こんにちは。
CASANOVA&COの中山です。
今回はタイトルにもあるとおり、SARTO。
いやぁ、待望していましたね。
遂に来ました。
当店としては2回目となるSSシーズンのSARTO。
2024SSシーズンはシャツとコートの2型でしたので、複数型が店頭に並ぶSSシーズンでいうと初めてです。
僕からの感想をお伝えさせて頂くと、
圧巻です。
僕自身SARTOはお取り扱いをさせて頂くタイミングで初めて知ったのですが、それ以来というものデリバリーをとてもとても、とても楽しみにしているんですよ。
それで今シーズンも展示会から帰ってきた野口に、撮って来てもらった写真を「早く送ってください!」とせがみ、写真でのご対面をしゾクゾクしたことをはっきり覚えています。
しかも、ブランドがつくる1型1型がどれも魅力すぎて、どうするかと野口と共に頭を抱えたことも覚えています。はっきりと。
それくらい1着にパワーがこもってるんです。
で、僕が実物とちゃんとご対面するのはデリバリーがあってダンボールを開けたその瞬間。
もちろん写真でじっくりと目に焼き付けていたもので高揚する洋服なんだろうと覚悟しているのですが、今回も実物を目の前にした時にはかるーーーくですよ、僕の覚悟なんて飛び越えて行きました。
きっと僕は終始ニヤニヤしながらデリバリーされた洋服たちを整理していたことでしょう。
ただ、SARTOの洋服たちはすごく難解なんじゃないかとも思ったりしています。
一見していいなと思えるのに、その理由が掴みにくいというか。
カテゴライズができないというか。
ブランドの象徴的な”刺繍がいい”や”ボタンがかっこいい”だけではなんとも消化しきれない””良い””と思える感覚。
だからSARTOの洋服つくりは圧倒的なものがあるとも思えますし、おもしろいと思えます。
その一因として、ブランドスタイルの印象に対してのSARTOチームによるノンブレーキが故のガチガチな洋服つくり(超ハイレベル)のギャップにあるのだと思います。
なので、まずは洋服の方から見ていきましょう。
ジャケット3型になります。
1着目は、洋服だけで見ると全然紐解ける気がしませんが、奇想天外なのに虜にさせられるツイードから。
SARTO
NO COLLAR JACKET
color _ O,WHITE
size _ S,M,L
material _ cotton 39% acrylic 28% rayon 16% wool 12% polyester 4% cupro 1%
part 1 : linen 54% cotton 46%
part 2 : cupro 100%
tape : rayon 67% polyester 25% nylon 8%
先ほどのハンギング写真を見て「すごいのが来たなこりゃ」と思われた方もいるんじゃないかと思います。
白いツイード。
無理もないと思います。
テーラリングの世界でならまだしも、ブランドがつくるメンズ洋服ではあんまり見かけない生地かと思いますし、カラーリングが加速させているところもあると思います。
ですが、つくっているのがSARTOの場合は例外なんだと僕は思いました。
着用写真は後ほど載せていますが、無茶苦茶に洒落てる。
白いツイードをメンズのスタイルとして着る、その解釈とブランドとしての理想像のセンスが良すぎる。
しかも、そこを追求する姿勢の本気度が違うと伝わって来ます。
「メンズで白いツイード着ちゃうとかいけてな〜い?」レベルの話じゃありません。
もしかするとSARTOチームはそのくらいのテンション感なんじゃないかとも思えますが、洋服の仕様や生地といったつくりを見れば「いやいや、めちゃくちゃやってるじゃないですか」と言いたくなるくらい、SARTOしか無理じゃんとしか思えないくらい、のガチ感。
生地の混率を見て頂きましたでしょうか。
メインのツイードにコットン・アクリル・レーヨン・ウール・ポリエステル・キュプラの6種類。
首裏地にリネン・コットンの生地。
ポケットの内側にキュプラの生地。
身頃や袖の生地端を走るテープ状の部分がレーヨン・ポリエステル・ナイロンの3種類。
混率を見るだけでもご想像ができるんじゃないかと。
ガチ感。
写真には撮りませんでしたが、カフス部分のスリットの根本の内側にはレザーで補強が入ってますからね。。。
そんな脅威とも思える生地が一体どんな表情なのかというと、これ。
経糸も緯糸も糸の太さも違えば撚糸の強さも違うのはまだ分かります。
ただ、全ての糸が同じ白色なのに繊維によっての反射具合や毛羽の立ち方による表情の違いが激しく現れています。
キラッと粒子のように輝いているところもあれば、ツヤっと光沢が現れているところもあるし、撚糸の緩い糸の膨らみが陰影をつくっていたり。
白以外の色を一切使わず、繊維の表情のみでのコントラストで魅せるツイード。
あえてのハードモードなことを選んでいるということはもう感じて頂けているんじゃないでしょうか。
テープ状の部分が近くで見るとこんな感じです。
多分ですが、ゆるく双糸使いされたレーヨン糸とポリエステルとナイロンで構成されたブラシのようにフサフサが部分的に飛び出した意匠糸が使われています。
これが、写真の通り首元のぐるり一周から生地の裾まで繋がっており、ポケットや袖の端にもという手の混み具合。
全体的に見て頂くとこんな感じです。
文句なしの精度。
テープに加えて見て頂きたいのですが、フロントホックを閉じた時の左右の身頃の狂いのないビタビタの突き合わさり。
これ。めちゃくちゃ美しいですよ。
こういったところからSARTOが細かく細かく洋服つくりされているのが伝わってきます。
さらっと言いましたが、ボタンではなくホックで閉じる仕様です。
ここまで綺麗に身頃を突き合わせることができて、テープもあってだと比翼仕立てとかよりも断然美しく感じてしまいますね。
そして、こちらのジャケット。
2024AWシーズンのSARTOをご覧頂いた方はわかるかもしれませんが、”あの刺繍”も入っています。
しかも、身頃の生地と同じ白色で。
こんなに精度の高い刺繍なのに遠目からだとほぼ同化してしまう。
ですが、あるとないとではジャケットの迫力に大きな違いが生まれてしまう。
また、ノーカラーのジャケットですので、袖付けはきちんと袖高です。
袖高の仕様が、着用した時にSARTOの抜群なパターンと相まって、メンズスタイルの白いツイードジャケットとして重要な要因になっていると思います。
適度な緊張感を持たせてくれてます。
ここまでがツイードです。
続いてはSARTO流のデニムジャケット。
デニム特有の楽しみの一つでもある色落ちのために非常にマニアックな配慮もしてくれているデニムジャケット。
2024AWでも印象的だったジャケット型のSSバージョンといったところでしょうか。
こちらでございます。
SARTO
EMBROIDERY SHORT JACKET
color _ WASHED INDIGO
size _ M,L
material _ cotton 100%
2024AWでは目を惹くベルベットの生地で登場していたジャケットのデニム生地バージョン。
しかし、生地が変われば洋服としての印象も変わる。
随所の使用はデニム生地に合わせてちゃんと変更されているんです。
気がついた時には1着に対してきちんと向き合っているブランドの姿勢に改めて感服しました。
だからこその洋服の出来栄えだなと。
縫製部分はデニムジャケットの文脈に則りステッチが露出する仕様になりますが、ステッチカラーは白色。
縫製の糸も少し太めなものを使用されています。
流石のバランス感。
そして、EMBROIDERY SHORT JACKETといえばの刺繍。
今季のジャケットもアームとネックに精度の高い刺繍が入っていますよ。
さらに、ポケットにも。
で、この刺繍が先ほどチラッとお伝えした”非常にマニアックな配慮”になるんです。
デニム生地のエイジングといえばの色落ち。
こちらのジャケットは既に洋服の状態でブリーチがかけられています。
つまり、生地も刺繍も裏地も一緒にブリーチがかかることになる。
そうすると、繊維の種類によってブリーチ具合が変わってしまうんだそう。
例えば、生地はコットンなのに刺繍がポリエステルだと同時にブリーチをしているのに生地と刺繍部分でチグハグな色落ちが起きてしまうということ。
それでは1着のバランスとして崩れた状態になってしまう。
ということで、今回の刺繍は生地と同様にちゃんとコットン素材のものを採用されたそうです。
だからでしょうか、刺繍が妙に馴染みまくってる。
すごく自然に。
こういった細かなバランス感がSARTOに対して感じるガチ感。
でも、裏地の生地の色がピンクっぽいのはあえてその色を採用したとかではなく、ブリーチを施した時にたまたま変わってしまった色味らしいけど、”いいじゃん”ということで晴れて採用。
でもでも、ボタンは普通のメタルボタンじゃない。
ジュエリーブランドに作ってもらったシルバー&ターコイズの豪華なボタン。
このギャップ、このテンション感がSARTO。
もっと良くできる工夫があるんじゃないかというところは共通しているのに、根を詰めてじゃない。
子供の頃の秘密基地を作るかのようなもっとこうしたら良くなるんじゃない!?っていう感覚で探求がノンブレーキで行われているという結構シンプルな洋服つくりの考え方。
ただ、それを行っているSARTOチームが持つ技術と引き出しの多さが半端じゃないから、半端じゃない洋服になっているということ。
そして最後の3着目。
このジャケットだけ2024SSのタイミングで実物を見たことがあったのですが、あまりのかっこよさに感動したことを強く覚えていたんです。
それで、2025SSもラインナップに入っていることを知ってすぐに野口に「このジャケット良すぎますよね」と伝えると野口も同様に感じていたみたいでセレクト。
ハンギングの状態だけでは全然と言っていいほど発揮されないのですがまずは洋服からご覧ください。
こちらです。
SARTO
HUNTING JACKET
color _ LIGHT BEIGE
size _ S,M,L
material _ cotton 80% silk 20%
とろみとハリ感が共存したシャツ生地のようなコットン・シルクの生地を使ったジャケット。
生地の心地よさはさることながら、なんといってもこのジャケットはSARTOの造形のバランスがものすごく現れていると感じています。
特にはアームの造形になるのですが、ブランドの美学を感じます。
横からの見た目からだと少しわかりやすくなります。
ふんだんに膨らみを持たせたアームの造形。
腕が入っていないハンギングの状態だとぽわんと膨らんでいるだけに見えてしまうのですが、この膨らみが着用時の洋服の全体のバランスに大きく影響してきます。
さらに、動いている時の腕の見え方にも。
どうなっているかと言うと、そもそものパターンが超特殊。
正面の写真を撮っていないのでわかりづらいのですが、前見頃はセットインスリーブで、後身頃はラグランスリーブのような設計に。
縫製のラインだけ辿るとそう見えるのですが、生地分量の持たせ方が普通じゃない。
肩の部分の2枚目の写真の真ん中くらいに注目して欲しいのですが、脇下あたりの生地が立っています。
ここのゆとりは見たことがありませんでした。
着用して体が入るとこれが自然と馴染むんですよ。
もはやマジックです。
超絶テクニックですよこれ。
後身頃には共地のドローコードがつきます。
スタイルに合わせて絞って頂いても、絞らず垂らして頂いてもかっこいいようになります。
垂らした時にはドローコードが抜け落ちてしまわないようにベルトループに発明が施されています。
ベルトループが2つ隣接させているだけに見えるのですが、少しだけドローコードを引っ張ると、、、
ベルトループ同士が噛み込んで、ドローコードを固定してくれるように。
単純に画期的。とても助かる発明。
フロントジップもダブルジップ仕様になります。
ドローコードもあってダブルジップ仕様であらゆるスタイルと着方が出来るのではないでしょうか。
ここまでは、洋服のみでSARTOの洋服つくりのガチ感を感じていただける部分をご紹介させて頂きましたが、どこの部分も側から見るとハイレベルすぎる。
ですが、SARTOというブランドのキーワードとして”ファッションしている”ということ。
それは”流行り”や”流行”といった意味ではなく、着用した”その姿”や”その雰囲気”を追い求めるための先程までのガチと感じてしまう洋服つくりをしているということなんですよ。
だからこそ着ることにすごくハードルがあるようにも思うし、その分のSARTOを着ることでしか感じることのできないものが宿っているように思えます。
SARTOの洋服はどうやって着てくれるんだい?と訴えかけてきてくれますからね。
そこをとことん楽しみ尽くすこと、尽くせることがSARTOの1番の魅力なのではないかと僕は思っています。
洋服自体のファッション能力が抜群に高いブランドです。
そういった意味では飽きるとかの次元じゃないですよ。
向き合い続けさせてくれると思います。
着用は野口(身長178cm、体重60kg)にお願いをしたのでサイズは全てMサイズを着用しております。
生地の先入観が先行してしまいそうになるツイードですが、着用してみるとなるほどな、と。
ツイードが持つ生地のムードを造形の印象でうまくいかしていると感じます。
デニムジャケットも着用するとより顕著に現れるバランス感。
デニムらしい男らしさはあるけど、それっぽさはなく。
HANTING JACKETはやはり体が入ることで洋服として完成していると思えます。
ハンギングの状態でも立体的であったアームの造形が着ることで・動くことであのゆとりの恩恵が出てきてくれます。
アームのボリュームに対して意外とすっきりと収まる身頃。
丈感も相まってかダンディに感じる見たことのないバランス。
トップスもパンツも全てSARTOの洋服というスタイルももちろんなのですが、ご着用いただく方のスタイルの中に組み込ませることでより濃厚にブランドの真髄を感じていただけるのではないかと思います。
気にしていただける方はご覧いただけましたら幸いです。
CASANOVA&CO
中山