しました。
でも、全然悪くないと思う。
そして、裏。 今回のパンツは、裏地は付きません。
理由は、フェレイラ・モヘアの質感を素肌で感じてもらいたいから。
そして、ドレープの邪魔を一切したくないから。
もう分かって頂けると思うけど、チクチクとか全然ないから。
もうその次元じゃないの。
ここまでくると。
とても心地よい繊維の質感と、この斜子織りの経二重の独特な世界を直接ご体感ください。
笑っちゃうから。
"ゴザ"みたいなのに、超極上。笑
後ろ裏。
パンツの裏の特徴的ディテールとしては、この大きなウエスト見返し。
これ、、、
分かりますかね??
"見返しの見返し"が付いてる。
つまり、裏地に裏地が付いてるってことです。
ここも山内さん特有の設計です。
こうすることでパンツ着用時の腰回りの安心感は格段に向上します。
それに加えて、やはり負荷がかかる部分でもあるので、そこの耐久性も高めてる。
でも、手がかかる部分だし、そうなると生地の重なりも多くなる。
それを高次元の縫製技術で可能にしてる。
この幅の見返しに"見返しの見返し"が付きます。
これは、後ろ側の"裏の裏"の写真です。
見たことのない、驚きの縫製仕様。
生地端が出てこないように角を中に折り込んで、見返しの見返しを処理してるテクニック。
よくこんな仕様を思い付きますよね。
これ、山内さんの書く縫製仕様書に、全て記載されてるの。
世界一細かい縫製仕様書ですからね。
それも発売時に全て店頭に展示します。
そして、これが生地裏。
このパンツを手にして頂いた方は、この生地が肌に直接当たるのを思う存分楽しんでください。
すごく心地いいと思うから。
そして、
最後に、、
山内 × CASANOVA&CO × 葛利毛織工業
フェレイラモヘア コート
混率 _ フェレイラ・モヘア 100%
生地組織 _ 経二重斜子織り
サイズ _ S,M,L
このコート。
山内のブランドをご存知の方は、見たことがあると思うけど、これはブランドのコレクションで存在したことのあるコートです。
当店でも過去に山内でつくった葛利毛織さんの"ヤクウール"別注でも、同じ形でのコートを販売しました。
このコートは、ジャケットやトラウザーと同様に山内さん自身が手で引いたパターンということや、葛利毛織さんの梳毛の生地とピカイチの相性なので、今回もこの形でコートをつくりました。
ただ、これまでのサイズとは少し異なり、以前のコートの形で、
Sで3サイズ相当、
Mで4サイズ相当、
Lで5サイズ相当です。
そう。 このコートは、5のサイズなんて存在しなかったんですよ。
つまり、5のサイズは、もう一度山内さんに新たにパターンをつくってもらいました。
このコートの分量と、フェレイラ・モヘアの反発性、ドレープ、、、 "神様の領域"です。
もう、生地が流れ落ちる様が格別なコート。
フロントオープンでも、留めて衿を立てても、超絶男前。
衿裏には、山刺しジグザグステッチ。
このコートはもともと縫製仕様が特に複雑だったのですが、それをそのままフェレイラ・モヘアでも踏襲し、コバステッチや、アウターでは目を疑うほどの細かい縫製が惜しげもなく注ぎ込まれています。
袖口やフロントにも、ジャケット、トラウザー同様に、ツヤなしの本水牛ボタンが配置。
コートには分量に合わせて大きめのボタンを取り付けてる。
生地の重なりが多く、難しいポケットも途轍もなく綺麗に縫われています。
コートに関しては、裁断から縫製までを全てご自分でされる"成清功一さん"が縫ってくれています。
成清さんは、IRENISAの安倍さん、小林さんの友達でもあるそうです。
今回の3種類の洋服は、それぞれ、4名の縫製者さんが一着を最初から最後まで"丸縫い"してくれているのですが、お一人だけこのブログで名前を出すことができないのですが、後日、改めて、縫製者さんのことについては紹介させてもらいますね。
バックには、ベルトが付属。
山内さんは、ファスナー以外の金属製のパーツをあまり好まれないので、ベルトもバックルが付きません。
そのため、ベルトを使用する際は、ギュッと結ぶようになります。
ただ、そのまま垂らしておいてもオーケーで、ベルトが落ちてしまわない設計になってるの。
これ。
ベルトにベルトが付きます。
コートの身頃を絞るベルトと、ベルトが落ちてしまわないようにするための、ベルトの固定ベルト。
そして、これが本体に付属するベルトループ。
これ、異常。
一本の長いループを均等に、複雑に折り畳んで付けられるループ。
この反発性の高い生地を見事に扱いこなし、超人的なベルトループを形づくってる。
成清さんのレベル、ハンパない。
大きいループには、ベルト本体を通し、更に内側のループには、ベルト固定用のベルトを通す設計です。
凄まじい細やかさ。 超丁寧な仕事が伺えます。
バックには、背中心に切り替えが入ります。
そして、裾には、大きなプリーツ。
ここも成清さんが言われるには、とても手を要したそうです。
上部の背中心の縫製から、プリーツ終わりまでの補強。
表の縫製仕様ももちろんですが、裏の縫製仕様も大きく変わる。
ここにもとてもテクニックが詰まってる。
このレベルの縫製は、限られたレベルの人しか辿り着けない領域だと思う。
そして、裏。
この裏の仕様、もはやイってる。
バックは、半裏仕様です。
大きな見返し。
何がイってるかって、、
ここにも、見返しの見返しが存在するの。
しかも表地で。
それにこの両玉縁の裏の胸ポケット。
ボタン留めのループ。
全てがフェレイラ・モヘア。
ホンッッット、この生地、普通に縫えないから。
特に細かい箇所なんて、僕には想像を絶するくらい。
それをこのレベルで縫えるなんて、とても時間はかかるけど、この洋服を縫うのにどれだけ向き合ってもらえたのかということが、すごく感じられる。
裏の裾。
ここもね、よく出来てるの。
大きな見返しを表地でとることによって、着用時の重厚感はとにかく増す。
これは、コートならではのこと。
ただ、見返しの裾部分は、縫い付けてしまうと堅く仕上がってしまう。
だから、裾は、縫い止められてないの。
しかし、裾が止められていないと、重力で見返しが落ちてくる。
型崩れも起こり、フォルムの美しさも崩れてしまうし、表から裏の見返しが見えてしまうのは、とても不恰好。
それを解消するために、、、
裾が糸ループで止め付けられてる。
しかも、見返しが表地よりも上の高い位置に止められてる。
表から見えないように。
この設計もとても思いやりが感じられる仕様です。
ここまで細かいことは誰もができることじゃないから。
アメージングな衿裏の仕様。
衿を支える月腰パーツがえげつない程、綺麗に収まってる。
ヤバヤバの激ヤバ。
バックのプリーツの裏の収め方ももの凄い。
半裏の裏地もこのピッチで縫われる。
半裏のウールキュプラの裏地は、縫い合わせの箇所は、生地端をオーバーロック、そして、糸ループでの表地との止め付け。
ポケット口にも補強芯が貼られる。
裏地や芯地、更には、伸び止めテープというものも、フツーの洋服づくりでは、あり得ないほどに細かく使われているのですが、それも一着の洋服の、どこにどのように使われているのか、ということも今回は見てもらいたいと思ってます。
それも全て山内さんの設計した"縫製仕様書"に書き込まれてる。
その、あまりにも細か過ぎる設計図を、設計通りにつくり上げることができる技術者の方は、日本でもごく僅かなのですが、それを超レベルのクオリティで実現する縫製者の方々。
生地も設計も縫製も。 そのどの面でも、ご覧頂けるお客様方に、ご体感頂けると幸いです。
本当に度肝を抜いてもらえる洋服ができていると思います。
もうこのようなことは決して頻繁に、簡単に、実現できるようなものではありません。
だからこそ、この洋服をつくることに携わってくれた方々も、もの凄く向き合って形にしてもらうことができている洋服です。
洋服に一生ものなんて存在しないと思っていたし、存在できない。とこれまでは思っていたけど、
もしかしたらその可能性が限りなく高い洋服を生み出すことができたんじゃないかと思ってる。
まあ、本当にそうなるかどうかは、所有者の方次第ではあるし、そこは委ねたいと思います。
ただ、僕はこれを手にして頂けた方には、その方の生涯に渡って持ち続けてもらえる洋服になることができればと願っています。
もう間もなく。 12月17日(土)の12時から店頭で発売致します。
そして、販売当日17日(土)は、終日、山内の山内さんご夫婦に在店してもらいます。
山内さんは日頃、"山内ギャラリーショップ"にも立つことがなく、顔も出していない方です。 でも、来てもらうことが実現しました。
ご来店頂ける方は、楽しみにして頂けたら幸いです。
また紹介しますね。 続く。。。