今日は、山内。
2月になり、日本の春夏の季節に心地よく着られる洋服がだんだんと揃ってきていますが、今日紹介するものもまたその一つ。
今回のブログのタイトルに"超絶"と付けていますが、洋服そのものにも"超絶"と名前が付いているものです。
もう20年以上、洋服づくりを行なってきて、その上、むちゃくちゃ細かく物事を見て、考える、山内の山内さんが"超絶"と名前を付けるんだから、それはそれは"超絶"ですよ。笑
まあ、ブランドでは、生地のことを指して"超絶"と言ってるんですが、僕は、その"超絶生地"を、このようにめちゃくちゃ細かく"山内してる"ような洋服にしてることも"超絶"だと思ってる。
これ。
山内
超絶高密度リネンクロス・マウンテンジャケット
face material _ LINEN 100%
lining material _ COTTON 70%,POLYESTER 30%
color _ KINARI
size _ 2のみ
"超絶高密度"という名前の付いた、リネン100%の生地を全面に使用したジャケット。
生地は生地として、まず洋服の"顔"が今の主流の洋服の感じとは全然違う。
非常に色濃く、かなり特有の匂いがすると思います。
ブランドとして、少し前は、ある種、クリーンで綺麗なニュアンスの洋服が中心的だったのですが、それはそれで良いとして、僕はずっと山内の山内さんにこのようなムードの洋服をラブコールしてた。
もともと昔はね、いわゆる、ザ・アルチザンブランドみたいなジャンルの洋服をつくってた時期もあった人でもあるし、分かりやすく言うと、そういうストレートに"アルチザン"みたいな見た目の洋服を求めてたのではないですが、山内の"つくり込み"に加えて、濃厚な見た目をしてたら、もはや他のブランドでは、誰も追従できないものになるだろうって思ってるんですよ。ずっと。
まあ、Araki Yuuのように手の縫製を入れていくとかではなくて、山内の山内さんは、とことん"ミシン"という道具を、ワールドトップレベルに駆使し、その上で、細か過ぎると思えるほどまでの、離れ業の、細胞レベルまで細かく行き届いた洋服設計をし続ける人なんですけどね。
ある種、そこには、"プロダクト"の範囲なんですが、それが、"飛び抜けたプロダクト"が完成してることがあるんですよ。
で、今回のもそう思ってる。
すごいから。
生地は、さっきから言ってるように、"超絶高密度"のリネン100%。
この生地は、"平織りのリネン"だ。
平織りのリネンというのは、春夏シーズン、特に、夏場になると頻繁に目にするような生地の種類だと思う。
リネンは、繊維が強靭な方だから、それで糸を紡績し、風がよく通る生地を織り上げることが向いているからだ。
だから、多くの場合、というかほとんどと言っても良いレベルで、平織りのリネン100%の生地は、"透ける"。
更には、そのリネンの原料が良質になればなるほどに、その繊維の良さ、柔らかさとか滑らかさを活かそうと考えるから、より一層、薄い生地に仕上がり、"透ける"。
その分、風の通りは良いから、夏には気持ち良いんですけどね。
ただ、今回の山内の"平織りリネン100"の生地は、名前の通り凄まじい。
リネン原料そのものに"一等"という等級が付いてる品質のものだそうだ。
それを平織りしているのだが、透けていない。全く。
"異次元の高密度"で織り上げている生地なのだ。
"異次元の高密度"。
そんなこと、誰でもができるはずがない。
もっ、もっ、もっ、
もしかして、、、、、
この生地を織っているのは、、、、
まっ、まっ、
まさか。
我らが、"カネタ織物"さんだ。
さすがである。カネタさん。
コットンを中心とした植物繊維の生地を織ることになると、カネタさんと肩を並べられる機屋さんはそうそうないと思う。
カネタ織物さんは、技術もあるし、その上、常に自身で追い求め、探求し、開発をしてるから。
だから、"平織りのリネン100%"という、誰もがこれまでの人生で見てきたことのある生地を、
誰もがこれまでで見たことのないもの。をつくり上げる。
カネタ織物さんがつくった生地を知ると、本気で、価値観が変わるのだ。
僕は、そう思っている。
その上、今回の山内のジャケットは、リネン100%でも、無漂白の無染色。
つまり、"一等"というランクの中の、繊維そのものの色合いなんだそうだ。
これは、山内の山内さんが言うには、ほぼ見ることができないほど、滅多にお目にかかれないんだって。
だから、ウルトラ高密度の生地であっても、もともとの原料の品質が伴っているから、バッキバキで硬いというような生地には感じないですね。
密度が高いことは、誰が見ても溢れ出ているけど、着用時に不快に思ってしまうような生地のネガティブな方向への主張は皆無。
キメの細かさをすごく感じるので、「タフにハードに着れそう〜」ということは、全員感じてもらえると思いますよ。
上記のように、そういう一等の品質のリネンを、シャトル織機で異次元に高密度につくりあげ、それを山内のすんごい細かいつくり込みで洋服にしてるから、もうそれだけでヤバそうでしょ。
そして、やはり生地だけではなく、洋服全体を見ても、"超絶"。
フツーの洋服では、ここまではないほどに複雑極まりない設計。
これ。
衿。
生地の密度がハンパないため、山内設計のステッチワークがエゲツないほどに際立つの。
ステッチの"点"の夥しいほどの数の連続が続く。
真っ直ぐに縫う箇所は、真っ直ぐに。
柔らかくカーブさせる箇所は、狂いなく曲線を描く。
表面は、大きめに設計された衿を支えるための役割としてステッチを入れてる。
そして、ネックの内側。
内側には、合計13本ものステッチで衿そのものを強靭にする。
もはやこの部分だけでもかなりのパワーを感じるの。
あと、そうそう。
今回の山内のジャケットですが、ブランドでは春、秋の洋服とはいえ、"アウター"の括りになるので、大物ピース。
山内のそのような種類の洋服には、全ての縫製箇所に"返し縫い"が存在しません。
これ、いまだに僕は信じられないほどの洋服づくり。
全部のシームの最初と最後は、生地の裏面から、縫い糸を引っ張り、反対側に縫い糸を出して、手で結んでいます。
縫った場所がほつれないようにするために、重ねて縫うことで、糸止めをする"返し縫い"ですが、時には、返し縫いの箇所が"ダマ"みたいになって重なることがあるじゃないですか。
それをとにかく嫌う山内さんですからね。
シームがそのようになっている洋服は、山内というブランドの基準には達することがないの。
だから、今回のジャケットも返し縫いが存在しない洋服です。
まあ、普通に書いてるけど、それってむちゃヤバですけどね。笑
しかしながら、それだけ山内の洋服を手にして、着て頂ける方に、丁寧で良い仕立ての洋服を届けたいって常に思ってますから。山内さん。
その気持ち、考え方の現れですよ。
フロント。
このジャケットには、ファスナー付きのポケットが合計で8つ配置されています。
フロントに4つ、左右の袖に1つずつ、そして、裏地に左右で1つずつ。
どのポケットもファスナー開閉で、でもファスナーが見えないようになってる。
全てが務歯(ムシ = ファスナーの小さい歯のこと)隠し仕様。
袖。
開けると全部がちょうど良いポケット口の寸法してると思いますよ。
袖も写真じゃ全然伝わらないけど、サイドビューも良い形の三角形してるんですよ。実物は。
袖は、透明度の高い水牛ホーンが配置。
袖口幅は、アジャスタブル。
ちなみに、どうでも良いかもしれないけど、アジャスタブルストラップの裏も、表地と同じ超絶高密度リネン。
フロントはファスナーと、水牛ホーンの二重構造。
そして、フロントファスナーも務歯隠し。
ファスナーを隠すための生地は、これまた、すんごい高密度のコットン100に切り替えられていますね。
それにしても、そのファスナー隠しの生地も、端を三角形にたたんで処理してるんですが、これは、綺麗に生地端を収めるためということと、ファスナーを上げ下げするときの妨げにならないように考えられてるディテールです。
上部だけではなく、下部も同様ですね。
ホンット、ちゃんとしてるブランドですよ。
こういう洋服づくりをずっと続けてますから。
一時的にこのような洋服をつくることはできても、それを継続してできるのは、誰もがやれることではない。
だからこそ、山内って洋服づくりの本物だと僕は思ってるんですよ。
そして、このジャケットは、その構造も変わってる。
ご覧のように身頃と袖とが切り替わる肩線が存在しません。
分かりますかね??
袖がわかりやすように脇下の生地をフロント側に引っ張り出して、袖を伸ばした様子。
写真左側が前身頃側、右側が後身頃側です。
ちなみに、袖の下の方が生地が波打っているように見えますが、これは縫い伸びなどではありません。
前振りの袖のため、写真のように袖を真っ直ぐに横にした際には、下の方の生地がパターン分量を大きくとられているため、このように波打っているように見えるだけですね。
非常に変わった構築と、あまりにも映えるステッチワーク。
随所の"割り縫いコバステッチ"が途轍もなく美しい。
そして、身頃脇の裾。
身頃脇。
下の方が身頃で、上は袖側です。
写真のように、一枚の生地を加えて、切り替えてある。
そして、それが袖口までひと続きに続くの。
ちなみに、袖は驚愕の"6枚袖"という、6枚もの生地を切り替えてる構造です。
凄まじい。
もう一度、この身頃から袖に続く写真をご覧頂けたら、なんとなく分かって頂けるかもしれませんが、一枚の生地が、裾から袖口まで続くことで、驚異的な腕の上げやすさに繋がってる。
超スムーズな稼働。
驚きの着用感です。
着心地という要素もすごく考えられてるジャケットですね。
あとは、何よりもこれ。
先述の通り、"割り縫い+コバステッチ"の超絶的に美しく、超絶的に細かいステッチワーク。
もちろん、全てに縫い始めと終わりの"返し縫い"は存在しません。
生地もそうだけど、とにかく山内の最強レベルの縫製が最大に感じられる仕様。
このステッチワークが圧巻の洋服のムードをつくり上げてるんですよ。
凄まじい。
目でどこまでも追いたくなるステッチしてると思います。
そして、裏。
裏も、ペキカン。
裏にもファスナーを隠したポケットが2つ。
裏地は、表地の切り替えに合わせて、同じ箇所が分量のゆとりを持たせた上で、同様に切り替えられています。
縫製者、"成清功一"さん。
山内のコレクションメインピースを縫い続ける成清さん。
まあ、この洋服を見てると、ここまでの仕様の洋服は、成清さんだよなってなりますね。
洋服を見てると、明らかに通常通りの量産服を縫う縫製工場では、複雑極まりなくて縫うことができない。
それを自らが事細かに設計する山内さんもそうだけど、商品として実際にこのレベルで縫い上げる成清さんにも脱帽。
ちなみに、成清さんはIRENISAの安倍さん、小林さんと友達らしいです。
一等リネン原料をカネタ織物さんで織り、山内の設計で、成清さんがとても時間をかけて、非常に丁寧に縫い上げたジャケット。
まさに、夢のコラボレーションが山内のコレクションで登場。
サイズは、2のみの最小サイズでの取り扱いですが、それには理由がある。
こちらは大きめの設計です。
僕は、身長167cm、体重52kgなのですが、いつも山内は、2のサイズがベストなのですが、こちらは大きいです。
僕の印象では、山内の通常の3〜4の間くらいのイメージですね。ルーズというわけではないけど、分量があります。
手にして頂ける方が、どのように着られたいのかにもよるのですが、僕の想定では、身長170cm〜176cmくらいの方ですかね。
そういう方であれば、袖丈も問題ないと思います。
まあ、着用写真は撮ってないけど。
ですので、当てはまりそうなお好きな方は見てみてください。