"思想の手工芸" COTTLE

 

また、素晴らしい才能と実力のある人と、出会うことができた。

 

常々、そのような方との出会いは、心の奥底から求めている。

 

だから、いつも求めているから、もしかしたら僕は他の人よりそういう機会が多いかもしれない。

 

 

こういうワールドクラスになり得る人との出会いって、そもそもそういう人の絶対数が少ないから、頻繁に起こり得る事ではないんですけどね。

ただ、今回の出会いは、"必然"だったと思ってる。

"そういう人がいる"っていうのは、話には聞いたことがあったから、以前から何となく、ホンの少しだけだけど、知ってはいた。

 

でも、こちらの状況や、いろんな外的な要因があって、交わることはなかった。

これまでは。

 

しかしながら、不意にその機会が訪れた。

出張中の、道を歩きながらしていた、会話の中で。

両者の物理的な側面やこちらの内的キャパシティーがあって、少し前では難しく思えたことも、今ではその"時"だと思えたの。

そうして、トントン拍子に話は進み、"マッチング"。

 

 

そして、今回から当店でお客様方にご覧頂くこととなりました。

 

"COTTLE (コトル)"。

 

 

岡山県倉敷市児島。

そう。 同じ岡山県なのだ。

"COTTLE"。

 

渡辺さん。

渡辺さんと僕の出会いは、先述の通り、"必然"だったのだろうと、今では思ってる。

 

昔の話だけど、僕は、今のCASANOVA&COでやる以前には、縫製工場に勤めていたことがある。

その工場は、親会社である本社と、その自社の縫製工場で分かれており、僕は、工場に勤務していたが、すぐ近くの距離に位置する本社では、国内海外のたくさんのブランドの生産を請け負っていた。

いわゆるOEMってやつ。

 

今のファッションマーケットの多くは、そのようなOEM型の生産はすごく多い。

それってどうなんだろうな。って思うこともあるんだけど、今回はその話ではないから、そこは置いておく。

 

その会社では、誰もが知るブランドや洋服が好きな方なら知ってるブランドのOEM生産を行なっていた。

そして、当時は、その本社の上の偉い方々から、かつて、もの凄く実力があってバリバリに活躍していた"渡辺さん"という人がいたと聞いていた。

 

洋服でいうOEMとは、デザイナーが漠然と思い描いたことを設計し、リアルにしていく仕事と思ってもらえたら良いと思う。

それは、もしかすると実際には、デザイナーよりも"デザイナー"なのかもしれない。

 

実際、この世界、"本当のデザイナー"と思えるような実力のある人は、そう多くないのが現状だから。

と僕は思う。

 

ファッションブランドからの信頼も厚かったのだろう。

その、渡辺さん。

 

月日は流れ、今回COTTLEが拠点とする、岡山県倉敷市児島を訪れた。

近いから行きやすいのもある。

その道中、僕は頭の中に、その"渡辺さん"という名前が、不意に、頭の中にメロディーのように流れ始めた。

 

COTTLEを紹介してくれた方からも、事前に、COTTLEは"渡辺さん"という人がやってるよ。って聞いていた。

こういう時って、僕は自分の頭の中で、何か"革命"に近いようなことを感じる。

 

何か素晴らしい物事が起こる時って、そのような"予兆"ってあるじゃないですか。

そういうのって、第六感とかって表現されるのかな。

僕は、自分のそういう感覚はとても大事にしてるの。

 

いざ、初めての対面の時。

お互いの素性を明かす。

 

もう、分かると思う。

その"渡辺さん"だったのだ。

大先輩だった。

 

これまで学生時代に学ばれたモードのテクニックや、テーラーの要素。

業界での実績や、今では日本を代表するようなブランドとの繋がり。

そういう渡辺さん自身が積み重ねた経験が、このCOTTLEには超濃厚に、圧倒的なハイレベルで反映されてる。

 

時間軸は違っても、同じ境遇、そして、互いの信じるものを大事にやり続けるもの同士、"引き合い"の法則っていうのは、この世界に存在すると思う。

 

昔からの誰もが知る言葉で「類は友を呼ぶ」みたいなことか。

分かりやすく表現すると。

 

こうして、僕は、岡山県に住み、誰もが持ち得ない、思想と才能を含めた実力を持つ人物と出会い、その方の生み出す洋服を、これから晴れて皆様に紹介できる機会がやってきたのだ。

 

 

かつては、織物工場として存在していた、築130年を超える建物。

そこにCOTTLEの拠点がある。

その場所は、COTTLEの思想を伝えていけるスペースでもあるギャラリーショップと、想像と創造を共にするアトリエとがワンフロアで併設されている。

 

 

ギャラリーに入ると、ちょうど良いタイミングだったのか、皆様にこの度紹介させてもらう洋服が揃っていた。

 

 

 

 

 

これは、一部。
もう少ししたら、素晴らしく凄まじいラインナップが紹介できることを楽しみにしてる。

 

 

そして、その一角には、COTTLEの洋服の一つの象徴をとてもよく表したものが存在していた。

 

 

"金継ぎ"。

今から遥か昔の400年以上前に今のような技術ができたと言われているもの。

 

陶磁器の割れや欠けを漆によって接着し、金で装飾をする技法。

これは、全てのCOTTLEの洋服の一つのボタンに入れられる。

美しい一つのものを大切に使い続ける、日本古来の精神が現れている伝統技法。

 

 

 

 

そして、併設するアトリエへ。

 

昔の質の高い木材や、土壁の重厚感が出迎えてくれるエントランス。

 

 

縫製の現場。

これは、一角のスペースに過ぎませんが、たくさんの種類のミシンがきちんと整えられて並んでいる。

古いものから新しいものまで。

 

 

 

 

 

 

 

生地をカットする裁断のスペースや、パターンの出力、複雑で高度な縫製をこなすための豊富なミシン。

洋服をつくるのに必要なものが全て揃ってる。

全てですよ。全て。

 

しかも、カットソー用のミシンまであったから、それもとても驚き。

 

 

専用の工業用アイロンや、様々なカラーリング、番手、素材の糸ストック。

僕は、これまで自分でも縫製の現場にいたこともあるし、今でも全国のいろんな川上の現場に行くことがあるのですが、これだけ美しくて、空気が澄んでいて、整えられた工場は初めてでしたね。

 

渡辺さんは、普通の表情をしていたけど、これは驚きの綺麗さだった。

まあ、写真じゃあんまり伝わらないと思うけど。

 

こういうきちんと手を抜かずに管理され、整えられた場所だから、そういうレベルの洋服が完成されるんだなってすごく納得した。

 

 

更に、その隣には、ショールームとして?の機能を果たすための広い空間がつくられようとしていた。

 

僕が行った時はまだ未完成だったけど、今ではもう完成したみたい。

自分自身が岡山県に住んでいるし、生産地である児島と近いこともあり、やはり日々店頭に立っていると少なからず、児島の川上の方が来店されることもある。

 

児島でやってる人でも何人か、そういう現場の方でいろんな影響を頂けたり、エナジーを授けてくれる方がいるのですが、COTTLEの渡辺さんは、段違いに思った。

 

岡山県(児島) = デニム と言われるし、間違いなくそうだし、世界でも一番そこに特化した地域ではあると思う。

それは肌で感じる。

 

でも、そういう場所を拠点にしてるのにも関わらず、全然、その範囲じゃないことをやってる。

しかも、エゲツないレベルで。

「こんな人が岡山県にいるんだ。」って途轍もなく感じ、圧倒的に感動した。

 

 

先述の通り、僕たちが過去に従事していた企業も、児島の例に漏れず"デニム"、"ジーパン"に特化したものであった。

でも、渡辺さんには、もちろんその経験値もCOTTLEの一つの要素としては入ってるんだけど、別世界の、誰もが辿り着けるものではない領域の洋服を生み出してる。

その理由がとても気になった。

 

また追って少し紹介をしたいと思ってるんですけどね、そういうものの一つにこれがあった。

 

 

これは、渡辺さんが学生時代につくったものだそう。

 

 

 

ピークドラペルでシングル、紳士テーラーリングの土台でもある"毛芯"の"ハ刺し"を搭載し、"インサイドアウト"でつくったものだそうだ。

ここにも原点は、存在する。

 

メンズクラシックのきちんとした仕立てを知り、追究することをしていたそう。

そして当時、形にしていたものだそうだ。

 

もちろん、これにはそこだけじゃない渡辺さんのクリエイションは注入されてるけど。

 

 

こういった"ハ刺し"ということは、もちろん手作業で、意味のある「ハの字」型の縫製をしていくわけだから、当然時間はかかるのだけど、今回皆様に紹介させてもらう洋服にも入れられているものでもあるんですよ。

COTTLEの渡辺さんは、こうした"ハ刺し"のような、手作業、例えば洋服以外のものでも、たくさんの"昔ながらの手の技"って存在するじゃないですか。

"民藝品"と言われるものもそうだったりする。

 

COTTLEの位置する倉敷市は、民藝の街でもあり、外村吉之助(とのむら きちのすけ)が初代館長を務めた倉敷民藝館というものも存在する。

 

"民藝品"というのは、「民衆的工芸」という意味だそうで、大正時代に柳宗悦(やなぎ むねよし)によってつくられた言葉だそうです。

 

"鑑賞"を目的とする美術工芸品に対して、人々の暮らしの中で使われる丈夫で美しい品々のことを"民藝品"と呼ぶそうです。

 

そういう日常生活の中で使う物には、「用途に直接結びついた美」が備わっている。

と考えていたところに"民藝"の考え方の特色があると言われてる。

その、"使うため"の"手の技"こそがCOTTLEの洋服には、強く備わってる。

 

"自ら考えたものをまず自らが形にしたい"ということを言っているCOTTLEの渡辺さん。

それは、渡辺さんの心の中に常にあり、それを現したように、ギャラリーだけではなく、たくさんのミシンや道具が揃えられたアトリエがすぐ隣に存在する。

 

パターン 裁断 染色 縫製 この、洋服づくりに於ける工程を、自らが考えて、自らで形にして、洋服として生み出す。

その洋服生産の工程では、製作段階で、「もっとこうしよう」だったり、「こうしたほうがもう一段階クオリティの高い洋服ができる」という事細かな点が出てくるのが常。

 

COTTLEの信念に基づいて、それを自分ですぐに反映させて、形にすることができる。

とにかく手の技、思想が濃厚に入り、完成されるCOTTLEの洋服。

 

全てが手縫いということでもないし、たくさん取り揃えたミシンなどの道具のバリエーションもあるから、工業製品が持つ、質実剛健な側面もしっかりと含まれているのですが、全部が"渡辺さんの美学"を反映させた洋服です。

 

僕は、COTTLEの洋服を "思想の手工芸"だと思ってる。

 

 

COTTLE -Senkou Suiu-

 

線香(閃光)翠雨

"線香"

線香を焚てる時の故人との時を懐かしんだり、香の匂いがある間、心が研ぎ澄まされたり普段とは違う時間を味わう感覚を。

 

"閃光"

瞬間的に光る煌めきや儚さを。

 

"翠雨"

新緑に降り注ぐ雨のこと、青々とした葉の上に雨の雫がとまる様などの情景を意味する。

線香が終わると灰になってしまう言葉と、翠雨という瑞々しい言葉で対義語にすることで表現される、 様々な循環。

 

このCOTTLEのSenkou Suiuを皆様にご覧頂ければと思っています。

通常の洋服の決められたサイクルではなく、ジャストインタイムという受注生産方式での洋服です。

 

生地は、"カネタ織物さん"で製織した、超絶オリジナル生地。

それを用いて、児島のアトリエにて完結させる洋服です。

 

 

このような洋服を当店で紹介できることを、とても嬉しく思います。

 

また追って紹介しますね。

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