山内 3way トレンチコート


ほんの気持ちだけ少し前に、既に店頭ではスタートしていたんだけど、ペテロオラウムのシューズのイベントをやっていたこともあり、なかなかお話しできずにいましたね。

このコート。



上の写真にある通りの2着。

で1着となる、コート。



山内の。

山内

3way トレンチコート

outer material _ cotton 65%,linen 35%

liner material _ nomulesing wool SP120'S 100%

color _ black × black

size _ 2,3

price _ ¥230,000-(without tax)



尋常じゃないくらい跳ね返りのあるコットンとリネンのアウタートレンチコートに、如実に超上質なウールのインナートレンチコート。



この2着を組み合わせることによって、どれだけボロボロな洋服との組み合わせでも絶対に消し去れない極上さを放つコートです。



想像に容易い通り、それぞれ別で着ると、アウタートレンチコートは春に。

インナートレンチコートは秋に。 ドッキングすることで冬に。

という具合です。



まあ、そのレベルがハンパないから紹介させて頂きますね。

写真を見てもらえれば分かると思いますが、合体時は衿と袖口にはインナーコートのノーミュールシングウールが露出する。

これ完全体。



前合わせはダブル。

着用時のショルダーラインや、下へと落ちるアームのアウトラインの美しさ。



全く大味ではなく、繊細さの中に男性特有の力強さが感じられる形状をしています。



このような洋服をお好きな方には全員気に入ってもらえる形をしてると思いますよ。  

2種類の生地が交錯し合うので、同じblackのカラーリングだけど、見え方が全然違いますね。



コットンとリネンのハリと軽やかさと光沢のあるアウター。

柔らかさと美しいドレープ、ウール繊維の奥の方から輝きを感じるライナー。



洋服というか、繊維レベル、素材レベルとして圧倒的に高い位置で組み合わされてますねこれ。

そして、そのどちらもを山内の超絶クオリティで縫製してる。



30番手のステッチかな。

この感じは。

少し太い糸で縫われてます。



山内さんはこの30番手という太さで縫製をすることが好きだから、よりステッチワークが立って見える。



30番手はアウターでいえば、そうそう特に変わってるってことはないんですけど、その運針数と精緻さですよね。

そこが山内クオリティを物語ってます。



アウターはその特性上、生地の厚みも出るし、どうしても構築的にはなってくるからよりテクニックが必要になりますよ。

普通に縫おうとしても。



でも、分かりやすくいえばそれをアウターを縫い上げてるようには全く感じさせない完成度の高さ。

シャツだね。シャツ。

例えるならば。

これが裏側。

ドッキング状態なので、この写真で見えているのはウールライナーの裏側の仕上げということですね。



スーパー120の原毛のノーミュールシングウール繊維を使って、それを少し太い糸にしてるものを織り上げてます。

つまりは、原料が細い。



原料の繊維が細いのは、すごく細いのですが、現在ではその数値ばかり追い求めて140や160や180とかの洋服もあるけど、これはその適性を考えて120の細さを選んでいます。



ただ細ければ良いってものでもないですからね。

洋服として完成した時を一つのゴールと考えたとき、そのゴールでどのような姿になるのかという理想を逆算したときに導き出された原料です。



まあ、かなり細い繊維なんですけどね。

それで、それを紡績して太い糸にする。



それにより、細くて長くてしなやかで光沢がある繊維を一本の糸でたくさん使うことになり、分厚くなりすぎることもなく、かといって太い糸にしてるからペラいこともなく、心地よい重みを感じながらも美しいドレープと生地の上質さを最大限感じられるってわけ。



細い原料で細い糸をつくって生地を織るとそのまま薄い生地になるから、このコートについては一定以上の厚みを出すために紡績で太い糸にしてるということですね。

原料を太い繊維の使っちゃうともはや別物になってしまうので。

イギリスのツイードみたいな。



ついでに裏の仕様は背抜きの裏地で、裏地は極力面積が小さくなってるから総裏地よりも一層この生地を服の中でも体験できますね。

ただ、よくある「ウールを纏ってますよ。」みたいな印象には全くなりません。何故ならかなりしっかりとした構造でつくられてるから。



本来からの洋服に必要な芯地などの内蔵物はもちろん、このような生地でも簡単な設定には全くなってないですよ。



まあ、写真見てもらえたら何となく察してもらえると思いますが。

2着を重ねてるときはボタンで留め付ける構造です。

右のタブは、アウターのほうに取り付けられているタブですが、合体時にはライナーの内側に備わるボタンを留める機能。

あと、写真じゃかなり見えづらいけど、分かるかな?



袖口の裏にもボタンが付属します。

これは左右の袖3個ずつ。

見返し、袖口、あとは首後ろですね。

全て本水牛のボタンで留め付ける設定。

首のボタンはこれですね。

衿裏には形状維持にも機能するステッチワークが健在。

取り外し後のライナー。



ウール100%なんですが、一般的なウールコートにあるようなタッチとは全く異なりますね。

カシミヤタッチ。



ウール繊維が持つ耐久性をそのままに、設計から織り、仕上げ方法でカシミヤ100%のコートと同じようなクオリティに引き上げてる。



まあ、先ほども少し説明はしたので、このライナーだけでもどのようなものかは何となく想像してもらえるんじゃないかな。

見た目、肌触り、保温性、どれもが超絶超人レベル。

それに加わるこの細かく丁寧な縫製。



コートでこの生地クオリティ、縫製レベルは山内だけでしょう。

もちろん大事な耐久性も結果的に備わってますよ。

ライナーの後ろに付くドッキングのための本水牛ボタン。

見てください。

この直立ボタン。



手付け仕様で根巻きして、しっかり付けられてるから、笑っちゃうくらいにボタンが立ってる。



これだけボタンが浮かび上がってるもの見たことないですね。

すんごいボタンが浮いてるけど、全然グラグラしない。



これにより、スムーズにアウターとの取り付けが行える。

二枚袖の立体的な袖に、背中に現れる恐ろしいほどの極上ドレープ。

こちらの袖口は一折りする設定。

あと、ベルトが2本、それぞれの生地で付属します。

それぞれに合わせて使ってもらっても良いかな。



まあ、ベルトだけでもすごい仕様になってるからお好きな方にはお話させてください。

ライナーと言えども、こちらも上衿裏のステッチや月腰のステッチも備わります。

細かすぎて写真じゃあまり見えないけど。

まあ、こう並べてみるとこの3way トレンチコートのクオリティの高さが一発で分かってもらえると思う。



左がノーミュールシングウールのライナートレンチコート。

右がコットンリネンのアウタートレンチコート。



でもね、このアウターとライナーはほとんどつくり込みに遜色ないんだけど、生地の特性上やはりアウターのコットンリネンのほうがもう一発ヤッてるんですよ。

こちらは半裏仕様です。

見返しの半分だけでも両玉縁のポッケがファスナータイプとボタンタイプの2つ。



そして、写真右端に備わるライナーを組み合わせるために使用するタブは、ライナーを取り外した際にはプランプランしないようにボタンで留め付けられるようにしてます。



山内さんは意味のないディテールや不完全なものを嫌う人だから、とにかく一貫して徹底して、細部にまで手を行き届かせる。



だからもちろんプライスにそれは反映されるけど、今の時代、こういった洋服こそが正当に評価されるべきだと思います。

ウルトラ綺麗な見返し。

ハリと光沢がある生地な分、ステッチも更に際立ちますね。

そのアメージングなステッチは、夥しい数の点に見えてくる。

背中のセンターベントの留め。 と 共生地のベルト。

こちらはポケット口。

これヤバいのよ。



ポケットの負荷がかかる箇所は二重ステッチ。

寸分の狂いもなく。 痺れるわ〜。



そうそう。 そもそも山内の洋服には本来あるはずのものがほとんど存在しないんですよ。

それは、 返し縫い。

縫い始めと縫い終わりの部分に解れないようにするものですね。



理由は、返し縫いをすると一部分だけ縫い糸が固まってしまったり、見え方が山内さんの理想とは違って見えるから。



ただ、山内以外は皆無じゃないかな。

フツー返し縫いしなきゃいけないから。



これこそ美しい縫製を続ける山内ならではのところなんですが、写真では残念ながら全くお伝え出来ないので想像してください。



でね、このアウタートレンチコートの生地についてはほとんどお話してなかったですが、、 ヤバいのよ。 これも。

こういうの大好きな人いるでしょうね。



日本の限界、超々強撚糸。



先ほどもハリがあるとか光沢があるとかいろいろ生地のこと言ってましたが、これは限りなく表面加工を行わず、果てしないくらいの手をかけて作り上げられた生地なんですよ。



まず、コットンとリネンの生地であるのにも関わらず、ほとんど毛羽立ちがない。



これは糸の段階で入念に入念に、根気よく丁寧に「毛焼き」を行って糸の毛羽を焼き払ってる。



一般的には製織後に生地表面に特殊加工を施して、「毛羽を抑える」ということがあるけど、これはもっと前段階で毛羽を丁寧に除去。

だから糸一本一本の美しさが違うのよ。



でもね、一番伝えたいのはそれじゃない。



超々強撚。



これ大事。

とてもとても大事。

これ覚えるのが今日一番大事かも。



通常、糸には3段階。


・甘撚り(あまより),弱撚(じゃくねん)

・普通撚り

・強撚(きょうねん) この3つがある。


・甘撚り

甘撚りはニットセーターなんかに使われるかな。

ものすごい毛羽立ちあるでしょ、セーターって。 あれは糸の捩りが弱いから。

でも、それによりふんわりとして、空気をいっぱい含むの。


・普通撚り

フツーだ。


・強撚

強撚は生地のクオリティを謳うときには見ることがあると思う。

強撚は生地がサラッとした表面になりますね。



分かりやすい話、ウール。



ウールはセーターからスーツまで使われる。 簡単に言うと、同じ原料でも糸の撚りを甘撚りor強撚にするかでこの二つの全然違うものにつくることができる。



甘く撚ってセーターに。

強撚でスーツに。



みたいな。



まあ、こんな前情報は置いておいて、 通常、強撚は1200回程の撚糸と言われています。

1200回捩るんだから相当な数値ですよ。



雑巾絞るときに1200回も捻じれないでしょ。

でも、これは辿り着いたその境地。

日本で限界数値だそうです。

これ以上強撚にはできない。

超々強撚糸。

2000回の撚糸。




あ〜ヤバい。

これはヤバい。

凄まじいですね。



って言ってもピンとこないと思うから、実物見てください。

あり得ない程、生地表面が美しいので。

でも、このブログを見て頂いている方にはご覧いただきましょう。



マイクロスコープで超々強撚の世界を。

うん。 もはや、撚糸され過ぎて、針金みたいになってるわ。



あと、原料が良すぎるのと、加えて強撚になればなるほど、光沢が生まれるので、マイクロスコープのライトが反射してます。



だから、何となく感じてください。



でも、ここまで捩られてるのはホントないですよ。

素晴らしい生地。

強度、滑らかな美しさ、ハリ、身体への馴染み。



着古していった先を楽しみにさせる、とてつもないポテンシャルを感じさせる生地。



これは所有者のみが体感できるスペシャリティーな世界。

付属のベルトを縛っての着用も良いですし、これだけのコートなので羽織るだけでも充分ですね。



プライスはプライスだけど、お好きな方にはそれを分かってもらえる。

筈。



コートはやはり洋服の中でも特別な存在のものでもあると思います。

山内の洋服づくりがふんだんに注がれたコート。



見てみてください。

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