今日は、皆様に良いブランドを紹介できると思う。
calmlence (カームレンス)。
店頭では、少しだけ前から並べていたのですが、この秋冬シーズンという括りからスタートしたブランドです。
デビューブランドということではありますが、一般的な"デビューブランド"みたいな感じとは全然違う。
デザイナーは、熊谷和幸さん。
多くの人が知っているだろう、2000年代からの日本を代表し、時代をつくったブランドとも捉えられるATTACHMENT(アタッチメント)の創業のデザイナーだ。
僕の印象では、アタッチメントというブランドは、日本を代表する世界的な認知があるブランドであったように思う。
ワールドワイドに知れ渡ったブランドであるからこそ、ある種、とても規模が大きくて、華々しくコレクションを発表し続けていたようにも思う。
創業者であり、当時のアタッチメントのデザイナーであった熊谷さんは、30年以上の洋服業界でのキャリアを持ち、熊谷和幸さんの名もまた広く知れ渡っているんじゃないかな。
しかし、ある日、思いもよらぬ話がきて、今回その熊谷さんがつくりあげる洋服を当店で取り扱いをし、皆様に紹介することとなった。
数年前に熊谷さんは、創業から時代を引っ張ってきたATTACHMENTを離れ、ご自身のキャリアの集大成としての新たなプロジェクトを行うことにしたそうだ。
それが、"calmlence"。
関わる人の規模も大きく、時代をつくってきたデザイナーだからこそ、派手ではなく、一点一点の洋服づくりに"全身全霊を込めた"集大成のブランドをスタートした。
そのような洋服をつくるプロジェクトだからこそ、思いもよらぬ加速度的なファッション業界の流れとは、大きな距離を置くために、ブランドでは"売り"的になってしまうような情報発信を行わないみたいで、日本でも世界でも、限られた取り扱い店舗でのみ展開を行なっていくということを決めたそうだ。
ブランドの名前にもその考え方がとてもよく込められていると思う。
"calmlence (カームレンス)"。
"calm" = 「落ち着いた・穏やか」
"silence" = 「静寂・沈黙」
この2つを組み合わせた造語。
"calmlence" = 「穏やかな静けさ」
という意味。
calmlenceの洋服を見ていると、そこには熊谷さんが考えることが込められているのがとても感じられる。
穏やかで静かな洋服ではあるが、そこに確実に存在する"洋服の強さ"。
世の中に服が溢れている中で、calmlenceは、"プロ中のプロ"がつくりあげている洋服であるということが、洋服を見ているとバチバチに感じるんですよ。笑
僕は、このようなタイプの洋服は、今の日本ではなかなか存在しないんじゃないかと思ってる。
他のどこにもない、熊谷さんだからこそ生み出すことのできる洋服っていうのが、すごく感じられるんですよね。
アタッチメントのデザイナーである時に、僕は、一人の消費者としてしか見たことがなかったけど、今、このように取り扱い店舗として皆様にご紹介できることがとても光栄に思います。
熊谷さんレベルのデザイナーがつくる洋服だから、はっきり言って、全部がすごいクオリティですよ。
ただ、さっきも言ったように、ブランドでは、今のファッション業界の中の驚異的な消費速度から距離を置くために、言葉や文字での情報発信を行わない。
だから、僕もこのブログで書くことをどうしようかな。と思っていたんですけどね。
生地や縫製のレベルの語りどころは満載だし、正直言って、中心的な世の中の洋服ブランドと、仮にスペックで勝負したら、そりゃ圧倒的に勝利を収められるほどのクオリティなんですよ。
静かなんだけど、他と全然違うオーラを放ち、もの凄い強さのある洋服。
一点一点の、全部がそう。
だけど、まあ、自分なりに少し紹介させてもらいますね。
calmlence
SACK COAT
fabric _ W/KEMP/Li KASURI GABARDINE
material _ WOOL 75%,LINEN 15%,KEMP 7%,NYLON 3%
color _ BLACK
size _ 1,2,3
※サイズ3は完売しました
まずこれ。
SACK COAT。
calmlenceでは、全ての生地が既成で存在するものではなく、熊谷さんが関係性のある機屋さんでつくったオリジナル生地です。
そもそも全ての生地がとても複雑で凄みのある雰囲気を持っているのですが、それを洋服として、どう料理しているのか。ということも圧倒的レベルに感じます。
この生地でいうと、名前の通り、絣を表現したものなんだけど、平織りではなく、綾織り組織。
それだけでもう複層的な表情をしてる。
素材としては、ウール原料と、ツイードなどに使われるような短く太いケンピウールを紡毛糸としてつくり、紡毛糸に対して、糸の撚り(糸をねじること)を追加でかけ、ケンピのピョンピョンと跳ねと特有の質感を持たせた糸。
そして、それとリネンをランダムに配置して織り上げている生地だそうです。
紡毛糸ならではの膨らみと、それに対して、更に撚りをかけたことで、生地組織だけ見ていても、膨らみと糸の締まりのどちらもをすごく感じるし、絣の表情や、ケンピの跳ねなど見事に感じる生地ですよ。
calmlenceでは、オリジナル生地に全て、"生地洗い"をかけて、縫い上がって、完成した後に、熊谷さん自身が製品洗いを行なうそうです。
このことは、生地のテクスチャーが一層引き出されることはもちろんだけど、熊谷さんが、"全ての洋服に自分の手をかけたい"ということを言ってた。だから、そうしてるみたい。
SACK COATということで、ベースとしてはとてもクラシックなムードですね。
古いヨーロッパのジャケットの空気も漂ってるけど、それだけじゃない。
THE 大人の漢の洋服。
付属するホックを使ったスタンドでもいけるし、もちろんラペルを折り返したテーラードカラーも可能。
ラペル幅などの衿周りのバランスもとてもよくできてると思います。
フロントは、前端が外に緩やかに逃げるようなライン。
ボタンは、皮付き水牛ボタン。このボタン、かなり高価なんですよ。笑
でも、良いボタン。
水牛のツノからくり抜いただけのような、表情と厚みのある質感は、calmlenceの洋服にとてもマッチしてると思う。
スタンドカラー用途でのパーツと皮付き水牛ボタン。
どちらも丁寧な手付けがされてる。
肩周りは、パッドは入っていません。
ただ、着用時にきちんと肩に乗るように、柔らかい芯地が入れられてる。
袖については、縫い代を袖側に倒されてると思うから、袖高の設計になってる。
過剰ではない肩のつくりで、自然で柔らかく、でも、きちんとした仕様の肩周りだと思いますよ。
袖にもフロント同様に皮付きの水牛ボタンが4つ備わる。
もちろん開きます。
腰ポケットのフラップ裏には、オリジナル生地でのジャガード柄が配置されてますね。
そして、裏。
もう、見てもらったらこのジャケットが充分に細かく手を入れられてるのが瞬時に分かってもらえると思います。
背抜きの裏ですが、ブランドのコレクションでは、この生地でシャツも存在します。
経がキュプラ、緯がレーヨン、柄の部分がポリエステルで構成したカットジャガードの生地ですね。
裏側もムードがあるのは、ご覧頂ければ分かってもらえると思いますが、実物を見てもらえたら、裏地の処理もとても丁寧に縫製されているのが感じられると思う。
写真を撮ってないけど、"裏の裏まで"行き届いた仕様になっているジャケットです。
"裏地の生地端の処理"まできちんと行われている。
もはや、熊谷さんレベルになると当然にそういうことが施されてる。
このような洋服の仕様を見ると、僕自身もお客様方にすごく安心して見てもらうことができるし、手にして頂いた方も不安要素がなく着続けられるじゃないですか。
裏の裏まできちんとつくることって当たり前のようなことですが、今現在に主流の洋服ってそうじゃないですからね。
こういうところでも洋服の差って絶対的に生まれると思う。
だから、手にして頂けた方は、絶大な信頼を持ってお使いください。
興味のある方は、服をひっくり返して、更にひっくり返してもらえたら良いですよ。笑
すごく凝ってるから。
calmlence
TRIPLE PLEATED WIDE TAPERED TROUSER
fabric _ W/KEMP/Li KASURI GABARDINE
material _ WOOL 75%,LINEN 15%,KEMP 7%,NYLON 3%
color _ BLACK
size _ 1,2,3
※サイズ3は完売しました
こちらも先ほどのサックコートと同様の生地のトラウザー。
ジャケットの組下になるパンツって、どうしてもジャケットに付属するような存在になってしまうものって多いと思いますが、これは全然そんなことない。
セットアップでも良いし、単品でもオーラを存分に放ってくるんですよ。
ある種、このパンツを見てるとcalmlenceのムードをはっきりと感じてもらえるものかもしれませんね。
仕様としては、ウエストベルトが入らない身頃がそのまま上まで貫いた腰設計のパンツです。
フロントには、名前の通り3タック入り、裏の見返しできちんと処理されてる。
バックは、ハイバックでシンチ仕様のクラシカルムードがムンムン。
ウエスト周りのボタンも全て先ほどのジャケット同様に、皮付き水牛ボタン。
裏を見ると、秋冬仕様にしっかりつくられてるのが存分に感じる。
生地そのものにもしっかり厚みと重厚さがあるから、寒い時期にはむちゃくちゃ穿けると思う。
かなり良いムードが出てくれると思う。
着用は、身長167cm、体重は最近減って50kgになっちゃった。笑
それで、サイズ1。
ジャケットパンツ、共に余白はありますが、フィッティングはどちらも全然ルーズな感じではないですね。
ただ、タイトなサイズではないです。
大人の男性に向けた、きちんとしたサイズ設定になっているように感じます。
体格にもよるけど、大体170cm代後半くらいの方までで2のサイズが良いですね。
パンツは3タックあり、ワタリ周りの分量がありますが、急激に細くなる感じ。
さっきも言ったけど、パンツ単体で、スタイルを一気につくりあげるパワーがあるから、穿いてみると驚きですよ。
生地の強さ、パターン設計、仕様とのバランス、全てが超高レベルでのマッチングが起こってるタマモノだと思ってる。
calmlence
REGULAR COLLAR SHIRT
fabric _ Si/C DOBBY STRIPE TYPEWRITER
material _ COTTON 69%,SILK 31%
color _ RED STRIPE
size _ 1,2,3
そして、次は、これ。
僕は今回、まずはcalmlenceのシャツを知りたいって思って、これを着てる。
そしたらね、もう、感激。
そもそも、なんでこのシャツを着たいって思ったのかというと、それはやはりこの生地。
混率を見てもらえると、コットン69%、シルク31%って感じで、ほぼ7:3じゃないですか。
ちょっとおかしな混率ではあるけど、むちゃくちゃ変わったところがなさそうに思える。
でもね、全然違うの。全っっっ然。
僕は、一般的な方よりも少しだけ生地が好きなつもりではいるんですが、これまで当店で取り扱いをしてきたシャツの生地と言えば、遠州や、時に尾州、西脇や近江産地が中心だった。
でも、これはそのような産地とは違う。
というのが、シルク。
シルクについては、今まで散々書いてきて、少し手間だから飛ばしますが、、、
僕が今まで見たことのあるシャツ生地のシルクは、"絹紡糸"もしくは、"絹紡紬糸"などの、スパンシルクばかりだったように記憶してるんですよ。
でも、これは、フィラメントシルクなのだ。
フィラメント!
フィラメント状態である生糸であるがゆえに、これまで当店で紹介をしてきた地域では織ることができないシロモノだそうだ。この生地。
洋服になった時には、ストライプ生地で、経糸がコットン、緯糸が生糸。
ただ、製織段階では、経糸に生糸をセッティングし、緯糸にコットンを打ち込んでいくそうだから、生地段階ではボーダー。
そう、フィラメントシルクを織機の経糸にセッティングできるのは、これまで当店で紹介してきた産地では、聞いたことがなかった。
だから、もの凄く興味があったんですよ。この生地。
ストライプのムードも、その辺のストライプシャツとは全然違うし、初めて見た瞬間から心を鷲掴みされて、頭から離れなかった。
それで、納品してもらった瞬間からずっと着てるんですけどね。
むちゃくちゃ気に入ってる。
写真では伝わらないと思うんですけどね、、、
フィラメントの生糸ならではの、小さい面積から、チラチラと光る光沢がヤバヤバなんですよ。
本当は、マイクロスコープしようと思ってたんですけどね、最近いろんな事情があってできてないから、出来るだけ早急にこの問題を解決しようと思ってる。笑
これ。
名前の通り、レギュラーカラーのシャツですが、いろんなところがレギュラーじゃないの。
あんまり書くとスペック勝負みたいになっちゃうから、アレだけど、着てもらえると確実に、確実に、確実に、凄みが感じられるシャツですよ。笑
ヨーク柄合わせ済み。
シャツ生地そのものは、生糸ということもあり、地厚にはなりません。
アウターシャツとして、今すぐ着るのにはむちゃくちゃ向いてるって言ったらイメージしやすいかな。
あと、最近、シャツの売り文句で、シャツの芯地を"フラシ芯"って書いてるのをお店の服の紹介で目にすることがあるんですが、そういうのを見る度に、僕はいやいやいやって思っちゃうんですよね。
お店の人って、芯地を見たことがある人が何人いるのか。って感じ。
見たことないものを分かったつもりで言葉だけ書くのはどうなんでしょうかね。まあ、お店のスタイルにもよると思いますが。
僕がCASANOVAでやる前に、なんの為に縫製工場で服を縫ってたのか。
まあ、ちなみに、calmlenceのこのシャツは、"フラシ芯"です。笑
生地がフィラメントと、細いコットンですし、加えて、生地に少しだけ塩縮かけてるみたいです。
そして、製品洗いもかけてるので、そうなると必然的に、設計段階で芯地はそうなってくるんだと思います。
だから、使ってる内に衿の方向がワケわかんないところにいって、膨らみと共に、ふにゃふにゃになったらゴールです。
先ほどのジャケットと比べて、サイズバランスはゆとりがありますね。
着丈も長めで、身幅もゆとりがあるんですが、独特なバランスしてるシャツだと思います。
僕は、生地とともにすごく気に入ってる。
この生地は、ベースが古いムードが漂ってるベージュなのですが、そこにブラックとレッドの色糸が差し込まれています。
写真じゃわかりにくいけど。
それに合わせて、ボタンは茶蝶貝ですね。
カフスはご覧の通り、角がない丸い形状。
calmlence
REGULAR COLLAR SHIRT
fabric _ Si/C DOBBY STRIPE TYPEWRITER
material _ COTTON 69%,SILK 31%
color _ BLUE STRIPE
size _ 1,2,3
そして、これ。
先ほどが、RED STRIPEに対して、こちらは、BLUE STRIPE。
混率は同じで、色違いだけど、そもそもストライプの柄が違います。
ストライプシャツによくある感じではなく、RED STRIPEもBLUE STRIPEも熊谷さんが、昔のジャケットの裏地をイメージしたって言ってた。
どちらも柄としては、見たことのあるようなクラシックなストライプの柄をしてるんですけどね、シャツとしては、このジャンルのストライプシャツって僕は見たことなかった。
その上、この設計バランス、この仕様。
見事なシャツ。
ちなみに、RED STRIPEもBLUE STRIPEもどちらもベージュベースなんですが、RED STRIPEの方が、ベージュが濃いですね。
よりオールドムード漂ってるのがRED STRIPEの方かな。
少しだけブルーのピッチが太いBLUE STRIPE。
着丈は長め。
僕は、極端に手が短いから僕には袖が長いんですが、一般的には良い長さだと思います。
それでね、これ既に3回ほど洗ったものですね。
この写真を撮った後に更に、2回は洗ってるから、この時の写真ではまだ大きな変化はないですね。
ただ、衿やカフスに新品の時よりも少し柔らかさが出たと思います。
普段から袖はまくってるから、カフスが良い曲がりしてる。笑
洗い晒しで着てるから、衿も左右非対称のカーブを描いてる。フラシ芯のおかげ。
これで風に吹かれて、ペラッと衿が立ち上がったりしたらベストですね。
calmlence
SINGLE PLEATED WIDE PANTS
fabric _ W/Li/C RANDOM HERRINGBONE STRIPE
material _ WOOL 37%,LINEN 37%,COTTON 26%
color _ BLACK
size _ 1,2,3
そして、今日紹介する最後はこれ。
実は、ケンピウールのカスリ生地でのWORKERS GILETというのもあったんですけどね、すぐに完売してしまったので、今日はこのパンツが最後です。
calmlenceの強いクラシカルムードは色濃く、先ほどの3タックのパンツとは別物フォルムのパンツです。
生地は、ランダムなヘリンボーンを表現したもの。
超絶混率が物語る複雑極まりない中での、ヘリンボーンストライプです。
生地としては、経糸にコットンとリネントップ(ワタ状態で色が違う)糸を。
緯糸には、ウールなのですが、梳毛を更に撚糸を加えた、強撚ウールが打ち込まれた生地。
色合いや見た目の奥行きはあるのですが、このマテリアルでありながら、かなり重厚な生地に仕上がってるのが驚き。
コットンリネンに対して、梳毛のウールならば、比較的ペラっと軽い生地が出来上がるイメージだけど、この生地はしっかりと重量を感じる。
かなりの糸量を使ってるんじゃないかな。
これからの季節にはこちらのパンツもとても良いと思いますよ。
このパンツも身頃からの続きのウエスト設計。
比較的深めにとられたワンタックの設計ですね。
バックポケットは、どちらも両玉縁のサイドアジャスト付きウエストベルト。
calmlenceの洋服は、どれもが特有の"色気"を持つ洋服に感じるのですが、パンツでいうと、ウエストベルトパーツがないことで、それを醸し出す一つの要素になっているようにも思います。
どの洋服も全てcalmlenceの顔付きをしてるから、ここまでの統一感を生み出せることもすごい技だと感じますね。
そして、こちらのパンツも裏付きです。
形が崩れることも防止できるし、僕も今はシャツをしこたま着てるけど、どれもかなりのタフさを備えているのも実感してる真っ只中です。
こちらもこれまで同様にサイズ1。
太めのアウトラインもあるので、バランスとしてはシューズに生地が乗るくらいのイメージですね。
先述の通り、既に完売してしまっているものもあるのですが、熊谷さんが注ぎ込む洋服づくりをご体感頂けたら幸いです。
これまで30年以上の洋服のキャリアで積み重ねてきた集大成と言っていますからね。
静かだけど、一着一着に確実な強さが存在するし、熊谷さん自身が手が行き届く範囲できちんとつくりあげてるのをヒシヒシと感じる。
とても高濃度の洋服だと思いますよ。
お好きな方は、calmlenceの洋服の世界を体験してみて。