こんにちは。
CASANOVA&COの野口です。
今日も、今週末から開催となる"WONDER ROOM launch event"について。
今回、WONDER ROOMチームのデザイナーである松本さん、生地開発を担当する圍さん、セールスを担当する岡本さんの3名に、5つの質問を投げかけてお話していただきました。
なが〜くなっていまったので前後編に分けておりますが、WONDER ROOMのこと、そしてWONDER ROOMチームのことが少しわかっていただけると思います。
合間合間に今シーズンのWONDER ROOMのルック写真も掲載してますので、そちらと併せてご覧ください。
それでは、今日は前編です。
QUESTION1
【WONDER ROOMメンバーの出会いと関係性について】
野口:今日はこのようなお時間をいただきありがとうございます。皆さんはもともと知り合いで繋がりがあったというふうに聞いているのですが、どのような出会いだったのですか?
圍:ちょっとじゃあ、それぞれの出会いに関しては、松本さんからで。
松本:そうですねー、僕と岡ちゃんは結構早かったですよね。
岡本:うん、そうですね。
松本:僕が昔買い物に行ってたお店で、岡ちゃんが働いてて、、
岡本:そうなんです、ほんと10年前くらいから松本さんのことは知ってて、お話もしたことがあって。僕の一番最初のキャリアとして勤めてたセレクトショップにいた時に松本さんには出会ってて。
その時とかはそんな深い話をするような仲ではなかったし、歳も離れてるし、なんかまぁ、「かっこいい先輩いるなあぁ」くらいくらいの感覚でしたね。
でもそれから時を経て、再会して、いろいろ経て今に至るみたいな感じですね。
松本:僕は以前働いていたブランドのお店ではインポート担当をしていたんですよ。デザイナーから「あなたはうちのブランドらしくないから雇ったんです」ってずっと言われてて。
野口:ほぉ、はいはい。
松本:で、僕は店舗に立ってたんですけど、そのブランドを着ちゃいけないって言われてたんです。笑
野口:そんなことがあるんですね。笑
松本:なので、それこそGIORGIO BRATOのレザーのシャツを腰に巻いて、Harley DavidsonのTシャツ着て、、、みたいな感じでそのブランドの店舗に立ってたんですよ。
野口:はい。はい。
松本:なのでそのブランドのことは好きなんですけど、”着させてもらえなかった”ってキャリアなんで、まず新入社員から弾かれちゃってるキャリアなんですけど。笑
で、その時にやっぱ洋服を売るっていうのは自分の感覚を乗せて売るというのが好きだったので、買い物に行くことも好きですし、もちろん洋服も好きですし。
それで色々なお店に買い物に行っていた中で、「この人かっこいいな」って思って覚えている人なんてそんなに居なくて。
でも、そのうちの一人が、岡ちゃんだったっていう。のが11〜12年前くらいかなぁ。
岡本:そうそうそう。僕が新入社員で、さっき松本さんが言ってたGIORGIO BRATOとベルギーのSTEPHAN SCHNEIDERを僕が勤めていたところが代理店をやっていて。
それの販売として伊勢丹の中に売り場があって、僕のキャリアはそこから始まっていくんですけど、そこで松本さんと出会って、休みの時やプライベートでも合うようなことが何度かあって。
二人とも割とインポートの洋服を見てきたキャリアだったので、そこが今に通じてて「かっこいいものってなんだろう」っていう共通言語みたいなものが、松本さんとはすごくあるなぁとは思ってるんですよね。
野口:なるほど。そうなんですね。
松本:僕も販売員だったので接客されると買いたくなっちゃくから、基本的には販売員の人と話さないようにしようとしてたんですけど。笑
一同:(笑)
野口:分かります、その感覚。笑
岡本:その時はもうホントに振り絞って洋服を買ってましたもんね、みんな。
松本:なんかだから不思議でなんですよねぇ〜。「出会っちゃった」って感覚。こっちは話さないようにしてんのに。
でもその時は本当にちょっと知ったことを話すくらいで大したこと話してる訳ではなくて。
でもそこから、岡ちゃんの次のキャリアの時にしっかりと話す機会があって。
岡本:そう。深くなったのは先ほどのお店を退職して、大きなお店に転職して、そこから3年半香港に住むんですけど。
その3年半の香港生活を経て、最後バイヤーをさせてもらってたんですけど、その時の松本さんがやられてたブランドがあったんです。
その時から松本さんがアウトプットするものが僕は好きで買ってて。
その頃くらいからお酒を飲みながら話をしたりするような仲になって、そのあと僕が独立して、こういう縁になったっていう。
野口:10年以上の中で出会う機会が繰り返しあったんですね。
松本:そうそう。
で、僕と圍くんの出会いは、共通の熊本の先輩がいて、その人から紹介してもらったんですよ。
野口:あ、松本さんはご出身が熊本なんですか?
松本:そうですそうです。その熊本の先輩から「ヤバい生地を作ってる奴がいる」っていうのを聞いたんですけど。
ヤバい生地を作るってことは、それってヤバい人ってことだから。笑
一同:(笑)
松本:まぁ実際に生地を触らせてもらったら、一瞬で「ヤバいな」ってのはわかるんですよ。
で、その時にもう圍くんとは何かやれたらいいよねって話をお互いにしてて。
でも僕はその時別のブランドをやってたんで、その中で生地を使わせてもらおうかってすごく悩んだこともあったんです。
それで、いろいろな生地を触らせてもらったり実際に使われている洋服を買って着てみてたんですけど、その時の自分のブランドでは生地の良さを表現しきれないなって結論に至って。
だから、これだけの生地を伝えるためには、思い切ってブランドを立ち上げてやるしかないって思って。
その時に岡ちゃんを呼んだんですよね。
野口:そういうふうに皆さんが繋がったんですね。なるほど。
圍:松本さんが、最初っから「これを伝えていってもらう人は岡本さんしかいない」って言うんです。僕知らないけど。笑「もう決まってるから」って。笑
松本:このWONDER ROOMをやるにあたって、「セールスをしてもらう人はもう岡ちゃんしかいないから」っていう言い方で、半ば強引にかなりゴリッと入ってもらって。
野口:逆に言うと、松本さんの中では圍さんの作る生地に出会って、それで洋服を作りたいって思った時に、それをどう世の中に届けなきゃいけないのかというところまでが繋がって見えたってことなんですか?
松本:そうそうそう。自分が圍くんの生地を世界に出していくにあたって、表現していきたいことを伝えるにはまず岡ちゃんが必要で。
その岡ちゃんとしっかり信頼関係を築けているバイヤーさんだったら、おそらく圍くんの生地の良さもわかるだろうし、僕が世界に持って行きたい日本人としての”感覚”を理解してくれる。
でもまずは、セールスがそれを理解してないとダメじゃないですか。
野口:はい、それはそうですね。
松本:”分かってないセールス”がついてるブランドってめちゃ多いと思うんです、僕は。
それくらいセールスさんやバイヤーさん含めひとつひとつめちゃくちゃ大事なんですけど、まず岡ちゃんがいてくれるっていうこと自体がすごく大きくて。
「これならブランドになる!」っていう実感を持ちながら、圍くんと温めれたっていうのが大きいですね。
だから、この3人でやるってことは”WONDER ROOM”を始動させるときには、僕の中ではもう決まってたんですよね。
野口:そうだったんですね。
岡本:うんうん。
松本:”人”がいないと、今の時代は。ただものを作ればOKってわけではないじゃないですか
野口:そうですね、本当にその通りだと思います。
松本:僕は洋服が好きで、洋服のいろんな歴史を掘っているんですけど、今って洋服のブランドがやらなきゃいけない領域が昔より広がってると思うんです。
だから、昔ほど濃厚な服が作れなくなってきてるって僕は思ってるんですよ。
野口:なるほど。やらなきゃいけないことが多くなりすぎて、そこにフォーカスしきれていないっていうことですか。
松本:そう。だから今から僕らが世界で戦っていこうとしている中で、役割を任せれる人が周りに集っている状態っていうのが自然だったんですよ。
絵画などでもそうなんですけど、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵を現代の人が描けるかって言われたら無理だと思うんですよ。
それは、没頭できる時間が足りないんですよ。没頭してる時間の長さが全く違う。
でもそのレオナルド・ダ・ヴィンチも、旧石器時代の壁画を見て同じように描けたかというとそうではないはずなんです。
僕も、岡ちゃんも、圍くんもそうだと思うんですけど、もう濃いものじゃないと満足できなくなってるんですよ。
もう今更弱いものを僕らが出す必要がないっていうところもあるんですけど。
なので、その強さを保てるチームにしなきゃいけないってのはありましたね。
そのためには自分にできないことを認めるってことも大事で、そのできないことを2人に任せている。
圍くんとは知り合って2年半くらい?ですけど、生地を触ったらどんな人なのかなんて大体わかりますし。
圍:その2年半、毎日4時間くらい電話してましたけどね。笑
一同:(笑)
圍:でもそれくらい一つの一つのものづくりに対して全てを話してきたし、たくさんつくってみたりもしました。
でも、だからこそ深く掘り下げすぎちゃって、少しわかりにくくなり過ぎてしまったところもあって。
だから、つくることはできるけど、じゃあそれをどうやって見せていくのかって話になった時に、僕ら二人じゃダメだよねって。
松本:ほんとにね。笑
僕と圍くんじゃ表に出れないもんね。笑
圍:だからこの三人でやってるってのがありますね。
でも、僕らの中では「誰が生地担当で誰がデザイン担当で」みたいな認識はあんまりないんですよね。
それぞれが、横断して意見を出したり介入しているような関係性です。
松本:その中で、僕にしかできない役割があるとしたら、洋服以外のことを二人に話すことですかね。
圍:さっきのレオナルド・ダ・ヴィンチの話みたいなのを延々としてくれるんですよ。笑
松本:服の話だけをしてたら服が生まれないと思ってるので。カッコいいディテールにカッコいい生地をくっつければカッコいい洋服ができますよって時代でもないと思ってますし。
だから、もっと見たことのないような、未知の感覚があるはずだってのが僕のスタンスで。
つまり、洋服の話じゃないことを話さない限りは、いい洋服は生まれないと思ってるんです。
そうすることで、今を生きている一人の人間として必要な感覚が備わるようにしたい。
そこが三人の中での僕の役割かなと思います。
松本:例えば、最近、電気をつけないことにハマってるんです。
家に帰って暗くなったらロウソクに火を灯して、そこから料理をし始める。
その時に生まれる感覚が結構面白いんですよ。
普通は当たり前のように電気をつけて、人が活動できる時間を長くするんですけど、電気をつけないことで頭の思考の働き方がいつもと異なってくる。
で、「その中から何を感じるか」ということに可能性を感じるんですよね。
野口:ほぉ〜、なるほど。。。
松本:当たり前にそうしなければいけない、ってことを疑わない限りは新しい感覚の洋服が生まれないって思ってるんですよね。
僕自身、洋服の知識はそれなりにあるし、皆さんもそれなりにあると思うんですけど、そういう新しい感覚をどう洋服に繋げていくかっていうユーモアとか妄想とか空想みたいな可視化できない部分を二人と共有する。
岡ちゃんと圍くんの二人の力を使って、それを結びつけるって作業がWONDER ROOMには必要なんですよ。
少し難しい話なんですけど。。。
岡本:まとめると、僕はセールスをやってて、圍さんが生地をつくったものを、松本さんがデザインしてるっていう前提はあって。
なんだけど、それぞれの役職を超えて深くコミニュケーションをしながらものづくりをしているのがWONDER ROOMだと思います。
岡本:さっきの松本さんのロウソクの話とか、この人ガチでそういうことやってるんで。笑
で、それを聞いて僕とか圍さんがロウソクつけたりするかって言われたら、しない。笑
一同:(笑)
岡本:でもその関係性がいいなって思ってて。
松本:いや、ホントひどいっすよね。笑
圍:煌々と電気をつけて、ガンガンに洗濯機を回して生地を洗いまくってます。笑
電力を使いまくる正反対の生活です。笑
岡本:でもやっぱそういうことだなって思うんです。
全員が全員同じ方向を見て、当たり前のことをやっていてもそれしか生まれないし。
それぞれが同じような方向を向いているようで、向いていないっていうのがいいのかもしれないですね。
QUESTION2
【”編み”の世界の魅力について】
野口:次の質問に移りたいと思います。
洋服の世界においては布帛と言われる”織り”のものが多数派だと思うのですが、WONDER ROOMを通して表現しようとしている”編み”の世界の面白さってなんですか?
圍:じゃあ、僕からいきましょうか。
天竺や裏毛、特に天竺というものは一番直接肌に触れるものだと思っているんです。
それに、毎日のように着るし毎日のように洗うじゃないですか。
であれば、お客様が本当の意味で気に入ってくれるのは買ってくれたその先、何度も洗って何度も着てくれたときだと思うんです。
そして、そう思っていただいて初めて「またこれを買おう」ってなってくれる。
そうして同志とか仲間が増えていくような感覚なんです。
なのでそういったものをつくるために、まずは自分自身や自分の家族が「そればっかり着ちゃうよね」ってものを作りたかった。
で、そこに没頭してつくり続けていけばいくほど、世の中に流れていない綿や糸や、様々な工場さんに出会っていく。
そうしてひたすら突き進んでいくと、次第に「商品としてどうか」という基準ではなく「生地としてどうか」という基準に踏み込んでいくことになる。
で、そうなると、製品にするために縫って締め付けたり、染めて痛めつけたり色んな工程を経ることが、生地のクオリティにネガティブな要素が重なって製品に近づくにつれてどんどん弱くなってしまうってことに気づくんです。
なので製品になっても一番いい状態を保つためには、誰かと組まなきゃダメだよなってことを実感しました。
圍:でもやっぱり最終的には、そうしてできた洋服を着込んでいってもらった先にどう感じてもらえるかがゴールだと思っているので。
そこのお客様の肌に一番近いところで答え合わせができるのが天竺や裏毛の醍醐味ですし、僕自身が一番報われる瞬間ですね。
なので糸をどうしたとか、生地をどうしたとかはあくまで過程であるって感じですね。
松本:まぁ、圍くんの場合は工場さんとの関係も大きいですよね。
今ってお金を積めばいい生地がつくれるってわけではないので。
それも含めて、その人たちも含めてWONDER ROOMのチームだなって思います。
でもそういう人たちのところに行き着いたって感じがしますよね、圍くんの場合は。
圍:そうですね。
WONDER ROOMでは2社の工場さんを使わせてもらってますけど、どちらも「この点ではどこにも負けないよ」ってものを持ってる人たちで。
特にFRIEND,SHADOW,WAFFLEをやってくれている工場さんは、ハイブランドをやっているので十分に稼ぎがあって、新しくブランドを増やしていく必要がない人たちなんですよ。
それに、ビジネスとしてお金儲けをしようとしている人では全くないので、「こいつ面白いな」とか「わかってんな」って思わない人とは仕事をしなくて大丈夫なんです。
なので、僕も毎月2週間ほど福岡から和歌山に泊まり込みで行って勉強させてもらう生活を4年間くらい続けてたんですけど、それを本当に楽しそうにやってんのかってのは見られ続けてたんだと思います。
野口:毎月2週間を4年間もですか!?
圍:そうですそうです。妻も子供もいるのに、放ったらかして行ってましたね。
当時は他のブランドもやっていたので、2週間他のところでポップアップをやって、そのまま和歌山に入って2週間泊まり込みで、1ヶ月家に帰れないとかも平気でありました。笑
一同:(笑)
松本:ここまでやってるからこそ凄い生地がつくれるんですけど、当時の印象としては、生地が良すぎてどこのブランドも使えないだろうなって感じだったんですよ。笑
そしたら案の定、圍くんも「この先どうしましょうか松本さん」って感じだった。
圍:そうそうそう。笑
松本:良すぎてダメなことってあるんですよ。笑
どっかのブランドさんに営業行って卸すみたいなことも絶対無理だった思う。
野口:生地が完成され過ぎているってことですか?
松本:そう。隙がないんですよね。
隙がないから、生地に自分のパーソナルな部分をデザインとして落とし込んでいくよりも、生地から出てくるエネルギーを外に放出していけるようなものづくりのブランドの方がいいなって思ったんですよ。
だから、僕のデザインはパッと見そんなにデザインってされてないんですけど、これはディテールを増やせば増やすほど生地の良さが曇っていってしまう感覚があったからなんですよね。
それに、布帛と天竺や裏毛では、やらなきゃいけないデザインが全く違うんです。
それは生きている動いている僕たち人間の体へのついていき方が、布帛とは全く違うから。
だからやらなきゃいけないデザインが全然違う。
これだけの生地だからこそ、50年後100年後に物質的にも感覚的にも何かを残せるようなものづくりをせざるを得なかった。
僕は100年後の人たちにも、ものづくりをしていてほしいと思ってるんで。
だから手を抜けなかったですね。手を抜いちゃったら100年後に残ってないと思うから。笑
野口:はい。なるほど。
松本:決定的な部分としては、どれだけ人のことを想ってつくれるのかによって差が出ると思っています。
普通にTシャツやってスウェットやってワッフルつくってってやってたら、ただのプロダクトブランドになっちゃう。
だから、そうじゃなく、どれだけ人のことを想えるか。これは結構重要だと思ってます。
岡本:なんか松本さんが考えてるダヴィンチの話とか、電気をつけない話とか、そういう精神性とか色々なジャンルから生まれてきてる感覚を物質化したのがWONDER ROOMなのかなって思いますよね。
圍:ほんとそうですね。
岡本:僕の中で布帛と”編み”の違いは、やっぱりみんな言っている通り必要不可欠で、とても身近で肌着とか靴下とかコアの部分に存在してるってこと。
なんですけど、今までの自分もそうでしたし、皆さんもそうだと思うんですけど、前に来るものは布帛が圧倒的に多かった。
ただ、圍さんの生地に出会ってから、布帛と比較するとより糸質がダイレクトに肌で感じられるものなんだと思うようになりました。
経糸と緯糸の世界と何が違うのかって言われると難しいし、どっちが簡単でどっちが難しいとかって話でも絶対にないですし。
ただ、”編み”の世界が生活に紐づくものとして、WONDER ROOMは上質なものにして他にはない世界観を作っていくことができるんだろうなぁと考えてます。
本日はここまで。
明日はよりデザインや生地開発に関してのお話をご覧いただけると思います。
お楽しみに。
WONDER ROOMのルックはイベント会場で掲示しようと思っているので、そちらもまた楽しみにしていてください。