こんにちは。
CASANOVA&COの野口です。
なんだか久しぶりのブログな気がしますが、早速本題です。

daisuke tanabe
season 05 "blank slate"
preorder session
2026.09.04 (Fri) - 2026.09.07 (Mon)
今シーズンも開催いたします。
CASANOVA&COでも少しずつ恒例行事となってきました。
daisuke tanabeの先行受注会。
今回は27SSコレクションをご覧いただき、オーダーいただける機会となります。
デビュー時のseason 00から数えて6回目のコレクション。
当店ではseason 01から皆様にご覧いただいておりますが、早いものでもう6シーズン目。
田邉さんの表現する内容も1着1着の強度もより厚みが増しているように感じます。
今回のコレクション、端的に言えば、かなりヤバかった。
ノンブレーキでぶちかました26AWコレクション"atom"を、違った角度から超えた。
いや、超えたというか、新たに”今”と向き合い次に進んだ。
今回のコレクションのテーマは"blank slate"。
"blank slate" = "白紙" の意味。
とても内省的な出発点をもつコレクションです。
触れてきた音楽や映画、芸術から漫画まで、さまざまなカルチャーを通した複合的な視点から現代社会に対して問題提起を行うような姿勢を見せてきたこれまでのdaisuke tanabe。
ただし田邉さんの場合は、ただ社会に中指を立てるんじゃなくて、彼なりにさまざまな文化を咀嚼しそれを伝統的な素材や技法と衝突させるようなアプローチで既視感の無い表現にしているというのが面白いところ。
田邉さんの脳内に拡がっているdaisuke tanabeの世界は僕たちでは想像できないところまで届くほどの視野と知識量を持っていて、それを整理する知性と、洋服にする技術や表現力を彼は持っている。
今思えばそれはファーストシーズンの段階で完成されていたように感じます。
そして今回、田邉さんのパーソナリティやキャリアからくるそのような強みに加えて、彼自身の"心の動き"すらコレクションの種になった。
ファッションデザイナーとして素材と向き合い、形と向き合う。そしてそれと同じかそれ以上に現代社会と向き合おうとし続けてきた田邉さん。
年に2回、止まることを許されないファッションの流れの中に身を置き、目まぐるしく変化する社会に誰よりも敏感であるからこそ生まれる葛藤や衝動。
ごく自然なものだと思います。
そこに端を発し、今までに触れたさまざまな作品や文化と繋がりを得て、自分自身を客観視してゆく。
そんな彼自身の心の変化すらもコレクション全体の強度として作用するような、生々しくて人間味のあるコレクション。
今回の洋服たちと田邉さんとの話から、僕はそう感じました。
なので、今回はコレクションテーマに対しての僕なりの解釈を提示することは辞めます。
今まで毎シーズン、コレクションに対して影響を与えた映画や音楽などは全てインプットして、「おそらく作者はこのような意図で、こう創作したのだろう」と田邉さんの心情を読む現代文のテストみたいなブログを割とノリノリで書いていたのですが、今回が少し訳が違うなと。
デザイナーであるからこそ生まれた彼の葛藤、その精神世界にダイブすることは立場の違う僕には難しく、というか無粋であり、その葛藤が出発点であるコレクションに向き合うにはまず自分自身に視線を落とすべきだと感じたから。
テーマについて細かくここに記すことはしません。
ですが、イベント時にはdaisuke tanabeのコレクションテーマへの”あとがき”が綴られたパネルを掲示いたします。
会期中の5日(土)と6日(日)には田邉さんも在店いたしますので、ぜひ会場でじっくりと読み込んで、本人と対話してみてください。
、、、まぁとはいえ、コレクションについて何も書かないわけにもいかないので、少しだけ。
田邉さんは葛藤の中で"The Blank Slate"という本を手に取りました。
著者はSteven Pinkerという人。
彼のアトリエにあるその本はごっつい英語の本で、高校時代に英文解釈の練習用として手に取ったものらしい。
その本の中での議論は、人の心の形は生まれた時に全て決まっているものなのか、という内容。
その議論の内容を踏まえて現代社会にもう一度向き合った時、田邉さんは当初抱いていた葛藤や衝動に対して別のアンサーを見出していく。というのがコレクションの超ざっくりした概要。
ある意味においては人間が生まれてからどのように個人となるのかに向き合った内容であり、反面メタ的に見れば田邉さんの制作過程における心の動きそのものがコレクションテーマにおける最大のアンサーになっているとも言える。
まぁ、深読みしすぎかもしれないけど。
共通のベージュカラーに芯通しした後に異なる色で丘染めを施した、トスカーナ産地のゴートスエード
共通のシルク糸を経糸に使い緯糸で異なる色の綿糸を打ち込んだ、オリジナルのコットンシルクテキスタイル
同様に経緯でコントラストをつけて、田邉さんの西陣織を主としたテキスタイルメーカーでの経験を活かした紋紗織の生地
対照的な2色で展開されるこれらの素材は、どちらも同じ色を持ちながらも、異なる色に見えます。
同じようで、違って見える。
違うようで、同じに見える。
生まれ持った心の形と、経験や記憶によって与えられる心の形、そのどちらもがあって人は個人となる。
それでも、人間は政治や戦争などの大きな渦の中で、時として人間を均された記号のように扱います。
でも、本当はそんなことできるはずがない。
どれだけ大きな主語で括ったとしても、奪うことのできない個が僕たち人間にはある。
生まれ持った個と、経験や記憶によって与えられる個。
混沌とした社会の中にあっても、その両面を見る姿勢こそが自分を自分にし、目の前にいる人をその人とするための失ってはいけない感覚なのではないか。
そんなメッセージを込めた素材開発でした。
さらにもっと言えば、前作"atom"で実存主義的な背景から”個”を肯定し希望を繋ぎ止めたコレクションそのものを、誰からも奪えない確固たるものとするかのような今回の"blank slate"だと言えると思います。
創作の連続の中での心の動きを発端に、かつての自分自身すら抱きしめてあげるような素晴らしいコレクションだと感じました。
イベントまでに全てのアイテムを一つ一つご紹介することはできないかもしれませんが、このテーマのもとで作られた洋服はどれもめちゃくちゃパワーを感じます。
それは見るものを圧倒するパワーというより、直感的に心を揺さぶってくるパワー。
実物を手に取って、この感覚を味わってみてください。
また後日イベントの詳細と併せてご案内いたしますね。
9月4日から、ぜひ楽しみにしていてください。