先日、お知らせしたT.Tのイベント。
9月30日(土)より開催しますね。
初日は、祇園のT.Tより中田さんが一日当店に在店をしてくれる予定です。
お知らせしていたように、洋服のコレクションだけではなく、ブランドのことまでも知って頂ける期間にできるように、店頭では、T.Tの空間を設けて、ご覧頂けるように致します。
そのため、10月15日(日)までの16日間と日頃のこのようなイベント事よりも期間を長めにしています。
ブランドのコレクションも、このために全部とってましたからね。
秋冬の時期が始まってから他のブランドの洋服は、店頭では並んでいましたが、T.Tのコレクションは、全くなかったですから。笑
ですので、お越し頂ける方は、T.Tのブランド表現をふんだんに体感してもらえれば嬉しいです。
そして、もう一つ。
今回のT.Tのイベントは、当店だけではなく、全国の3箇所で開催をするそうです。
当店は、二番目なのですが、最初は既に会期が終了していると思うのですが、名古屋のkinkさん。
そして、当店CASANOVA&COで行い、その後は、京都祇園の"T.T"。
そういう巡回です。
それに合わせて、ブランドがスタートした時、つまり、創業デザイナーの髙橋大雅さんが表現をしてきた、"ブランドの礎"になる洋服を皆様に見てもらえると思います。
こちらは、既成ではなく、ご希望頂ける方のみのオーダー形式での洋服です。
"藍泥染め"。
生前、髙橋大雅さんは、「過去の遺物を蘇らせることで、未来の考古物を発掘する」ということをコンセプトにTaiga Takahashiのコレクションを発表してきた。
つまりは、"100年前の遺物を現代に蘇らせ、この先に残す"ということ、"100年後の遺物"となる洋服を生み出すことに思いを巡らせてきた。
その行為は、ご自身でも"デザイナー"という呼称ではなく、"考古学者"として洋服を考え、つくっていた。
生涯をかけて収集してきた、もの凄い数のヴィンテージや、それを通り越したアンティーク(今から100年以上前のもの)と呼べるものの数々。
今とは違い、昔の服は、全て用途が明確で、役割を担うためにつくられてきたもの。
その中でも、髙橋さんが主に心惹かれたのが、アメリカでつくられた服だった。
人間が働き、営むために必要な道具としての服。
よく言われる"ワークウェア"だ。
髙橋さんだけではなく、世界中のデザイナーたちや、洋服好きが魅了されてきたものだろうと思う。
ただ、髙橋さんは主として、当時の大企業がつくったメジャーなヴィンテージではなく、今となっては、出自が不明のマイノリティーなもの。
だから、そのように髙橋さんが、それを集め、考古学として読み解くことで、自身も心から楽しみ、"この先"に残ることを願ってつくっていた。
何年か前にこのブログで書いてたことがあるんですが、当初のTaiga Takahashiの洋服は、とても"アメリカ"してたんですよ。
特にデビューの頃から、オリジナルで象徴的な左綾デニムをつくっていたり、カバーオールがあったり、とてもアメリカ的。
でもね、そのようなアメリカの服を真似て、そのままTaiga Takahashiとして、つくってるんじゃなくて、髙橋さん自身が強く感じていたことをコレクションに濃厚に反映させていたの。
確か、高校生の頃からアメリカで生活をしていたんじゃないかと思う。
それに、Taiga Takahashiという"メンズブランド"をスタートする前に、パリで"ウィメンズのTaiga Takahashi"というバチバチのコレクションブランドを行なっていた。
そうしたら、世界がコロナになり、誰もがパリに行けなくなり、髙橋さん自身もコレクションを発表できなくなった。
そこで立ち止まり、ウィメンズでの発表を辞め、自分自身が着ることができ、もっと心から楽しめる"メンズブランド"として、再スタートしたんですよ。
そのような経緯や、海外を拠点とした生活が長かったこともあり、髙橋さんは、自分自身の祖国、"日本"ということを強く意識するように次第になっていったそうです。
"メンズウェア"をつくることで、自分が人生を捧げてきたヴィンテージを根底として、考古学的に洋服をつくる。
そして、その上で、
"日本人らしく、日本ならではの伝統的な美しい技術を洋服に"
という考えでデビューしたのが、2021年の秋冬シーズンだった。
その際にも、当店でもデビューイベントを開催したのですが、Taiga Takahashiの洋服の力や、日本の伝統技術に強く焦点を当てたコレクションで、当時をご覧頂けたお客様には「美術館みたい」と言ってもらえたんですよ。
そして、今回は、Taiga Takahashiが、T.Tと改名した新たなシーズン。
髙橋さんの意思を強く受け継いだT.Tは、ブランドでの表現として、2021年のデビューコレクションにも通じ、更なる深層を追究した洋服をつくりあげてるの。
そのT.Tの象徴として、今回ご覧頂くのが、"藍泥染め"。
まさに夢のコラボレーション。
ちなみに、"藍"とは言っていますが、正しくは、インディゴ染めです。
でもね、それが良いの。
"泥"は、奄美大島の伝統染色の泥染めです。
藍染めと泥染めの組み合わせだと、あまりにも日本的になり過ぎてしまいますからね。
加えて、発祥は違っても、アメリカで強く育まれたインディゴ染めという染料。
そこに、大島紬という"世界三大織物"と言われる着物に施される"日本固有の黒"である泥染め。
インディゴ染め(アメリカ)と泥染め(日本)という組み合わせは、生前の髙橋さんが最も表現したかった根幹のものだと思うの。
それを今回、形にしたT.T。
アメリカで生まれた洋服の形に、アメリカと日本の染色を掛けわせる。
しかも、オーダーのみでの発売。笑
これは、超絶アツアツの洋服だと思いますよ。
紹介しますね。
T.T
"藍泥染め LIMITED EDITION"
LOT.303
Coverall Jacket
ブランドでも代表的に展開されてきたカバーオールジャケット。
炭鉱から発掘された、1910年頃のアメリカのものがベースになってる。
大量生産型の超合理的な生産プロセスがとられた当時の仕様。
袖付けもほぼ真っ直ぐで、欧米の服なのにも関わらず、曲線ではない。
その様子が、日本ならではの"和服の美" = "直線の美"と通じるものがある。とブランドで考えられているもの。
製品でのインディゴ染めの後に、施された泥染め。
重ねられた二つの染色方法の色の混ざり、コントラスト、ムラがところどころで複雑な奥行きを見せてくれてる。
ブランドオリジナルの錆びてくる鉄製タックボタン。
誰がどう見ても、フツーの色じゃないのは感じてもらえると思いますよ。
インディゴ染めにしては、深すぎる色合い。
ただ、色のジャンルはネイビーに見える。
複雑な色してますよ。
インディゴ染めの後に、"日本の黒"の染色ですからね。
そもそも泥染めというのは、文字の通り、"泥"で染められるという認識が強いと思う。
ただね、確かに泥で染めるし、奄美大島の泥の特有の鉄分が大きく関わってるんですが、それだけではないの。
奄美大島に自生する木、"テーチ木"、別名"車輪梅"という木があるのですが、これが重要。
車輪梅を何日も煮て、木の成分を煮出して、それで染めるの。
その工程に何日もかかるそうです。
今回は、インディゴ染めの上からだから、違うけど、通常なら、車輪梅の煮汁で染めると赤褐色に染まるそうですね。
その赤褐色に染まったものを、鉄分を多く含んだ奄美大島の泥に浸けることで、車輪梅で染まった成分と、鉄分とが化学反応を起こし、茶色がかった"日本の黒"が生まれるの。
今では、奄美大島ではこの泥染めを行う染工場は、僅かになったそうですが、今から50年前にはかなり栄えていた産業だそうですよ。奄美大島では。
でも、それも圧倒的な手間がかかるし、時代とともに徐々に姿を消していってしまってる。
僕が知る限りでは、2つのところくらいしかないですね。実際は、もう少しだけあるのかもしれないですが。
T.Tのものを施しているのは、その"血筋のみ"が手を加え、泥染めを行なうという超絶的に由緒正しき染工場さんです。
その染工場で、製品染めで、インディゴ染めを施し、その後に、泥染めを行なうそうです。
どちらの染色工程も生粋の"日本の染め"伝統の地による染色ですね。
T.T
"藍泥染め LIMITED EDITION"
Lot.209
Buckle-backed Trousers
次は、これ。
一瞬で、太く迫力あるパンツの形してるのを感じてもらえると思います。
こちらもTaiga Takahashiでブランドの代表的なものとしてつくられていたパンツスタイル。
錆びてくる鉄製のサスペンダーボタンに、シンチバック(ハンガーで隠れてるけど)。
かなりクラシカルな面持ちのパンツ。
パンツということで、2つの染めが交わってるから、どんな変化をしてくるのかが、すごく興味がありますね。
アタリとか、変化が好きな方は、かなり楽しめるんじゃないかな。
インディゴ染めだけではなく、泥染め特有の手触りも丈夫そうに感じるから、パンツ穿いてる安心感にもつながりますね。
T.T
"藍泥染め LIMITED EDITION"
Lot.603
Sweat Shirt
そして、これ。
誰もが知る1950年代ベースのアスレティックウェア型のスウェット。
袖と裾のリブが長いクラシックスタイル。
もちろん脇にもシームはなくて、"丸胴"仕様。
加えて、ネックの前後が両方Vの字になった"両V"ですね。
かなりオーセンティックだと思いますよ。
そもそも何で、昔のスウェットは、両Vとか、リブが今より長いんでしょうね?
インターネットで調べれば出てくるんでしょうか。
僕は、それを知らないので、知ってる人は是非教えてください。
スウェットは、編み地だから、先ほどのジャケットやパンツとは、藍泥の色合いや見え方が少し変わって感じますね。
こちらもとても良いんじゃないかな。
生地は、もはや言いたくないけど、TSU・RI・A・MI・KI。
これは、謳い文句的に和歌山の吊り編み機でやってるのではなく、時代との整合性を高めるために、髙橋さんが希望したそう。
T.T
"藍泥染め LIMITED EDITION"
Lot.601
Tee Shirt
最後は、これ。
THE USA ガーメント。
Tシャツ。
T.TのTシャツはね、Taiga Takahashi時代から、ネックがすごく変わってるの。
髙橋さんが持ってたヴィンテージがネックが二重の処理が施されていたみたいで、超堅牢なネックリブ二重仕様になってるんですよ。
これすごく特徴的。
胸ポケット付き。
胸ポケットは、シームも入るし、丸い形状してるし、綿糸縫製だと思うので、パッカリングもお好きな人は楽しめるかも。
Tシャツは、一番洗濯回数も多いジャンルの洋服ですからね。
最も変化していきやすいし、目に見えて面白いと思います。
今回の4つの洋服ですが、上限の生産数量が事前に決められているので、当店での配分も限りがあります。
また、今回オーダー頂けた方は、12月中旬頃にお渡しできる予定です。
"藍泥 LIMITED EDHITION"の4種類の洋服は、これまでのTaiga Takahashi、これからのT.Tを、最もよく表現してるものだから、お好きな方は見てみてください。