一年間を春夏と秋冬のシーズンで二つに分けたとき、そのシーズンで完全に心を持っていかれる生地がいくつかあるのですが、これはこの2020SSシーズンでそうなった一つ。
tilt The authentics(チルト ザ オーセンティックス)のオリジナル生地。
アムンゼンストライプ。
生地を構成する素材は、リネン98%とコットンが2%。 グラウンドがリネンで、ストライプ部分がコットン。
つまりはほとんどの部分がリネンということです。
だから、穿くとほとんどリネンのパンツと思って頂いて良いかもしれません。
その上で、なんですが、リネン生地のパンツは薄く、デレデレとしたような独特のあの感じがあるじゃないですか。通常は。 分かりますかね?
これは、そうじゃないんですよ。 その生地から感じられる、いかにも手の込められた堅牢な質感、アムンゼンならではの豊かな凹凸、そして過剰ではない僅かに見え隠れするストライプの表情に心を持っていかれた。
ほとんど黒に見えますが、カラーリングはdark navy。
太陽の下で見るとすごく濃いネイビーに見えてくれます。
そして、tilt The authenticsの中津さん、これをこの春夏のみでつくりました。
2020SSのオリジナル生地。
とてもとてもマニアックなこと考えるデザイナーなので、めっちゃ細かく、言うなれば非常に分かりづらいですが、これまでに体感したことのない生地だと思いますよ。
リネンの繊維が持つ、特有の弾力や芯のようなものは感じられるんですけど、繊維一本一本が強靭で、跳ね返りが強いって言うか。
今までに体感してきたリネン生地のような、ただただ単純に一方的にヨレヨレになってしまうようなものではないんですよ。
良いリネンがアムンゼンになることの良さを感じてもらえる。 リネンのものではそうそうお目にかかることはないんじゃないかな。
で、これが登場。 マイクロスコープ。
60倍の拡大率です。
糸は、経糸(たていと)・緯糸(よこいと)ともに、44/1です。
つまりは、44番手の単糸。 糸としては、特段太いとか細いとかのものではないけど、ふんだんにリネン繊維を使って強く糸にしてる。
まあ、比較画像がないのですが、糸の一本一本がよくねじられて、斜めに線がたくさん入っているのが分かってもらえるんじゃないかと思います。 単糸というのは、ヘビーユースすると伸びてしまいやすい傾向にあるけど、これはそれが抑えられてる。 繊維の弾力に加えて、糸としての弾力が加えられてるっていうか。
そして、生地の見た目が見た目なので、仮に膝が抜けても、型崩れが起きても、全然オーケーでポジティブにとらえることができますね。
やっぱり色と柄のバランス、つくりの細かさからくるものだと思います。
あと、リネン素材にしてはすごく毛羽立ちが少ない。 それは、後加工によるものかな。
シルケット加工で毛羽を取り、光沢が出てる。
密度も高く織り上げられてるんですが、生地表面の凹凸がもともと強い織り組織なので、肌へベタっと当たり続けることはありません。 風の通りも良いですよ。
ただ、素材があまりにもクオリティの高いリネンな分、繊維が強すぎず、ザラっとしてるような感覚ではないですね。
繊維がすごく柔らかいから、ザラザラと当たり続ける不快感はないですよ。
独特な肌への馴染みの良さを感じてもらえると思います。
アムンゼンは、日本名で言うと近いのは「梨地織り(なしじおり)」という和装の夏向けの生地です。
和服の趣ある生地の深みと極上リネンこその肌への優しいタッチが特徴ですね。 ギュッと強く撚られたリネンのアムンゼン。
コンパクトですが、少しゆとり分量がとられた丸みのあるヒップからスッとなだらかに裾に向けて落ちていきますね。
裾は3.5cm幅のダブルに設定されています。
ウエストフロントは、2タック。
バックポケットは両玉縁仕様で、サイドポケットはセンターフロント側はタックに隠されるような仕様で尚且つ、目を疑うような激細玉縁。
通称、揉玉(もみたま)。
本水牛の厚みのあるボタンでのフライです。天狗つき。
かがり目のきれいで細かいボタンホールで安心でき、信頼できるパンツだと思わせてくれますね。
インサイドも。
マーベルト芯の入らない、マーベルト仕様で、ハンドステッチでの工程もあり、センターバック(後ろ中心)部分の内側処理はパイピングで丁寧に包んでくれてます。
センタープレスも効いてるので、最初は春夏向けの綺麗なパンツという印象ですね。
リネンのアムンゼンで、行き過ぎないストライプで、品の良いトラウザーといった面持ちですね。最初はね。
いやぁ〜すごく良い生地でね。 丁寧につくられてるし、上品なパンツなんですよね。最初はね。
だから、店頭のオーダーをした後にあまりにも欲しくなったんですよ。 もうオーダー終わったけど、それでも心に残り続けたんですよ。
で、デザイナーもオリジナルで作った生地だし、気に入ってるし、もうないのか聞いてみた。 そしたらね、余剰の在庫はないんだけど、デザイナーの中津さんが自分で穿く用につくってたんですよ。 だから、それを買いました。 中津用→福田用へ。
そしてね、しばらく自分で検証してみたんですよ。 すごく興味あって。 気になって気になって仕方なかった。 ここからどうなっていくのか。このパンツ。
もう二ヶ月近く前から入荷してたんですよ。 でも、ちゃんと良い時期に見てもらおうと思ったのと、自分で穿いて自慢してからにしようと思ってた。
だから、満を持しての登場ですねこの度は。
こちら、最近ウルトラヘビーユースして愛用中のこのパンツ。
仕事で着てるし、その頻度もかなりのものだから、普通の方の二年分くらいは穿いてるかもしれませんね。
センタープレスは僕には不必要という判断を致しましたので、そんなものはとうの昔に消失。 そして、Tシャツ感覚でのマシンウォッシュ。つまりは洗濯機ですね。
縮み具合や生地の変化、全て検証完了。
結果、 めっちゃ良かったよ。 このパンツ。 すごくお気に入り。
アムンゼンストライプだからペラ感はないんで、何も気にせず穿いて、とにかく生地を可愛がってあげるのが一番適してるんじゃないかなと思います。
思いっ切り雰囲気出して、そっち系に振ってしまおうと思えばそれでもいける。
逆にというか、素直に、そのまま綺麗に穿いていこうと思えば、センタープレスさえ気にして頂ければオーケーです。
まあ、これから夏ですからね。 アムンゼンの発祥の地といわれるところに位置する日本の機屋さんで織られた高いポテンシャルを持ったtilt The authenticsのオリジナル生地。
どのように付き合うかは所有者次第ですが、店頭にお越し頂く方だと素材の持つポテンシャルを楽しんで頂けるような、ある意味でコレクター気質の方が多いので、やはり想像すると皆さん洗濯も積極的にして、この生地の伸びしろを楽しんでもらえることでしょうね。
今はあまり街に行けないから、日中の時間にこれ穿いて散歩するのが、太陽も風も感じられて気持ちいいと思いますよ。
あと、当店は郊外なので人いないですよ。笑
不意に思い立ったので、今日から店頭に並べていますが、サイズ1が一点とサイズ2が二点のみの取り扱いとなります。
少数ですが、お好きな方には、気に入ってもらえると思いますよ。きっと。
プライスは、¥34,000-(+tax)です。
あんまりストライプとか柄のパンツって穿くことないけど、これなら丁度良く仕上がってるから、素材の良いTシャツとサンダルもしくはビーサンだけで充分かな。
見てみてください。