先日、紹介したMOTHER HAND artisanのシルク100%のニット。
それは、絹紡糸(けんぼうし)というものを使用したもので、その絹紡糸を100%使って編んでニットにしてるのは、このブランド以外では見ることができないんじゃないかと思う。多分。
僕は、永井さんがつくるものしか見たことがないから。
そこにしかない世界をご体感ください。
そして、今日はtilt The authentics(チルト ザ オーセンティックス)。
tilt The authenticsが愛知県の山栄毛織さんで製作をした世の中に流通していないオリジナル生地のもの。
当店でも実力あるブランドが使用する山栄毛織さんの生地のレベルになれば、機屋さんがもともとつくっていた既成の生地でも全く問題ないのですが、今回は、その山栄毛織さんでわざわざオリジナルで一からつくるのにとても相応しいクオリティの生地。
今回もシルク。
シルクが経糸ですね。
そこに緯糸として綿糸を打ち込む。
で、そのシルク。 先日紹介したシルクの段階は、絹紡糸。
今回のは、絹紡紬糸(けんぼうちゅうし)。
絹紡紬糸を使用した生地って結構な数が存在するけど、でもこれは違う。
国内屈指の毛織物メーカー。
山栄毛織さんが現在、手配できる最もクオリティの高い絹紡紬糸だそうです。
既に世の中に数ある絹紡紬糸のレベルとは格段にレベルの違うキメの細かさ。
そして、肌当たり。
やはり特有の野性味も持ち合わせてるけど、それだけじゃない。
野性味の中に共存する圧巻の美しさ。
それを経糸に使った"デニム"。
日本国内だけではなく、海外メゾンからも引っ張りだこの機屋さんですからね。
その品質には大変ご期待ください。
tilt The authentics
Silk Denim Jacket
material _ SILK 65%(絹紡紬糸),COTTON 35%
sewing _ マーヤ縫製工場
color _ DARK NAVY
size _ 1,2,3
これ。
見た目の通り、昔ながらの古いものをベースにしたデニムジャケットではなく、本来の枠組みの中でのバランスを大事にしながら、tilt The authenticsのクオリティでつくられたジャケットです。
先述の通り、生地は経糸に絹紡紬糸、緯糸にコットン。
通常だと、経糸に絹紡紬糸だったり、経緯共にそうだったりしても、このような生地の見た目にはならないですね。
もっとネップ感が強く出るし、もう散々見て、見飽きたような生地の見た目になる。
でも、これは山栄毛織さんが用意できる最高クオリティと言ってるだけあって、これまで見たことないレベルでの絹紡紬糸生地になってますよ。
生地組織で言うと綾織り。
デニム。
デニムは誰もが分かる通り、経糸がインディゴ染料による染色で、着用による大きな色変化が起こりますが、これはそのデニムの見た目を形成しているインディゴカラーの経糸がシルク。
シルク繊維ということでインディゴ染料による染色ではなく、同じ先染めでも反応染料というシルクに適した染色をしてる。
だから、通常のデニムのような、あのインディゴのトーンではなく、色の奥行きがかなりある。
そして、この生地を縫ってるのが、東京の足立区のマーヤさん。
完璧な幅と長さのカンドメとコバステッチ、それに加えてデニムのものでは珍しいボタンホールの形状。
マーヤさんが得意とするのはデニムとかのワークとかそっち系ではなくて、もう少しドレッシーに寄ったレディースの高級プレタポルテ。
洋服のセオリーで言うと、デニムは岡山or福山。
それを縫うとなると同じくその周辺となってくるのが通例。
でも、これは生地は愛知。 縫製は東京。
毛織物屋さんがつくるシルクデニム。
メンズ服よりも細かな技と精度がより高く求められるレディース畑で実力が認められてる縫製工場。
その二つが組み合わされて誕生したtilt The authenticsのデニムシリーズってワケです。
スタンダードなデニムジャケットに存在する衿のコバステッチは、入らない仕様なのですが、これにより気持ち衿が浮かび上がったように見える。
月腰や衿下のコバステッチもハイレベル。
ラグランスリーブのような独自の設計がされている肩なのですが、パターンはもちろん、表のステッチの有無も含めて、複雑な仕様になってる。
この設計により着用時の肩のアウトラインの描き方がとても美しく仕上がってるから、それは着てみて確認してもらえれば良いのですが、こういう複雑な設計になればなるほど、洋服として綺麗に形にすることが難しくなる。
それを表から見ても裏から見てもきちんと仕上がるように、見事に形にしてる。
これ裏。
生地端の処理はほぼ全部パイピング。
複雑な肩も身頃脇も、二枚袖もパイピング。
肩のパイピング。
独特なラグラン設計の箇所と袖に走る切り替え線の裏。
後身頃裏。
後身頃にも稼働を向上させるためにプリーツが入ってるんですが、左右均等に美しく折り畳まれて入ってる。
デニムジャケットという服の種類では珍しいくらい構造的な仕様です。
生地裏は、表に比べて、経糸の絹紡紬糸のネップが入るのですが、それも全体が均一に現れる。
縫製仕様とも組み合わせられることで裏面も一級品の仕上がりですね。
先述の通りバックにもプリーツが入る設計。
これにより腕の前方稼働時の快適性を向上させてる。
このブログを掲載する前段階でサイズの2と3は完売してしまったので残りは1のみですが、サイズが合う方は見てみて下さい。
そして、同じシリーズのパンツ。
tilt The authentics
Silk Denim Pants
material _ SILK 65%(絹紡紬糸),COTTON 35%
sewing _ マーヤ縫製工場
color _ DARK NAVY
size _ 1,2,3
こちらも同じく山栄毛織さんの生地で、マーヤさんの縫製で仕上げられたパンツ。
パンツの方がスタンダードなジーパンの仕様に近いからよりクオリティの差が明確に感じられます。
先ほどのジャケット同様に生地の色合いに合わせてダークトーンな縫製糸のカラーリング。
このウエスト部分でもやり込んでる仕様が夥しいほどの数存在する。
まず、着てしまえば一切関係ないけど、ベルトループ。
通常のジーパンだと、ベルトループはカットして、上下をそれぞれ一回ずつ折り畳んで付けてしまうのがフツー。
でもtilt The authenticsがつくるジーパンは、ベルトループの上部は、通常1回のみ折り返すところ、2回折り返し、同時に生地端まで綺麗に処理してる。
対して、下部はウエスト帯に流し込みの仕様。
ベルトループ下部の流し込みだけなら存在するけど、上部まできちんと折り畳んで付けてあるのはジーパンの世界では滅多に存在しない。
こちらもジャケット同様に金属製のタックボタンではなく、本水牛ボタンの手付け仕様。
そして、エクセラファスナーフロント。
開閉もスムーズでありながら、丈夫な安心感付き。
しっかりと手付けで浮かび上がったボタン。
前立て、見返しの処理等もとてもきちんと手が入れられてる。
ポケット口も通常の金属製のリベットは使わずに、クオリティの高い生地とレベルの高い縫製テクニックで、普遍的なジーパンというものにトライしてる。
バック。
これもスタンダードなジーパンを踏襲し、パッチポケットの仕様です。
しかしながら、ポケット口にはステッチは入りません。
ただ、バックポケット内には裏地が存在する。
これの取り付けのステッチは表には露出しません。
昔から存在するジーパンという服の種類に細かい箇所まできちんと手を入れることで、そういうクオリティの洋服を追求するブランドの思想がバチバチに現れてる。
洋服とは、見えにくい箇所であっても、細かい仕様の集積で一着が完成しますからね。
表だけパッと良く見えても結局、細かいところまで手を入れてなかったら、着た時に、やってないことは現れてしまうと思うんですよ。
だから、僕はこういうブランドが洋服づくりに於いて、追求してることはとても大事なことだと思うし、そういう洋服をつくってるブランド、そういう洋服がこの先も選ばれるし、残っていくと思ってる。
ただの最初のスペック勝負ではなくて、実際このような洋服だからこそ、外に出かけて着た時に、着る人の内部にポジティブな作用を与えることができると思う。
そのような考え方で見ると、縫製の仕様や原料の品質などの、つくりの側面というのは結果的にはすごく重要なことになるんですよ。
見た目はどうしても好き嫌いがあるから。
あと、このtilt The authenticsのジーパン。
全体の運針は一般的なものと比較してかなりピッチが細かいのはもちろんだけど、、 通常のジーパンにも存在するバックヨーク。
これはフツーは巻き縫いなの。
これ裏。
全てピッチの細かい本縫い仕様。
これにより"ワークウェア"のジーパンに発生するパッカリングが抑えられ、少しドレスの空気も含んだ、美しい佇まいに変わる。
レディースの洋服は、メンズでは許されるシームパッカリングにはとても厳しい世界ですからね。
そこで名を馳せるマーヤさんだからこそ生み出せる仕様の一つだと思う。
ウエスト帯付けや、前立てと見返しの処理もカジュアルなジーパンとは違う次元のレベルに仕上がってる。
ただ、デニムスラックスとは違うベクトルなんですけどね。
決してスラックスではない。
スタンダードなジーパンというものをtilt The authenticsが最大限に追い求めた先にこのクオリティにつながってる。
だから、付き合い方は完全にジーパンと同じで良いです。
とても丁寧に縫ってるからその分、丈夫さも一級品ですからね。
裾。 裾の処理もチェーンではなく本縫いです。
アウトサイドシームは、セオリー通りの割りオーバー。
インサイドシームも同様にインターロック。
ただ、インターロックってチェーンステッチも入るから、これはインターロックって言うのかな?
どちらにしても、一般的なジーパン同様に外は割りオーバーで、内はインターロック風なのですが、そのピッチがやはり細かい。
お手持ちのものと比べてみて。
形で言うとブランドの中では気持ちワタリ幅がある方かな。
日頃はスリムなものが多いので。
結構いろんな人に手にしてもらえるんじゃないかと思ってる。
所有してもらった方は、このレベルの絹紡紬糸のキメ細かな見た目と肌当たりや、マーヤさんの丁寧でとても手の行き届いた仕様を存分にご体感下さい。
これまでとは全然違うジャンルのジーパンですよ。
あと、このデニムシリーズに続いて他のtilt The authenticsの洋服も中津さんが納品してくれたので店頭では先に並べてますが、また追って紹介しますね。