ショートパンツ "NEAT"
昨日、よく来店頂くお客様に、最近このブログがイベントの告知用みたいになってる。って言われたので、そんなつもりはなかったんですけど、確かにイベントが多かったので、振り返って見れば、そうでした。
ここからは少しというか、しばらく、そのような予定は今のところないので、この先はCASANOVA&Co.の春夏コレクションをお楽しみ頂ければと思ってます。
だから、このブログもここからは商品の紹介をし続けていきますね。
でも、以前は、ほんとは商品の紹介だけではなく、洋服の一つ一つの服種、例えば「シャツ」に対しての自論、「生地の糸づかい」に対しての自論などを展開していきたいなと思ってたんですけどね。
まあ、またやりますね。
ということで、今日は、今シーズンの当店での珠玉のショートパンツを紹介します。
NEAT。
2021SSシーズンのNEATのショートパンツは、2種類だけと絞った取り扱いにしてますが、その一つが、米軍生地のAWC。
AWCについては、最もオーセンティックなものに近付けたいと思い、グルカショーツのみ。
そして、もう一つが、今日少し紹介させてもらうものです。
2種類どちらも明日から発売しますね。
そもそも、NEATの展示会に行ったときにいつも忘れないように、見返せるようにサンプルの写真を撮るのですが、その写真を見返して見ると、最初にこれ。中間にこれ。最後にもこれ。ってくらい同じものばかりを何度も撮ってた。
展示会時は、かなり意識を集中させていろいろ考えながら見るから、大体一度写真を残してしまえば、充分なのですが、これは何回も同じのを自分でも意識しないうちに撮ってた。
つまり、それくらい惹かれてたってことです。
NEATのコレクションでは、国内の生地やシーズンのオリジナル生地、海外の生地など、いろいろと分かれてるんですが、今回のはこれまでブランドで使ったことがあるのかな。
Faliero Sarti(ファリエロ サルティ)。
ラグジュアリー生地をつくる、イタリアのメーカー。
カシミヤのストールとかのイメージが強いかもしれませんね。知ってる人は。
僕もそうでしたし、日本でもこのFaliero Sartiは、ストールが出回ってることがほとんどじゃないかと思います。
でも、それだけじゃないみたいですね。
イギリスの老舗の生地メーカーと比べると長い歴史ってことではないみたいですけど、SINCE 1949。
ってタグに書いてあります。
だから、70年くらいですね。その歴史。
カシミヤとかウールとかが強いイメージでしたけど、今回NEATが使ってるのは全然、違う。
コットンとポリエステル。52:48。
この混率、超難解。
で、確か、西野さんが言うには、リサイクルポリエステルって言っていたように覚えています。
この生地。
物凄く太い糸、しかもネイビーにオフホワイト、スカイブルー、チャコールグレーにグリーンというカラーリング。
非常に多色使い。
それでいて、この生地の目の強さ。
ただ、ただならぬ高級さがムンムンに漂ってる見た目。
もう目が釘付けになっちゃった生地なんですよ。これ。
ブランドのコレクションサンプルでは3モデルが展開されていました。
だから、取り扱いたい店舗は3つのモデルの中からじゃないと選べなかった生地ですね。
で、なんと、その全てがショートパンツでした。
その理由は、生地値がエゲつない程、高額だから。って西野さん言ってた。
NEATをご存知の方は周知のことですが、NEATって長ズボンになると裾上げをしなきゃいけないじゃないですか。
それは、きちんと高品質につくられたスラックスを着用者の適正のスタイルで着用できるようにするため。
だから、その生地分量も生地コストとして入ってるわけですが、このファリエロサルティは、そのショートパンツ以外のスラックスとしてはつくることができなかった生地。
あまりにも、
高すぎて。
だから、ショートパンツのみの展開で、その3つのモデルの中から、ファリエロサルティの生地を最もたくさんの分量使ってるものをオーダー。
それが、カーゴショーツ。
まあ、高額生地とは言ってますが、そのことは誰が見ても明らか。
圧倒的迫力の生地。
誰がどう見ても、その凄まじさは感じてもらえる。
それくらいスペシャリティーですね。これ。
展示会のときはこの生地の独創性に完璧に心を持っていかれてオーダーしたんですが、納品されるまで、コットン52%とポリエステル48%の混率のどこかどうなってるのか分からなかったんですよ。
肉眼で見ただけじゃ。
これまでこの生地との類似を見たことがなかったし、解析不可能でした。
肉眼では。
だから、どうしても追究したいと思ってウズウズして、
登場。
マイクロスコープ。
これ。
大体いつも統一した倍率で見るのですが、今回ばかりは生地を構成する糸が太すぎて、いつもの枠の中に一本の糸の一つの目だけしか映りませんでした。
同倍率の場合は、上質なものではこれくらい目の数は見える。
倍率については、企業秘密。笑
この写真は、あるブランドの上質なシャツ地なのですが、さっきのファリエロサルティの生地と比較すると全然見えるものが違う。
この写真の一つの目が画面いっぱいに広げられてたのがファリエロサルティ。
これ。
でも、この写真を見たときに分かったことがあったんですよ。
この糸、ポリエステルだと。
通常、天然繊維であるコットンは、綿花が枯れて、その種子が露出し、種子を守るために種から生える毛で、その毛を摘み取って利用するのが、コットンです。
だから、いろいろと繊維がある中でも、短い繊維(上質と言われるもので大体3cm前後)であると洋服業界では言われています。
そのため、コットンは糸にするときに、ねじって、紡いで、糸にしなきゃいけないのは何となく分かると思います。
しかしながら、化学繊維であるポリエステルは、簡単に言うと、原料となるポリマーという液体みたいなものがあって、それがシャワーのような構造の口金から噴射されてできあがる。
ポリマーを原料に糸をつくるから、"ポリ"エステル、"ポリ"ウレタン、"ポリ"アミドなどと、それぞれ言うそうですよ。
それは、フィラメントといって、コットンのように短い繊維ではなく、果てしなく長い繊維ができるわけです。
だから、ねじらず、撚らなくてもオーケー。
ないとは思っていたけど、そこで、コットンポリエステルの混紡(繊維を混ぜて糸にしてる)ではないということが分かった。
そして、もっと全体を見渡すために倍率を低下させ、19.9倍に。
これが、この生地を19.9倍に拡大したもの。
さっき画面いっぱいに見えていたのが、上の写真でいうスカイブルーの部分です。
こう見ると、縦方向に走る糸と、横方向に走る糸の表面感が違うと思います。
縦に走る、スカイブルーとネイビーに対して、
横に走る、グリーンの糸は、鱗みたいにボコボコしてるのが分かると思う。
これも、別の箇所を撮った写真です。
縦方向に走る、アイボリーの糸とネイビーの糸に対して、
横方向に走る、ホワイトの糸はボコボコしてる。
そう。
つまり、縦方向に走る糸=経糸は、
ポリエステル。
横方向に走る糸=緯糸は、
コットン。
と分かった。
ただね、ここで、緯糸のコットンのこんな様子をこれまでに見たことがなかったんですよ。
経糸に遜色ないくらいビックリするほど太い糸だし、肉眼でも捉えられるけど、生地の組織がかなり大きい。
それでいて、緯糸表面の糸の見え方がただの撚りじゃないのを感じた。
で、次は緯糸だけ拡大。
例えるならば、綱引きの"綱"のような状態になっている糸が見えると思います。
これは、"双糸"状態の糸が複数本、まとめて緯糸として使われている。
その複数本まとめて使われているっていうのが、具体的に何本なのかというのは、肉眼じゃないと確認できなかったから、地道に数えてみたけど、
6本までは確認できました。
ただ、それ以上が見えなかったですね。
少なくとも双糸が6本は引き揃えられている緯糸です。
これ、スーパーレア。
っていうか誰もやらないんじゃないかな。
こんなこと。
経糸が細いポリエステルの繊維が多量に束ねられたもの。
緯糸が双糸使いの引き揃えコットンが6本以上束ねられたもの。
なのですが、もっと複雑で、、、
これは、スカイブルーの経糸と緯糸が交差する組織の拡大です。
例外的にスカイブルーの色糸だけ、緯糸もポリエステル。
ある一定程度は、規則性を持たせている生地ですが、スカイブルーだけ素材を変えています。
それにより、見え方が大きく変わる。
生地を見たときに、他の色と異なり、スカイブルーのカラーリングが他の色と比べてより一層際立って見えるんじゃないかと思う。
そして、通常は織物(布帛)というのは、生地表からは経糸のほうが、見た目に強く影響してくるもの。
でも、これはコットンとポリエステル、経糸と緯糸の組み合わせが相互にプラスの影響をし合い、途轍もなく、惹き込まれるような奥行きを生み出してると思う。
まあ、いろいろ書いたけど、
ヤバい生地。
って思ってもらえたらそれで良いです。
モデルは、先述の通りカーゴショーツ。
当店では初めて取り扱いをする形です。
両サイドにスラッシュポケットはもちろん、大きなカーゴポケット。
夏場は便利な収納なのは、想像に容易い。
バックポケットもカーゴショーツというモデルに合わせて、パッチポケットの仕様です。
NEATのスラックスになると内蔵型の両玉縁ポケットなので、それとは違う仕様。
マーベルトもきちんと入ります。
ボタンフライ。
カーゴショーツもバックは2本のダーツが入ります。
フロントにはいつも通り、インタックの2タック。
すごく生地の目が立ってるのですが、素材の違いから光沢とマットな部分とのメリハリが効いてますね。
あと、特有のイタリア生地感もハンパない。
パンツのアウトラインはかなり立体的に出してくれるもので、良いカタチ出してくれますよ。
その分、肌へのべたつきもないと思う。
そして、洗ってオーケー。
夏なので、そこを心配される方もいると思いますが、安心してください。
お好きな方は見てみて。
そして、
驚いて。