先日より開催しているPETROSOLAUMとのMountain Fold Walletのオーダーイベント。
ブランドにつくってもらった財布なのですが、そちらをオーダー頂けている方々は、ありがとうございます。
お渡しできるのは、2ヶ月後と少し時間は頂くのですが、完成まで楽しみにお待ち頂けたら嬉しいです。
現状では、手配している革から財布を生産できる数量が、D.GREEN/BLACKもBLACKも遂に残り3点ずつになってきたから、ご検討を頂けている方は、また見てもらえたら幸いです。
そして、今日は、山内を紹介しますね。
シャツとパンツの2つです。
どちらもブランドとしては、初めてやってることなんですが、"泥染め"ですね。
奄美大島の。
どこでも誰でもできるわけではないし、そのノウハウと"奄美大島"という物理的な立地が揃わないとできない。
古くから、"日本の黒"と言われてる染色技術ですね。
日本に昔から存在する技法だから、化学的な染料とは、色合いや風合いも全く違うし、それに伴って、手間と時間のかかり方も別格に異なる。
奄美大島に生えている車輪梅(しゃりんばい)という木を細かくして、2日間も煮て、そこからその煮汁を発酵させる。
その煮汁は既に染料となり、"車輪梅染め"というものになるのですが、その染料に何度も浸して、洗って、乾かしてを繰り返す。
そうすることで生地が茶褐色になるそうですが、そこから、やっと奄美大島の"泥"の中へ。
奄美大島の土壌の関係だと聞いたことがあるけど、その"泥"には、鉄分が含まれ、茶褐色になった"車輪梅染め"の生地は、タンニンを含むそうです。
タンニンの成分と鉄分を反応させることで、茶褐色が黒みを帯びて、"日本の黒"は完成する。
それが"泥染め"という染色技法。
これがね、山内の服と組み合わせられることによって、かなりのクオリティのものができてますよ。
紹介しますね。
山内
塩縮加工コットンリネンシャツ
face material _ COTTON 50%,LINEN 50%
lining material _ COTTON 55%,CUPRO 45%
color _ DORO (泥染め)
size _ 2,3,4,5
これ。
ブランドで、"山内クラシック"という何年経っても不朽の洋服として存在してる塩縮加工コットンリネンシャツに、初めて泥染めを施したもの。
ただね、世の中に存在してる泥染めの服とは、全然違うの。
これがすごい。
泥染めですからね、深いダークブラウンに近い色をしてる。
そして、このような染色方法ならではの色の均一ではないムラは健在。
写真をご覧頂けると分かってもらえるかもしれませんが、このシャツは、表に露出するステッチがほとんど存在しません。
そして、生地をよくよく見てみると、泥染めの色合いや、染色に伴うシワの入り方が僅かに違う。
その理由は、セオリー通りの"泥染め"の洋服とは、生産プロセスが大きく違うから。
"生地での泥染め"が施されたシャツなのだ。
これは、とても重要なこと。
通常、泥染めの洋服というのは、世の中に存在するその"ほぼ全部"が服が形となった"製品での泥染め"なんですよね。
だから、服の全体に染色ムラがあったり、製品染色による、パッカリングや生地に着古したようなヨレがでてる。
それが、一つの泥染めの洋服の風合いの特徴でもあるんですけどね。
ただ、先述の通り、今回の山内のものは、"生地染め"でのもの。
だから、洋服の仕上がりが全然違う。全然。
その見た目はもちろん、洋服が発してるものが全然別のものに仕上がってる。
しかしながら、これは、数多くのブランドが実現できず、洋服を生産するということにおいて非常にハードルが高い。
だから、"生地での泥染め"という洋服は、他に存在しないんじゃないかと思う。僕が知る限りですけどね。
更には、その"生地での泥染め"ということに加えて、その後に"塩縮加工"してる。
山内の新シリーズは、生産上では、とてもハードルが高いことをクリアして実現してるもの。
コットンリネンに生地段階での泥染めが施され、とても奥行き、表情のある深いテクスチャー。
山内の"生地での泥染め"の生産工程は凄まじい。
まず、ベースとなる生地を4mずつカットする。
この4mというのは、"着分(ちゃくぶん)"というもの。
着分というのは、「一着分」と思ってもらえればOK。
つまり、"4mで一着分"である。
そう。
このシャツは、表地だけで、生地を4m使用するのだ。
この4mという数字は、尋常じゃないですよ。
一般的にシャツというのは、一着分で大体1.5m前後の生地を使うもの。
それを考えると、このシャツは、2.5m分も多い。
ベースとなる生地だけでも、フツーじゃないの。
そして、その"4mの着分"の生地を一枚ずつ、先述の方法で、泥染めを施していく。
そうして完成した"4m程の泥染め"生地。
次は、塩縮加工を施す。
この塩縮加工は、手作業で塩縮液に漬け込む工程で、生地を縮め、これにしかない特有の表情を出すことができる。
"塩縮加工"の工程で、このシャツになぜ"4m"も表地だけで生地を使うのかということが分かる。
塩縮加工を行う前の泥染め生地は、
長さが4mで、生地の横幅は120cmのものだそうです。
それが手作業で漬け込んでいく、塩縮加工を施すことによって、
長さ3mで、横幅が85cmにまで縮むそう。
ここからかなり専門的になってくるけど、生地幅が85cmの生地って、それだけで洋服の生産には絶対向かない。
生地にパターンを置いて、裁断をする工程において、生地の取り都合が尋常じゃないレベルで、途轍もなく悪いからだ。
そして、更には、生地での塩縮加工を施すことによって、一枚の生地に洋服の裁断パーツの型紙を一枚一枚置いて、生地の様子を見ながら、一つずつ裁断をしていく。
これがエゲツないレベルで生産のハードルを上げる。
もう、"量産"という考え方からは大きく外れてしまうの。
更に、更に、加えて、、、
生地で泥染めが施された洋服は、非常に縫いにくいそうです。
だから、縫製工程でも、"量産の考え方"からはもの凄く大きく外れる。
理由は、数量を続けて縫っていくと、ミシンの針穴に泥染めの"泥"が溜まってしまって、"縫い糸が切れる"・"上糸と下糸のバランスが崩れる"という事態が発生し、綺麗に縫うことが難しくなる。
見た目は奥深くなるけど、染色段階でも、ただでさえ手がかかり、それだけでコストが上がる"泥染め"。
だけど、それは、このような理由で"製品での泥染め"しか存在し得ないのだ。
まあ、山内の洋服は、工場生産じゃないから。
個人の技術ある縫製者さん、もしくは、数名で行なうファッションいずみの水出さんのところでしか縫われていないから。
しかも、生地の裁断は、成清さんが縫うもの以外は、基本的に、山内のアトリエで行なう。
だから、このようなフツーに考えたら実現することができない洋服を世の中に形にすることができるんですよ。
それも、もの凄く細かく手の行き届いた仕様で。
二枚袖の切り替えを利用した剣ボロ開きのカフス。
バックヨークにも二枚袖の切り替えにも、表にはステッチが入りません。
前立ては存在せず、とてもシンプルな見た目。
写真は途中で切れてるけど、衿の形状も特有のもの。
イケてる。
そして、裏。
このシャツは、薄手のコットンキュプラのツイルの裏地が付いた、総裏の仕様。
だから、デメリットとしては真夏は着れません。
ただ、その分の着用時の肌あたり、丈夫さは、袖を通した瞬間にビンビンに感じてもらえると思う。
ほら見て。
この美しさ。
衿は、表地と同じ生地が裏に付いた見返し仕様で、表から見えないように、僅かに1mm程控えて縫い付けられてる。
前立て裏、裏地の切り替え、見返し、どれを見てもバチバチに綺麗に縫われてる。
総裏。
アームホールの裏の接ぎの処理は、パイピング。
これは、後身頃側。
二枚袖の接ぎも完璧なパイピング。
今まで、散々言ってきましたが、これ、フツーに"シャツ超えてる"。
今回の泥染めが施されたものに関しては、"シャツ超えてるものを超えてる"。
剣ボロ裏の処理も文句ないですよ。
とても細かい箇所まで手の行き届いた洋服です。
特に今回のものに関しては、これまでの山内の"塩縮加工コットンリネンシャツ"よりも、かなり迫力が増してると思います。
加えて、世の中に存在するこれまでの"泥染め"の洋服にはどうしても拭えなかった"加工感"というものがない。
生地の強さはあるのに、もの凄い洋服がピンとしてる。
これはすごいものできてると思いますよ。
着ていくと、天然染色ですからね、その方の使い方に応じて自然に変貌を遂げていってくれると思います。
一着一着で見た目も僅かに異なるので、その様子も楽しんでもらえたら良いと思いますよ。
そして、
山内
120/2 超強撚ブロード・カーゴパンツ
material _ COTTON 100%
color _ DORO (泥染め)
size _ 2,3,4
こちら。
パンツ。
先ほどの塩縮加工のシャツと同様に、"生地段階での泥染め"です。
ただ、ベースとなる生地が違う。
名前の通り、120番手双糸の生地。
しかもね、、、、
"ZZ超強撚"。
そう。
"カネタ織物"さんの生地に泥染めをしてるのだ。
"生地での泥染め"×"カネタ織物"。
このマリアージュ。
原料のコットンは、スーピマ100だそうですよ。
生地のタッチとしては、"ZZ超強撚"で120番手の糸が双糸使いということもあり、シャツみたいな感じです。
まあ、厳密に言うと、カネタさんのブロード生地だから、超密度ということもあり、フツーのシャツ地では感じられない程、安心感と信頼感の塊みたいな生地ですけど。
もともとカネタさんの生地は、毛羽立ちが非常に少ない糸ということもあり、着用感としては、夏にむちゃくちゃ快適だと思う。
僕は、今シーズン、カネタさんの生地のパンツにいくつか出会ったから、それは全部オーダーしてる。
まあ、山内以外には、AUBETTとAraki Yuuだけですが。
どれも夏場にはパラダイスな履き心地だから。
しかしながら、泥染めしてるのは、このパンツだけですね。
縫製する工程までのプロセスは、先ほどのシャツと同じです。
着分ずつの染色と、一つのパーツ毎の手裁断。
このパンツで言うと、シャツと違って、縫製のステッチが前面に現れているのが特徴ですね。
縫い糸の番手は、それなりに太いですが、ピッチは非常に細かい。
3cm間で17針という、山内のスタンダードだけど、他の誰もやれない程、細かすぎる運針のピッチ。
泥染めの生地の迫力はあるけど、ピシっと入ったステッチもかなり際立ってる。
双方が負けてないですね。
フツーは、泥染めの洋服って、"泥染め"をしてることだけが先行しちゃうけど、そうじゃないんですよ。山内の洋服は。
僕は、それがすごいと思う。
裾には、コードが入ります。
このコードは、絞って結ばないと地面に擦ってしまいますね。
それか結ばない場合は、抜いてしまえば良いです。
また、裾上げも可能です。コードなくなるけど。
バックは、肩玉縁のボタン付きポケットです。
もう全部のステッチが立ってる。
山内の圧倒的なパンツの前開きの仕様から、内部にかけてのつくり。
素晴らしいコバステッチや、天狗、見返し。
このウエストの構造も完全に山内ならでは。
パンツは、ウエスト部分に最も負荷がかかるから、この箇所にどこまで手を入れるのかということはとても大事。
通常のパンツよりも生地が重なる枚数も何枚も多いし、工程数は、カジュアルパンツを遥かに超えて、スラックスも余裕で超えてってる。
それくらい見えない箇所につくり込みを行ってるのが山内のパンツ。
だから、履いた瞬間にウエストのフィッティングで、すぐに感じてもらえると思いますよ。
その上、カネタさんのZZ超強撚の生地だから、足あたりはとても軽くて心地良い。
山内の中では、基準となる仕様のウエスト内部。
これをやり続けられるブランドは、そうそうないと思う。
長年の使用で、この品質の本当の恩恵を感じられる仕様です。
特に、パンツとなると、着用年月を重ねると、泥染め生地の一層の変化はかなり期待できるでしょうね。
どれくらいの頻度で洗濯するのかにもよりますが、とても迫力が出ることは約束されてる。
カーゴパンツといえども、サイドのカーゴポケットは取り除かれてるので、その点に抵抗がある方でも問題ないと思いますよ。
すごい洋服づくりがされてる上、年月を経た時には、この洋服がもっと奥深い見た目になってくれてると思うから、ゆっくり体感してみてください。
お好きな方は、ご検討頂けたら嬉しいです。