この春夏シーズン、僕が途轍もなく期待していたシャツが届いた。
AUBETT。
そして、その生地を織り上げるのが、"カネタ織物"さん。
11月にP.(P).Cとして、3種類の赤錆びカラーの洋服を、AUBETTとカネタさんと、当店CASANOVA&COで製作をしたのですが、今回もとても衝撃的な生地のシャツが届いた。
カネタさんの太田さんが言うには、"究極密度の平織り"生地。
これは、ヤバい。 とてつもなくヤバい生地だ。
そして、その生地が、AUBETTの杉原さんが生み出す、"立体裁断"とウルトラハイパーマッチングしている。
当店では、今年の1月2日にThe CLASIKと330番手四子撚りのイタリア、DJAの生地で白いシャツを製作したのですが、それは海外の異次元クオリティ。
そのレベルに匹敵できるような生地を。
と思うと、現状では、僕はカネタさんの生地しか思い浮かばない。
日本国内では、まさしくカネタさんだと思う。
その圧巻の生地。
これ。 生地は、先述の通り、平織り組織。
素材は、コットン100%。
でも、ただのコットンではない。
僕が、世界で最強グレードだと思ってるコットンが三つある。
・GIZA 45
・スビンシュプリーム
・シーアイランドコットン
そして今回の原料となるのは、 シーアイランドコットン。
その輝き、滑らかな指通り、耐久性。
これは、圧巻。
ただ、これは、原料はそうではあるけど、重要なのは更にここから。
シーアイランドコットンの"35番手"。
通常、繊維長が長く、細い繊維である原料だから、その特性を活かすために、80番手とか、100番手とか、それ以上の細い番手の糸に紡績をするのが、セオリー。
しかし、今回AUBETTが目指す洋服を生み出すために、カネタさんが糸屋さんに依頼をしたのは、35番手という、今は通常に流通をしていない太い糸。
そして、それを材料に、"究極密度の平織り"を完成させた。
これは、僕も知らなかったことなのですが、カネタ織物さんの太田さんにAUBETTの杉原さんを通して教えてもらったことがある。
この生地を読み解くのに、重要なキーワードは、3つ。
一つ目は、先述のように、
・シーアイランドコットンの35番手という太い糸ということ。
二つ目は、
・"カバーファクター"という言葉。
三つ目は、
・経糸と緯糸の"密度比率"ということ。
"カバーファクター"。
これは、一般的には密度と解釈されていることが多いという。
しかし、実際には、"どのくらい空間を埋めているか"を示す数値だそう。
通常、"密度"と言われている言葉は、単純にインチ間あたりの糸本数ということで、明確な違いがあるそうです。
"カバーファクター"を分かりやすくするために、カネタ織物さんの太田さんが例を挙げてくれた。
人に例えた場合、一つの部屋にすごく痩せた人が10人いる場合 と お相撲さんのようにすごく大きな人が10人いる場合。
一つの部屋に対して、密度は同じ10人。
しかし、"カバーファクター"の考え方では、お相撲さんのように大きな人が10人いる場合の方が、カバーファクターが高いということができる。
これは、みんな理解してもらえると思う。
まず、このカバーファクターの数値とカネタ織物さんがこれまで培ってきた経験を照らし合わせ、生地のハリや硬さ、柔らかさ、限界密度がどのくらいなのかをある程度計算していくそうです。
次に、 経糸と緯糸の"密度比率"。
太田さんが目指しているのは、平織り生地で極限まで、"糸の形"が見えないレベルまで、生地を繊細な見え方に追究していきたいそうです。
その上では、いろいろな要素がある中で、経糸と緯糸の"密度比率"の、低い方を可能な限り高めていくと、平織り生地に織り上がった時に、太田さんが目指す"繊細な目"の見え方をする生地になるそう。
分かりやすく例えると、例えば、経糸が100本・緯糸が50本の場合の密度比率は、タテ2:ヨコ1となり、緯糸の方が密度が低くなる。
この場合は、緯糸の密度を上げると、生地の目が繊細になるみたい。
これを考えた時に、上記の数値を経糸100本・緯糸100本にすると、平織り生地の目は、太田さんが"目指す姿"に近付く。
しかし、"カバーファクター"が上がれば上がるほど、経糸と緯糸の"密度比率"が1:1に近付けば近付くほど、生地を織り上げる"難易度"は格段に上がるそうです。
今回のAUBETTの生地は、
"太番手のシーアイランドコットン"を原料に、
"限界カバーファクター"を想定し、
"タテヨコ比率を1:1"にできる限り近付けるために、
限界まで緯糸を打ち込んだ、 "究極密度の平織り"生地。
これは、超絶衝撃的な、ウルトラハイパークオリティのシロモノ。
上記の文章をよくよく、読んだ上でこの生地を見て。
この繊細さ。
太番手のイメージが、ガラリと変わる。
シーアイランドコットンの眩い輝きと、繊細な生地の目。
35番手という太番手なのに、全くそうとは思えないほど、"繊細で美し過ぎる生地の目"。
更に、AUBETTの杉原さんは、この生地が出来上がることを想定し、更に、糸にマニアックなことをしていた。
もともと35番手に紡績された糸は、コンパクト糸(し)と言って、糸の毛羽立ちがほとんどない、綺麗な糸をつくっていた。
でも、それだけでは、杉原さんは満足しない。
ただでさえ、毛羽立ちの少ないコンパクト糸を、"ガス焼き"。
そうすることで、ほとんど毛羽立ちのなかった、35番手の糸の表面をどこもかしこも、究極に毛羽立ちのない糸に仕上げた。
それを、カネタさんが限界に挑戦。
とてもとてもハードルが高く、日本でも、世界でも、間違いなく、カネタ織物さんでしか完成させることができない生地が、この世に誕生。
そして、これを見て。 マイクロスコープ。
シーアイランドコットンの35番手(単糸)がギッチンギッチンにひしめきあってる。
でも、糸の目が超、超、超美しい。
毛羽立ちもなく、果てしないくらい高いレベルで生地の目の均整がとれてる。
これ、マジでぱねぇ。
更に、拡大。
原料がめちゃくちゃ高品質ですからね、繊維がもう輝きを隠しきれてない。
で、やっぱり密度がエゲツないの。 一生見ていられる。
比較したら怒られてしまうかもしれないけど、これがどうしてもやりたかったの。
今シーズン、当店が誇る"2つの白いシャツ"のマイクロスコープ。
イタリア、DJAの最高シリーズ、"GOLDEN JUBILEE"の最新作。
GIZA 45を原料に、経糸170番手双糸・緯糸330番手四子撚りツイル。 と、
今回の。
同じ倍率です。
これ、二つ並べられる服屋は、全世界を考えても当店のみ。
だと信じてる。笑
しかも、マイクロスコープで。笑
みなさん、これ、スクリーンショットしといた方が良いですよ。
この世界のトップオブトップ、もう、二度と見られないかもしれないから。笑
世界最高と言われる、DAVID&JOHN ANDERSONのGOLDEN JUBILEEに対抗できるのは、もはやカネタさんしかいないんじゃないかと思う。
キングのDJAが存在するけど、カネタさんは、どんどん創造的なことをしてるから。 そういうものが人の心を動かし、感動させることができると思う。
今回の生地は、僕の心は凄まじく動いた。
これ、現物見たらヤバいから。
必ず、誰もが感動してくれる。
そういう生地。
そして、それを使ってAUBETTが生み出したシャツがこれ。
2種類あります。
メンズ一つに、ウィメンズ一つ。
AUBETT
CLEAR HEAVY BROAD OVERSHIRT
material _ SEAISLAND COTTON 100%
color _ MILK WHITE
size _ 3,4,5
AUBETT (WOMENS)
CLEAR HEAVY BROAD STANDCOLLAR SHIRT
material _ SEAISLAND COTTON 100%
color _ MILK WHITE
size _ 1
この二つ。
漢は、レギュラーカラー。
ウィメンズは、スタンドカラーのタイプ。
はい。 もうとても美しい。
レギュラーカラーは、左前立て。
ウィメンズのスタンドカラーは、右前立ての比翼仕様です。
カネタさんが織り上げたAUBETTオリジナル生地が、AUBETTの杉原さんの"立体裁断"の技術を最大限に活かすことができる。
最強の組み合わせ。
ハンガーにかけてるだけなのに、サイドビューから既に、見事なまでの腕の三角形が出来上がってる。
平置き。
AUBETTの洋服は、素晴らしい"立体"をしてる。
これは、杉原さんが培ってきた技術そのものなんだけど、これは日本で既成服では、AUBETT以外では体験することは不可能だと思う。
平置きすると、その片鱗が滲み出る。
身幅は、分量がとられているように見えるのですが、ルーズなサイズということでは全くない。
この身幅の分量が、着たときに、"消える"。
そして、その身頃の内側から、袖が"生えて"出てくる。
これが、年代や流行に関係なく、時代を超えて着続けることができる。
ということにつながる。
なぜなら、既成服なのに、所有者の体に永遠と寄り添って、美しいスタイルを見せてくれるから。
そのAUBETTの杉原さんは、どんな時代でも、どんな流行になっても、所有者を立体で包み込み、美しく着続けられる洋服をつくってる。
どんなものでも、気に入って買った洋服って、しばらくは高頻度で着るじゃないですか。
でも、ある程度着たり、時期や好みが変わったら、そんなに着なくなることって多いと思う。
ただ、AUBETTの洋服は、仮に3年間、5年間、10年間、着ない時期があっても、ふとした時に掘り起こして、鏡の前で着てみる。
そうすると、自分に似合ってる。
安易な言葉だけど、自分の姿が格好良く見える。
そういう洋服って、また着てみたくなり、再び、たくさん着る。
そうして、着続けることができる服だと思う、AUBETTの洋服は。
そのための、"立体裁断"。
対して、カネタさんは、"100年後も残る生地"を想定してつくってる。
だから、AUBETTとカネタさんが組み合わさると、 真の意味での"長い時間を共にできる"洋服になる。
って僕は思ってる。
このことこそ、どんな洋服でも持つことができない力だし、手にする理由があると思う。
それでいて、この生地の超感動的なクオリティ。
それを実現してるシャツだと思う。
ディテールを少しお話しさせてもらいますね。
衿にはステッチは入りません。
前立ても、裏前立て仕様です。
台衿には、とても均整の取れたステッチが入ります。
ボタンは、白蝶貝の手付け。
かなりしっかりと頑丈に付けてあります。
身頃の裾の処理。
こちらは、三つ折り仕様ではなく、幅の狭い見返し仕様です。
裏。
どう見ても美しい生地。
縫製もとてもレベル高いですよ。
全体的に折り伏せ縫いが施されてる。
これは、裏前立ての裏です。
前立ての裏には、接着芯は貼り付けられていません。
生地が生地だから、芯はなしで、生地だけで成立します。
裏の折り伏せ縫い。
生地の密度がすごいから、シーム部分がとても立ってる。
袖は、二枚袖の仕様。
平置きするとアームは広いように見えますが、前から見るととてもスマートな腕に見える。
これも杉原さんが狙ってる。
ただ、横から見ると立体で力強い腕に見える。
そして、先述の通り、着ると、袖が身頃から"生えてる"。 全てのパーツが、"パーツでなく"、"一体化されたシャツ"に見える。
これはAUBETTの洋服には、全て共通する。
そして、やはりあまりにも美し過ぎる、この生地。
自然光でも、室内でも、どこにいても感じる"繊細な輝き"。
尋常じゃないくらいにキメが細かく、それでいて最強最高の肌へのタッチ。
これは、皆様、ご驚愕ください。 僕もね、届いてすぐに着てたの。
まあ、届いたのがホント最近だから、待ちきれなくてすぐに着て、そして、すぐに洗った。
それがこれ。
洗濯機でも良かったんですけどね、でも、まずは水の中で生地が濡れた様子を見たかったんですよ。
水の中だと乾いてる時とは違う、生地のポテンシャルが感じられるから。
だから、手洗いです。 まだ一回だけ。
今も着てるから、今日も帰ったら洗うけど。
水の中では、カネタさんの言う"究極密度"を目に見えて感じました。
水に濡れると、糸が水分を含んで膨らむから、水が通り抜けていかないの。
水が生地の上を走ってた。笑。
更には、原料のコンパクト糸でガス焼きされたシーアイランドコットンが、水の中で光ってた。
洗うと、全体が膨らみ、ご覧のように細かい皺が走ります。
そして、肌当たりが明らかに柔らかくなった。
シワの入り方は好き嫌いあると思いますが、洗い晒しのシワが入ってる方が、原料の良さが際立つと思いますよ。
誰が見ても、上質な生地であるのは、一瞬で分かってもらえると思いますよ。
コットン100%のシャツのレベルを遥かに超えた、このシャツにしかない世界が広がってる。
でもまだまだこれから。
ここから使っていって、洗いを繰り返した後に、カネタさんの生地の本当の力が発揮されるから。
やっぱり洗うことによって、原料そのものの持つ潜在能力も露わになってくる。
そうなってきた時に、この密度と組み合わされることで、圧倒的な上質さを感じられる。
とても期待してください。
こうね、グシャグシャにするのも似合うのよ。
こういうことはどんなシャツでもできることではないけど、これだけのレベルを持つシャツであれば、それが許される。
新品の状態でも、素晴らしいクオリティのシャツだけど、手にして頂いた方は、長い目線で付き合っていってください。
太番手の糸を使い、カネタさんが今、生み出せるハンパない"カバーファクター"と"タテヨコ比率"、そして、AUBETTが実現する"立体裁断"。
それが、組み合わされた今回のシャツ。
当店でも、なかなかこのクラスのシャツは、頻繁に取り扱えるものではないと思ってるので、お好きな方は見てみてください。