Nobuyuki Matsui "Curtain"
今日は、Nobuyuki Matsuiの新コレクションを少し紹介しますね。
"Through the curtain"
以前は、パリでショーを行っていたこともあったのですが、このコロナの時代になってからパリでの開催はしていなかった。
そんな中で今回のコレクションは、東京ファッションウィークの時に、浅草の古い建物を改装したアトリエ兼ショールームでショーを開催してたのですが、それに招待してもらったんですよ。
だから、とてもね、それが印象に残ってる。
コレクションテーマの通り、カーテンを通してものを見るような様子、はっきり見えない、曖昧に、でも、それを通して見ることによって美しく見える様、それとともに心地の良い洋服をつくることを考えたコレクションです。
でも、細部はかなりNobuyuki Matsuiの松井さんしてるクオリティ。
Nobuyuki Matsui
Cardigan
material _ COTTON 78%,SILK 22%
color _ WHITE
size _ 2,3
※完売致しました
まずこれ。
カーディガン。
見て分かると思うけど、カーテンのレースの編み地ですね。
Nobuyuki Matsui特有の左右非対称に設計されてるカーディガン。
左袖は、ラグランスリーブで前立てなし。
対して、右袖はセットインスリーブに、前立ての切り替え。
この左右で形状の異なる袖付けは、これまで何度もこのブログで書いてきたのですが、松井さんの最も得意とするテーラーリングベースの考え方のエッセンスを踏襲したもの。
松井さんは激ヤバデザイナーですからね。
デザイナーだから、もちろん、絵型も書くし、手でパターンも引けるし、縫製もピカイチのレベル。
それでいて、生地を織ることができる。
その時点で、日本にはいないんじゃないかな。そういうデザイナー。
加えて、先述の通り、最も得意なジャンルが"スーツ"。
"本毛芯"を使って、"ハ刺し"仕様のハンドのスーツをつくるデザイナー。
ヤバいね。
そんなデザイナーいない。
そういう松井さんだから、既成服の分野でもちょびっとだけ、少しパターンの変化でどういうことが起こるのか、着用者の方に体感してもらう意味も込めて、左右でスリーブパターンを変えてるの。
これ。
平面に置いて、腕を自然にそれぞれ左右に広げた様子。
左袖と右袖で、それぞれ腕の上がる角度が違うのが分かってもらえると思う。
もちろん、左右で肩の切り替え線が違うから、それがデザインアクセントにはなるんだけど。
存分にご体感ください。
ラグランスリーブとセットインスリーブの違いを。
これ。
編み地は、カーテンのレースをイメージしたオリジナルの編み柄です。
この編み立ても全て松井さんが設計した、世に他にないもの。
このレースの部分は、コットン100%ですね。
これ、はっきり言って初めて見た瞬間は、かなりハードルが高そうで、着れるかな??って感じだったけど、とりあえず着てみたら、意外や意外。
フツーに着れる。
フツーじゃないけど。
でも、全然フェミニン男子にはならない。
編み目の隙間はあるから、透ける感じはあるんだけど、例えるなら、アランセーターを着てるような見え方に感じるんですよ。
だから、それなりにオシャレな人なら全然余裕で乗りこなせると思いますよ。マジで。
あとは、まあ、ご覧の通り、風の通りがすごく良い。
これ、春夏には超快適。
このカーディガンのリブ部分は、全て、シルクの絹紡糸(けんぼうし)。
だから、リブの箇所だけ少し編み地の輝きが強い。
右の前立ても。裾リブも。
絹紡糸。
こう見ると分かりますかね。糸の違い。
リブは、光沢と透明感がある絹紡糸。
そこから編み地の本体は、気持ちマットになるコットン100。
あまりにも美しい切り替え。
ボタンは、ご覧のように、もちろん手付け。
透明度の高い大きめのホーンボタン。
一つ一つ柄の入り方も違います。
レースの編み地を形成するコットン100の糸は、何本も撚り合わせて太くしてあるから、安心安心。
かなり丈夫だと思いますよ。
だから、心置きなく着てもらえる。
糸が太いから、アランニットみたいな感じにも見えるのかな。着たときに。
バック。
これは、アイボリーの色合いなんですけどね、WHITEというカラーリングですが、もう一つの選択肢として、NAVYがあったんですよ。
でもね、この編み地が活きて着ることができるのは、完全にWHITEだなって思った。
だから、これは一色のみの取り扱い。
Nobuyuki Matsui
Pullover
material _ SILK 77%,COTTON 19%,CUPRO 4%
color _ NAVY
size _ 2,3
※サイズ3は完売致しました
対して、こちらNAVYのクルーネックタイプ。
こっちのプルオーバースタイルのものは、WHITEとNAVYの展開だったんですが、こちらはカーディガンと対照的にNAVYのみ。
理由は、こっちは混率の多くを占めるのが、シルクの絹紡糸だから。
WHITEだと結構、煌めきが強かったから、シルクの特性上、深いNAVYの色合いで、奥の方から光るように見えるこのNAVYが良かったの。
身頃の編み地もほとんどがレースじゃないですしね。
ということで、こちらはNAVYです。
このプルオーバーも、誰が見ても特徴的。
右肩から、左袖の肘上にかけては太いレースの編み地。
そして、左袖は同様にラグラン。
そして、フロントも編み地と共に、素材も切り替わる。
揺れ動くカーテンの隙間から物事が見えるように美しく変化し、糸が揺れるように垂れる。
絹紡糸がグラウンドを占めるのですが、そこからキュプラとコットンに組織が曖昧に切り替わる。
これが後ろ。
ご覧のように右袖は、セットインスリーブ。
そして、編み地はシルクのみ。
やはり、この絹紡糸のニットですからね、MOTHER HAND artisanの時にも紹介したけど、すんごい着用時の肌当たりしてますよ。
Nobuyuki Matsuiの松井さんは凄まじい技術のあるニッターさんと連携してるから、簡単にできないことを実現できちゃう。
過去にも"Nobuyuki Matsui編み"というような名称が付けられる編み組織も開発してたくらいですからね。
素晴らしいニットを生み出すブランドでもあるワケ。
キメの細かさと美しさ、不明確な曖昧さが共存するニット。
これは、絹紡糸のニットでこういうのをつくれる松井さん特有のものですよ。
これも着て驚いて。
Nobuyuki Matsui
Shrink raw edge jacket
face material _ COTTON 100%
sleeve lining material _ CUPRO 100%
color _ GREY
size _ 2
最後にこれ。
生地表面の均質性をとらず、表面の不明確さ、洋服のパーツの境界の曖昧さを表したジャケット。
これは、Nobuyuki Matsuiの固有のバランスで、袖は長く感じるけど、手が長めの方が着れば、めちゃめちゃに、超絶的に、サイキョーになるジャケット。
僕は、腕が短いから袖余ります。
ベースの生地は、コットン100の右綾。
全体には、生地の段階で気持ちムラ状に施された塩縮加工。
これにより生地全体が縮み、ボコボコと凹凸が出てる。
あと、塩縮のおかげもあり、僅かながらに色の濃淡も出ています。
衿にはステッチが入らず、浮かび上がるような設計。
誰が見ても分かると思うけど、エッセンスとしてはデニムジャケット。
隠しで胸ポッケとウエストポッケが存在します。
Nobuyuki Matsuiの真骨頂の研ぎ澄まされた、生地端ギリギリを攻める縫製テクニックと、コレクションテーマに合わせ、縫い代幅とピッタリ合わせた断ち切り生地の差し込み。
シンプルに見えるけど、ディテールの細かさと、狙って生み出した均整の取れた構造。
この洋服を一時間くらいじ?っと見てたら、全部がめちゃくちゃ細かい設計されてるのが分かってもらえると思う。
これ、袖の肘部分の切り替え。
こちらも同様に、ダブルステッチの縫い代と、切りっぱなしの生地との幅がピタリと同寸法。
ただ、カットオフされた洋服だとね、雰囲気重視で、いろんなところが誤魔化せるから、服として雑なものってむちゃくちゃ多いですからね。
そういうものは僕はダメなの。
Nobuyuki Matsuiの洋服は全部が研ぎ澄まされてるから。
バック。
松井さんのつくる洋服は、布帛のものでいうと、やはりかなりシャープな洋服が中心なのですが、全体が見事に必要な場所にシェイプが効いてる。
これもバックの切り替えを利用してシェイプ。
ルーズサイズ主流の中だから、全員に。って訳にはいかないと思いますが、こういうジャンルの洋服が好きな人にはとても気に入ってもらえる。と思ってる。
内側。
シーズンが春夏ということもあり、一重の仕様です。
しかしながら、ポケットの袋布のところなどはバッチリパイピング。
結構厚みのある生地なんですけどね、全部が生地端のコバステッチの入り方が見事中の見事。
裏までむちゃくちゃ丁寧な仕様。
これもこのブランドの共通事項の一つ。
ほら。
この裏。
超ハイレベル。
袖裏のみブランドオリジナルの世界で一番分厚く、丈夫なキュプラ100のゴールドの裏地が付きます。
これは、完全に着脱時の滑りを考えてのことです。
写真じゃあまり見えないけど。
これ。
サイズは、ブランドの中でも一番小さい、サイズ2のみの取り扱いですが、合う人にはバッチバチにイケると思いますよ。
Nobuyuki Matsuiの洋服見てみてください。