昨日、お知らせをした当店ラストシーズンのAUBETT。
お伝えしていた通り、18日(土)からスタートしますね。
18日(土)の終日と、19日(日)の夕方くらいまでかな。
デザイナー杉原さんも在店をしてくれますので、これまでに会ったことのある方も、初めての方も、皆様楽しみにしてお越し頂けると嬉しいです。
そして、昨日も少し触れた”立体裁断”ということ。
“立体裁断”そのものは、当店でも取り扱ってるいくつかのブランドが、生産するプロセスで用いているテクニック。
洋服のフォルムを生み出すためにいくつかのブランドが行ってる。
ですが、これは、日本のブランドではとても限られる。
更に、その中でも杉原さんが行っているものは、その”立体裁断のセオリー”とは、全然別の、完全に唯一の思考、方法のもの。
その礎にあるのが、”身体から離れたところにドレープをつくる”という、ヨーロッパのレディースの1950年代前後の洋服づくり。
この時代は、戦争が終わり、精神的に豊かな時代だったと例えられることもあるのかな。
日本にも洋服の文化が入ってくる前後辺りの時期だと思います。
体のラインを強調したボディコンシャスな類ではなく、実際の体の輪郭は、全く見えないのに、綺麗で美しく、華やかさを感じる、”魅せる洋服”。
しかし、その時代は、現代のようなたくさんの生地のバリエーションが存在するわけでもない。
明らかな”有限な中”での洋服づくりだった。
そのことは、記録に残っているそうです。
であれば、その当時、何で洋服の”違い”を出すのか。
それが、”洋服のパターン”での勝負だった。
そのような洋服づくりが最も盛んだったのが、1940年代〜60年代にかけてだそう。
男性であれば、今よりも更に限られた中での選択肢、簡単に言えば、スーツの世界。
だけど、女性はメンズ服ほどの制約はなかった当時。
現在でも残る、白黒写真に映された、洋服を着る女性たちの姿。
そのような洋服はどれも今ではほとんど目にしないような、とても綺麗なフォルムなの。
それがパターンのテクニック。
しかし、そのテクニック、考え方というのは、”レディースの世界”でのみだった。
世界中の誰もが知っている現存するメゾンに渡り、そこでの経験を積み重ね、更に、その中での追究を、何年も、何年もかけて続けてきたそうです。
そして、自身で積み上げて、習得したテクニック。
その技術は、杉原さんが”メンズで生み出した”オリジナル立体裁断での設計。
ある週末の日。
今でも毎週末に立体裁断を行い続ける。
生地の重さがほとんどない、”透けるような一枚の布”。
この時に、薄い布を使うことがとても大切だそうです。
厚みがあるものだと、布そのものの自重による、ドレープが出てしまうから誤魔化せてしまうそう。
だから、杉原さんは、とにかく薄くて軽い布を使って、トワルを何度も何度もつくるそうです。
その、うっすうすの布を当てるのは、杉原さんがずっと使い続けるボディ。
人体の骨の細かい箇所までリアルに再現した、とにかく珍しいボディなの。
ここまで骨格が精緻なものは、特に少ないそうです。
男性の身体そのものだ。
そのボディを使って、杉原さんが立体裁断を施すと、さっきまで、平らな一枚のペラペラの布だったものに、瞬く間に造形が与えられる。
ハサミを入れ、ピンで刺し、男性の身体のアウトラインに合わせる。
そして、生み出される見事なドレープ。
それは、決して過剰なものではなく、見事な”造形美”。
杉原さんのつくる洋服には、全ての内部に、”空間”がある。
その”空間”は、既成服という不特定の方に向けてつくられた洋服でありながら、誰もが杉原さんの”設計通りのアウトライン”で着用できるためのもの。
人間は、いろんな体型の方がいるじゃないですか。
そして、同じ人でも、一日で体型は複雑に変化するそうです。
笑ったり、泣いたり、怒ったり、、、ご飯を食べても人間は変わる。
人間が笑っている時に、着ている服も一緒に笑うことができる。
ご飯を食べた後、その着用者の体型変化に、本当の意味で寄り添うことができる。
“一日の中で、人は大きく変わるから、洋服も一緒に変化をしていくことがとても大切。”
ということを、ヨーロッパの超名門の職人から教わったそうです。
杉原さんは、立体裁断を用いて、着ている人に、そのように寄り添ってくれる洋服をつくってる。
着用者に洋服が付いていく設計をしてるの。
連れ添ってくれる洋服とも言えるかな。
それは、物理的にも、精神的にも。
だから、新品の洋服は、手にしたばかりの時には、すごく”精神的な余白”があるの。
それが杉原さんの生み出す洋服からは、とても感じられること。
“空間”が存在し、身体から離れたところに、杉原さんは、”ドレープ”を設計する。
杉原さんの思想と技術から生み出される、その”空間”と”ドレープ”。
そこにとても近いものが、先述した、今から60年前〜80年前の女性たちが着ていた洋服には、施されていたそうです。
これは、もうね、超発明的。
このことは、結果的に、着用する人にとって、内面にとても大きく、ポジティブに作用してくれることだから。
そのための杉原さんオリジナルの”立体裁断”。
ご堪能ください。
ちなみに、通常のブランドだと、サイズ展開を行う場合、中心となるサイズがあり、そこから寸法を小さくしたり、大きくしたりするグレーディングということを行う。
でも、杉原さんはそうじゃない。
単なる寸法変化のサイズピッチではなく、全てのサイズで、”立体裁断”を行い、サイズ展開をつくるの。
そんなブランド聞いたことない。
驚愕。
それだけ全ての洋服で、時間をかけて製作をしているデザイナーですからね。
一着一着の濃度がハンパなく高いと思いますよ。
まず、今日は、18日(土)よりスタートをするAUBETTのコレクションのものを紹介しますね。
メンズがほとんどだけど、一部レディースのものもありますので、女性の方も見てもらえたら幸いです。
AUBETT
HEAVY BROAD
OVERSIZED SHIRT
material _ COTTON 100%
color _ GRAY
size _ 3,4,5
まず、これ。
これまでブランドのラインナップの中心として、展開されていたレギュラーカラーのシャツ。
オーバーサイズという名前が付いてるけど、単純に寸法値を大きくしたオーバーサイズではない。
それは、上記の理由で。
ステッチの入れ方、バックヨークの大きさ、全てに意味を持たせているそうです。
前立て、衿にはステッチがない構造。
ただ、バックヨークや肩線には、ステッチを表から入れてるの。
これも長年着ていった時に、ステッチの力を借りて、設計したアウトラインが出続けるための必要な縫製仕様。
そして、この生地は、これまでのAUBETTを知ってくれてる方だったら見たことがあるかもしれないのですが、ヘビーブロードという名前の生地ですね。
超密度で超キメ細かいし、誰が見ても、触っても、着ても、一瞬で、丈夫で上質な生地だと感じてもらえる。
そう。
“カネタ織物”さんでつくったオリジナル生地。
これまでは、アルティメイトピマコットンを原料にしてたけど、今シーズンから、より理想を目指して、原料が変化。
インド超長綿を原料にしてる。
そして、それをカネタさんが見事な製織、仕上げをしてるの。
ほら。
見て。
全く隙間がなく、糸と糸がひしめき合って、ギュンギュンに詰められた超密度。
それでいて、全ての箇所で均整がとれ、ムラがなく、表面がアメージングな美しさ。
まあ、比較の写真があれば分かりやすくて良いんですけどね。そういうの撮ってないから。
通常のシャツ生地は、全然こんな見え方しないですよ。
あとは、超絶的な高密度なのに、バッキバキに硬い生地じゃないの。
洗濯したての水分を含んだ状態は、ヤバいですけどね。
乾いてるとしなやかで滑らかなの。
この生地は、超名作。
それでいて、これまでよりもシャツのプライス下がりました。笑
杉原さんとカネタさんの男気生産によって。
時代と逆行してるわ。
色は、今回初めて登場したGRAYのみの展開。
腕を動かすと全ての箇所が付いてくる。
パーツを繋ぎ合わせたのではなくて、布の造形を見て立体裁断をし、それを最終的に複数枚の生地で構成してるだけ。
だから、洋服の全てが一体になってるの。
上げた腕。
徐々に下げると、、、
アームホールや、袖が身頃の内側に隠れるように入っていく。
腕を下ろすと、身頃から袖が、内側から出てくるよう。
これが、”生えた袖”。
前だけじゃなくて、後ろも袖が同様に内側へ。
そして、着用時に、その袖が隠れるためのドレープは、バックヨークのシームを起点に始まる。
この杉原さんの設計は、カネタ織物さんの生地の特徴とむちゃくちゃマッチングする。
設計と生地特性とが、サイキョーに高いレベルで組み合わされる。
AUBETT
HEAVY BROAD
2TUCK TAPERED PANTS
material _ COTTON 100%
color _ GRAY
size _ 3,4,5
そして、初登場。
同じ生地のパンツ。
下半身にカネタさんの生地がくると、もうヤバヤバ。
むちゃくちゃ気持ち良いし、超絶安心感あるの。
暑くなった季節にとても快適だし、丈夫だから、すごく使ってもらえると思いますよ。
もうね、見るからに気持ち良さそうでしょ。
上質な原料で、超高密でキメ細かく、丈夫な生地。でも、シャツ生地の規格だから、夏場には、途轍もなく気持ち良い。
加えて、度重なる洗濯で、どんどんポジティブな変化をしてくれるし、カネタ織物の太田さんは、”100年保つ生地”を目指してつくってるから、とにかく丈夫なの。
だから、トップスよりも負荷のかかりやすいパンツには、かなり適してる。
人間って同じ生地の場合は、トップスよりもパンツの方が薄く感じるから、シャツは真夏の着用は難しいと思うけど、パンツになると真夏もエゲツない。
驚愕してみて。
先ほどから言ってる、”立体裁断”ですが、杉原さんは、トップスだけではなく、パンツにも下半身のオリジナルボディを用いて行ってる。
更には、Tシャツにまでも。
こちらのパンツも、下半身のボディラインがはっきりと露出しないけど、とても綺麗に見えるように設計してるの。
パンツではとても珍しいと思いますよ。
下半身に当たらないのに、スッキリと綺麗に見えてくれる。
今までは、この生地でパンツをつくったことなかったけど、これは全員穿きたくなると、展示会に行った瞬間から思いましたね。
だから、当店では今シーズンは、AUBETTでパンツは、こちらのみです。
全員これ穿いて。
それくらいの出来ですよ。
AUBETT
HEAVY BROAD
SIDE VENTS S/S OVERSIZED SHIRTS
material _ COTTON 100%
color _ WHITE
size _ 3,4,5
AUBETT
HEAVY BROAD
SIDE VENTS S/S OVERSIZED SHIRTS
material _ COTTON 100%
color _ GRAY
size _ 3,4,5
そして、同じ生地で、半袖Ver.のシャツもあります。
長袖のシャツは、過去のシーズンで、白っぽいのを展開してきたのと、パンツの純白のホワイトは履かないなって思ったので、GRAYのみ。
ただ、半袖シャツのホワイトはオーケーだったので、こちらだけ2色の展開です。
生地は、先述の長袖シャツとパンツ同様に、カネタさんでのオリジナル生地。
名前の通り、特徴的なサイドベンツ。
スリットではなく、意匠を凝らしたベント仕様。
やはりカネタさんの生地は、山内やAraki Yuuでも使われてたりするけど、ステッチが非常に際立ちますね。
そして、造形のフォルムを一層輝かせてくれる。
半袖シャツだけど、かなり高級感あると思いますよ。
まあ、時期的にはまだ早いけど。
長袖に比べて、バックヨークは大きい設計です。
そして、ハンギングの状態から既に、袖が身頃に隠れてる。
シャツのボタンは、全て白蝶貝です。
生地の自然な輝きとベストマッチ。
AUBETT
HEAVY BROAD
ZIP UP SHORT BLOUSON (WOMENS)
material _ COTTON 100%
color _ GRAY
size _ 1
カネタさんでのオリジナル生地のシリーズ。
僕がこの生地好き過ぎて、まだあります。
次は、WOMENS。
ショート丈のむちゃくちゃ可愛いジップブルゾン。
ワンサイズのみ。
このブログをご覧の漢の方々。
是非、奥様や彼女にオススメして。
バック。
冒頭にお伝えした杉原さんの”立体裁断”は、その原点となっているのは、昔ながらのヨーロッパの女性の洋服です。
メンズウェアの方では、それがウィメンズ程までならないように、漢のエッセンスを入れてるの。
しかし、その構造の原点をより強く出せるのがウィメンズ。
タックや袖の形状
カネタさんの生地だから、鮮明にフォルムを出せるのはあるけど、いろんなディテールが駆使されてる。
もちろんボディラインは出ないけど、体をシャープに綺麗に見せてくれる設計ですよ。
カネタさんの生地、、、
まだ、あるの。
AUBETT
HEAVY BROAD
COCOON SHIRT ONEPIECE (WOMENS)
material _ COTTON 100%
color _ GRAY
size _ 1
最後は、これ。
コクーンシルエットの着丈の長いワンピース。
さっきのショートブルゾンが、着丈53.5cmなのに対して、こちらは125cmの着丈(台衿下より計測)。
マキシ丈っていうのかな?結構長めだけど、150cm代から160cm代の方まで良いように着れる。
肩はラグランでフィットし、身頃に膨らみがあって、裾で絞まるコクーンシルエット。
アームホール下から共地のベルトが取り付けられてる。
バックは、存分にカネタさんの生地が接ぎなしで。
ボタン開閉でのフロントフルオープンだから、シャツコートみたいにして、共地のベルトを後ろで結んでも良いと思いますし、ボタンを全部留めて着るのも良いと思う。
まあ、どっちでも良いってことです。
生地に透明感があるし、このグレーだから結構カッコよく着れるんじゃないかな。
是非、奥様か彼女へ。
AUBETT
COTTON × SUMMER WOOL PLAIN DOUBLE WEAVE
CUT AWAY FRONT JACKET
material _ WOOL 52%,COTTON 48% (平二重織り組織)
color _ DEEP NAVY
size _ 3,4,5
次は、これ。
今シーズンのAUBETTで最も大物のもの。
生地は、表記の通り、ウール52%とコットン48%。
ウールと言ってもウォーム感のあるものではなく、梳毛ですね。
その平織り組織の二重織り。
形としては、過去に当店で販売をした赤錆びカラーの”AUBETT JACKET”が、もっともっとシャープになったイメージです。
フロントの外に跳ねるような裾の形状も、かなりシャープ。
そして、このカットアウェイフロントのジャケットは、、、
“梳毛のリバー縫製”。
つまり、芯地、裏地が皆無。
そして、生地そのものも超軽量。
つまり、つまり、、
“夏でも着れるリバー縫製のジャケット”なのだ。
二重織り組織には、いくつか種類があるのですが、こちらは”接結二重”タイプ。
つまり、二枚の薄い生地に対して、それを繋いでる接結糸という糸が存在するの。
それによりウールとコットンの縮率差により、シアサッカーのような凹凸、しじらが出てる。
ラペルは、最も複雑な上衿の挟み込みタイプ。
リバー縫製ということで、レディースだけではなくて、ここ最近はいろいろなブランドで見ることが多くなったけど、夏付近まで着られるようにするための”梳毛のリバー縫製”は、かなり珍しいと思いますね。
風の通りも良く、サマージャケットとして、とても優秀。
あとは、リバー縫製は、表地と縫い糸、ボタンだけで洋服が構成されるから、立体のアウトラインがとても良く反映されるって杉原さんが言ってた。
カラーリングは、DEEP NAVYの表記ですが、かなり濃いネイビーだから、ブラックと同じように使えると思います。
身頃に入るダーツ。
通常のジャケットと比べて、中心に寄ったこのダーツが、このジャケットのアウトラインに大きく影響を与えてくれるの。
身体から離れているのに、身体に吸い付いてくる。
途轍もなく特殊。
このジャケットでしか体験できないことかもしれませんね。
袖口は本切羽。
ボタンは水牛。
センターベント。
もうね、立体裁断の設計と、生地、縫製のクオリティが溢れてる。
着用時は、3つボタンの一番上を留めるのがベスト。
そうすると、フロントの裾が綺麗に跳ねてくれるから。
リバー縫製ということで、もちろん裏地もなし。
とても軽快に着れるのはもちろんだけど、このジャケットのレベルの高さには誰もが感動してもらえると思いますよ。
AUBETT
TECHNORAMA SZ JERSEY
STANDARD T-SHIRT
material _ COTTON 100%
color _ FOREST NIGHT
size _ 3,4,5
最後は、Tシャツ。
まあ、まだまだ早いけど。
こちらは、東京の小野莫大小さんの開発したテクノラマという強撚糸を使ったもの。
そして、糸づかいも超特殊。
双糸の天竺組織のTシャツなのですが、双糸の二本の糸を、正反対のS撚りとZ撚りのものを合わせた糸。
そうすることでお互いを支え合い、ダレず伸びず、ドライタッチで、そして、とても風が通って涼しく着ることができるTシャツですね。
まあ、これはまだ早いからサラッと見てもらう感じで良いです。
時期が来たらまた検討してもらえたら嬉しいです。
もちろん、これも立体裁断を搭載してる。
すごい身体への寄り添う感覚ですよ。
あと、これに関しては、未洗いの状態なのですが、洗うと3cm程縮みが出ます。
だから、それを見据えた着丈の長さになってます。
洗うと良いようになりますので、ご安心ください。
以上のラインナップが、18日(土)よりスタートするAUBETTのコレクションラインです。
また明日は、別のものを紹介しますね。