"nonnotte (ノノット)"。
コットンの可能性を思い知らされるTシャツを紹介します。
繊維にはいろんなものが存在するが、nonnotteと一緒に生産したカネタ織物さんの"Suvin Gold Supreme"の存在を知ってから、僕の中でコットンへの気持ちが大幅に変わった。
それは、Tシャツにおいてもそう。
我々のようなセレクトショップが取り扱う夏のTシャツは、ここ最近だと、ウールTに始まり、カシミヤ、シルクなどの素材が全国的に流通してきた。
そのような素材でできたTシャツは、とても涼しく、暑い日を過ごすには優秀だと思う。
動物繊維でできたTシャツのメリットは、挙げれば下記のようだろう。
・サラサラ感を伴う清涼感
・汗をかいても体が冷えにくい
・臭いの原因になりにくい
・高級感がある
大体、僕が思うにこの4つ。
上記の4つは、これまで、自分としても、すごく魅力的に思っていたことだった。
しかしそれは、本来は、コットン100%という存在であるTシャツが、以下のような問題点があったことによる消去法的な置き換えではないだろうかと思う。
・涼しいTシャツをつくろうと思ったら、薄くなる
・薄くなったら透けるし、弱くなる
・透けないようにしたら、分厚くなる
・強くしようと思ったら、分厚くなる
・分厚くなったら、暑くなる
・めちゃカジュアル
・カジュアル過ぎて、アメカジおじさんになるor少年になる
みたいなこと。
そもそも、僕が思うに、夏の炎天下に、結構汗をかいて、冷房ガンガンの室内に入ったら、そりゃ体が冷えますよね。
反対に、僕はそれが夏の醍醐味でもあるとも思う。
蒸せるようなところから、超涼しいところに入った瞬間の、あの気持ちよさ。
あと、夏の汗は、人間みんな臭いの原因になりにくいと言われてるじゃないですか。
汗腺が活発になると、臭いの原因物質は出にくくなるみたいな。
ちゃんと毎日お風呂に入って、着た服も放置せずちゃんと洗っていれば、臭くない。
あと、これまで世の中に存在してたコットンのTシャツは、やはり市場のニーズに応えるべく、タフにしてあって、その分、分厚いし、どうしてもベタついてしまう。
汗が発散しにくいんですよ。
Tシャツが思う存分に汗を吸ってしまってるから。
だから、コットン100%のTシャツは、以上のような問題点があったと思うから、ファッションブランドはみんなそのような問題点に立ち向かうべくして、コットン100%から脱却したTシャツをつくっていたんじゃないかと思う。
ただ、どうしても、ウールや、シルクなどの素材の特性上、Tシャツに必須項目の家庭洗濯では、新品から品質が必ず変わってしまう。
表面の毛羽立ちとか。
新品の状態では、とても綺麗でも、毛羽立ってしまったら少し残念に思ってしまう。
毛羽が起こらないようにTシャツの生地表面を加工しても、どうしても必ず発生してきてしまう。
それは、繊維の特性上仕方がない。
だから、そのようなコットン、もしくは混率の大半をコットンが占めたもの以外のTシャツは、どうしても、度々高頻度で着用するということは、少し向いていないのかもしれない。
僕自身も、洋服屋として、夏場にとても適した、クオリティの高いTシャツを用意することに非常に力を入れてきたつもりだったが、結局のところ、今の僕の結論は、一つ。
コットンが一番良い。Tシャツは。それは販売価格にも反映されるし。
ただ、そのような考え方になったのは、ホント、この数年の活動を経て、自分なりに現時点で辿り着いたこと。
暑い季節に、肌に直接着るには、コットンがベスト。
ただ、上記のコットン問題をクリアしたもの、更には、ウールやシルクなどの動物繊維を上回る出来のものであることが絶対条件。
このような考えになったのは、そう思えるものをnonnotteなどいくつかのブランドでつくっていたから。
だから、それを紹介しますね。
ちなみに、今日紹介するTシャツは、もう既に全国の取り扱い店舗さんでは販売してると思います。
当店でも、3月にnonnotteの杉原さんが在店してくれたイベントの際には、店頭に並べていました。
ただ、3月ですからね。
まだ誰もTシャツには興味のない季節なの。
だから、一応並べてはいたけど、3日間くらいですぐに引いた。笑
そして、今の今まで保管。笑
僕の当初の予定では、このタイミングで。って思ってたから。
Tシャツはリアルな時に見るのが一番良いものですよ。
紹介しますね。
nonnotte
Standard T-Shirt
material _ COTTON 100%
color _ METEORITE
size _ 3,4,5
まず、これ。
素材は、上記の通り、コットン100%。
糸使いは、70番手双糸。
まず、この時点で、Tシャツ(カットソー)の中では、70番手双糸という糸を使っているものは、史上初と言えるんじゃないかと杉原さんが言ってた。
過去には、熱狂的ファンもいたというブランド、smoothdayを立ち上げた杉原さんですからね、カットソーも、どプロ中の、どプロ。
そういう人が言うんだから、間違いないんじゃないかと思う。
杉原さん自身は、過去にハイブランドのニット(横編み)で、同等の糸を使用したものを着たことがあったそうですが、それはすんごく薄かったそうです。
70番手だから、ニットではかなり薄いと思う。大体、春夏のニットでは、風の通りを良くするために、密度をかなり甘くするから、その分、糸を太くしなければならない。
どういうものをつくるかによるから、具体的には糸番手を言うのは難しいのですが、70番手のニットって言うのは、めちゃくちゃ肌アタリが滑らかだけど、スッケスケのシースルーみたいなイメージになると思ってもらえたら良いと思います。
そして、今回は、Tシャツ。
ニットは、横編みと言われます。
編みながら、成形(形づくること)できることが特徴です。
カットソーやTシャツは、丸編みと言われます。
カット(裁断)して、ソーン(縫製)する必要があるものを丸編みと言う。
で、今回は、Tシャツなので"丸編み"ですね。
その丸編みでは、先述の通り、史上初の糸使いだという今回のTシャツ。
なぜ、史上初なのかというと、糸の物性上、フツーに使うと、、、、
・大きく斜行する
・毛羽立つ
・縮む
という、Tシャツにおけるデメリットが生じてしまうそうだ。
そして、それを乗り越えようとすると、開発に非常にコストがかかってしまい、誰もやり切れないそうです。
ただ、カットソーにおいても、どプロ中のどプロの杉原デザイナー。
製作段階で、これまでの経験値から"賭け"に出たそうです。
そしたら、見事に良い方向に進んだ。
そして、最後の最後までやり切ったそうです。
それが、このTシャツ。
これ、生地をできる限り拡大して写真を撮ったもの。
分かりますかね??
一般的に流通するTシャツと組織そのものは変わらない"天竺編み"というもの。
でも、糸の見え方がフツーじゃない。
糸が交互に全然別々の方向を向いているのが分かりますかね??
これ、杉原さんが"森下メリヤス"さんと開発したオリジナル生地。
名付けて、"Hard Twist Balance Jersey"という生地。
ハードツイストなので、もちろん強撚。
強撚だけど、涼しさと着ていっても毛羽立ちが起こらないように、とにかく追撚をかけた超強撚の糸。
この糸は、マイクロスコープで見ても、毛羽立ちは全くの皆無に仕上げているそうだ。
そして、先述の通り、70番手双糸の糸。
この双糸を単子にしても、双糸同士を2本組み合わせても、撚糸が強過ぎて斜行してしまうそう。
そこで開発したのが、糸の良さを最大限に活かすことができ、それでいて全く変質してしまうことがない、オリジナル。
"バランス撚り"というもの。
70番手双糸の糸を"4本"組み合わせ、その内の2本を、他方の2本と反発するように組み合わせたもの。
つまり、換算すると"8本撚り"というTシャツでは聞いたことのないレベルの組み合わせで構成してるもの。
双糸の2本ずつが、もう一方の2本と反発することで、斜行することも、縮むこともない。
そして、超強撚の糸が夏場の肌へ驚きのタッチ。
超快適。
更には、狙った通りの適正な落ち感と光沢による高級感。
それを、見事に実現した"前人未到のコットン100%"のTシャツ生地なのだ。
もう一回見て。
僕もこんな生地初めて見ましたからね。
片方の糸の角度は、ほぼ真横を向いてるし、もう一方は、限りなく真下に近い角度。
どうなってんだ。これ。
それが杉原さんがいう"バランス撚り"というものだそうだ。
そして、皆様、Tシャツで重要視されるネックの強さ。
この箇所も、同じ糸で仕上げてることにより、強靭。
何度も何度も洗濯を繰り返しても、伸びず、ダレてしまうことがない。
それでいて、超強撚だから、ネックまでも非常に糸が締まり、光を自然に反射してる。
こういう高級感が、Tシャツにはかなり重要。
あと、そうそう。
カラーリングは、杉原さんが膨大に持つ色見本の中から選んで、オリジナルレシピで開発をしたMETEORITEという色です。
隕石の色だったと思いますが、例えるなら、ブラックとブラウンが混ざり合って、ブラック寄りになった色で、そこにコットンだから少しの白けが入ってるようなイメージです。
黒いTシャツとして着ることができるものだけど、街中で着てると普通の黒とは全然違うカラーリングですね。
そして、nonnotteの杉原さんがヤバいのが、更にここから。
Tシャツもね、平面パターンを使ってないの。
シャツやコート、ジャケット、パンツなどと同様に、全てトワルを使った"ドレーピング"で洋服のフォルムをつくってる。
Tシャツって、世界で最も平面的な服ですけどね、nonnotteになると全然そうじゃない。
着用時には、杉原さんが設計した"体から離れた"アウトラインでTシャツの輪郭が出るように設定されてる。
つまり、別の側面から、もっと具体的に言うと、"ボディラインが出ないTシャツ"なの。
通常、Tシャツではボディラインが出にくいようにするために、生地に厚みを足して体の線が出にくいようにしているものがあるけど、これは、全然そうじゃない。
サイズさえきちんと選べば、nonnotteで理想とされる洋服の造形が生まれるように形づくってるの。
これ、Tシャツで凄いことだと思いますよ。
そして裏。
裏面も、超強撚70番手双糸の多本取りの天竺がめちゃくちゃ気持ち良いの。
着た瞬間に、確実に"涼しい"と感じられるタッチ。
その上、Tシャツで考えると"非常に細い糸"を"たくさん使っている"こともあり、分厚くも感じないし、頼りなく感じることも、全くない。
これ、まさに名作のコットン100%のTシャツ。
めちゃくちゃ気持ち良さそうでしょ。
キメ細かく、生地そのものの自然な光沢とドレープ。
もちろん透けないし、強くて、とても綺麗。
名前の通り、Standard T-Shirtっていう、パッと見では、比較的オーセンティックな形状をしたTシャツですが、その分、全員が無理なく着られ、暑い時には着たくなるような出来栄えしてると思いますよ。
肩を起点にした、杉原さんが狙った"ドレープ"。
このドレープがあるからこそ、Tシャツそのものが体から離れたところで造形をつくる。
前から見てもそう。
167cm、53kgでサイズは最小サイズの3。
nonnotteのTシャツは少し着丈が長めなのと、僕はTシャツは一枚で着ても必ずインする癖があるんですよ。笑
だから、撮影時もインしてる。笑
nonnnotte with ずっと穿いてるCOTTLEのジーパン。
COTTLEのジーパンも、7月くらいかな?
超名作だから、また見てもらえるように現在つくってもらってる真っ只中です。
nonnotteのTシャツは、気持ちだけオーセンティックなTシャツよりも着丈が長めって思ってもらえたら良いです。
写真で分かりますかね??
ただCOTTLEのジーパンにタックインしただけなんですけど、Tシャツの生地が自然に体から離れ、BODYのLINEが出てないんですよ。
これが、nonnotteが狙ったTシャツのフォルム。
過去に、非常にクオリティの高いカットソーブランドをやってただけのことはあるし、自分で全てのnonnotteの洋服のドレーピングも行なうデザイナーですからね。
今の季節は、世の中にTシャツは溢れるけど、このレベル、この領域のものはないと思う。
比較できるTシャツが存在しないなって思ってる。
それほどのシロモノです。
僕がつくったんじゃないけど、品質ハンパないから、信じて手にしてもらったら良いですよ。
もし、今日紹介してるnonnotteのTシャツでご満足頂けないようでしたら、僕はもうお手上げで、為す術がありません。
と言えるくらい。
そして、もう一つ。
次のものは、形は同じ。
でも、生地の質感が少し違って、Tシャツにもう少し見た目の違いを求められる方には良いかもしれませんね。
nonnotte
Standard T-Shirt
material _ COTTON 100%
color _ GREIGE
size _ 3,4,5
これ。
こちらのTシャツの生地は、"Hard Twist Ostrich Jersey"と名付けられてるもの。
お買い物頂いていない限り、記憶にある方は少ないと思いますが、3月に当店のnonnotteイベントで、Slit Neck Pulloverという長袖のスキッパーがあったんですよ。
それと同じ生地ですね。
ただ、コットン100%だし、Tシャツ生地なのに、、、
見たことない質感してる。。。
これ。
Tシャツとは思えないボッコボコの生地。笑
nonnotteの杉原さんが言うには、桐生のジャガード編み機っていう、"編む時に柄を出す"マシンで、織り組織、、、
"平織り"をプログラミングしてつくったものだそうです。
だから、格子状のように凹凸が出て、それが表面の質感になってるんですね。
そして、この糸、番手は聞いてないから不明ですが、こちらも超強撚。
さっきのMETEORITEのTシャツも、紡績が終わった後に、更に追加で撚糸をかけて、超強撚にしていたけど、こちらも同様です。
だから、こちらも着用時には、コットンのTシャツではあまり体験したことのないような"冷たさ"を瞬時に感じると思います。
に、加えて、この凹凸を出すために、一つの生地の中で、、、
・超強撚の撚糸数の違い
・編むテンションも箇所によって複雑に変化
させることによって、凹凸を生み出しているそうです。
もう、コットンの可能性だけではなくて、Tシャツの可能性をビンビンに感じる。
誰もが知ってるTシャツで、これほどまでに違いを出せるデザイナーが世界で何人いるのか。
この人、凄いですよ。ほんと。
マジで、ウルトラ尊敬する。
先ほどのTシャツは、同じ糸を使用して、リブ編みに切り替えていましたが、こちらは、ボディと全く同じ生地をネックに配置してる。
あとは、基本的には同じですね。
しかしながら、不思議なものでこちらのTシャツの方は、着用と洗濯を繰り返すと少し生地が伸びるそうです。
それを見越した新品のサイズ設定になってる。
だから、少しだけこちらのTシャツの方が最初のサイズは小さめです。
nonnotteの洋服をお持ちの方でしたら、普段通りのサイズ選びで問題ないですね。
超強撚の糸がふんだんに使われることによるドレープ。
そして、肌に直接触れる裏側も、表と同様に凹凸がある。
加えて、エゲツない風の通りの良さ。
あと、これは意外なんだけど、先述の通り、こちらのTシャツは新品のサイズ寸法よりは少し大きくなります。
でも、その後は、洗濯機にブチ込んでも、乾燥機に入れても、寸法変化が起こらないそうです。
それくらいハンパなく安定してる。
乾燥機をオッケーって言ってるTシャツなんて聞いたことないですけどね。笑
触った瞬間にも、着た瞬間にも、すぐに涼しさと快適さを想像できる生地ですがね、そういうことを誰もが知ってる"コットン100%"の素材で実現してることが素晴らしいと思う。
誰も見たこと、出会ったことのない生地の質感だと思いますよ。
こちらもサイズは3を着用。
さっきのよりも、新品は少し袖丈が短いのがわかると思います。これが同じ寸法になってくる。
あと、見て。体の動きに合わせたドレープ。
美しい。
こちらも"肩を起点"にして生まれるドレープ。
アームホールが途中でドレープに隠され、動きに合わせて、ドレープの内側から袖が現れる。
これにより、ブランドの考えるフォルムが生まれてくれる。
それを見事にTシャツでも実現してる。
後ろも同様です。
新品時には、こちらのTシャツは少しコンパクトに見えますが、伸びて狙い通りの寸法になってくるので安心して。
今日紹介したnonnotteの2つのTシャツは、どちらも皆様方に快適な夏をお約束してくれることでしょう。笑
あと、僕と同様にコットンへの概念変わる。確実に。
それと、今まで暑いからという理由で、仕方なくTシャツを着ていた方も、これさえあれば、見た目も着用感も、"着ていたい"と思ってもらえるはず。
暑くなってきましたからね。ご検討頂けたら嬉しいです。