先日よりお知らせしております"Suvin Gold Supreme"を使用した今回の洋服。
nonnotteのデザイナー杉原さんと構想を進め、カネタ織物さんに設計、紡績、製織。
そして、ファッションいずみさんに縫製をしてもらった今回のもの。
お伝えした通り、今回は、"2種類のSuvin Gold Supreme"の生地の洋服を皆様にご覧頂きたいと思っております。
"平織り"と"綾織り"。
2種類の生地をそれぞれ、100mずつカネタ織物さんにつくってもらいました。
つまり合計で200mもの生地。
こう思うと、かなりの総数に思われるかもしれませんが、カネタ織物さんの旧型シャトル織機で織り上げた生地の幅の狭さと、もう一つ、自分なりに"すごく重要視したこと"があったため、それを実現すると洋服の総生産着数がグッと減ってしまいました。笑
まず、今回つくった洋服は、4種類。
"平織り Clear Heavy Broad -Suvin Gold Supreme-"
・Draping Box Pleats Turtle Pullover
・Two Sides of The Same Tapered Trousers
"綾織り Drape Twill -Suvin Gold Supreme-"
・Two Sides of The Same Coat
・Two Sides of The Same Wide Trousers
というもの。
この内、"Two Sides of The Same"と名前が付いているもの。
4種類のうち、3つですね。
これは、"two sides of the same coin =表裏一体"。
「2つの事物が互いに関連しているが、異なる面や側面を持っていることを表す」という言葉。
僕が、"Suvin Gold Supreme"で目指したこと、、、
それは、、、
"二重仕様"。
二重にすることで、洋服のフォルムを補形し続けることや、耐久力、着用時の抜群の肌あたりを実現したかった。
裏地も存在せず、二重の"Suvin Gold Supreme"の生地で、つくりました。
せっかくの生地ですからね、この素材以外の裏地をつけることをしたくなかったんですよ。
だから、一着あたり、かなりの分量の"Suvin Gold Supreme"を使用しています。
これは楽しみでしょ。
ハンパない着用感だから。
そして、カネタ織物の太田さんに生地の製作をお願いしてから、nonnotteの杉原さんと何度も、何度も、何度も、話し合いを重ね、杉原さんの思ったこと、僕の思ったことを、僕らが目指したことを、杉原さん自身が磨き上げた見事な"ドレーピング技法"で形にしてもらいました。
我々の魂がこもった洋服です。
ただ、僕は、今回は最初から、誰もが着ることができる洋服というのは、NG。
つまり、プレーンで、無味無臭のような洋服を全く目指していませんでした。
この世には、そのような洋服が充分過ぎるほどに存在して、有り余ってるから。
だから、誰もが着ることができる洋服ではないかもしれないけど、自分たちの心を濃厚に注いだ洋服が完成しています。
それを紹介しますね。
今日は、まず、
"平織り Clear Heavy Broad -Suvin Gold Supreme-" から。
nonnotte × カネタ織物 × ファッションいずみ × CASANOVA&CO
<Clear Heavy broad -Suvin Gold Supreme->
Draping Box Pleats Turtle Pullover
material _ Suvin Gold Supreme 100%
color _ Natural
size _ SM,ML
まず、これ。
こちらは、平織りですね。
タートルネックのプルオーバーシャツ。
実は、このプルオーバー。
元となる原型は、以前にこのブログに載せたことがあるの。
約2年近く前になるかな。
僕が、初めて杉原さんの立体裁断技法(ドレーピング)を、実際に見せてもらった時、そのことは過去にこのブログで触れたことがありました。
この写真。
人間の骨格を事細かく再現したマネキンに実際に生地を当て、ゼロの状態から、ピンとハサミで自由自在に洋服のフォルムをつくっていく杉原さんのテクニック。
この時のプルオーバーのものが、今回の原型になってるの。
もちろん、これまで世に出たことはありません。
その元となったものを思い出しながら、改めて杉原さんと僕とで今回の洋服を考えていきました。
今回のシリーズで、唯一のトップスです。
通常だとシャツとか、そういうのを想像されたり、そういうものをつくることが必須だと思うけど、それはやめました。
僕が思うのは、これまで杉原さんのドレーピングを活かしたフロントフルオープンのシャツは、インラインでも出ているし、それで充分。
そして、杉原さんの設計した洋服のドレーピングは、プルオーバーのシャツだと全面に発揮される。
ブランドのコレクションでも、プルオーバーのシャツは出ているのですが、それがかなりのレベルにいつも感じてたし、動作時の生地のドレープがむちゃくちゃ美しいと思ってた。
加えて、Suvin Gold Supremeのそのままの色合い、無染色だとむちゃくちゃ出来の良いものが完成しそうだなと頭の中でイメージしたので、これを全力でつくってもらいました。
特徴的なことだらけのプルオーバーです。
まず、フロントはもちろん開きません。
そして、首元には、ボタンが一つ付き、衿には生地が溢れるようになる。
首元に一つ付くボタンは留めても留めなくてもオーケーです。
フロントに大きくとられたボックスプリーツにより、衿の分量がしっかりとあるし、着脱もスムーズ。
ネックの生地端の処理は、ファッションいずみさんの綺麗なコバステッチでのパイピングが際立つ。
シャープで凛としたステッチワークと、輝きながら重なった生地が放つ陰影。
このバランスがチョーイケてると思ってる。
これ。
首元のボタンとボックスプリーツ終点の抑え、そして、ボタンが付く、鎖骨付近のダーツ。
この洋服は、ボックスプリーツという左右で深い寸法でとられたプリーツにより、本来は、プルオーバーという洋服は、前開きが存在しない分、衿のバランスに制限が出てしまう。
そのため、衿のフォルム表現の自由度はあまり高くないのですが、そこをボックスプリーツで設計することにより、生地分量を出すことができ、更には、洋服そのもののフォルムをつくるための生地の収納までできる。
プルオーバーの洋服では、あんまり見たことないんじゃないかな。この衿の分量。
nonnotteのコレクションインラインでは、バックネックに開きがあるものが登場しているのですが、今回は、この超絶構造を最高潮に活かすために、ブックスプリーツを設けて、着脱のためのネックの開きをなくすことが適してた。
ちなみに、このプルオーバーにはフロントに一つしかボタンが付かないのですが、nonnotteの杉原さんは最後の最後までボタンをもう一つネック上に付けるか迷ってたんですよ。
でもね、僕は、それはNGだったの。
Suvin Gold Supremeで構成されたプルオーバーの衿がグチャっと首元で予期せぬ動きをしていく様子を楽しみたいから。
あまりにも良い生地で、あまりにも良い縫製で、狙い済まされた杉原さんのドレーピングによるフォルムですからね。
もちろん、手にして頂いた方は、どんどんどんどん洗濯機にぶち込んで、テキトーに着てもらうのがベストなんですが、そうして使っていった先に、首の衿がクシャッとなって重力に逆らえず落ちる様が一番美しいと思ってる。
だから、衿のあしらいについては、正解は、"何も気にしないこと"です。
そうして使ってください。
あとは、ボタンの上に存在する横方向のダーツですね。
これには、とても大きな意味があります。
プルオーバーの洋服って、普通は、着用時は首から胸にかけての位置で、生地が余ってしまうんですよね。行き場がなくて。
それはそれで、プルオーバーの洋服の特徴として悪くはないんですが、その箇所は、適正にフィットさせたかったから、ダーツを杉原さんが入れてくれました。
そうしたらね、一般的には余ってしまいがちな生地が綺麗に収まってるの。
でも、そのダーツも途中で消えてる。
すごい。
そして、そのダーツ抑えのステッチを利用して、ネックボタンを留めるループを挿入しました。
かなり考えてるディテールですよ。
袖を広げるとこれ。
分かりますかね。
前身頃から脇にかけて、"L字型"の超構造が生まれる。
身頃脇の切り替えは存在せず、驚きのフォルム。
これが、着用時にヤバヤバな絶景を生み出してくれるんですよ。
ここ。
脇下。
この箇所は、このプルオーバーで、縫製箇所が最も複雑。
生地の密度もあるし、たくさんのシームが重なる箇所。
このプルオーバーは、構築の多くの箇所が"袋縫い"仕様で設計しているのですが、脇下は縫う順番も重要になってくるし、あまりにも複雑なものだったので、縫製時には、仕様変更をせざるを得なくなる心配をしていたのですが、ファッションいずみさん、さすがですね。
当初の設計通り、見事に縫い上げてくれました。
あとはね、脇下だけではなく、袖の構造もすごいの。
通常は、袖って、"〇〇スリーブ"などの名称が付くじゃないですか。
今回杉原さんがつくりあげたものは、斜めに切り替えが入るし、肘にも切り替えが入るし、一見するとどうなっているのか"理解できない肩と袖"。
そのような構造をしてるから、袖口の開きも内側に設定してるし、このプルオーバーだけの仕様をご体感ください。
裾は、ファッションいずみさんが得意とする、シャツ縫製"三つ巻き"と、袖口は、ネック端に合わせて、共地でパイピング。
サイド。
感じて頂けますでしょうか??
この見事なアームの三角形のフォルム。
そして、きっとこの世の誰もが見たことのない構造をしてると思いますよ。
そして、見て。
手を上げた時の生地の陰影。
やばそうでしょ。
もっと近くで。
ほら。
実物は、ハンパないですよ。この200倍の凄みがあるから。
バック。
いかにも着用時に美しい造形が生まれそうな雰囲気がムンムンに漂ってる。
そして、裏。
裏は、先述の通り、ボックスプリーツの仕様がよく見えると思います。
縫製仕様は基本的に袋縫いですね。
Suvin Gold Supremeの平織り生地は、ファッションいずみさんの見事な縫製がすごく際立って見えると思います。
高密度な生地ゆえに、一度縫ってしまったら縫い直しも利かないし、何せ杉原さんのドレーピングでの構造ですからね。
真っ直ぐな箇所なんてほぼ存在しないし、相反するカーブとカーブを縫うことがほとんどなんですよ。
それでも、丁寧に一着ずつ縫い上げてくれたのがよく分かる出来栄えです。
特にね、この脇下の袋縫いが複数本重なる部分は、かなりハードルが高いですからね。
一般的な縫製工場なら、必ず仕様変更の依頼がくるレベルです。
それをかなりのクオリティで縫ってくれてるから、皆様、実物を見ることができるのを楽しみにしていて。
そして、次。
次に紹介するものは、"Suvin Gold Supreme 二重仕様"となります。
"Two Sides of the Same 〜"と名付けた3種類の一つです。
nonnotte × カネタ織物 × ファッションいずみ × CASANOVA&CO
<Clear Heavy broad -Suvin Gold Supreme->
Two Sides of The Same Tapered Trousers
material _ Suvin Gold Supreme 100%
color _ Natural
size _ S,M,L
こちら。
先ほどのプルオーバーは、2サイズ展開なのですが、トラウザーは、3サイズ。
造形を演出するために、ウエストエラスティックのゴム仕様なのですが、最小サイズのSは、自然にしてウエスト75cm、Lサイズは、自然にして86cmから最大で102cmと1mを超えるから、ベルトループもあるし、ウエストに関しては、ほとんどの人が穿けると思います。
僕もウエストが60cm代だけど、ベルトループを付けてるからベルトをして穿ける構造にしています。
まあ、サイズピッチの詳細については後日掲載しますね。
このパンツについては、僕が絵型を描いたイラストを元に杉原さんが更なる構築をしてつくりあげてくれたもの。
生地のムードに特有の丸みがあるアウトラインを掛け合わせたかった。
簡単なイメージだと、ジョッパーズパンツとスキーパンツの間くらいのような丸みですかね。
しっかりと杉原さんのフォルムが出てくれますよ。
ウエストは先述の通り、ゴム仕様。
ちなみに、撮影は、自然光の入る屋内環境で撮影したのですが、この冬の移り変わりが激しい季節ということもあり、先ほどのプルオーバーと色が違います。
プルオーバーよりもこちらのトラウザーの方が実物に近いから、そんなイメージでいてください。
フロントは、トップボタンとファスナー開閉。
ちなみに、ボタンは、全て白い水牛ボタンです。
でも、水牛"ボーン"。
つまり、水牛の骨。
一般的なのは、水牛ホーンというツノですが、これは骨のそのままの色。
それを"半焼き"。
ボタンを提供してくれた付属屋さんでも、水牛ボーンを焼いたのは初めてだったそうです。
ボタンのムードも大事だったから、今回は、全ての洋服にこの"水牛ボーン半焼き"を使っています。
ファスナーは、エクセラ。
そして、分かりますかね?
ベルトループの下から伸びる切り替えとステッチ。
ステッチは、"割伏せコバステッチ"。
この箇所は、フロントにファッションいずみの水出さんの縫製技術を見せたかったので、最初から僕の絵型に描いてた。
このパンツのフロントシームがあることで、膝の曲げ伸ばしの際の膝抜けの抑制にもつなげたかったし、バチバチの縫製を前面に出したかった。
まあ、膝抜けについては、二重仕様なので全く心配ないんですけどね。
縫い代をシームの左右に割ってから、それを均等に抑えているこの縫製仕様をじっくりとご覧ください。
バック。
このパンツは、後ろ姿にも大きな特徴があります。
左側のみのスクエアパッチポケット。
左右に入るウエスト帯から斜めのダーツ。
そして、そのダーツがタックに切り替わり、左のパッチポケットまでがタックが入るという過去には誰も見たことがないんじゃないかという仕様。
まず、左側のみのスクエアパッチポケットというのは、2年前から僕の頭では決まっていたんですよ。
これは、2年間考えても変わらなかった。
それと同時に、通常のパンツでは存在する後身頃のダーツを"タックに変換"したかったの。
このことが2年間ずっと頭にあったの。笑
それをディテールだけではなく、意味のある構造にするために杉原さんがドレーピングでつくりあげてくれた。
結果的には、僕の考えたディテールに後から意味を持たせるのではなく、、、
パンツの構造で実現が難しかったこと、その壁を乗り越えることができる理想的な意味のあるディテールに修正して、ダーツ+タックを杉原さんがつくってくれたの。
どういうことか。
さっき言った通り、パンツには、腰からお尻にかけてダーツを入れ、ウエストをフィットさせることから、お尻のボリュームを出すために丸さをつくります。
だから、後身頃にはダーツが必要になってくるのですが、杉原さんが言うには、通常は、腰からお尻のポケットが存在する位置までの"短いダーツ"というのが一般的。
ただ、その"短い距離のダーツ"だけでは、お尻の丸みをつくるのにはどうしても無理が生じてしまうそうです。
でも、メンズの洋服、特にパンツにおいては、クラシックな昔ながらの名残が色濃く残ってしまっているから、多くのブランドが"決まったセオリーの中"で、パンツを設計しようとする。
そのため、今回は、本来はダーツのみが入る場所に、途中でタックに切り替え、それも斜めの"ハの字型"にすることで、
更には、ポケットをも飛び越えた長さにすることによって、理想形のお尻の丸みを生み出すことに成功した。
これは、杉原さんがAUBETT時代から行なう
"体から離れたところにドレープをつくる"
という手法がパンツのお尻の箇所で、見事に現れたディテールです。
更にね、、、
これ。
ポケットの最後の最後まで生地が重なってる。
とても細かい仕様です。笑
右の後身頃も斜めにダーツ+タックが入ります。
それにしても、シームがどこを見てもかなり細かいピッチで綺麗に入ってる。
このような構築的な構造に対して、シームも追従してくるから、パンツの見せ場にもなってると思う。
そして、裾。
これは、前側。
先述の通り、前身頃は上から下までステッチが入ります。
もう、なんか、変なディテールの片鱗を見つけてもらえましたかね??
これ。
後身頃。
後ろの裾にタック。
店頭にお越し頂ける方には、お話をしたことがあるかもしれませんが、僕は、ダーツが好きなんですよね。
でも、普通なら入っていない箇所にタックが入っているのがもっと好き。笑
だから、このパンツは、後ろの裾にタックを入れ、そのタック抑えとして、裾の処理は、"見返し仕様"、その見返しの上から5本のステッチを入れるという設計にしました。
ファッションいずみさんの縫製レベルをふんだんに見てもらい、それが理由のあるものにするためでもあるし、同じ箇所に複数本のステッチが入ってるのってカッコいいじゃないですか。笑
ただね、この後ろ身頃の裾のタックも意味があるの。
このタックも上に向かって直線に入ってないんですよ。
斜めの角度がある。
この"タックの角度"は、nonnotteの杉原さんが、設計段階のドレーピングの際に、腰回りに入った"ダーツ+タック"とのつながるポイントを探して、ズバリその角度にタックを配置してるの。
そうすることで、前から見ても後ろから見てもアメージングフォルムが出てくれるんですよ。
ジョッパーズパンツのように、大きく丸いワタリ周りから裾に向かって、急激なテーパードだと不自然過ぎるじゃないですか。
自然な分量にならず、体から離れたドレープが生まれ、そして僕がお願いしたフォルムをバチバチに形にしてくれた。
さすがですよ。杉原さん。
そして、裏。
さっきも言ったけど、こちらは、"Two Sides of The Same Tapered Trousers"という名前が付いている通り、表も裏も"Suvin Gold Supremeの二重構造"です。
このパンツについては、高密度なSuvin Gold Supremeが二枚重なることによって、裏側の生地が見事にフォルムの"補形"をしてくれてる。
実物は、結構な重量感を感じてもらえると思うんですが、補形だけではなく、かなりタフに穿けそうな感じをバチバチに感じさせてくれますよ。
あと、二重だから、派手なパンツ(下着の方の)穿いても透けないと思います。
裏地側もきちんとタックが入ります。
裾の裏も後ろ側は、タックと見返しのステッチ入り。
Clear Heavy Broadの平織りシリーズは、カネタ織物の太田さんが言われるように、
"Suvin Gold Supreme"の素材をそのままに、原料の良さと織りの良さをとてつもなく感じてもらえると思いますよ。
実物は、その手触り、光沢を見ると誰もがその言葉の真相をご理解頂けると思います。
"無染色のSuvin Gold Supreme"の表情には最適な洋服が完成したと思っています。
もう一つの"綾織り"。
"Drape Twill -Suvin Gold Supreme-"
については、また紹介しますね。
そして、販売は12月9日(土)より店頭でスタートします。
こちらについても詳細は、またお知らせしますね。
続く。