現在開催中のdesertic EXHIBITIONも残すところ、あと数日となりました。
皆様にご覧頂け、そして、写真より実物を見た時の圧倒的な迫力を感じて頂けているようでとても嬉しく思っています。
26日(日)までの開催ですので、既にご覧頂いた方はリピートしてもらっても良いですし、まだご覧頂けていない方にも見てみてもらえたら嬉しいです。
今日は、紹介できていなかった山内を紹介させて頂きますね。
先日紹介した、泥染めの3wayドッキングコート以外にもありますから。
ドッキングコートのレベルは凄まじくハンパないですが、こちらも山内してるアウターです。
寒くなってきましたからね。
とても良いと思いますよ。
山内
ヤクシープパイル・ジップジャケット
fece material _ COTTON 86%,YAK 14%
lining material _ COTTON 70%,POLYESTER30%
other parts _ COTTON 100%
※中綿入り
color _ YAK BEIGE (無染色)
size _ 3,4
まずこれ。
山内の山内さんが気に入ってつくっている、今治産のパイル生地があるんですが、そのシリーズです。
パイルといっても、その辺のタオルとかとは全然違うクオリティです。
"パイル織り"っていうのがあるから。
その組織で生地をつくるのは、やはり今治。
混率でいうと、コットン86%で、ヤク14%。
パイル状にループしているのがコットンですが、このコットンも少し独特な色合いがある。
これは、当店でも山栄毛織さんにつくってもらったtilt The authenticsとのグアナコ生地の洋服で使ったコットンと同じもの。
アメリカでサリーフォックス女史が開発し、ドーシーアルバレスさんが育てるコットンですね。
コットンそのものが"ブラウン"と"グリーン"をしているもの。
ブラウンコットンと、グリーンコットンですね。
僕は、この自然に発色する特有の色合いに魅了されてるの。
そして、その周囲にいかにも柔らかそうにフワッとしてるのが、"ヤク"。
この"ヤク"の繊維も無染色。
パイル組織のフラットではない奥行きと、人工的ではない繊維そのものの複数種類の色の組み合わせ。
結構迫力ありますよ。これ。
でもまあ、それをダブルジップのブルゾンにしてるから、それなりに気兼ねなく着られる洋服に仕上がってると思います。
こう見えて、独特な形で、前身頃と後身頃の切り替えが肩線になく、前身頃がそのままバックヨークまで伸び、そこで切り替えられてる。
そして、脇身頃の切り替えもない。
でも、ご覧の通り、全然過剰な見た目じゃないの。
一見すると、この手の見た目をしてるので、真冬のアウターの中にも着ることができそうな、軽いブルゾンに見えるじゃないですか。
大体、このような"ジップアップブルゾン"は、そういう軽いアウターみたいな枠組みに収まりますからね。
でもね、これは全然違うの。
むちゃくちゃアウターです。
コートのインナーにはできません。
気兼ねなく着られるような形をしてるし、でも、生地が迫力あって、中綿も充分に入ってるし、真冬のアウターとしての防寒性・保温力も兼ね備えてる。
洋服のバランスを見ると、ネックの高さや余白、アームの太さ、全体のボリュームなど、このジャンルの洋服では、類似があまりないような出来上がりになってるんですよ。
縫製や生地、超絶細かい仕様などにウルトラ特化してるブランドですが、この洋服は、服として、すごく山内の山内さんの独特な"匂い"があると思う。
このジップブルゾンを所有した方は、冬場にむちゃくちゃ着て使ってもらえるんだろうなっていうのを、初めてこのブルゾンを見たときに感じたの。
特に車移動の方ですね。
加えて、ブランドでは2,3,4の3サイズでのサイズ展開なのですが、僕のような小柄な人がこのブルゾンを着てる姿があまり想像つかなかったんですよね。なんとなく。
似合わないとかではなくて、僕の頭の中には、170cm前半〜180cm前半くらいかな?という男性像が浮かんできた。
だから、サイズ展開は、3と4のみです。
裏地付き。
裏の見返しと裏地の切り替えを利用したポケット付き。
もちろん、表にもポケット完備してます。
でもね、このブルゾン、、、
パイル生地で、生地そのものに結構ボリュームがあるんですが、そういう生地って縫製箇所が膨張して、爆発寸前になるものって多いんですよ。
でも、これは、かなり膨らみがある生地なのに、各所の切り替え線がバッキバキ。
表から見えるシームも、生地を損なわず、見事に共存して入ってる。
このブルゾンの縫製者、、、
"山下 葉子さん"。
この方は、以前、このブログでも少し紹介をしたことがあるのですが、山内の山内さんが、"縫製の神"と呼ぶ縫製者さんだ。
このブルゾンは、山下葉子さんが縫わないと、この見た目、このクオリティにはならないの。
実物はすごいですから。
生地と、縫製、山内の"匂い"のするバランスの仕様。
休みの日などに、暖かく、軽く着られるアウターだけど、この独特なムードのする洋服は、まるでないと思う。
表層的なデザイン先行ばかりの洋服、プロモーションが上手いブランドの洋服とかはどんどん次々に移り変わって色々あるけど、こういう洋服ってそことは全然違うものを発してるんですよ。
良いものだと思いますよ。そういうの。
山内
ハイブリッドコットンクロス・マウンテンコート
fece material 1 _ COTTON 100%
face material 2 _ COTTON70%,POLYESTER30%
lining material _ HEMP 100%
※中綿入り
color _ DARK NAVY × BROWN
size _ 2,3
そして、次はこれ。
表に3種類の生地が組み合わされたコート。
山内のブランドの歴史は15年前後だったと思うのですが、"山内"というブランドになる前、前身の"yamoci"という名前の時があったんですよ。
その時は、見た目にも力強さが溢れてる洋服が多かったのですが、ここ最近はその当時のようなニュアンスの服も多くなってる。
先ほどのブルゾンの全体のアウトラインもそうだし、このコートの組み合わされた生地使いもまさにそう。
このコートは、先述の通り、3種類の生地が組み合わされてる。
肩周りや袖には、強い"塩縮加工"が施された"塩縮撥水ストレッチコットン"。
そして、身頃を主として、"超高密度ハイブリッドコットンクロス"のNAVYとBROWNカラーのが使われてる。
縫製やとにかく細かい設計の洋服づくりを行う山内ですが、生地開発というものも長年かけてずっと一貫して行い続けてるんですよ。
まず、肩周りや袖を覆う"塩縮撥水ストレッチコットン"について。
この生地は、名前の通り、撥水性能を持つ。
この生地も天然繊維ばかりを追究するブランドならではなのですが、ベースとなる生地に、強い塩縮加工というものを施し、生地を縮めて高密度にする。
そうすると、生地を構成する糸と糸が隙間がなくなり、限界まで縮まることで行き場のなくなった糸同士がせめぎ合い、表面にシボが生まれる。
その上に、撥水加工を施す。
更に、高密度になり、表面にシボが出た生地の凹凸をなくすために、繰り返し、叩き込む加工を施して、平滑な表面感にするそうだ。
そうして出来上がった生地は、明らかな高密度感と、微かなヌメリ、強いハリとコシ、奥の奥の方から僅かにボコボコとなっているような複雑な表情に出来上がってるの。
そして、それに組み合わされる、NAVYとBROWNの"超高密度ハイブリッドコットンクロス"という生地。
この生地は、今までブランドで細い糸を、世界最先端の織機を使って、限界値の高密度で、シャツ生地をつくってきたものの進化Ver.。
今までは細い糸でつくっていたものを糸を何段階も太くすることで、もの凄く力強く重量感のある生地をつくってる。
これまで同様に、日本では非常に珍しい世界最先端の綿織物の織機を使うことで、物理的に、糸と糸の隙間をなくし、異次元の高密度を実現したものなのですが、"生地"というよりも、名前にあるように"クロス"と言った方が伝わりやすいかもしれないですね。笑
今では、葛利毛織さんと共に生地をつくっているから、ウールやヤク、アルパカ、キャメルなどの素材も存在しますが、"山内"になった当初は、動物繊維を使っていなかったブランドですからね。
コットンとリネンだけを駆使して、春夏と秋冬の日本のそれぞれの気候に適した生地をつくっていたことだってある。
だから、そのコットンへの引き出しもすごくあるんですよ。
山内さん自身の、これまでの経験が非常に活きている生地だと思いますよ。
でもね、このコート。
そういう開発を続けてきた生地なんだけど、本当にヤバいのはここから。。。
この縫製。
全く狂いがなく、見事なピッチでバキバキに縫い上げられている。
ただ、他のブランドが追従できないようなヤバヤバな縫製仕様が隠れてるの、、、
それが、3wayドッキングコートでもあった、、、
"返し縫い"が存在しない。ということ。
"返し縫い"。
つまり、縫い糸がほつれないようにするために、"縫い始め"と"縫い終わり"に行なう、「行って戻る」というような誰もが当然のように行なうこと。
ただ、山内では、コレクションを象徴する洋服では、その"返し縫い"を行わず、縫い始めと終わりの箇所の糸を、"反対側(裏)から引っ張り、手で結び止める" = "糸抜き"という極限技法を行なうの。
理由は、山内さんが"ステッチが重なるのが綺麗に思えない"から。
縫製が綺麗だと、洋服の仕立ての見栄えはやはり全然違う。
ブランドとして、"細かく綺麗なものをつくりたい。"ということを徹底的に貫いて、このような仕様を行ない続けている。
だから、よく見てください。
それぞれの、縫い始めの箇所の、どこにも、"ステッチの重なりがない"。
それを複数の生地が組み合わされ、パーツの多いマウンテンコートというもので搭載してる。
長い距離の縫製も、短い距離の縫製も関係ない。
どこもかしこも、ステッチは、一本だけなのである。
ただね、ヤバいことは、加速する。。。
このマウンテンコートは、先述の通り、3種類の生地が使われてる。
それぞれ、ブラックとネイビー、ブラウンの3色だ。
もう一度、写真をよくよく見て、、、
分かりますかね?
どの色の生地を縫うのかによって、全て、縫い糸の色が変えられてる。
ネイビーのハイブリッドコットンクロスには、ネイビーの縫い糸。
ブラウンのハイブリッドコットンクロスには、ブラウンの縫い糸。
"糸抜き"で、手で縫い糸を結んでいくという工程を行ないながら、常に細かなステッチワークで縫い続け、その上、縫う箇所に応じて、縫い糸の色を全て変える。
シンプルな洋服ならまだ頑張れるかもしれないですが、むちゃくちゃディテールが多いマウンテンコートですからね。笑
ここまで、徹底して設計できる山内さんと、それを縫う縫製者さんとの忍耐力がハンパじゃないの。
どんな業界でも、どんどん簡素化されていくことが多いものじゃないですか。
それで生産効率も上がり、スムーズにいくこともあるとは思う。
だけど、ものづくりを行おうと思った時には、僕は、簡単なもので良いものができるとは思わないんですよ。
だから、僕自身は、山内の洋服がとても好きだし、すごく評価したいと思ってる。
こんな洋服づくり、世界を広く見ても、15年も変わらず続けられる人、ほとんどいないから。
そして、それが、必ず、着用する人への恩恵がある。そこが山内の洋服のすごいことだと思ってる。
このコートを縫うのは、福岡県に住む、成清さん。
まじで、ハンパない。
23AWシーズンの山内のコレクション展示会で、3wayドッキングコートのサンプルは、山内さん自身が、マウンテンコートのサンプルは成清さんが縫ってたのですが、サンプルを縫った時点で、成清さんが「このマウンテンコートが最近で群を抜いて大変だった」と言ってたそうですよ。
僕もこのコートを見て、"魂が震えた"から、サイズ2と3でオーダー。
裏は、起毛したヘンプ100%の総裏。
これも山内ならではの裏地です。
フードは、ファスナーで取り外し可能。
前立ての見返しや首に当たる部分には、ログウッド染めのヤクのボア。
フロントファスナーは、エクセラのダブルジップです。
このコートも、やってることは凄まじいですし、中綿が入り、防寒も充分。
冬には最適だと思います。
お好きな方々は、見てもらえたら山内の洋服の凄みを感じてもらえると思いますよ。
見てみてください。