これまでお知らせをしてきた、 山内 × CASANOVA&CO × 葛利毛織工業 のフェレイラ・モヘアの洋服。
明後日、17日(土)より販売を致しますが、今回、それに伴って、名古屋の山内さんのアトリエに行き、改めて話をさせてもらいました。
以前、無染色の"ヤクウール"で3種類の洋服をつくった事があったのですが、その時には、山内さん本人との一対一の対談形式のものを掲載致しました。
今回は、僕自身、3回目になるのですが名古屋の山内さんのアトリエに行き、そこで山内さんと、知美さん、僕とで3人で話をしました。
ですので、今回は、3人でのインタビュー形式のものを掲載致しますね。
ここで、山内の洋服の全てが生まれています。
以下に掲載を致します。
山内さんは、"山内)" 奥さんの知美さんは、"知美)" 僕は、"福田)"という形で表記を致します。
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福田) 山内さん、知美さん、今回も宜しくお願いします。
以前に、ヤクウールの時にも葛利毛織さんについては、聞いたような気がするんですが、その時には、なぜ葛利毛織さんの生地を使われているのか、ということを聞いた記憶があるんです。
なので、今回は、なぜ葛利毛織さんの生地を"使い続けているのか"ということを教えてください。
山内) はい。
実際、そうですね。
その時、なんて答えたんですかね。
今の自分の中では、何でだ。と聞かれたら、 まず、私は、その人が好きじゃないと続いていかないんですよ。
福田) あっ、それ、そういうふうに以前も言われていたと思いますね。
山内) そうですよね。
例えば、私は、ウールだったら葛谷さんだけですし、コットンとなると、細番手だったら福田織物さん、強撚だったらカネタさん。
キュプラだったらワタナベテキスタイルさん。
そんなに、お取引がある機屋さんは多くない。
葛谷さんだと、梳毛だけじゃないですか。
コレクションでは、ウールであれば紡毛も。と通常はなるんですが、なぜ、コレクションで梳毛だけにしてるのかと言うと、葛谷さんのところで充分だからって思っているからかな。
知美) いつも言うのは、あれじゃない。 長く一緒にやっていかないと分からない。って言うことじゃない?
福田) ほぉ~ほぉ~ほぉ~、はい。はい。はい。
知美) 長く一緒にやっていかないと分からない。
結局、一回の単発でやっても、分かり合えなかったり、こうかな。って思ってもそこで、初回からマッチングするということはない。
(山内さんが)じっくりものづくりするのが好きなんですよね。
だから、相手のことを知らないと良いものはできない。
といつも言っているので。
(山内さんが)この性格なので、パンパンって会ったその時、30分、1時間で伝えるっていうタイプではない。 長いですけど、10年一緒にやって分かる。笑
福田) 笑
知美) 言わなくても、機屋さん側から、デザイナーが「好きな感じができそうです。」などと連絡を頂いたりとか、「結局こういうことですよね。」ってところまでやって、やっと好きなところが汲み取って頂ける。
そういう人間関係あってのモノづくりというのが、昔から大事にしてるんですよ。
山内) 自然に、そうなってしまう感じかもしれないですけどね。
知美) どこか、一つのことをじっくり取り組めるまで。
そういうことをいつも考えているので、ウールだったら葛利さんということですね。
まず、この人ともじっくりやり尽くしてないのに、次。という感じではなくて、しっかりやり尽くす。
そのようなことを考えていますね。 (山内さんの)性格上。笑
山内) そう。性格だな。笑
福田) 笑 確かに山内さんは、そういうじっくりっていう感じですよね。
いつも話をしていて、もの凄くそう思います。笑
山内) その時、その時で、この人しかこれはできないから、その人としかできないことをやる。
じゃあ、次は、飽きたから違う人と違うことをやる。
機屋さんもそう。染料屋さんもそう。加工屋さんもそう。 全部そういうふうに変えてやっていくことをできる性格じゃないんですよね。 単純に。
そのようなものづくりを良いとも思っていないです。
単発でやる仕事に良いものが生まれるのか。ということに疑問はあるので。
福田) う〜ん。そうですよね。
山内) こうやりたい。こうやりたい。っていうのは、昔はあったかもしれないですが。
7年間くらいやった"yamoci"というものから、ブランド名を"山内"に変えてからは、そのような意識の変化はしていると思います。
福田) う〜ん。はい。
山内) 自分が"作りたいものを作る"とか、自分が"表現したいものを表現する"という服づくりに対して、私は良く思わなくなってきたということがあると思います。
福田) ふむ。ふむ。
山内) 極端な言い方をすると、川上のその人が何をやりたいのかということを汲み取って、実際にそれを使って、洋服をつくるというようなくらいです。
それくらいの意識に変わっていったのは、"山内"というブランドになってからです。
モノをつくる上で、自分本意のモノづくりをしていくことを良いと思わなくなってきた。 自分がこうしたい。とか。
知美) そう。 自分一人の範疇で、こうしたいというものを形にするのは、それはできると。
福田) なるほど。
知美) そうなんです。
自分の意思だけで、自分だけでやっていたら、それはできるし、自分一人で思ったものが完成した時の満足感よりも、みんなでやった時に上手くできたものの方が、レベルが高いって思ってる。
山内) そっちの方が、多分良いものができるんですよ。
自分が熱量持って、絶対これをやるぞ。って思ったものは、時と場合によってはそれが成果が出るかもしれない。
だけど、実際それを葛谷さんに、私が絶対に経糸がこれが良いとか、絶対に緯糸はこれで、組織はこれで。 というような「絶対にこれが良いんだ」って進んでいったとしても、その熱量で伝わるものもあるかもしれないですが、それは単発でしかなくて、もう少し、長期的なプロジェクトを行っていきたい。
長期的な関係性をつくりたいと思えば、その人がやりたいことはなんなんだろう。ということが大事になってくると思うんですよ。
福田) う〜ん。はい。はい。
山内) 例えば、今回のフェレイラでもそうです。
葛谷さんがこういった糸が入ったから、こういうふうにやってみたかった。という葛谷さんの探究心と熱量でつくったものを、私がどう料理するかということの方が、お互いに熱量が高いはずです。
こちらが、こうしたいというのをひたすらこちら目線で言ってると、職人さんも「そうじゃないんだよな。」 とかそのような気持ちになってしまう時があると思う。
そうではなくて、職人さんたちが何がしたかったのか、ということ吸い上げて、自分がそれを料理するということの方が、結果的に良いものができると思っています。
福田) なるほど。
山内) 葛利毛織さんに限らず、福田織物さんでも、ワタナベテキスタイルさんでもそうですし、長く付き合っていって、最終的に今は、「何か良いものないですか?」って聞くんですよ。
福田) あ〜、、そうなんですね。
山内) 「好きそうなものつくりますよ」というような感じで、機屋さんがつくってくれたものをどう料理するかが、私の中では、一番しっくりくる服のつくり方。
例えば、機屋さんが、「糸が余ってるから、それを使って山内さんの好きそうなものつくろうかな」というようなことでも良いんですよ。
福田) なるほど。
山内) 新しく何かを調達してもらって、新しいものを欲してる。というよりも、その職人さんが"山内"らしいものを考えてくれている。
それも、今あるもので考えてくれている。というようなことだってすごく良いと思うんですよ。
福田) それは長い関係性じゃないと生まれないことですよね。
山内) そう思います。
そういう時には、実際に取り組んでくれてる職人さんの気持ちは、嫌な気持ちではないはずなんです。
こちらが注文した時に、 "絶対にこれを使ってくれ。納期はこれで、色は絶対にこれじゃないと嫌なんだ。" っていう言い方で注文したものって、職人さんはつくっている時に、結構しんどい気持ちでつくるはず。
それよりも、「良いものないですか?」って聞いた時に、「やってみますよ」などと言って、職人さんの気持ちでつくってきたものの方が、良いものが多いし、私もそういうものの方が使いやすい。
そういう方法、そういうやり方を大事にしていますし、その方法を極めたいと思っています。
福田) そういうことですか。
山内) 例えば、今回のフェレイラモヘアも、福田さんが"これを使いたい"という気持ちがあって。
それに私も、一緒にさせて頂くという形。
それが、その関係性が、とても良いと思う。
自分は絶対にこうが良いと思う。絶対にこうだ。 というような言い方は、お互いにしていないと思うんです。
福田) そうでしたね。確かに。
山内) その方の意図を汲んで、じゃあどういうようにしていこうか。 と一緒に考える。 というやり方。
ものづくりには、これがとても大事だと思っている。
"残るものづくり"と言ったら、尚更そうだと思っています。
福田) ほぉ、確かに。確かに。
山内) 一過性のものだったら成立するとは思いますが。
福田) それこそ、単発仕事だったら、、成立しますよね。
山内) 成立すると思うし、それで力強いものを出す人だっていると思います。
ただ、私は、もっと長期的なことを考えてやり始めたので、単発的なことで成果をあげるということは、あまり意味がないと思ってるんですよ。
やはり、私が考えていることもかなり長期的なので。
それで、自分がやり続けられる範囲は、あと20年とか。
今45なので。
あと、20年でやれることって、とても知れてるじゃないですか。
福田) はい。はい。
山内) 長い人類の歴史からすると、20年ってとても短い。
だから、私は、やれる範囲は、これだけ(手で小さく表しながら)で良いって思ってるんですよ。
次の人がやってくれれば良い。
福田) なるほど。
山内) 本当にそういうふうに思っています。
この間、葛谷さんと対談させてもらった時にも、(葛谷さんも)同じことをおっしゃっていたんですよ。
福田) あ〜、はい。はい。 僕もこの間、葛谷さんと電話した時に、葛谷さんもそういうことは言われてましたね。
山内) あっ、言われてましたか。
福田) 言ってましたね。
山内) ヒトが羊を飼って、羊の毛を刈りながら、それを紡いで、毛織物を作っていた。
そういう歴史からすれば、自分たちってその歴史の中の、本当にごく僅かしか関わっていない。
自分たちがやれる範囲っていうのは、本当に少ししかない。
それを先代がやってきたこと、先々代がやってきたこと、先々々代がやってきたこと。
そのことを受け継いで、次の代に伝えることが大事で、自分たちがこうしたいと思うのは、おこがましいって言われるんですよね。
福田) なるほど。
山内) 自分がこうしたいというような、そんな発想ではなくて、これまでやってきたことを受け継いで、次に渡す。
そこに少し自分の考えを乗せる。
それくらいで良いと思うんです。
そうじゃないと、今後また日本でものづくりを残していくということには、結果的にならないと思うんです。
その気持ちがない限り。
自分たちが革新的に変えてやるんだとか、そういう方法をとると、恐らく、先代のやり方を否定していくことも含まれていると思う。
福田) あ〜、はい。はい。
山内) それはあまり。 あまりというか、自分がやってきた歴史を考えてみたら、もっと前の人だって同じように考えてきて、今これなんだから、これを継承していくことの方が大事だと言ってるんですよね。
福田) なるほど。
山内) そのようなところがあるからですね。
なぜ、葛谷さんと一緒にやり続けているのかというと。
それに、もう、それで決めてしまったという感じです。
私は、葛谷さん以外でという意識が、あまりないという感じです。
知美) 一番最初に、葛谷さんが"ミュールシング"のことを気にかけて頂いた方なんです。
福田) そうなんですね。
知美) そうなんです。
"山内"を始めた時には、秋冬シーズンでも"綿や麻"を縫い合わせて、ミルフィーユ仕立てにしていたので。
福田) はい。そうでしたね。
ウールがなかったですよね。
知美) そうです。ウールや獣毛を使っていなかった。
そういったように生地に厚みを持たせるところでコレクションをしていたので、表面的にフワッとしたものがない時に、葛利毛織さんに出会って、葛谷さんに「なんで使っていないんですか?」というところから。
その時に、「ミュールシングが気になって使っていないんです」と話したことから始まって、そこから数年かかるんですけど、、、 "ミュールシング"をしていない、安心して使えるウールというのを提案して頂いたのが、まさかの老舗の葛利毛織さんでした。
福田) そうだったんですね。
知美) まさか葛利毛織さんにやって頂けるなんて思っていなかったんですよ。
山内) そうだね。
葛谷さんに山内でウールを使わない理由を聞かれた時に、正直に話しをしました。
福田) じゃあ、その時には、取引はなかったんですよね。
山内) そうです。 妻の知り合いだったんですよ。たまたま葛谷さんが。
福田) そうだったんですか。笑
知美) 笑 知り合いっていうことではないんですけど。
私も、山内に来る前は、自分でやっていたので、その時に横の繋がりで、いろんなきっかけがあって。
福田) そうだったんですね。
知美) そうなんです。
それで、山内に入って。
同じ愛知県で、メンズのブランドをやっているので、良かったら見に来てください。って展示会のお知らせをしたんです。
福田) はい。
知美) その時に、本当に見に来て下さって。
福田) それは、知美さんが入って、yamociの時(山内の前身のブランド名)ですか?
知美) そうです。 yamociの時。
山内になってからだったかな?
山内) ギリギリのタイミングじゃないかな。
その時に、葛谷さんを展示会に誘ってくれたんです。
知美) それで、葛谷さんに展示会来てもらいました。
秋冬の時だったんですけど、「これAWのコレクションですよね?」ってなって。
コットンとか、麻しかなかったので。
「これSSじゃないですよね?」 「ウールを使わない理由って何かあるんですか?」って言われて、正直にお話しをしたんです。
「ただ、ミュールシングが気になって使っていないだけなんです。」ってお伝えしたんですよ。
「使いたくないのではなくて、それ(ミュールシングされたウール)じゃなければ、使いたいんですか?」と葛谷さんに聞かれて。
「本当は、使いたいんですけど、ミュールシングが引っかかって使っていないだけなんです。」ってお話しをしたんですよ。
福田) そういうことですか。なるほど。
知美) 何年前だったかな。
福田) そうですよね。
僕も初めて山内を取り扱いをさせてもらった頃には、ウールがなかったですから。
それで、取り扱いをさせてもらって、何年か経ってから、ウールが出てきた。
ノーミュールシングウールだと。
知美) そうですよね。
そこの右上に飾ってある(アトリエ内に、ノーミュールシングウールの証明書が飾ってあった)。
知美) そんなふうにして頂けるんだ。って思って。
長い歴史を続けてるからこそ、目を向けて下さった。
多分、(山内さんが)葛谷さんのお人柄も好きなんだと思います。
山内) そうですね。本当に。
葛谷さんが話すことには、とても共感できる事が多かったというのもあります。
私もいつもとても勉強させてもらっています。
福田) そう言って、日頃から山内さん言われますもんね。
葛谷さんのこと。いつも。
で、僕もそれを聞いて、あ?そうなんだ。と。
よく山内さんとの話しにも出てきますもんね。葛谷さんの話されてることが。
山内) 人はみんな何かに取り組んでいると、人生悩むじゃないですか。
福田) そうですね。はい。
山内) そういう時に、自分なりにいろんなことを考え、人生のこと考えて、仕事のこと考えて、仲間の人のこと考えたり。
私は、目の前で様々なことが起こったときに、外側に目を向けるのではなくて、"自分の中"で自分を、もう一度見つめ直すというような癖があるんですよ。
福田) ほぉ。そうなんですね。
山内) その時に、カッコ良く言うと、"大義"のようなもの。
自分ってなんのために生きてるんだろう。とか。
どうしてこういう思いになってしまうんだろう。とか。 "生き方"自体を悩む時期ってありますよね。
福田) ありますよね。 それは、もう何歳になってもそういうことはあるんだろうと思います。
山内) それは、その時にさっき福田さんと話していたこと。 (※予定していた時間よりもアトリエに早く到着したため、娘さんと出かけられた知美さんが戻って来られるのを待っていた。その時に話しをしていたこと)
仕事って何の為にやっているんだろうとか。
生きているって何の為なんだろうとか。
そう考えた時に、私は、保守的な考えをしている論客の人たちの話は、すごく自分の中で腑に落ちた。
色々、本を読んだり、いろんなものを見聞きするときに、よく言われる"保守と革新"の二つに分ければ、考え方の違いがあるとすれば。
私は、保守的なことを言う論客の人の話しが、すごく納得ができた。 革新的な人の話しの方は、あまり納得ができなくて。
福田) そうなんですね。
山内) それで、葛谷さんは、同じような話をされることが多いんですよ。
110年くらい続いてる家業を受け継いできたということは、"保守する"・"守る"という考え方。
そして、その時代に合わせた動き、それを"革新"と言うとすれば、"保守的な中にも革新"の動きはあって当然だと思います。
ただ、主として保守的な考え方。
すぐに革新的な発想にするのではなく、まずは、守ること。
先代の人の言うことを聞くこと。
福田) はい。
山内) そのような発想が、私にはすごく納得ができたんです。
そう考えると、自分が今までやってきたこと、自分の欠点などが見えてくる。
やはり、自分本意で動いた時には、周りにも影響をしてしまうし、周りが反発することもある。
ただ、それでも突っ走る方は良いんですけど、私はそれがなかなかできない。
周囲と協調しながらやっていくとなれば、保守的な動きの方が、私には合うと思う。
それに、このように今やっていこうとしている中で、衰退していっている日本のモノづくりの中で、何が大事かというと、革新的な動きではなくて、もっと保守的で良い。 という話が葛谷さんとの中で、頻繁に出てくるんです。
それにすごく納得をする。
福田) ふ〜む。なるほど。
山内) やはり巷では、新しい考え方だったり、今までにない動きなど、革新的な動きの方が持て囃される。
福田) 確かに。そうですよね。
山内) そもそも、新しいものを作っていくという中で、ファッションは全て革新だ。と言う人もいますが、私は、そこまでではないのではないかなと思っています。
私は、保守になりたいと思っていて、考え方を。
福田) おぉ、そうなんですね。
山内) そうでありたいと思ってるんですよ。
葛谷さんと話をした時に、とても納得できるのが、"保守"の考えでは、その時代に合わせた動き方をするのは、良くないんじゃないかと言われるそうなんですよ。
ただ、葛谷さんは、"その時代に合わせた動きをして、保守的"なんです。
だから、そういう動きで良いんだと考えたのも、葛谷さんを見て思うことです。
絶対に新しいことをしない。
というのではなく、その時代に合わせた動き方というのは、必要だと思っています。
それが、前の人を否定するのではなくて、"保守していくため"に変わらなければいけない事がある。 ということ。
福田) なるほど。
山内) だから、それが葛谷さんの話でとても納得ができた。
保守の中にも革新的な。
もう、こんな話ばっかりになっちゃってる、、、笑
一同) 笑
福田) 今の話を聞いて、山内さんは、"保守的"でありたいとは言われていますが、思うことがあって。
世の中、世界でも、生地とか、服をつくる上でどういうことをしてるんだ。 っていうスペックを語るブランドはあったとしても、その過程の"縫製"という工程に目を向けて、フォーカスをしたブランドというのは、山内さんがされる前にはなかったんじゃないかと思うんですよね。
それは、ある意味、"革新"の動きだったんじゃないかなって思います。
山内) はい。
福田) でも、"モノづくり大国日本"と昔から言われてきた中で、メイドインジャパンと言われる中で、日本の洋服づくりを"保守"するためだったのかな。 って今改めてそう思ったんですよ。
そして、その当時には、それがとても新しい動きをしていると捉えた方は多かったんじゃないかと思うんですよ。
山内) そうですね。
その光の当て方が、他のブランドさんはあまりやってこられなかったことだとは思います。
ただ、それをやり続けることで、一過性のものではなかったと思って頂けると思うんです。
それが、ビジネストークではなくて。
福田) 確かに。
山内) このことも長く続けて行かないと、そういうふうに見えてしまっていた方に、納得頂けることはできないと思っています。
だから、長く続けていかないといけないと考えていますし、これは、本当に自分たちがやろうと思ってること。
だから、考え方として、"保守"ですよね。 特に、何か新しいことをやろうとしていたわけではないです。
自分が本当に好きな部分、そこが光が当たっていないから、光を当てたということだけですね。
福田) そういうことですね。
山内) ただ、今お付き合いがある機屋さんは、みんなそうです。
葛谷さんだけではなく、福田織物さんも二代目、ワタナベテキスタイルさんも二代目、カネタさんも二代目か三代目でしたよね。
福田) そんな感じでしたかね。
山内) それで、有松の絞りをやってもらっている工場さんも五代目か、六代目。
福田) 久野さんですか。
山内) そうです。久野さん。
もう、皆さん、自分の代でやり始めてるわけではないので、そういう意味では、現代の仕事とは全然違うんですよ。
家業を継いでるので、保守的と言えば、保守的なんです。
福田) あ〜、なるほど。確かに。本当ですね。
山内) 今、機屋を始めようと思ったとしても、なかなか難しいと思うんです。
福田) あ〜、確かに。
今から機屋を創業しようと思っても、なかなか難しい。確かに。
山内) だから、私がやっていることは、特に珍しいことではない。
縫製に光を当てたっていうのは、もしかしたらたまたま珍しく見えたかもしれないですが。
福田) それはでも、相対的に、誰もやってないからやろう。っていう考え方ではなくて、山内さんが、、、
知美) 好きだった。笑
山内) それは、ブランドの名前でもそうなんですよ。
ローマ字が良いというのではなくて、正々堂々と自分の名前でやれば良いじゃないかと思っただけです。
福田) 笑
山内) もっと、地に足をつけて"山内"で良いと思っただけで、こうだったら目立つだろうというような意識は全くない。
福田) なるほど。
まあ、そうやって思うようなタイプではないですよね。山内さんは。笑
知美) でも、初めは、そういう本人の意識とは、逆に思われてるんじゃないかって思うことはありましたよね。
縫製にフォーカスするのかとか、ブランド名が漢字なのかと。
福田) 確かに。
知美) 攻めるなーみたいなふうに思う方もいらっしゃって。
山内) でも、実際にそれで取り扱いがしたいと言って来られたバイヤーさんもいました。
それが、キャッチーとお客様に捉えてもらえるか、売れるかどうか見定める。
ということを言われたこともある。
見え方としては、そう見えてしまうかもしれなかったです。
知美) でも、まあ、会えばというか。笑 そっちじゃない。笑
福田) そうですよね。笑 会ったらわかる。笑
知美) ただ、シンプルに、洋服と同じ考え方をしただけ。
福田) 今回は、店頭に立ってもらえるので、山内さんに会えば分かるし、感じてもらえると思いますね。笑
でも、最近ギャラリーショップの動画で、山内さんの肉声が出てるじゃないですか。
あれを見た人は、みんな納得するんじゃないかと思いますよ。
知美) 最近、(山内さんが)よく言うのが、自分が一番普通だぞ。って言うんですよ。
周りにいるみんなの方が変わってるって言うんです。
私にも。スタッフにも。
福田) それは、でも、山内さんがすっごい丸くなったということではないんですか?笑
昔、知美さんがそうやって言われていたことがあったと思うんですけど。
知美) 笑。
昔はね、怪我する鋭い眼つきの時もあったし。笑
福田) 笑
知美) 同じこと何回も怒られたこともあるし、だけど、要はそれは一生懸命で、ブランドをやるというか、自分の魂を売るというか。
これだっていうのを見つけて、伝えてやる為には、グッと集中しないといけないから神経を尖らせていたあまり、そうなっていた部分。
今は、「すっごい普通の人間なんだぞ」って言うんですよ。
福田) 笑
知美) だから、自分の長所を活かすものづくりをしている。
忍耐力があるとか、綺麗なのが好きとか。
そういう性格を伸ばす方向で持っていってるだけ。
デザイナーって普通は、自分が変わった感覚があるぞ。ってアピールするものじゃないですか。
それが真正面から、自分は普通だぞ。っていうふうに言われると、笑いが出て。。。笑
福田) 笑
知美) やろうとしてることは、変化球を投げるようなことでもないし、奇を衒うことをしているわけでもないし、真正面から、真面目に誠意のあるものづくりをしたい。 ということなんですよね。
昔から変わらず、"残るものづくり"をしたいだけ。
このような感じで、でも、それはシンプルだけど長い道のり。
そこを変わらずにやってるだけなんですよ。
それは、10年、24時間一緒にいて、本当にそういうことなんだなって感じるんです。
福田) そうなんですね。
知美) ものづくりって人が生きてる上で、しないといけないというか、失くしてはいけないものなんじゃないかと思うんです。
福田) はい。はい。
知美) 人間関係もそうだし、一人ではなくて、周囲の方と一緒にやっているものですし。
パッと出てパッとできてしまうものではないですし、デジタルなものづくりであれば、パッと消せるじゃないですか。
ゼロからやり直したり、一定のところまで戻そうとか。
やっぱり戻ったことをやめようとか。 洋服ってそういうことができないアナログなものづくり。
福田) はい。はい。
知美) 例えば、糸の段階でこの風合いがどうだと言っても、天然なので。。。
雨がどうのとか、動物の体調がどうのとか、そんなことになっていってしまう。
地球上でものづくりをすることって、やめたらいけないなって思うんです。
福田) ほぉ。なるほど。
服をつくるって、すごくアナログですもんね。 確かにそうですね。
福田) では、次に先ほど、葛利毛織さんとの出会いを話してもらったので、縫製者さんとのことを教えてください。
山内) 今回の別注ではなくて、先ほどの話と繋がってるんですが。
それこそ、動画でも一緒にさせてもらった"山下 葉子さん"。
福田) はい。
山内) もう、みんなに言っています。
ブランド誕生のきっかけでもあるんです。
個人事業主yamociのブランドから、山内に変わったのは、その人と出会ってそうなったとも言えます。
福田) ほぉ〜。
山内) もう間違いなく、葉子さんはきっかけを与えてくれた方。
山下 葉子さんにサンプルのシャツを一着だけ縫ってもらったことがあるんです。
その時の出来上がりの素晴らしさを見て、私も縫製には結構自信があったんですけどね。
葉子さんのシャツを見て、本当に感動したんですよ。
福田) 具体的にどうだったとかありますか?
山内) 具体的には、細かい部分は、もちろん。
衿が綺麗だとかステッチが細かいというのはあるんですけど、もうハンガーにかけた瞬間に。
感動したんですよ。
福田) 全然違ったんですか?
山内) もう、全然違う。
すごい。本当に、これはすごい。という感じですよ。
知美) 珍しくテンション上がってたもんね。
山内) 綺麗とかの表現ではなく、もう、凄い。
もちろん綺麗なんですよ。
衿の付け方や、カフスの付け方も部分見たら、もちろん全部が綺麗。
ただ、それが全部が合わさって、ハンガーにかけた時に、素晴らしい。
という感じ。
これは、誰が見ても感じるはず。
私は、そう思うんですよ。
特に、私は、自分で縫っていて、それに対して自信もあったんですが、圧倒的な差を感じたんですよ。
福田) ほぉ〜。
山内) 縫製者さんで、要は、ここまで洋服が変わるんだって思ったことも、その方がきっかけなんです。
その時に、アトリエで縫ってくれていた方も、10年以上縫製をしている方だった。
そのアトリエでやってくれている方の縫製を見たときに、「この人、神だな。」って思っていたんですよ。
福田) あ〜、そうなんですか。
山内) そう。
その方を私は、当時、「神」と呼んでたんですよ。
そして、あるとき、その方に、サンプルが間に合わないから、誰か知り合いいないかな?って紹介してもらったんですよ。
その方が葉子さん。
それで、その方に縫ってもらって。
「こっちが神だ」って思ったんですよ。
一同) 笑
山内) "神中の神"発見した。
そう思ったんです。
もう、その縫製を見て、葉子さんに全部縫ってもらいたいと思ったくらいですよ。
でも、葉子さんの話を聞くと、縫製という仕事は食べていけないと。
そういう葉子さんみたいな方でも食べていけないし、単純に賃金も安くて、一着縫う時間で考えたら、縫製のお金ってとても安い。
福田) はい。
山内) そのとき、こんなに上手な人が埋もれてるんだな。と思ったんです。
私の知らないところに。
そういう人たちは、日本にはまだまだいるだろうし、そういう人と一緒にものづくりをしたい。
そう思って、私は縫うことをその時で、実質、辞めた。
福田) はー。なるほど。
山内) 気持ち的には、この方たちに勝てない。と思った。
ただ、こういう方々と一緒に服づくりをしていきたい。
そのようにも思いました。
福田) その方たちの縫製を見て。ですね。
山内) そうです。
私がyamociというブランドをやっていたときには、全てを自分でやっていました。
縫製、パターン、デザイン、加工もやっていたし、染めも。
自分一人でやっていたんですよ。
福田) そうだったんですね。
山内) それでこそ、オリジナリティのあるものがつくれる。
それでこそブランドだ。 ということを思っていた。
自分だけの。自分のホントの分身。
当時は、そうやってできたものに、価値があると思っていた。
福田) なるほど。
山内) それに、そうじゃないと自分の中で許せないとも思っていたんです。
人に頼むと気に入らないことがたくさんある。
自分が染めたい色にもならない。
そうなれば、自分で染めれば良いし、自分でつくれば良いし、自分で加工すれば良いと思ってやっていたのがyamociというブランドだった。
でも、その葉子さんに縫ってもらってから。
"その日から、その考えはやめた"。
それくらい衝撃的でした。
福田) はぁー。
知美) なんか縫いにセンスがあるって言ってたよね。
山内) そうです。
私は、縫ってる人には、センスがないとまで当時思ってたんですよ。
すごい単純なことを言うと。
福田) はい。はい。
山内) 技術者にはセンスが宿らないとまで思っていた。
福田) その当時ですか?
山内) そう。
センスというのは、当時の自分のようなデザイナーなどのポジションの人がセンス云々と言うんだと思っていた。
その考えも、覆った。
縫ってる人、職人、技術者が、ここまでの高みにくるとセンスが出るんだって感じたんですよ。
福田) ほぉ〜。
山内) 私は言われたことを綺麗にやるだけが技術者さんの仕事だと思っていました。
そこには、センスではなくて、技術があると思ってた。
福田) なるほど。
それは、山内さんが言われてた"職業職人の範疇"の場合ですね。
山内) そうですね。
本当の職人になるとセンスが宿る。
福田) なるほど。
山内) そうなんですよ。
これは、衝撃だった。
センスを感じるんですよ。
その方の縫いに。
機械的に縫っているのではなくて、センスがあるんですよ。
これは、そういうことかと思って。
例えば、アトリエでつくるサンプルは、すごく良いものができる。
未熟な人たちがつくったとしても、アトリエでつくったサンプルというのは力がある。
福田) ほぉ。
山内) それは、例えば、その洋服に思いを持ってる人たちがつくったもの。
それには、センスが宿るし、力が宿る。
技術じゃない。
だから、さっき言った、技術があるとセンスが宿らないと思っていたのはそこで、要は、センスというのは別のところにあると思っていた。
アトリエの中にいる人たちは、気持ちがこもってるから、技術がなくても良いものができる。
センスが宿る。 だから、外注さんに出すと、センスは宿らない、ただ機械的に綺麗に上げてくれるだけと思っていた。
でも、違ったんですよね。
その考えは、全然違う。
福田) ほぉ〜。
山内) 技術者も高みを目指すとセンスが宿る。ということを知りました。
同じことばっかり言ってますね。笑
ただ、本当にそうで。
知美) 葉子さんは、汲み取って下さる方だったんですよね。
ただ、自分の腕を見せたいっていうところではなくて。
福田) はい。はい。はい。
そうなんですね。
知美) 山内さんは、どういうものが好きか。
どういった綺麗さが男服としてカッコいいって思うか。っていうのをちゃんと理解してくださった上で、葉子さんの経験を乗せてくれる。
山内) だから、、、技術が高ければセンスが宿るんじゃないんだ。
葉子さんだからだ。
要は、やはり本当の"職人さん"だということ。
福田) そういうことですね。
"職業職人"と"職人"がいる上での、本当の職人さんだと。
山内) そうですね。
本当の職人さんは、クライアントの意図を汲んでくれる。
それは、そのクライアントが気に入るように仕立ててあげるというところまで考える人。
そのような職人さんがつくる服は、センスが宿る。
福田) なるほど。
山内) 自分の考えだけで、一方的に技術を押し付ける人には、やっぱりそういうことを感じないんですよね。
良いものづくりというのは、相手の人のことを考えた上で、ものつくることを言うんだと思います。
福田) ふむ。ふむ。ふむ。
山内) ですので、一番最初の話に戻ると。
私がこのようにつくりたいんだということを、一方的に伝えると、職人さんは、このように言われてるから、つくってあげよう。とだけ思う。
それで完成したものには、センスは宿らない。
職人さんが、この人にこういうものを提案したいとか、こういうふうにしてあげたいというものにセンスが宿る。
私の服のつくり方は、そうでありたいと思っています。
福田) なるほど。
まさに、さっき話してた(知美さんが戻ってくる前に話していた内容)、仕事を自分のためにやるのではなくて、相手のためにやる、人のためにやるということに繋がりますよね。
山内) そうだと思います。
誰かのためにやるから、良いものができるんですよね。
もう、これは間違いないと思っています。
自分のためにやっているものって全然良いものじゃないんですよね。
私は、そう言い切れる。
それは、若いときには、もしかしたら、そう思うかもしれません。
そういう自分のためにやってるようなものに興味を持つことが。
福田) はい。はい。
山内) 例えば、アーティストと言われるいる人たちが個性で何かをやっていることに対して、惹かれていく。
でも、実際は、ファンが付いてる人たちは、決して自分本意でやっていないはずですよ。
福田) いやぁ〜、そうでしょうね。きっと。
山内) きっと、ファンの人たちに向けてやっていると思う。
だから、それに憧れて、自分もそうなりたいと思う人がいても、そういう人には、ファンは付かないと思いますね。
福田) なるほど。
山内) そう思います。
自分のことばかり話されても、あまり興味が湧かないものじゃないですか。
人に対して、パワーを与えるものというのは、自分の考えを押し付けているものじゃないはずです。
福田) なるほど。 すーごい良い話ですね。
山内) そうですか?
一同) 笑
山内) それは、葉子さんから感じたんです。
とても聞いてくれる。
例えば、今の、このような会話でも良い。
あっ、山内さんってこういう人なんだ。っていうことを汲み取ってつくってくれる方。
このディテールをどうしたいですか。という話ではなくて、もっとニュアンス的なもの。
福田) なるほど。
山内) 「柔らかいラインが好きですか?」「しっかりした方が好きですか?」とか、そういう会話でも良いんです。
あとは、もっと抽象的でも良い。
なんていうんだろうな。
「すっごい男っぽいものが好きなんだけど、繊細な感じ。」とか。
意外と、相反してるじゃないですか。
福田) そうですね。難しそうですね。
山内) 難しそうじゃないですか。
「男っぽいんだけど、美しいものが好きなんですよ。」とか。
そう伝えると、それに上げてくれる。
という感じですね。
福田) わぁ〜。そうなんですか。すごい。 職人ですね。
山内) 本当の職人。
やはり、そういう人と、もっと出会いたいと思っています。
意外とそういう人は、まだまだいると思うけど、割合は少ないでしょうね。
そういう人たちがつくったものには、絶対に価値がある。
それこそ、今回のフェレイラモヘアの洋服を縫って頂いた方、4人の方も本当にそうです。
福田) はい。
山内) 私が今、お付き合いしている縫製者さんは、みなさん汲んでくれる方。
成清さんもそう。岡本さんも。佐野さんも。
あと、お一人はお名前出せないですけど。
要は、そういうことも長く一緒にやらないと、これも分からないんです。
汲み取れるだけの情報量がないといけない。
福田) うん。はい。はい。そういうことですね。
山内) だから、今でも葉子さんと、私がどのようなものが好きなのか、という話しをしていますし。
福田) そうですか。
山内) そういう人たちにスポットを当てたい。
私は、パターンももちろん大事ですが、縫製者さんの方が、劇的に洋服を変える力があると思ってるんです。
福田) ほぉ。 そうですか。
山内) パタンナーさんという方も、もちろん尊敬しています。
しかし、どちらかと言うと、洋服の面構えを変えるには、縫製者さんの力の方が上だと思う。
福田) なるほど。それは実体験としてですね。
山内) そうです。
私は、そういう見方を洋服でする。
もちろん、シルエットが大事で、洋服はシルエットだ。って言われる方もいます。
ただ、縫製者の方がシルエットを作れないとは、思えませんから。
縫製で、シルエットを作れるんです。
福田) はい。はい。
山内) そう思うようになったのも、葉子さんと出会ってからですね。
福田) なるほど。
山内) 丸みのあるシルエットというのも、カクカクとしたシルエットも、それってパターンの仕事だけだと思われてると思うんです。
そうではない。
もちろん、パタンナーさんの仕事でもあるんですが、縫製の力が大きい。
福田) はい。はい。
山内) 実際に、同じパターンで、生地が違うものをつくってることもあるので、それはやっぱり現場で生地を触って、縫ってる人たちが強いですよ。
もちろん、スタートラインとしては、パターンは絶対必要なんですが、実際それを変化させていくのは、縫製者さんです。
福田) はい。はい。
山内) ただ、その縫製というものが、洋服の中で、一番ないがしろにされてるっていうこと。
私は、それは違うと思う。
福田) そうですね。
山内) そうです。
私の中では、一番尊敬できる対象がその縫製者さん。
福田) うん。うん。
山内) あとは、自分の性格。
細かく見たいんですよ。
洋服を見たときに、「おぉー、細かい」みたいなのが好きなのもあります。
福田) 笑
知美) もちろん、パターンも良い方が良いけど、その生地の特性を活かして、どう調整するのかっていうところで、より良くなるということですよね。
福田) それは、本当にその通りですね。
山内) でも、そこがやはり、量産、特に超量産型のものづくりだと見えにくいんですよ。
福田) そうですね。
で、それがもういっぱいあるから、より見えにくくなってしまってる。
もう、そっちの数の方が圧倒的に多いですからね。
縫製を見るというフィールドさえも、上がってこなくなってしまっているように思います。
山内) そうですね。
あとは、ブランドがどうやって打ち出していこうか。と考えたときに、縫製は、スポットを当てにくい。
やはり通常は、すごく不特定多数の人が縫うし、そこに技術の良し悪しを持ってくることほど、大変なことはない。
そうであれば、シルエットや、デザイン、テキスタイルで勝負しようとなってくる。
逆の意味で言うと、そちらでしか言いにくいんですよ。 洋服って。
福田) そうだと思いますね。
普通は、山内さんがやっているように丸縫いでもないですもんね。
山内) ある程度、大きな規模のブランドになってくると、誰が縫っているんだ。
と言うことは、まず不可能だから、デザイン、イメージとなってしまう。
踏み込んだとしてもパターンで勝負してるくらいでしか、一般的に考えて難しくなってしまっているんですよ。
どうしても洋服って、そうなってしまっている。
だから、私は、そのような縫製者さんにスポットをあてていきたい。
福田) そういうことですね。
福田) それでは、最後に、今回のフェレイラ・モヘアを使った服。
知美さん、山内さん、出来上がりを見てどう思いましたか?
日頃こんなふうに服をどう思ったか聞くことなんてないですが、、笑
山内) パンツ見た?
知美) 見ましたし、穿いてみました。
福田) 先に一点送ってもらったものですよね?
知美) そうです。
山内と葛利さんで服そのものをつくってるものだけど、完全にあの仕上がりは、福田さんだなって思いました。
山内) だから、私たちのものづくりだと、さっきの話しで言えば、そうなります。
福田さんがどういうものを求めているのかということをずっと考えていたし、もちろん、そこに自分っていう、"山内"っていう色が乗ってると思うんですが。
福田) 確かに、今回ジャケットとパンツを一からつくってもらったときに、どういうものにするかというのも、何ヶ月もかけて何往復も話しをさせてもらいましたもんね。
山内) まず、このフェレイラの生地を選んだ。
私も前から知っていたこの素材なんですが、使い切れなかった。
使い切れなかったというのは、具体的には、生地のメーター単価がとてもとても高いものだから、コレクションでは使えない。
やはり、すごく高価になってしまうということがあったので、それを今回の企画では、福田さんが「これだ」ということで、スタートを切ることができた。
一緒になって使えたということだと思うんですよね。
福田) そうですよね。
まず、僕もフェレイラというものを知ってから、タイミングが来れば必ず。と思っていた素材でした。
まず、葛利さんに行った時に、フェレイラモヘアで何を、どんな生地をつくってもらうかっていうことからだったので。
山内) フェレイラモヘアありきで行きましたもんね。
福田) そうですね。
山内) しかも、それが最終的に行き着いたのが、本当に高いものになった。
その発想ができたというのは、福田さんじゃないとできなかっただろうな。
自分たちは、以前も話しましたけど、これをコレクションで作ったときに、コートが同じ価格になってしまうと。
やってみたいのはやってみたいけど、数着しかできなかったら、生地を作ることもできないし。
福田) はい。
山内) それをある程度の量でやるっていうところを、福田さんのその別注だから、福田さんがそれで行くって言ったから、それに乗れただけで。
それは、逆に、使わせてもらって、感謝もありますね。
この生地は。
知美) うん。
福田) おぉ~。そうですか。
山内) どれだけのものなのかというのは、やはり、知らなかったので。
知美) 福田さんの気迫が伝わるというか。
気迫だよね。 この企画。
福田) 気迫。
知美) 気迫。
福田さんの気迫が現れた今回の企画ですよね。
福田) そう言って頂けますか。笑
知美) はい。
初めは、東京展示会をやる前の岡山に行った時かな。
糸、生地どうしようか悩んでたじゃないですか。
福田) はい。
知美) あの時からスタートしていて。
山内) 最初の方の生地サンプルは、ボツになりましたからね。
良いは良いんだけど。
知美) うん。
もっともっとって。
福田) はい。
もっと求めてましたからね。笑
知美) それで、この高単価になっていって、ちゃんとした洋服になっていけばいくほど、普通は色を"黒"にするところを、この色にしたということも含めて、カサノヴァさんだし、福田さんだしっていう。
もう、それに尽きるので、見てください。って感じですよね。こちらは。
特に、福田さんを知ってる方だったら、福田さん色に仕上がってるっていうのが。
福田) はい。
知美) ずっと山内のラインだけ追ってきてると、福田さんのエッセンスが入ったことの、福田さんカラーというのを感じると思います。
福田) そう言ってもらえて、ありがとうございます。
確かに、自分でもそう思いますね。笑
知美) ですよね。笑
福田) 僕も、山内でよくある色合いであれば、やる意味は、全くないとも思いますし、こういうものは。
それで、カサノヴァの感じが出てることはすごく大事だなって思って。
ただ、まあ、今回のフェレイラモヘアでの洋服をつくって、どうだ!ってことがしたいわけでは全くないです。
買って頂いたお客さんには、絶対に買って良かった。っていうことはもちろんですし、ホンットに感動できる洋服だと思うんで、それでこのカラーリングっていうのも大事だったんですよね。
普段のセレクトでもそうなんですけど、よく見る感じって、あるじゃないですか。
知美) うん。うん。
福田) だから、ときには、来て頂けるお客さんにも「なんだあれ」みたいなことを言われる服もありますし、ただ、買って頂いた、つまりお金を払って頂いた。
その意味がある、理由がある、それ以上のものがその先にある。っていうことがすごく大事だなと思います。
それを常に心に置いてるんですよ。
だから、今回のフェレイラの洋服でも、黒だったら、僕は、手にして頂く理由があるのかなって思ってしまうんです。
その上、なおかつ、"山内"というブランドから外れてない色だとも思うんですよ。
山内) それは、随所に、福田さんからも聞いて頂いてましたし。
「山内さんなら、」、「山内さんならどうしてましたか」とか、「これで良いと思いますか?」とか笑
福田) 笑
知美) 「山内さんならどうしてましたか」とか、いろいろ聞いてもらってましたよね。笑
福田) そうですね。笑
その山内さんの反応での擦り寄せは、とにかく大事にしたいと思っていました。
山内) こういう作り方ができたのは、福田さんとだからかな。
通常とは、別注の方法が違いますからね。
福田) そうですよね。
山内) 通常とは、全然違う方法で、こちらとしても一緒にさせてもらって。
とても楽しんで進めさせてもらった感じですよね。
でも、自分たちでは作らなかった色、だけど、自分たちから外れていないし、ジャケットもコートもパンツもそうですけど。
福田さんの要素が入っているけど、山内のエッセンスも存分に入っているので、こういう企画だからできた洋服ですよね。
どっちにも転んでないし、全く新しいものだと思う。
だけど、どちらものニュアンスも入ってるから、バランスがとても良い。
福田) そうですよね。
知美) 信頼関係あってこその、この絶妙なバランスだなと。
福田) 最初、山内さんと葛利毛織さんに行ったときに、帰りの車の中で、すぐに、何をどう作るかと色々話をさせてもらってたのが、すごく記憶にあって。
山内) 変わりましたよね。
色々。
福田) 変わりましたよ。
ホントに紆余曲折ありましたよ。笑
山内) 紆余曲折ありましたよね。笑
福田) ただ、ホントに最後の最後で、さっきお話しを頂いたようにすごく良いものが出来上がってると思います。
山内) 本当にそう思いますね。
すごく良いものができたと思います。
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以上。
お伝えしておりましたように、17日(土)より発売を致します。
そして、初日は、終日山内さんご夫婦が店頭に在店してくれます。
お好きな方は楽しみにして、ご来店頂けると嬉しいです。
服のレベルは、エゲツないと思うので、もの凄く期待してご来店ください。
お越し頂ける方々のご来店をお待ちしています。