静岡県のカネタ織物さんや、愛知県の葛利毛織さんに行き、ブランドと共同のオリジナル生地をつくってもらい、その"凄み"に触れてきた。
比較的堅い家庭で育った自分は、言われたように進学をし、公立大学に入り、就職先も決まった状態で、大学を辞めた。
20代前半から洋服の世界に飛び込み、僕自身の人生は、洋服に触れることで大きく変わってきた。
今でも、"洋服"で考え方や、過ごし方がとてもポジティブに変わっていると思う。
服屋でバイトしてた時や、縫製の仕事をしていた時から、自分の将来の目標というものは、常に自分の家の一番見える場所に書いて貼り付けてた。
そして、その当時の目標は、毎日必ず見るようにしていた。
今でも覚えているけど、僕がその時に書いていた目標は一つ。
"自分が本当に価値を感じられるものを、人と共感・共有し、伝えていくことができました。ありがとうございました。"
というもの。
表現の稚拙さはあったと思うけど、当時、読んでハマっていた本に倣って、過去形で書いていた。笑
僕の頭の中には、未だにそのことが残り、表現の仕方は変わったと思うけど、それは自分の中で、今でもとても大切にしていることである。
僕は、洋服屋人生としては、10数年くらいで、まだまだキャリアは浅い。
日本の他の店舗さんに限らず、洋服業界に携わる諸先輩方が積み重ねてきた時間には到底敵わないと思う。
時間というものは、みんな平等に流れていくものであるし、その"差"というのは、埋めることができない。
だから、現時点の自分ができることとしては、"今の時間"をどう使うのか、自分の"心と体をどう動かしていくのか"。ということだと思う。
今では、曜日や昼夜を問わず、取り扱いをするブランドのデザイナーと、常にLINEでも電話でも、メールでもするし、そういう一緒に仕事をしてるデザイナーたちは、休みなんてないし、常に前に進むために、考えて、行動をしてる。
だから、僕自身もそういう人たちに突き動かされ、この人たちの実力や技術、生み出すものや、考え方を、"伝える立場"の人間として、伝え続けていきたいと思ってる。
すごく悪いことを言うと、僕は、日本の世の中に、ちゃんとした本物のデザイナー・クリエイター・技術者という人は、ほとんどいないと思ってるけど、その中でもごく僅か、一握りだけ、途轍もなく、ハンパない人たちは、確実に存在する。
そういう"本物の人"と出会い、話をし、考え方や技術に触れることで、自分の心はとても磨かれてる。
だから、そういう日本でも"一握り"に思うくらいの、ヤバヤバな人たちのことをお伝えしていきたいと思ってる。
その人たちのこと、その人たちがつくるものを知り、触れることで、"心に作用する力"を僕はとても信じてる。
その"作用する力"は、絶大だから。
それは、ブランドという立場に限らず、洋服ブランドを支える、川上の方々もそう。
洋服ブランドに紹介してもらい、行った先々の機屋、縫製工場、どこもハンパじゃない。
目先のビジネスだけが先行しがちな日本において、そこだけじゃない。とても素晴らしい存在だと思ってる。
ブランドや川上の方々から、常に勉強をさせてもらい、知ることが多くなればなるほど、知らないことが増えてくる。
知ることが増えれば増えるほど、当たり前のように普通に存在していたものの凄さというのは、感じられるし、でも、それでも知らなかったものというのは、大体、フツーに普及していないもの。
そこの魅力はすごく感じるし、それが普及していない理由も様々あるけど、そういうものにスポットを当てたいし、自分自身がとても体感したいということがある。
洋服を形づくる"素材"というものも、まさにそうだ。
こう、毎日毎日洋服に触れていても、僕は全く飽きないし、どんどん魅力を感じてる。
そして、自分自身が未体験なものに出会うことは、徐々に少なくなってきたんだけど、限られた人生において、"どうしても体験してみたい"、そしてそれを皆様に"紹介したい"という気持ちに駆られる。
これまで店頭や、このブログで、機屋や縫製工場、加工場など、いろんな方々の名前を挙げてきたのですが、僕が一番最初に名前を挙げたのが、"山栄毛織(やまえいけおり)"さんである。
もう何年前の話か分からないけど、その当時から取り扱いをしていたブランドに教えてもらった機屋さんだ。
愛知県の毛織物の機屋さん。
その当時は、今みたいに積極的に川上の方の名前を挙げることなんてしてなかったし、そもそも知らなかったけど、僕にそのようなきっかけを与えてくれた機屋さんでもある。
その山栄毛織さんで紹介してもらった素材が、まさに"未知"の素材だった。
心の底から震えあがり、惹かれる素材。
ほとんど流通していない、それまで既成では流通していることを見たことがなかった。
ただ、それは、その素材100%では形にすることができない。
だから、山栄毛織さんと、とあるブランドとの力によって、途轍もない"組み合わせ"で生み出すことができた。
そのような、"未知"の素材と、素材同士の組み合わせ。
すごく良いものができたと思っています。
続く。。。