"立体"
洋服を語る上で、頻繁に使われるワード。
"シルエット"
この言葉は、便利で簡単だけど、とても危険だと思ってる。
それは、分かって使っているようで、厳密に、事細かく見ていった時には、本当にその洋服が描く"シルエット"が的を得ているのか、疑問に思う。
特に、その言葉が使われる洋服の種類が"パンツ"。
この服の種類には、どこもかしこも、困ったら"シルエット"が"良い"と言っとけばオーケーという浅はかな景色が蔓延してると思ってる。
しかしながら、僕は、もちろんパタンナーではない。
だから、洋服として完成される前段階での「線」の状態では、判断が難しい。
しかし、今は大変ありがたく、幸いにも、世界中の超実力ブランドの方々と一緒に取り組むことができ、自分の目はエゲツない程に養われたと思ってる。
それで仕事してるから、逆に言えばそうじゃないとダメだと思ってるけど。
そう言った意味でも、洋服を"見抜く目"は、自分が今日まで出会ってきた世界中のクリエイターの方々のおかげで、もの凄く伸びた。
もともと、縫製や生地については得意分野だったから、そこに於いては自負している部分はあったんですよ。
でもね、正直に言って、洋服の描く"外郭"の一流の世界を判断することは、自分にとっては、これまですごくハードルが高かった。
昨日のブログで紹介した、Nobuyuki Matsuiをはじめ、立体裁断の鬼であるAUBETT、それにtoogoodや、もうすぐやっと、自らの手で扱うことのできる、Isabella Stefanelliなどが生み出す洋服と出会うことができ、僕の"目"は著しく発達した。視力は悪いけど。
このブランドたちは、洋服と外界との「境界」である"線"を決めることに於いて、ハンパじゃない。
洋服づくりでは、自由にどこにでも、その「境界線」を定めることができるけど、"絶対にここでしかない場所"にその"線"を生む。
とても衝撃的で、脳内が混乱し、ハートが揺れ動き、全身に熱い、熱い、マグマのような高熱のエナジーが隅々まで駆け巡り、毛細血管の超末端まで漲る感覚。そういうものに出会う度に、常にその感覚を体験する。
そういうブランドの、そういう機会に巡り会う度に、"目"を育ませてもらうことができた。
だからこそ、世の中に蔓延してるように思う「シルエットが良い」という言葉。
洋服を楽しむ一つの表現として、エンドユーザーの方が使うワードとしては、全然オーケーだと思う。
でも、不意にね、インスタグラムとか見てると、その商品の謳い文句で、「美シルエットのパンツ」とかって当たり前に書いてあるワケですよ。
しかし、その写真を見ると僕には、そのパンツの描くアウトラインは、リアス式海岸かと思うくらい、はちゃめちゃなことが多いワケ。僕にはね。
もちろん、好き嫌いは、ある。
だが、しかし、あまりにも"シルエット"という言葉が、小売店から安売りされ、パンツの"重要な箇所"の判断が抜け落ちてると思う。
これは、マジで、世界レベルはハンパないから。
全然違う。
パンツの"重要な箇所"。
その場所に於ける、「ここしかない"線"」って存在する。
僕は、それを体験させてもらってきた。
自分が思う、パンツの重要な箇所。
それは、
"内股"。
ここだけは絶対に譲れない。
市場に於ける「シルエットが綺麗」なパンツの概念は、"内股"ではないはず。
全部が、外側、アウトシームのアウトラインでの判断が蔓延してる。
はっきり言って、僕はどんなパンツでも、外側のパンツのアウトラインは、それなりに綺麗に出ると思ってる。
というか、重力に伴い、下に落ちる。ストンと。
これ、地球上に存在するパンツなら全部共通。
無重力トラウザーっていうのがあったら違うけど。
ただ、内側の内股のラインは、その洋服の持つ力がバキバキに、はっきりと差が出る。
と思ってる。
そして、見事な内股を描くパンツが完成した時、それが人間の体に合う、"美しい立体"を形成すると思う。
だから、今回、つくりました。
いや、正しく言えば、つくってもらいました。
トラウザーを専門的につくるブランドとかではありません。
それでも、このブランドが生み出す、"内股の美"は、素晴らしい世界。
そのデザイナーがこれまでの人生でもがきながら、必死になって得てきた技術。
だから、それは日本の洋服の教育理論、日本の洋服づくりのセオリーとは、全く違います。
長い年月かけて経験をし、導き出した、"ブランドオリジナル"で開発したもの。
今回は、そのブランドの実力を皆様に、しこたまご体感頂きたいと思っています。
でもね、いくらパンツの描く"線"が綺麗だったって、そこだけでは違うと思う。
洋服の見た目は、好き嫌いがあるから置いておくとして、つくりの面で、大まかに言うと、
"生地・縫製・パターン"。
この3つの要素。
それら全てが、ハイレベルで三位一体となることによって、クオリティの高い洋服は生まれると思ってる。
だから、そのブランドに話をし、生地については、僕自身が最も好きなジャンルである生地で用意しました。
"平織り"の毛織物。
パンっと張った生地特性は、洋服のラインを美しく演出する。
そして、平面的ではない、強い生地組織の立ち。
もう、察してもらえてると思うけど、今回は、"パンツ"。
そのパンツの"内股のアウトライン"がエゲツない程、引き立ち、それでいて平面的で表層的ではない、奥行きのある生地。
その両者が高いクオリティでマッチングするパンツを目指して、トワルを製作してもらった。
Irenisaに。
そして、そのトワルを元に、細かい縫製仕様なども決定。
これにより、とてもクオリティの高い洋服ができたと思っています。
間もなくお披露目しますね。
続く。。。