"夏のシャツ" 山内
とても暑くなってきた今に到着しました。
山内
メッシュ組織のウールシャツ。
山内
ノーミュールシング メッシュウールシャツ
material _ wool100%
color _ sand beige
size _ 2,3,4,5
山内
ノーミュールシング メッシュウールシャツ
material _ wool100%
color _ navy
size _ 2,3,4,5
長袖ですが、夏場に風が通り、涼しく着てもらえるものだと思いますよこのシャツ。
素材は、山内が使うノーミュールシングウール。
羊に対して虐待と考えられるような行為をしていないウールです。
原毛で言うとSUPER120Sを100%使っていますね。
とても細い原毛です。
その細さのため、結果的にチクチクとした肌への刺激のない糸が生まれます。
そして、その糸を"メッシュ"で織り上げた生地を使っているシャツです。
カラーリングは、ご覧の通り、サンドベージュとぱっと見では黒にも見えるような深いネイビー。
やはり綿織物では出にくい色のトーンはウールならではですよ。
遠目で見るとメッシュで隙間の空いている生地だということは認識できないのですが、近くで見るとこのように小さな隙間が空いてる。
この生地は、当店で昨年の11月末に山内とつくった"ヤクウール"のコート、ジャケット、パンツがあったのですが、
その生地をつくった"葛利毛織"さんが製織した生地です。
メッシュというと、スポーツウェアやアウトドアウェアなどのイメージが通例で、洋服になった場合はかなりカジュアルに振り切られるものばかりですが、これは葛利毛織さん特有の"艶のある"高級さが滲み出まくってる。
これ。
これはsand beigeのほうですね。
経糸、緯糸、ともに三本がギュッとくっついて、その分隙間が生まれ、メッシュになってるというのが簡単なイメージです。
navyは後染めの生地なのですが、sand beigeはご覧の通り、"先染め"。
経糸、緯糸を構成するのが三本の糸。
その三本を構成する一本ずつの糸は、それぞれ糸染めがされてる。
その糸染めがされた一本の糸を双糸にし、その双糸を三本ずつ経糸、緯糸に使ってます。
つまりは、
"先染めの一本の糸"
それを
"双糸(二本の先染めを撚って一本の糸に)に"
それを
"三本くっつけて配置する"
というのがこのメッシュ構造です。
通常は、やはり生地の密度が高くなればその分、丈夫になるのが一般的な考え方ですが、これは隙間が空いてるので、そのセオリーから考えると弱い生地になってしまいますね。
でも、葛利毛織さんがつくり、山内さんが洋服にするものが弱いワケない。
特にメッシュ組織ということもあり、着用想定シーズンは、春夏秋。
ということは必然的に洗濯する回数も冬物に比べて多くなるし、耐久性が絶対に求められてくる。
だから、隙間が空いていても丈夫で、度重なるヘビーヘビーユースにも耐えられるものに仕上げてるワケ。
どうしてるのかというと、上のマイクロスコープの写真をよくよく見てもらえればご理解頂けると思いますが、この生地で最も負荷がかかってくる箇所は、経糸と緯糸の交差する接地点。
そこを丈夫にするために、その交差する接地点での経糸と緯糸をそれぞれ一本と二本ずつに交互に上下に配置していますね。
これにより隙間が空いていても全箇所でしっかりと目がガッチリと固定された状態で交差し、生地が成り立つという構造です。この生地。
で、マイクロスコープの写真を見てもらえると分かる通り、糸になる前段階での先染め糸を使ったsand beigeなので、全4色のウールの色糸から構成されるとても奥行きのある生地になっていますね。
そもそもこの生地は、山内さんがこのシャツを考える前段階で葛利毛織さんが40年くらい前につくっていた過去の生地資料を見ていたそう。
それでこの生地に惹かれ、今に蘇らせてもらったものだそうです。
だから、高級さもあるんだけど、それだけじゃないどことなくオールドな雰囲気も漂ってます。
まあ、構造は上記の感じなんですが、生地のタッチとしては、かなりサラッとしてますね。
こういうの好きな方にはなんとなく想像してもらえるタッチだと思います。
でも、葛利毛織クオリティなので、単純にサラッとしてる感じじゃないんですよ。
重厚な生地ではないんですが、生地が下に落ちようとする激しいドレープと、でも隙間が空いてるから風が通ってフワッと浮かんでくるような、逆の共存。
あとは、SUPER120sウールの滑らかさが絶対的に残っていて、強撚でサラッとしてるんですけど、それでも強すぎることなく"ザラっと"することはないの。
よくあるじゃないですか。
サラッとしてる。じゃなくて、
ザラっとしてるもの。
あれじゃない。
そこまで強い刺激のあるタッチではないので、心地よく着てもらえると思いますよ。
それでいて、ウール100だから汗をかいても全くベタついてしまうことがないし、乾きも早い。
しかもしかも、コットンやリネンなどの植物繊維とは繊維の主成分が違うから、汗をかいたまま着用を続けても臭くなりにくい。
これおじさんになってくるととても重要ですね。
そして、縫製仕様は山内してる。
シャツは通常では、一枚の生地を使った一枚袖というものが中心ですが、二枚の生地を使用した二枚袖仕様。
剣ボロの開きは二枚袖の切り替えを利用した開きの仕様。
この剣ボロも通常より重なりの深い設計で、ボタンを留めたときにインナーや肌が見えてしまわないよう、きっちりと閉じて見えるよう考えられています。
衿はコバステッチではないですが、端から4mmのところにあまりにも細かい運針でのステッチが走っています。
sand beigeは全て本"茶"蝶貝ボタン。
ブラウンカラーの本蝶貝。
バックヨークは付きません。
これまたヨークがないことによるドレープの優美な陰影をお楽しみください。
これが裏。
良いシャツの定義みたいなものの一つで、シャツの縫製仕様がどうだとかあったりしますが、これはその考え方を覆してくれます。
だいたいシャツでは、"巻き伏せ本縫い"とか、"折り伏せ縫い"とかと言われたりしますが、その縫製仕様ではこのシャツには適してない。
この生地が最も活きて、それでいて外側の見た目に悪影響を及ぼさないような仕様で組み上げられています。
裾は、三つ巻き。
脇は、袋縫いで表にステッチが出ません。
袋縫いにすることで生地がガチっと固定され過ぎず、サイドビューからの豊かなドレープが出てくれます。
そして、これ。
オーバーロック。
このシャツでいうとオーバーロックは、"前身頃と後身頃の接ぎの肩線"、"アームホール"、"二枚袖の接ぎ"に使われています。
これがコットンのシャツだと山内でもこのようにはしないのですが、今回のこのシャツで上記の3箇所をオーバーロック処理することにより、縫い代が硬くなってしまうことがありません。
これが折り伏せだったり、しっかりと固定されるような仕様だとどうしても表にボコッと膨らみが出てしまったり、あまり良好な見た目にならない。
だから、適した場所に適した仕様を行うことで、このウールメッシュ素材を最大に活かすことができるシャツが完成する。
あと、これはこのシャツに限らず、山内の洋服全てに共通することなのですが、例えば、縫われてしまって内側に入り、見えなくなってしまった生地の端でも山内の洋服は"全て生地端をオーバーロックで処理"しているそうです。
そんなこと他に誰がするんだって感じですが、普通に馴染んでしまうように見えても、実は内側の見えないところまでもきちんと縫製している。
これは山内さんが表立って言っていないことですが、以前に山内さんに追及したら教えてくれました。笑
このシャツを"丸縫い"で縫い上げるのは、山田さん。
山内では通常はシャツとなると、埼玉県のシャツ工場の"ファッションいずみ"で縫われることが中心なのですが、これは山田さんが丸縫い縫製を行っています。
ちなみに、埼玉のファッションいずみさんで縫われたものには、「縫製責任者 水出千代子」というタグが付きます。
生地染めでありながらも、とても深いネイビー。
これはウールならではですね。
コットンで生地染めとなるとなかなかこの色合いは難しいですからね。
sand beigeのほうも、navyのほうも長袖ではあるのですが、着てると明らかにコットンのシャツとは全然違う感じになってくれますよ。
この長袖のほうは、僕は何を思ったか全サイズをオーダーしているのですが、まさかの各一点だけというオーダーだったので、ご検討頂ける方は早めに見てもらえたら良いかもしれません。
山内
ノーミュールシングメッシュウール ショートスリーブシャツ
material _ wool100%
color _ navy
size _ 2,3,4,5
こちらは先ほどのシャツと同じノーミュールシングウールのメッシュの半袖Ver.です。
こちらもブランドで展開のある最小サイズの2から最大の5までの展開です。
サイズ感は気持ちこちらのほうがスッキリしてるかもしれません。気持ちね。
山内では珍しく台衿がくっきりとくり抜かれたようなネック仕様。
でもね、ネックがフェミニンにならないようにこちらは同じ生地で、ガッチリと首が固められています。
更には、両サイドにはコバステッチ入り。
これにより、丸い首で柔らかく見えるのですが、しっかりとエッジが利くので男っぽい首周りの見え方になりますね。
縫製仕様の一つでも、見え方は大きく変わる。
シンプルで柔らかく、半袖だし丸首だし、カジュアルな見た目のですが、端々がキッチリと硬く構築されているシャツですね。
角が出る箇所は、しっかりと角があり、それが着たときにすごく立体的な洋服として見える。
これ、インナーにタンクトップ着て、このシャツ着たらかなり快適だと思いますよ。夏場は。
着用時の印象としては、めっちゃフォーマルなベースボールシャツみたいに見えるかもしれませんね。
こういうの好きな方には良いかもしれません。
これが裏。
先ほどの長袖のシャツと同じ生地ではあるのですが、上記のようにどちらかというとこちらの方がしっかりと"硬い雰囲気"で縫われているって思ってもらえたら良いです。
それは、やはりショートスリーブという洋服だからなのですが、長袖に比べてどうしてもリラックス感が出てしまうのが半袖の洋服なので、その分、少しだけカチッとした縫製仕様を採用してバランスをとってますね。
よく考えられてる。
このショートスリーブシャツは、おじさんっぽい格好にはとても相性が良いと思いますよ。
まあ、写真撮ってないけど。
長袖のものも半袖のものもどちらも生地は同じなので、より灼熱になってきたときのことを想像して手に取ってもらえたら嬉しいです。
どちらも家庭での洗濯オーケー。
あとは、先日紹介した"Watanabe Textile"さんで織り上げたキュプラの経糸でレーヨンとシルクが混紡されてる黒のオープンカラーシャツがあったのですが、それの組下というか同じ生地のパンツも店頭で並べています。
それはまた後日紹介しますね。