先日も少しお知らせしていた通り、2020AWシーズンが本格的にスタートしました。 今日から。
で、まずはNobuyuki Matsuiからお話しますね。
日本を拠点に製作をするブランドながら、シーズン毎にとても明確なテーマを持ってコレクションしてるブランドです。
当店でもこれだけテーマ性があるブランドは、Nobuyuki Matsuiとamachi.くらいじゃないでしょうか。
完全にシーズンテーマに合わせたコレクションを展開してますね。
それでね、2020AWシーズンはまた変わったテーマなんですよ。
どこからそんなテーマになってくるんだって頭の中を不思議に思う。
毎シーズンのテーマが全然ちゃうから。
2020AWシーズンは、架空の人物"エリオット・レコメットくん"という人がキー。
エリオットくんは今から100年後、2120年に生きている人物です。
そのエリオットくんの職業柄と趣味が重要ポイント。
エリオットくんはAIの開発に携わる職業。
つまりは、パソコンに向き合いそのシステムを生み出す人物です。
だから、現代人のスマホ首どころか、パソコンに向き合うせいで極度の「猫背」で姿勢が異常に悪い。
しかたないですね、それが仕事で一生懸命働いてるから。
そして、趣味はヴィンテージウェアの収集。
そのエリオットくんのクローゼットの中がNobuyuki Matsuiの2020AWシーズンのコレクションテーマです。
あとは、「エリオット・レコメット」という名前も鍵で、レコメットという名前は、フランスの実在した人物からやってきています。
アート作品のストーリーを伝えた人物で、アートのストーリーテラーという活動をしていたそう。
それで、アート作品の背景を伝える「テラー」という仕事をしていたレコメットさん。 その「テラー」とNobuyuki Matsuiの得意とする「テーラー」をかけたりもしてる。 簡単に言うと。
これまでのブランドの洋服とはまた違った見た目のものがありながらも、ふんだんに手を込めた洋服のラインナップですね。
それでね、最初の写真のこれ。
とても今シーズンのテーマが盛り込まれたもの。
Nobuyuki Matsui
Old Hunting coat
shell _ COTTON 100%
liner _ ORGANIC COTTON 93%,YAK 7%
size _ 2
price _ ¥162,000-(+tax)
このコート。 凄まじいコートです。
なかなかなプライスではあるので、そこで判断されちゃう方もいるかもしれませんが、実際のとこは金額は仕方ないですからね。
当店でも20AWシーズンで大物アウター。
本当は、The CLASIKの30万円の超大物コートがあったので、後日それも意気揚々と紹介するつもりでしたが、今日ご購入頂いたので、写真撮ってなくて紹介できずにEND。
The CLASIKのコートは、ブランドでもセカンドシーズンにしてナンバーワンのもの。
表がカシミヤで裏がウィントンウールSUPER160Sのもので、素晴らしいものでしたね。
話が逸れましたが、このコート。
表地はコットン100%。 柿渋染めです。
日本の伝統染色技法の一つ。
服地以外のものにも使われることのある染色法ですが、例えば、建具の木材とか。
そういったものは、世代ごとに受け継がれ、大事にされるものじゃないですか。 箪笥とか。
まあ、箪笥受け継いだことないからわかんないけど。
そういったものは、50年、100年と引き継がれていくこともあるものだと思うのですが、柿渋染めが施された木材は、年々色が濃くなっていくそうです。
不思議ですね。
強度も高まり、防虫性、防水性なんかも高まるそうですよ。
そういった伝統技法。 その柿渋染めを表地に施したコートです。
その柿渋。 どのように染色されるのかというと、エゲつないですね。
特に今回のこの生地。 めっちゃ手間かけてる。 気が遠くなりそう。
ケミカル染色じゃないですからね。 自然と向き合うから。
まず、熟していない柿、青柿を細かくすり潰し、粉砕。
それの汁を絞って、青い汁を溜めます。
それを寝かす。
寝かすことで、青い汁が次第に茶色く変化するそうです。
そこに生地を投入。 少しずつ染めていきます。
そして、水洗い。
その後、天日干し。
だいたいこの作業だけで丸一日以上はかかるんですかね。
これで一回。
これで一回と言いましたが、このワンターンで濃色に染まるはずがありません。
それを大体15回やってるそうです。
しかしながら、染色→洗い→天日干しの15回も、サンプルでのこと。
実は、サンプルは15回染色と松井さんに告げられましたが、サンプルって2月に見してもらったので、それは夏場に染色したものみたいなんですよ。
今は7月じゃないですか。 だから、逆算して考えると冬場に染色をしたことになります。
特に天然の染料だと気温に大きく影響をされるので、みなさんも何となく夏より冬の方が染まりにくいのは想像できるんじゃないかと思います。
だから、今回のこの柿渋染めは当初の予定より2ヶ月も大幅に時間がかかってしまったそうです。 染めるだけで。
どれだけ大変な作業のことか。
今はあんまり柿渋染めって聞くことがないけど、あまりにも手間がかかってしまうそうなので、やってるブランドはあるのかな?
そういう工程を経て生まれた生地です。
それで、この生地でつくられたNobuyuki Matsuiの洋服は、今(2020年)から100年前(1920年)、
つまりはエリオットくんの生きる時代(2120年)から200年前につくられたアンティークの洋服という設定。
1920年代の労働着をテーマにしてるから、生地の雰囲気がとても強い柿渋染めを使っています。
リアルに時代経てきたかのような見た目してますよ。
この生地。
細かい綾織りの生地なんですが、度重なる柿渋染めで、ものすごくバッキバキ。 超絶硬い。
なぜなら、柿渋染めによって生地の目が詰まり、そしてその染色の特性上、生地の強度が大きく高まるから。
だから、類まれな硬さ。 ただ、こういうの好きな人はすごく好きだと思いますよ。
セルヴィッチのバキバキのリジッドジーパンを穿いたことがある人はなんとなく、それと少し近しいところを想像してもらえるんじゃないかと思います。
僕もスーパー心が躍った生地ですね。
その証は後ほど見てください。
複数の箇所にダーツが入るこのコート。
しかも表面のつまみダーツ。
これは、エリオットくんがこのコートを入手してから、自分の体型(すごく猫背)に合わせてダーツを入れたという設定。 だから、着たときに背中を思いっ切り丸めて着るとフィットするダーツです。
通称、猫背ダーツ。 しかしながら、猫背だけではなく、通常通り着たときにもとても綺麗に余白が生まれるダーツです。
これはNobuyuki Matsuiの松井さんが大得意とするテーラーリングに於ける洋服の描き方が発揮されてますね。
コットンとヤクウールの取り外し可能なライナー付き。 スナップボタンで簡単に着脱オーケー。
引手の形状がまるでジュエリーのような銅製ファスナー。
これがライニング。
ライニングもパイピングしてたりととても手を込めた、目を疑うようなライナー仕様です。
表地とは裏腹に肌当たりの優しい、柔らかライナーですね。
冬は取り付けてたら充分ですね、暖かさ。
春と秋は外してくれたらオーケーです。
そして、このコート。 ダーツの箇所や一部仕様でステッチが表から見える部分もあるのですが、多くの箇所のステッチは隠されてる。
だいたい8:2の割合かな。 ステッチが隠れています。
海外アルチなブランドで見ることがある仕様ですが、ステッチが隠れてるのに接ぎ合わせの箇所がとても力強い。
滅多にそんなこと感じないんですけどね。
この生地、このコートだからこそ漂う独特な空気。
Nobuyuki Matsui
Old Breeches
material _ COTTON 100%
size _ 2,3
price _ ¥63,000-(+tax)
※サイズ2は完売しました。
こちらは、先ほどと同じ柿渋染めのオールドブリーチーズ。
つまりは、柿渋パンツ。
こちらも変な仕様のウエストタック。 とても変わってる。
バックはシンチ付き。
フラップポケットに膝タック&ダーツ仕様。
このパンツもすごく力強いものだと思いますよ。
ただ、しかし。 それだけじゃないの。
結構こういう強さのある生地は、日本のブランドではとても稀。
そういう生地に対して「おおらかな仕事」での縫製処理をしてるのが海外のブランド。
Nobuyuki Matsuiの仕様は
とても細かいんですよ。
ただでさえ縫うのが大変なこの生地。
普通にやってると針折れるし、進まない。
だけど、難関突破し、更なる境地へ。
パイピング処理のオンパレード。
綺麗に処理された裏の仕様。
そして、1920年につくられた労働着という設定なので、ブランドでは珍しい巻き縫いの縫製。
まあ、当時のワークウェアでパイピングとかないですけどね。
とても手をかけられたパンツ。
このパイピングや巻きの仕様は先ほどのコートも共通。
膝のダーツは通常通り裏。
裾もチェーンで処理されています。 この写真じゃ見えないけど。
比較的ハイウエストなパンツですね。
形は見ての通りです。
まさか日本のブランドがつくったパンツだとは思えないような空気がムンムンに漂ってる。
最初はポケットも使えないんじゃないかと思うくらい硬い生地。
でも、このパンツ。
いつもブランドのコレクションを見に行くときは、展示会ではなく松井さんのアトリエに行くんですが、その時から、その瞬間から、心に突き刺さった。
で、 すごくお気に入り。 それで今日から店頭で販売スタートしたんですが、やっぱりね、並べる前に必要な作業があったんですよ。
自らへの落とし込み。
今まで柿渋のこんな生地に出会ったことなかったから。
とても硬くて最初は歩くだけでも生地の擦れる音がするこのパンツ。
染色も均一ではないし、既に最初からアタリのようなムラがあった。
だから服好きとしては避けては通れなくて、とにかく穿いてたんですよ。
ここ最近。
そしたら、ホンット独特なんですけどね、最初穿く度にアタリが出てくる箇所が違ったんですよ。
穿くその日、一日一日で生地が変化していくっていうか。
そんな生地に出会ったことなかった。
しかも、新品の状態よりもより一層素晴らしい雰囲気を放つようになってくるこの生地。
超絶お気に入りパンツ。
夏の暑さとか関係ないですね。 もはや。 あと、そうそう。 実はこのパンツはCASANOVA&Co.のエクスクルーシブです。 極端に言うと。
まあ、国内ではですけどね。
どういうことかと言うと、コレクションのサンプルは撮影用に外国人のモデル用のレングスにしてあったんです。
それが、松井さんに製品になったときにはレングスを短くするって告げられたんです。 長いんで。
ただ、そのとき松井さんもこの柿渋染めのパンツを穿いてたんですよ。 それは2ロールしてた。
松井さんの穿いてたパンツもサンプルで、それは最初の海外用の長さだったんです。
それを見たときに松井さんにお願いして、当店のオーダー分をつくるときはそのままの長さでつくってって頼んだんです。
理由は、ジャストレングスにするよりもロールアップしてるほうが、この生地の強さと相性が良いなって思ったから。
だから、国内の取り扱いでは一番長いですこれ。 僕も2ロールしてます。
でも、それがめちゃ良いね。
嫌な人は裾上げしてくれたらそれで良いけど。
それでね、最近めっちゃ穿いてるのがこれ。
洗ったのは一回かな。
ただ、あまりにも気に入ってるので結構な着用頻度ですね。
それにより刻まれましたね。
柿渋染めのみが持つ変化を徐々に感じてきて、ムラが出て、陰影が生まれ、深みが増したかな。
いつも2ロールしてるから裾にはロールアップ痕がありますね。
あとポケットも先述の通り、最初は無理やり使う感じだったけど、今はフツーにイケる。
柔らかくなったというか、言うこと聞くようになったって例えが良いかな。 こういうの好きな人は好きでしょうね。
ただ、あと3のサイズのみだからどうでしょうね。
プライスもプライスですしね。
まあ、実際に見てもらえたらありがたいです。
そして、
Nobuyuki Matsui
Tabi Shoes
material _ 白鞣し革(Deer Skin)
size _ 25.5,26.5,27.5
price _ ¥82,000-(+tax)
4月に開催した松井さんとのイベントでも20AWシーズンから新たな素材として使うと言っていた「白鞣し革」。
そのタビシューズです。
革のダイヤモンドのような圧倒的輝き。
モノは光ってないけど。オーラの話。
超天然鞣しによる一点ずつの革質の違い。
白鞣し革のみが持つ固有の革質。
これまでのタビシューズではイタリアンレザーのものを使用してきましたが、こちらはプライスが大きく違います。 しかも限定生産。
ただ、価格に関してはレザーの価格は、スムースレザーと白鞣し革では倍どころの差ではありません。
もっともっと大きな原価の差があるし、超希少革。
松井さんのアトリエにいったときには、足数のリミテッドも聞いたので、その場で少しだけ確保してもらいました。
4足のみの取り扱いです。
白鞣し革については今までも何度もお話をしてきたので、省きます。
今シーズンのタビシューズについてはステッチは入らないので、この革質をダイレクトに感じられると思います。
通常の革では全く体験できない革質と変化を最大限楽しんで。
付き合い方としては、とにかく履いてもらえるのがベストかな。靴だし。
雨とか気になる人もいると思いますが、何も気にせず履いて、この革の野性味を感じてもらうのが最もお勧め。
しっかりと時間をかけて鞣してあるから、シボの入り方もかなりギュッと入ってる。 ただ、これに関しては自然と対峙して革の生産をするので、一足ずつの革質の違いはそれぞれの固有のものとして捉えて頂きたいですね。
お好きな人は見てみてください。
また、明日はAraki Yuuやりますね。
多分。